宝石蜂セイボウ:輝きの秘密と生活史考

Jewel wasps(宝石蜂)…セイボウの仲間
過去に昆虫関連の記事をずいぶん投稿してきた。虫見に出て撮るたびに記事にしていたので、同じ種類があちこちに分散していたり、他の昆虫の記事に紛れていたりしている。あらためてまとめておいてもいいかなと思うものもあって、とりあえず、これまでに撮った美麗昆虫の中でもメタリックな輝きをもつセイボウ(青蜂)=【jewel wasps(宝石蜂)】(英名)のぷちまとめ(といっても4種)。この仲間は日本に38種類が生息しているそうだ。

メタリックな輝きが魅力のイラガセイボウ
01イラガセイボウ1
イラガセイボウ(イラガイツツバセイボウ)はグリーン〜ブルーのメタリックな輝きを放つとても美しいハチ。体長は9〜12mmほど。画像ではわかりにくいが、実際にはかなり輝いて見える。金属光沢の昆虫は見たままの美しさを画像に記録するのが難しい。さらにハチなのですぐに飛ぶので接写するのに苦労する……。この個体は左翅を欠損していたので飛ぶことができず、じっくり撮ることができた。
02イラガセイボウ2
体の表面には金属光沢があってそれだけでも充分美しいのだが、この体表面には点刻と呼ばれる微細なくぼみが密集していて、これが凹面鏡のように〝どの角度から見ても点刻内には反射光が映る〟しくみになっている。このためキラキラ輝く〝光の粒〟を全身にまぶしたように見える。
03イラガセイボウ3
点刻内に明るく輝く〝光の粒〟を撮ろうと露出を絞ると、地色のメタルグリーンが黒っぽくつぶれ〝光の粒〟は白っぽくとんでしまう(やはり翅を痛めていた別個体⬇)。
04イラガセイボウ4
05イラガセイボウ5
腹端に5つの歯状突起が見える⬆──これが別名:イラガイツツバセイボウの「イツツバ(5つ歯)」の由来。腹端の歯数はセイボウの種類を見分けるポイントの1つ。セイボウの仲間はふつう「竹の筒やカミキリの脱出孔、土で作った巣などに捕えた虫(幼虫の餌となる)をたくわえ卵を産みつける寄生蜂」に寄生するのだが、イラガセイボウは例外的に蛾(イラガ)に寄生する。母蜂はイラガの硬い繭に孔をあけて前蛹に産卵するという。イラガの幼虫は刺されると(触れると)痛い虫としてよく知られている⬇。
06イラガ幼虫&繭再
イラガセイボウは北進昆虫で、明治から昭和の初期にかけては九州のみにしか記録がなかったそうだ。関東で見られるようになったのは戦後のことらしい。

虹色の蜂:セイボウ(青蜂)ならぬレインボウ(レイン蜂)!?
07ツマアカセイボウ
ツマアカセイボウは体長:6〜12mmほどのハチ。腹の虹色に輝くメタルカラーが美しい。《セイボウ(青蜂)》というより《レインボウ(レイン蜂)》と呼びたくなる。腹部末端の歯状突起は4歯。宿主はシブヤスジドロバチ。

08ムツバセイボウ1
ムツバセイボウは体長:10〜12mm。このハチも腹のあざやかなグラデーションが美しい。
09ムツバセイボウ2
この画像⬆では判りにくいが腹部末端の歯状突起は6歯──和名の「ムツバ(六歯)」はここから。
グルーミングで翅をつくろうときに腹が見える⬇。この個体は小さな白いダニをつけていた。
10ムツバセイボウ3
ムツバセイボウの宿主はヤマトフタスジスズバチ・オオフタオビドロバチ。
カミキリの脱出孔を利用したヤマトフタスジスズバチ(フタスジスズバチ)の巣の近くでカッコウのように托卵(たくらん)の機会をうかがうムツバセイボウ⬇。
11ムツバセイボウ4
ムツバセイボウはスキを見てヤマトフタスジスズバチの巣にもぐりこんで産卵。孵ったムツバセイボウの幼虫は、ヤマトフタスジスズバチが(自分の子のエサとして)貯蔵した蛾の幼虫(メイガ・ハマキガ・キバガ・ヤガなど)を食べて成長する。

12ミドリセイボウ1
欄干にとまったミドリセイボウ。陽が当ると点刻内の反射光が光の粉をまぶしたようにきらめいて美しいのだが──画像では白っぽい点になってしまう。
13ミドリセイボウ2
ミドリセイボウの体長は10〜13mm。腹部末端の歯状突起は5歯。宿主はヤマトルリジガバチ。

セイボウの生活史はどのように誕生したのか?
まず、狩り蜂がどうして幼虫のエサとなる特定の宿主(寄主)を選択するのか……僕の素人想像にすぎないのだが、《狩り蜂は幼虫時代に食した獲物の味やニオイを記憶しており、母蜂になるとそれを頼りに獲物を探し出し、狩って卵を産みつける》のではないか?
そう考えると、なぜ《セイボウが他の狩り蜂(寄生蜂)の巣(わが子のために蓄えたエサの貯蔵庫)にもぐり込んで〝カッコウの托卵〟のようなことをする》ことになったのか説明できる気がする。
仮に──セイボウの祖先Aは蛾の幼虫などに直接卵を産みつけていたとする。その卵がついたイモムシを後からきた狩り蜂Bが狩って巣に運びこむこともあっただろう。すると巣の中で孵化したAは、BがBの幼虫のために貯蔵した豊富なエサを食べ、しかも野外で育つよりも安全にBの巣の中で育つことができる。Aは親になると、自分が育ったエサと環境(巣)のニオイ覚えていて、Bの巣を探してそこに卵を産むようになった──というシナリオは、合理的に思われる。
Aにとっては、それまで通り野外のイモムシに寄生して育つよりも、Bの巣で育つ方が生存率は高いだろう。生存率が高い方が進化の中で選択されて現在の《狩り蜂(寄生蜂)にもぐりこんで卵を産みつける》というセイボウの寄生スタイルが確立したのではないだろうか。

ハチに寄生するのが主流のセイボウ類の中で、例外的にイラガに寄生するイラガセイボウは「寄主の種類」でみると「蜂と蛾」でかけ離れているが、これも前記の前提にたてばそう不思議ではなのかもしれない。すなわち、セイボウの祖先Aが卵を産みつけたイモムシが、Aの孵化より先に蛹化してしまうケースがあったとする。チョウや蛾の幼虫は蛹化するときに脱皮をするので、そのさいに脱ぎ捨てられた抜け殻いっしょに孵化前の卵もエサから脱落して死んでしまうことになる。しかし、イラガの場合、幼虫は蛹化する前に繭を作り、繭の中で脱皮をするので、Aの卵はイラガの蛹とともに繭の中に残ることができる。それでイラガを食って育ったAの幼虫は、親になると自分が育ったイラガの繭のニオイをたよりに産卵ターゲットにイラガの繭を選択するようになった──と考えれば筋は通る。
蛹化する前に繭を作る蛾は他にもいるが、多くの蛾が作る繭とイラガの繭は質感的にずいぶん違う。仮に繭の中で寄生に成功して育つことができたとしても、成虫になったAが繭を破ることができなければ子孫を残せない。その蛾の繭は産卵ターゲットとなり得ないことになる。それがイラガの繭では成虫になったハチのアゴで食い破ることができたために、宿主としてイラガを選択することができたのかもしれない。

本当のところはわからないが、そんな可能性を想像してしまう。美しいセイボウの風変わりな生活史をみると、ついあれこれ考えてしまう。



メタリックに輝く虹色のハチ ※ツマアカセイボウ
宝石蜂(jewel wasps)セイボウ ※ミドリ・クロバネ・ツマアカセイボウ
宝石蜂セイボウの生活史起源考?
托卵の機会をうかがうムツバセイボウ
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