新型コロナ禍のアマビエ・ブーム

新型コロナ禍の新星アマビエは竜宮の使い!?
01アマビエ神社姫
パンデミックに至った新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。その渦中にあって意外なブレイクをみせているのが【アマビエ】──1846年に1例だけ目撃記録が残るマイナーな妖怪だ。僕は妖怪に詳しいわけではないが、ファンタジーの資料になるかも知れないと思って買っていた『【図解】日本妖怪大全』(水木しげる/講談社α文庫/1994年)に載っていたので、そのユニークな姿はうっすら記憶に残っていた。その【アマビエ】を記した冒頭の文章を引用すると──、

 弘化3年(1846)のこと、肥後(熊本県)の海中に毎夜光るものが出たという。
 役人が行ってみると、それはこの絵のようなものであった。これが出て来て、
「私は海中にすむ〝アマビエ〟というものである」
と名乗ったあと、
「当年から6ヵ年の間諸国豊作である。しかし、病気がはやったら、私の写しを早々人々に見せよ」
 などと予言めいたことをいい残し、ふたたび海中にもぐったという。


──つまり、豊作と疫病の流行を予言し、パンデミック(?)のさいには自分の姿を描いたものを人々に見せるようにとのアドバイスを残した妖怪なのである。
新型コロナによる緊急事態宣言下の閉塞的な自粛生活が続く中にあって《疫病退散にご利益があるというアマビエにあやかろう》という発想で、ネット上に「みんなでアマビエを描こう(作ろう)」という動き(アマビエチャレンジ・アマビエ祭り)が広がったらしい。

謎めいた予言とメッセージを残していったという妖怪・アマビエについて、僕も改めて興味を覚えた。僕は妖怪が実在するとは思っていないし御利益も信じてはいないが、「どうして、このような妖怪が生み出され、伝承されてきのだろう?」と考えると、ちょっと不思議な気がして好奇心がわいてくる。

僕が初めてアマビエを知ったのは前述の『【図解】日本妖怪大全』だったが、当時は記述内容についての印象は薄く、描かれていた〝光り輝く妖怪〟の姿が「水木しげる(のデザインした妖怪画)っぽくないな」という違和感のようなものがあったのを覚えている。これはアマビエについての目撃記録が1例しかなく、容姿情報は瓦版の稚拙なイラストのみ──これをベースに描かざるをえなかったためだろう。
今回、関連情報を検索・閲覧しているうちに、色々なことが判ってきた。アマビエ」の目撃記録は1例にすぎないが、それ以前に同様の予言をした「アマビコ」という妖怪の記録がいくつかあって、「アマビエ」は「アマビコ」の誤表記ではないかという見方もあるらしい。
さらに海から現れて同様の予言をしたという妖怪に「神社姫(じんじゃひめ)」や「姫魚(ひめうお)」というのがあって、これは人の顔に龍のように長い体をもつ魚っぽい姿をしており、全体の印象は「アマビエ」とはずいぶん違うものの、「長い髪」や「体は魚」、尾びれが「三つ又」であるという共通する特徴があったりして興味深い。そして、神社姫の予言内容も──、


我は龍宮よりの使者・神社姫である。向こう7年は豊作だが、その後にコロリという病が流行る。しかし我の写し絵を見ればその難を逃れることができ、さらに長寿を得るだろう。

──と、アマビエによく似ている。Wikipedia情報では「コロリ」を「コレラ」のこととしているが、『【怪と幽 号外】 厄災を予言!? 疫病を退散!? 話題の「アマビエ」とは? その正体を妖怪博士が解説する』によれば、当時、日本にはまだコレラがなく、赤痢のことだったのではないかと記されている。今であれば「コロリ」は「コロナ」と解釈したくなるところだろう。
今回「神社姫」という妖怪を知って、深海魚のリュウグウノツカイによく似ていると思った。リュウグウノツカイは普段見られない珍魚で、ルックスもユニークなため、たまに見つかるとニュースになったりする。
細長い体をしており、現生する硬骨魚類の中では世界最長種。中には11mになるものもいるという。その姿は伝説の「龍」を彷彿させる。頭頂部にはとさかのような長いヒレがあって、これが龍の角のように見えなくもない。そして神社姫の特徴のひとつ「長い髪」のようにも見える。
今であれば、運良くリュウグウノツカイを見つけた人はスマートフォンなどで簡単に画像や映像を記録できるが、昔は目撃者が他の人に怪魚の姿を伝えるのは難しかったろう。「どんな姿か」を絵にし、それを他の人が見れば……長い髪をはやした人面に龍のような体をもつ魚に見えるのではないだろうか? これが「神社姫」のもとになったのではないかという気がする。
YouTubeにはペアで泳ぐリュウグウノツカイの珍しい動画があるが、伝説のもとになってもちっともおかしくない怪しげな雰囲気を醸している。


リュウグウノツカイが見つかったというニュースの中には、この怪魚出現を地震の前兆とする言い伝えがあることを紹介していたものもあったように記憶している。東日本大震災(2011年3月)が起こる前(2011年1〜2月)にも日本各地でリュウグウノツカイが目撃されるなど、地震の前の目撃例はいくつかあるらしい。
深海魚が浅瀬に現われたり打ち上げられたりすることが地震の予兆現象なのか、ただの偶然なのか……いずれにしても、怪魚の出現をその前後で起こった凶事に結びつける話は出てきて当然という気がする。伝説が生まれるのに充分な存在感をリュウグウノツカイは持っている。
そして、ふだん見たこともない得体の知れないものが現われたとなれば、「いったい、どこから来たのか?」ということになる。海の未知なるところから来た──「きっと竜宮から来たのだろう」という解釈が生まれるのも自然な流れだ。すると、「竜宮から、なにをしにやって来たのか?」という疑問につながっていく──。
そこで「凶事を告げにきた」と考えれば、現象にそれなりの意味付けができる。ただ凶事を告げるだけに来たのか……それを防ぐ手だてを知らせに来たと考えれば、さらに出現の意味付けを強めることができる。
人は未知なるものに遭遇すると、なんとか納得できるストーリーをみつけて安心したがる。こうした心理が働いて、リュウグウノツカイからアマビエや神社姫の伝説が生まれたのではないだろうか?
怪魚出現のめずらしいニュースを伝える瓦版にしても、ただ出現したことを記すより「凶事を告げに現われたのではないか」あるいは「地震の前触れ!?」という解釈(演出)があった方が注目が集まる。その不安を解消するための厄よけの御利益があれば、さらに購読需要は高まるはずで、「その姿を描き写した画にその御利益がある」とすれば瓦版も売れるし、怪魚出現の意味付けも強化できる──こうして「神社姫」や「姫魚」の伝承が誕生したのではないかと想像する。
リュウグウノツカイの目撃情報から神社姫の伝説が生まれ、神社姫が「龍宮よりの使者」を名乗ったという伝承から、リュウグウノツカイにその名──「竜宮の使い」がつけられたのではないだかろうかと思ってしまう。

リュウグウノツカイと「アマビエ」の絵ではプロポーションが大きく異なるが、「長い髪(背びれの一部)」や「体は魚」というところは似ている。絵では体にウロコが描かれているが、実はリュウグウノツカイにはウロコがなく、光を反射して美しく銀色に輝くという特徴があるという。「アマビエ」のウロコは「体は魚」という記号として描かれたもので、〝光り輝く〟という特徴からすると、やはりリュウグウノツカイを示唆しているように思われる。

疫病の流行でレナウンが経営破綻
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響を受けてアパレル大手のレナウンも経営破綻したというニュースが先日報じられていた。そこで一句──、
02レナウン短歌
ところで、「アマビエ」の目撃記録として存在する唯一の絵では、口が飛び出しているのが特徴的だが、リュウグウノツカイも口がせり出すしくみになっている。
03竜宮の使い口
口は閉じている時は顔に収納されているが、開くとせり出す構造で、これは【リュウグウノツカイの謎に迫る】という動画の中で紹介されている。
アマビエの「長い髪(に見える背びれの一部)」「光り輝く魚の体」「せり出した口」はリュウグウノツカイを示唆しているように感じる。
こうした特徴から「アマビエ」と「神社姫」「リュウグウノツカイ」には何らかの繋がりがあるように思われてならない。
とくに全体の印象がよく似ている「神社姫」と「リュウグウノツカイ」には空目関係にあったような気がする。「リュウグウノツカイ」に遭遇した人が、これを想像上の存在である「神社姫」や「龍」と空目してしまう──ということが伝承を補強していったのではないか……。
実在の生物が想像上の存在に空目できてしまうことは、ないではない。

04ウコンカギバ幼虫
葉上のドラゴン:ウコンカギバ幼虫参照⬆

余談だが……レナウンの経営破綻を報じる映像ニュースで、レナウンのロゴデザインを見たとき、タモリ倶楽部の空耳アワーの空耳マークに空目してしまった。
05レナウン空耳


キアイを入れれば見える!?空目色々
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