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イチモジフユナミシャクのキューティクル

《飛べない空色の翼》をもつ妖精!?



サクラの幹にとまっている可憐な昆虫はイチモジフユナミシャクのメス。冬の一時期にしか見られないフユシャク(冬尺蛾)の1つ。僕の中では、この時期の「主役」的存在なので、ついついホストのサクラを探してしまう。


なんとも不思議な姿をしている。オシャレなミニサイズの翅は退化したもので、メスは飛ぶことができない。《飛べない空色の翼》をもつ妖精──そんな雰囲気もないではない。前翅の淡い水色(空色)は、イチモジフユナミシャク♀がよく見られるサクラの樹皮に散在する地衣類の色あいによく似ている。


イチモジフユナミシャク♀を探してサクラッチ(桜ウォッチ)をしていると、地衣類に反応してしまうこと(地衣類がイチモジフユナミシャク♀に見えてしまうこと)があるが、これは幹上のイチモジフユナミシャク♀が地衣類に見えるということの裏返し──鳥などの捕食者に対して隠蔽擬態の効果もあるのだろうと考えている。


ちなみにイチモジフユナミシャクのオスは形も色もメスとはずいぶん違っており、枯葉色をした普通の蛾といった感じ。


オスも交尾のさいにはメスがとまった木にやってくるようだが(夜行性)、この画像↑のように日中、木の幹にとまっているオスは(メスに比べると)少ない。昼間のオスは落葉の中に隠れているようだ(*)。
イチモジフユナミシャクが見られるのは(僕のフィールドでは)12月後半~1月初め頃──種としての成虫活動期間も短いが、個体としてのメスの見頃期間もめっぽう短い。新鮮なメスはぷっくら張りのある腹をしていてプロポーションも良く、鱗粉も整っていて美しいのだが、産卵後の♀はしおれて体型が変わってしまう。産卵前の比較的新鮮と思われる個体であっても、鱗粉は荒れやすく、強風にさらされたりすると体表面がザラついた感じになってしまう。
イチモジフユナミシャク♀は美しいけれど痛みやすい──そんな印象があるので、見られる時期に美しい姿のメスを見ておきたいという気になる。

イチモジフユナミシャク♀のキューティクル的鱗粉



サクラの古木でみつけたイチモジフユナミシャク♀。ぷっくら張りがあって美しいプロポーションの個体だ。別の角度から──、


アップでも色々撮ってみた。




プロポーション・色・模様とも良い感じのおそらく新鮮なメスだったのだが……この日は風が強く、そのためだろう──鱗粉の状態がじゃっかん荒れていた。


鱗粉がめくれ、痛んだ髪のキューティクルのよう↑。大晦日に見た美麗個体の整った鱗粉↓と比較すると違いがわかる。


鱗粉コンディションの違いは、健康な髪と痛んだ髪(ダメージヘア)のキューティクルの違いのよう。整った鱗粉の♀は「健康な髪」のようなツヤがあり、光のかげんできらめいて見える。この鱗粉コンディションの良い大晦日の美麗個体は──↓。


元日に見た新鮮なイチモジフユナミシャク♀↓。


これが産卵後の個体では、ずいぶん印象が変わってしまう。


今シーズンも産卵後の個体が増えてきた。やがてイチモジフユナミシャクも姿を消すのだろう。発生時期以外では、もちろんサクラの幹をいくら探したところで、その不思議な姿を見ることはできない。いないのがあたりまえの時期になると、本当にここ(桜の幹)に、あの不思議で可憐な生き物はいたのだろうか……と実感が薄れていき「《飛べない空色の翼》をもつ妖精」の幻想感を深めることになる。そして、翌冬、再会したときに「やっぱり、こんな生き物がいたんだなぁ」と実感するのである。



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コメント

No title
水色のコートを着たこの子に会いたいですが、寒いので暖かく成ってからだと居ないんですね。
No title
> みずきさん

残念ながら、冬の一時期限定品(?)なんです。
地域によっては若干発生時期にズレはあるだろうと思いますが。
フユシャクには色々種類があって、これから見られるものもあります。

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