変化球の思い出

小学生のころ遊んだカラーボール野球
僕が小学3〜4年生だった頃……近所に野球好きの兄弟が越して来て、彼らとよく野球もどきの遊びをするようになった。
本式の野球は1チーム9人必要だが、「もどき」の方は3人いればできる。まず、ジャンケンでピッチャー・バッター・キャッチャーを決め、ピッチャーがバッターを打ち取ると、次にバッターになることができる。そしてアウトになったバッターはキャッチャーへ、キャッチャーはピッチャーにスライドする。バッターがヒットを打てば、交代はなく続けて打席に立てる。遊んでいるうちに仲間がくれば野手に加えて、ピッチャー→バッター→キャッチャー→野手と順繰りに交代しながらそのまま遊びが続行できる。
本式の野球だと打順がなかなか巡ってこないし活躍できるチャンスは少ない。しかし、野球もどきでは頻繁に打席に立つことができるし、ピッチャーとして打者と対決することもできるので楽しかった。
この遊びには軽くてやわらかいカラーボール(ビニールボール)が使われていた。これなら、打球に当ってケガをすることもなければ、窓ガラスを割る心配もない。近所の空き地や路地裏で遊ぶのに都合が良かった。そして軽くて空気の抵抗を受けやすいカラーボールには変化球を投げやすいという利点があった。

この遊びを始めた頃、野球には、投げたボールの球筋が変化する《変化球》という魔球(?)があることは知っていた。変化球が、ボールに回転をかけることで〝曲がる〟ということも、なんとなく知っていた。
そこで僕は《回転をかけたボールがどうして曲がるのか》を考えてみた。僕は学校の勉強には淡白だったが、気になることがあると納得できる解答がみつかるまであれこれ理屈を考えたくなるタチである(*)。
そして、変化球のしくみについては、当初次のように考えた──、

子供だった頃に考えた変化球のメカニズム
下に記すのは、鉛直軸で反時計回り(左回り)に回転するボールを上から見た図。ボールは画面下から上へ移動している。すると移動するボールに対して(相対的に)空気の流れは上から下へ向かうことになる。
01変化球予想
最初に考えたのが、このような⬆解釈だった。イメージとしては外輪船の水車型推進装置(外輪)──これは回転して水を後ろにかくことによって前へ進む。回転するボールも同様に、抵抗の大きい前面で空気を左にかくことで右へ曲がるのだろうと考えた。
ところが、実際にこの回転をかけて投げてみたところ、ボールは予想とは反対の左に曲がる。子供心に「どうして!?」と驚き、とまどい、不思議に感じたことをよく覚えている。
実際の現象は違っていたのだから、僕の解釈が間違っていたことになる。なぜこの回転で左に曲がるのか、最初から考え直してみた。当初は回転するボールの前(進行側)と後ろに分けて考え、空気抵抗の強い前面の作用を想像してみたわけだが、左右に曲がるのだから、ボールを左右側に分けてその表面に作用する力を思い描いてみた⬇。
02変化球解釈
ボールの右側では空気の流れに対してボールは逆回転(向かい風)/一方左側では順回転(追い風)である。ボール表面は右側でより大きな空気の抵抗(圧力)を受けることになり、空気抵抗(圧力)の小さな左側へ押し込まれていく──それでボールの軌道は左に曲がることになるのだろう──そう考えると合点がいくし、現象と合致する。おそらく、そういうことなのだろうと納得できた。

さて、ボールに与える回転と曲がる方向についてわかると、色々な変化球を投げてみたくなる。
本式に野球を学んでいる野球少年のピッチャーならフォームを変えずに違った球種を投げるられるように訓練するのだろうが……僕は、ボールの変化する方向を変えるためにフォームを変えて投げていた。オーバースローで投げていたシュート(投手から見て右に曲がる変化球)を、サイドスローで投げるとドロップ(落ちる変化球)になる。回転をかける腕の振りこむ角度を変えることで変化の角度を変えていた。工夫と言えば工夫だが、それではバッターにバレバレ。しかし当時の僕は球筋を変化させることに価値をみいだしていたのでほかのことはお構いなしだった。
色々試していく中で、もっとも曲がるのがスローカーブだった。変化球の威力は曲がりぐあい(変化の大きさ)にあると思っていた僕は、スローカーブを得意技にしていた。スローボールにバッターが力任せのスイングで空振りするさまを見るのが快感だった。
しかし、当初三振がとれたスローカーブが、打たれるようになってきた。投げ続けてコツをつかみ、威力は増しているはずなのに、どうもフに落ちないと感じていたのだが……ある時、年上の仲間に「おまえ、スローカーブを投げるときニヤつくからわかるんだよ」と指摘されて、「ああ、そういうことだったのか」と合点がいった。変化球も投げる前に悟られてしまえば狙われて思うつぼになりかねない……曲がり具合=威力という単純なものではないということに、ようやく気がついた。
変化球のメカニズムについては色々考えていたのに、そのあたりのことに気がつかないのはなんとも間が抜けていて幼稚なところである。

僕は本式の野球をしたことはなく、したいとも考えたことはなかったが、自由気ままな野球もどきの遊びは、色々な思いつきを試すことができたので、あれでなかなか楽しかった。



☆あれこれ考えたもの…
ハートに乾π/面積の思ひで
幻と消えた大発明/永久機関の夢
重力エスカレーター
「ピタゴラスの定理」の思いで
ヒーロー的宙返り


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