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アメンボの語源・由来に疑問

アメンボは雨ん坊!?飴ん坊?飴棒!?
アメンボはよく知られた昆虫のひとつだろう。とはいっても、特に人気があるとも思えず……生態について詳しく知っている人はむしろ少ない気もするけれど……とりあえず知名度に関してはかなり高いのではなかろうか?
「アメンボ」という名前は「雨ン坊」からきているのだろう──僕は子どもの頃からずっと、そう思い込んできた。プールや池などの水面に波紋がまばらに広がるのを見て雨が降ってきたことを知ったり、水面に波紋が広がるのを見て「雨かな?」と思ったらアメンボだった──ということがあったので、水面に波紋を広げる「雨」と「アメンボ」が僕の中では結びついていた。なので自然に「雨ン坊」なのだろうと解釈し、疑うことなくそう信じ続けていたのだ。

しかし、後に知ったところによると、【アメンボ】の語源・由来は「雨」ではなく「飴」だという。カメムシ目に属すアメンボにも臭腺があって、発せられるニオイが飴に似ていることから「飴ん坊(飴の坊)」➡「アメンボ」、もしくは体が細長いことから「飴棒」➡「アメンボ」と呼ばれるようになったらしい?
Wikipedia によると【アメンボ】の語源については《本来の意味は「飴棒」で、「飴」は、臭腺から発する飴のような臭い、「棒」は体が細長いことから。「雨」と関連付けるのは民間語源である。》と記されている。

僕が信じていた「雨ン坊」語源説(?)は民間語源(語源俗解)だというのが、通説らしい。ただ、僕にはアメンボの語源が「雨」ではなく「飴」由来だというのが、どうもフに落ちない……。
アメンボはいつからそう呼ばれていたのか知らないが……語源が「飴」由来だとすれば、最初にそう呼んだ人は、アメンボの臭腺のニオイについて知っていたことになる。
アメンボの姿は多くの人が目にして知っているだろう。しかしそのニオイを確かめた人となると、はたしてどれだけいたものか? 「飴に似たニオイがする」と知らなければ、「飴」由来の呼び名をつけることもできない。
仮に、この虫の臭腺のニオイについて知っていた人が命名したとしよう。むかし昆虫学者のような人がいて、ニオイの特徴から「この虫を【飴棒】(もしくは【飴ン坊】)と命名する」と宣言していたなら──そうした文献が残っているのなら、語源が「飴」由来だと言えるのかもしれない。しかし、それほど昆虫に詳しい人が命名するなら……はたして、この虫に「飴のようなニオイ」にちなんだ名前をつけようと考えるだろうか? アメンボの特徴は、なんといっても水面で生活していることだろう。アメンボは水面に落ちた獲物が広げる波紋によってその位置を知るらしい。広げた脚がアンテナの役割りを果たし伝わってくる波形から震動源を見極めるという。水面という特殊な環境をうまく利用した昆虫といえる──この虫の特徴から名前をつけるとしたら「飴に似たニオイ」よりも「水面」もしくは「水」にちなんだものにするのが自然ではないだろうか。アメンボは漢字で「水黽」(「黽(ボウとも読む)」には「かえる・あおがえる」の意味もある)や「水馬」と記されることもあるというが、これなら納得できなくはない。

誰もが見たことのある、水面に浮かぶ姿がお馴染みのこの昆虫に、ほとんどの人が知らない「飴に似たニオイがする」というマイナーな特徴で名前をつけるたりするものだろうか?……そんな疑問が僕にはある。
アメンボをとって食う風習でもあれば「飴のようなニオイ」に気づく人も多かったろうから「飴」由来で名付けられた可能性もあるかもしれないが……ヒトの生活と利害的な接点が薄いアメンボのニオイなど多くの人は関心が無かったろう。どんなニオイがするかなど知らずにアメンボを見ていた人の方が圧倒的大多数だったはずだ。そうした人たちの中から呼び名が生まれたと考えるのが自然であり、その場合はもちろん「飴」由来ではないことになる。
僕が子どもの頃に感じたように、《水面に広がる波紋が雨のようだ》という連想から「雨ン坊」と呼ばれるようになった──と考える方が自然な気がする。水面にアメンボが広げる波紋を見て「雨かな?」と思ったことがある人は決して少なくないはずだ。少なくともアメンボのニオイを嗅いだことがある人よりは、はるかに多いに違いない。

それではなぜ、「飴」由来が正しいとされているのだろう?
僕は根拠となる元ネタ情報を知らないので、想像だが……アメンボのことを記した古い文献に【飴棒】もしくは【飴ン坊】という表記があったからではないか? アメンボについての最古の記述が【飴棒】もしくは【飴ン坊】となっていたなら、(臭腺のニオイと結びつけて)名前の由来が「飴」にあるという解釈がでてくるのもうなずける。
しかし前に記したよう「飴」由来の名前がつけられたとは考えにくい……。もし、古い文献に【飴棒】もしくは【飴ン坊】の表記があったとしたら……それは単に《当て字》だったのではないだろうか? 多くの人が目にするこの虫には「アメンボ」という呼び名がすでにあって、これを記録するさいに「雨ン坊」と記せば、「雨」は「あめ」だけでなく、「あま」や「ウ」とも読めてしまうから──誤読を防ぐために「あめ」としか読めない「飴」を当てたのではないか?(※追記訂正:「飴」にも音読みの「イ」「シ」があるので、不自然な気はするが誤読の可能性はある)
あるいは学者(?)がこの虫について聞き取り取材をしているさいに「この虫を何て呼んでいるの?」「アメンボ──飴玉の《飴》に用心棒の《ボ》」みたいなかたちで「音」の説明があって、そのまま記録されたとか……そんな可能性だってあるかもしれない?

僕にはそんな理由で「飴」ではなく「雨」由来なのではないかという思いが捨てきれないのだが……アメンボの語源を検索してみると、ネット上には「飴」由来だとする情報がたくさんヒットする。しかし、その多くは自分でそのニオイを確かめたことがない人のもののようで、おそらく同じ情報源からの孫引き情報ではないかという気がする。ちなみに僕もニオイを確かめるためにカメムシを嗅いだことは何度かあるが(*)アメンボのニオイを嗅いだことはまだ無い。一般的にはもちろん、あるていど昆虫に興味を持っている人たちの中でもアメンボのニオイを確かめた人は、そう多くないのではないだろうか? そんな薄い情報が語源になり得るのだろうか……?

童謡『黄金虫(こがねむし)』に歌われているコガネムシはチャバネゴキブリであるという説があって、これが色々なメディアでも取り上げられて拡散したことがあったが、僕はゴキブリ説には懐疑的でヤマトタマムシ説を支持している(*)。
カマキリの雪予想(カマキリは積雪量を予知して雪に埋まらない高さに卵を産む)という俗説が科学的に証明されたかのような誤った情報が拡散して、それが広く信じられてしまったということもあった。

01ゴキブリ説3本再
02カマキリの雪予想

「アメンボ」の由来が「雨」ではなく「飴」だという話も、どうなのかなぁ……と納得しきれずにいる。どこかにあった【説】が孫引きで拡散して「それが正しい」という共通認識が生まれてしまったという可能性はないのだろうか?
とはいっても、僕も「飴」由来説を完全否定するつもりは無いし、できるとも思っていない。ただ「雨」由来の方が、なじむ気がする……今のところ個人的には、そう考えているというだけのことだ。
そもそも語源というのは、どれが正しいと言い切れないものが多いのかもしれないが……それでも、つい、あれこれ想像をめぐらせてしまうのである。

【追記】mixiの方に投稿した同記事に虫屋さんから、《雨上がりの水たまりに浮かぶ姿から➡雨ん坊》ではないかというコメントをいただいた。そうかもしれない。その方が「飴」由来説よりも、はるかに自然だし納得しやすい。

アメンボを嗅いでみた:飴の匂いは本当なのか?

【ヒバカリ】名前の由来考
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