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座敷童子召喚グッズで大もうけ!?(SS)

トリックアート(1人増える騙し絵)とコラボのショートショート
座敷童子召喚グッスで大もうけ!? by 星谷 仁

 座敷童子(ざしきわらし/ざしきぼっこ)をご存知だろうか? 子どもたちが遊んでいると、いつの間にか1人増えていることがある。けれどその顔ぶれは、どれも最初からいた子ばかり。だれが「プラス1」なのか、わからない……そんなときは座敷童子がまじっているのだという。妖怪のたぐいではあるけれど、座敷童子が出る家は栄え、いなくなると衰退するといわれていて、ちょっと《福の神》みたいなところもある。

 顔ぶれは同じなのに人数だけが増えるという《プラス1現象(座敷童子現象)》は想像するのも難しい奇妙な現象だが……驚くなかれ! このほど僕は、これを再現することに成功した。
《座敷童子(ざしきわらし)召喚システム》──そう言ってもいいグッズの開発をなしとげたのである。
 これで福の神妖怪・座敷童子を招いてお金も招く──といった寸法だ。

 原理はさておき、グッズの仕組みは単純だ。図案化したイラストで説明しよう。透明なパネルに9人の子どもが正面を向いて描かれている。パネルを裏返すと9人の背面(後ろ姿)が描かれている。
01座敷童子SSA
02座敷童子SSB
 わかりやすいように、ここでは表面(正面姿)を黄色・裏面(後ろ姿)をで水色で示すことにする。表から見ても裏から見ても、描かれている子どもは9人であることに変わりはない。
 まずパネルの表面を出しておく。このパネル上に《プラス1(座敷童子)》を召喚して10人にするのだが……座敷童子はシャイなので、皆が正面を向いている間は出てこない。「だるまさんが転んだ」でオニが背を向けている間にさっと動いて近づくように、描かれた子どもたちが背を向けた瞬間に座敷童子は近づいてくる。
 正面を向いた子どもたち(の絵)を後に示す手順通りに、次々に後ろ向きにしていくと、全員が背を向けた瞬間に座敷童子はパネル上に出現し、9人だった子どもが10人に増殖する。
 何はともあれ、実際にご覧いただこう。パネルは3つのパーツに分割できる仕組みになっている。その分割線を描き入れたのがこちら⬇。
03座敷童子SSC
 まずは下半分のパーツを裏返しながら、「座敷童子招来!」と心で念じる。
04座敷童子SSD
 水色に裏返った部分では子どもたちは後ろ姿になっている。
 次に、左上の(黄色)パーツも「座敷童子招来!」と強く念じながら裏返す。
05座敷童子SSE
 最後に残っていいる右上の黄色部分も「座敷童子招来!」と裏返す──これで、描かれた子どもたちは全員後ろ向きになった。
06座敷童子SSF
 そこで人数を数えてみると──驚くなかれ、10人になっている!
 パネルを表向きにして確かめてみても、やはり10人になっている。
07座敷童子SSG
 ご覧いただいたように、何も描き足すこと無く、9人だった子どもが10人に増えている。誰が増えたのかもわからない。

 この《座敷童子召喚グッズ》を開発したことで、僕はお金持ちになった。
 このパネルを商品化して大ヒットしたのかだって? 違う、違う。そうじゃないんだ。
 絵に描いた9人の子どもに1人ずつ1万円を渡して後ろを向かせる──10人に増えたところで、それぞれが持っているお金を回収すれば、そのたびに1万円増えるという仕組み。これを繰り返せば、どんどんお金がたまる。増殖したお金をつぎ込めば、さらにお金が増えるというわけだ。座敷童子現象を利用しての荒稼ぎ。座敷童子がつく家は栄えるという言い伝えがあるけど、なるほど、こういうことだったのかと、笑いが止まらない。


    *    *    *    *    *    *

──というところまでがトリックアート(騙し絵)がらみのショートショート風作品。創作作品は縦書きにしているのだが、今回は横長のイラストが頻繁に入ることから横書きのままで掲載。もちろん、オチの──この方法で荒稼ぎすることは、実際にはできない。1人増えるトリックアートの仕組みについて興味がある方は、こちらをご覧あれ⬇。
01座敷童子騙し絵新A
人数が増減する騙し絵の簡単な解説より

《プラス1(座敷童子)現象》について
僕が座敷童子について知ったのが、いつのことだったのか……その状況はまるで覚えていないのだが、「1人ふえているのにそれが誰なのかわからない」という不思議な現象ばかりが強く印象に残ったことは記憶に残っている。これが宮沢賢治の『ざしき童子(ぼっこ)のはなし』に出てくるエピソードだったと知ったのは、つい最近のことだった。

「大道(だいどう)めぐり、大道めぐり」
 一生けん命(めい)、こう叫(さけ)びながら、ちょうど十人の子供らが、両手をつないでまるくなり、ぐるぐるぐるぐる座敷(ざしき)のなかをまわっていました。
 どの子もみんな、そのうちのお振舞(ふるまい)によばれて来たのです。
 ぐるぐるぐるぐる、まわってあそんでおりました。
 そしたらいつか、十一人になりました。
 ひとりも知らない顔がなく、ひとりもおんなじ顔がなく、それでもやっぱり、どう数えても十一人だけおりました。
 そのふえた一人がざしきぼっこなのだぞと、大人が出て来て言いました。
 けれどもだれがふえたのか、とにかくみんな、自分だけは、どうしてもざしきぼっこでないと、一生けん命眼(め)を張(は)って、きちんとすわっておりました。
 こんなのがざしきぼっこです。
 (宮沢賢治・作『ざしき童子(ぼっこ)のはなし』より)


とにかく、子どもの頃から、この謎めいた現象には興味があって、僕自身もこの現象を扱った座敷童子の話(創作)を書いている。
初めて書いたのが『ざしきぼっこの写真』(1990年12月/朝日小学生新聞)という読み切り童話だった。8人で遊んでいた子どもたちが、いつの間にか9人になっていることに気づき、座敷童子を写真に収めようと一人ずつ撮影する。間違いなく9枚撮ってスクープだと盛り上がるが……できてきた写真は8枚のみ。元からいた8人しか撮れてないのに撮影枚数だけが9枚になっていた……という《プラス1(座敷童子)現象》を確かめるだけに終わるというオチだった。
次に書いた『病院跡のざしきぼっこ』(1994年12月/朝日小学生新聞)は短期連載で、《プラス1(座敷童子)現象》の合理的解釈を試みた作品だった。その後もブログで何度か座敷童子ネタを取り上げていて、1人増えるトリックアート(騙し絵)も描いている。これをもう少し違った演出で表現できないか……と考えて思いついたのが、今回のショートショート風トリックアートだった。

トリックアート・ショートショートの意図
画像の一部を左右入れ替えることによって描かれた人物の数が変化するトリックアートはそれだけでも充分に面白いのだが……このトリックを成立させるために必要な「左右入れ替える」作業に何らかの意味なり必然性などを持たせることができないものか……それができれば、よりスマートに不思議を演出できる──と考えたのがきっかけ。
「左右入れ替えると面白いことが起こる」といった場合、「なんで左右入れ替えないといけないの?」という疑問が起こりうる。そういう疑問をさしはさむことなく「作者のたくらみ」に誘導することができれば、それに越したことはない──トリックアートの成立に必要な「左右の入れ替え」を意識させることなく「子どもに後ろを向かす」という陽動によってセットアップ(裏向きで左右の入れ替えを完了)する──今回はそんな狙いがあった。
これが果たして、どれだけ効果があったものか……。複雑にしたことでトリックのキレが悪くなってしまったという懸念も無きにしも非ず……。これだけでは心もとないので、《プラス1(座敷童子)現象》を利用したもうけ話というショートショート的なオチをつけてまとめてみたしだい。



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