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境内の座敷童子(頭の体操)

01境内の座敷童子

座敷童子の謎
子どもたちが遊んでいると、いつの間にか1人増えている。しかし、どの子が新たに加わったのか誰にもわからない……。この《謎の「+1」》が座敷童子である。
「顔ぶれは同じなのに人数だけ増えている/あとから加わったのがどの子なのか誰にもわからない」という現象はミステリアスでおもしろい。この《座敷童子現象》を演出するトリックがあるとすれば、どのようなものだろう……。
脳内シミュレーション(頭の体操)で思いついた着想を、簡略化した図を使って「おはなし」仕立てで記してみることにする。


境内の座敷童子
A君の小学校では「神社で遊んでいると座敷童子が現れる」という噂があった。境内にある木を利用して鬼ごっこ(木鬼)をしていると、いつの間にか人数がひとり増えているというのだ。それも奇妙な話だが、さらに不思議なことに、メンバーはみな最初からいた顔ぶれで、だれが後から加わった子なのか誰にもわからないらしい。神社の裏には墓地があって、死んだ子どもの霊が、神社で遊ぶ子どもたちに加わりたくなって現われるのだろうなどと言われていた……。
この噂を確かめるためにA君は学友たちを引き連れて、問題の神社にやってきた。そして一行は木鬼(木にタッチしている間はオニに捕まらない鬼ごっこ)を再現して境内の木に散らばった……。
説明をわかりやすくするために内容を簡略化して──神社の境内には東西南北にそれぞれ図のように1列に木が植えられているとする。
02境内略図&配置
ここで木鬼遊びをしていると《座敷童子が現れる(人数が1人増える)》というのだが、誰も新顔に気づかないというから、《座敷童子が現れた》ことは人数の変化で確認するしか無い。しかし境内の中心には建物があるためその反対側までは目が届かない。そこでA君たちは手分けをして境内の子どもたちの数を確認し合うことにした。4つの班に別れ、東・西・南・北のどの側で遊ぶかを決めて、各自がカバーするエリアを出ずに、そこにいる人数を確認し合うのだ。
子どもたちはカバー・エリア内で移動できるが、その動きも簡略化して──イチョウ(黄)の木にタッチしていた子が1人、時計回りで隣の木に移動したとする。この移動のプロセスを1つずつ順を追って確認していくと……。
03A北側班図解
04B東側班図解
05C南側班図解
06D西側班図解
07座敷童子準備
08座敷童子出現
──いつのまにかひとり増えている!?
これが、《座敷童子現象》を成立させるトリックとして思いついたもの。
バレバレかもしれないが、「ひとり増えたように見える」のは、重複カウントによるもの。正方形の角にあたる木にいる子は重複してカウントされており、このエリアに移動した子がダブってカウントされることで数が増える──というしかけ。4つの班(正方形の辺上)に「それぞれ10人」というと、なんとなく全体で40人いるような錯覚をしがちだが、今回の配置では子どものは全部で31人しかいない。班(辺)内で移動しても班(辺)内のカウントは変わらないが、一番端(角)に移動すると、そこを共有するとなりの班(辺)内のカウントが加算されるというわけだ。

(配置する子どもの代わりに)碁石などを使って披露するなら──碁石の移動を繰り返し、その動きの中で重複ゾーン(角)に碁石を置くことを行えばバレにくいかもしれない。しかし、図解でそれをやると解説が煩雑になってわかりにくくなってしまうので、今回はこんな形で着想をまとめてみたしだい。


座敷童子の怪!?
僕が座敷童子について知ったのはいつ、どのような状況でだったかは覚えていない。ただ、「子どもたちが遊んでいると、いつのまにか1人増えている/それが誰なのかわからない」という現象が不思議で「増えているのに、どうして特定できないのだろう」と子供心に考えをめぐらせた記憶は残っている。
その後、座敷童子について民話などを調べてみたことがあったのだが……座敷童子の言い伝えはあちこちに残っているものの、最大の特徴であるはずの「いつのまにか1人増えている/それが誰なのかわからない」という《座敷童子現象》については、まったく見つけることができなかった。
《座敷童子現象》というユニークな特徴は、本来の伝承にはない「プラス1」の幻だったのか?──特徴自体が《座敷童子現象》のようで、不思議に感じたものである。

しかし、座敷童子といえば、いつの間にか1人増えているという《座敷童子現象》を思い浮かべる人は多いのではないか? この認識は広く浸透しているように思う。それでは、《座敷童子現象》の由来・起源はどこにあるのだろう?
さらに調べてみたところ……どうやら宮沢賢治が1926年に雑誌『月曜』2月号で発表した『ざしき童子(ぼっこ)のはなし』という童話がその起源っぽい。この作品には座敷童子にまつわる4つのエピソードが記されているのだが、その中に次のような話がある。


「大道(だいどう)めぐり、大道めぐり」
 一生けん命(めい)、こう叫(さけ)びながら、ちょうど十人の子供らが、両手をつないでまるくなり、ぐるぐるぐるぐる座敷(ざしき)のなかをまわっていました。
 どの子もみんな、そのうちのお振舞(ふるまい)によばれて来たのです。
 ぐるぐるぐるぐる、まわってあそんでおりました。
 そしたらいつか、十一人になりました。
 ひとりも知らない顔がなく、ひとりもおんなじ顔がなく、それでもやっぱり、どう数えても十一人だけおりました。
 そのふえた一人がざしきぼっこなのだぞと、大人が出て来て言いました。
 けれどもだれがふえたのか、とにかくみんな、自分だけは、どうしてもざしきぼっこでないと、一生けん命眼(め)を張(は)って、きちんとすわっておりました。
 こんなのがざしきぼっこです。


この作品──宮沢賢治の『ざしき童子のはなし』によって《座敷童子現象》が広く認識されるようになったのではなかろうか?
民話に語り継がれてきた地味なエピソードに比べ、賢治の童話で紹介された《座敷童子現象》は謎めいていて印象深い。もし伝承の中に《座敷童子現象》の要素があったとすれば、民話としてもっと広く伝播していてよかった気がする。ということは、世間に浸透している座敷童子の特徴──《座敷童子現象》は賢治の創作だったのかもしれない。

いずれにしても、「いつのまにか1人増えていて、それが誰なのかわからない」という《座敷童子現象》は不思議で心に残った。どう解釈すればそんな現象が成立しうるのか──そんなアプローチで得た着想から、僕も『病院跡の座敷童子』という作品を書いたことがある(*)。今回の【境内の座敷童子】とはまた別の着想だったが……《座敷童子現象》をどのように成立させるか──というテーマは創作のモチーフとしても魅力的だと考えている。


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