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パリコレならぬハリコレ~ハリサシガメ幼虫:擬装の意味

パリコレならぬハリコレ!?ハリサシガメの宝飾コレクション



土粒で体をおおい隠し、さらに背中に色々なモノをデコレーションする珍虫ハリサシガメの幼虫。個体ごとにデコ素材やそのレイアウトが異なるので、個性あふれる作品(!?)を鑑賞するのもおもしろい。


この幼虫はダンゴムシとメタリックな輝きを放つ宝飾コレクションを身につけていた。


メタルグリーンに輝く宝飾コレクションは昆虫の体の一部のようだ。以前にも同じ宝飾コレクションをデコったハリサシガメ幼虫を見たことがあった……ということで過去の画像の中から、ハリサシガメ幼虫のコレクション──パリコレならぬハリコレをいくつか。


デコレーション素材は、捕食後のアリの死骸からゴミのようなもの、金属光沢を放つきらびやかなコレクションまで色々。先日記事にした羽化殻も銀色の装飾品をつけていた↓。


まるでアクセサリー!? 《オシャレをする昆虫》──なんていうキャッチフレーズは大げさだろうか。


こちらのデコ・コレクション↑はカメムシ系の頭部だろうか? 同個体を反対側から撮ったもの↓。


メタリックな宝飾パーツも目をひくが、「でかい頭部」のコレクションも、怪しげなオーラを放っている!? ハリサシガメ幼虫自身の頭部は土粒に隠され、触角や眼くらいしか見えないので、自然と視線はデコられた巨大頭部に誘導される。


ハチに擬態した昆虫は多いが……強面のアシナガバチ頭部をかかげていると、何か御利益(ごりやく)があるのだろうか? 「虎の威を借る狐」ならぬ「アシナガバチの威を借るハリサシガメ幼虫」みたいなこと──アシナガバチ(の頭)に怖れをなして撤退する天敵がいれば大したものだ。しかし、このハリサシガメ幼虫が、たまたま手に入れた素材を警告効果と結びつけるのは、いささか強引かもしれない。


まだ小さめのハリサシガメ幼虫がデコっているのは大型アリの頭部↑──これもなかなかインパクトがある。ハリサシガメは成虫も幼虫もアリを捕食するが、看板の(?)大型アリは、この小さなハリサシガメ幼虫がしとめたものでないだろう。サイズ的に獲物としては大きすぎるし、触角が脱落した頭部だけ──という損傷ぶりから新鮮な死骸とは思えない。
「でかい頭部」の周囲にあしらわれた小型のアリ──全身そろっているのが、このハリサシガメ幼虫の捕食後(狩って体液を吸った後)の死骸だろう。
ハリサシガメ幼虫は本人(本虫)がしとめたとは思えない大きな昆虫パーツをデコっていることがよくある。


それにしても、ハリサシガメ幼虫はどうしてわざわざこんなものをデコるのだろう?
しとめた獲物をかかげて自分の力を誇示し、見栄を張って自分ではしとめられない大物までもデコっているのだろうか? だとしても何のために?
そもそも、こうしたデコ素材をハリサシガメ幼虫はどこで調達してくるのだろう?
アリのゴミ捨場(?)から、アリが廃棄したものを拾ってくるのではなかろうか──僕はそう考えている。ハリサシガメ幼虫が背負っている昆虫パーツは分解されており中味はきれいに無くなっていたりする──これはアリが解体&利用したあとの残骸だからだろう。
ハリサシガメ幼虫のデコ・コレクションの中にはアリの繭(抜け殻)と思われる物が混じっていることもあって、「アリの廃棄物」であることを示唆しているように思われる。


それでは、なぜアリの廃棄物をデコるのか?

ハリサシガメ幼虫のコレクションのうち、自力で狩ったアリの死骸はのぞいて……「アリの廃棄物」と思われる昆虫の残骸などをデコるのはなぜか?
これは、獲物のアリに警戒されることなく近づくための擬装だと僕は考えている。
ハリサシガメは成虫も幼虫もアリをエサにしている。しかし強靭なアリを相手にまともに闘いを挑むのは危険が大きい。アリたちに気づかれ、集団で反撃されたらひとたまりも無いだろう。非力なハリサシガメ幼虫が狩りを成功させるには奇襲攻撃──アリたちに気づかれずに近づき不意打ちをかけるしかない。そこで、アリが廃棄したゴミをまとい、そのかげに隠れてアリに近づいたり待ち伏せしたりするのではないか……。

アリは一般的に視力はあまり良くないという。接触してニオイで相手を判断しているらしい。ハリサシガメ幼虫が土粒をまとうのは、アリの接触──触角タッチを阻むための擬装コーティングで、アリの廃棄物をまとうのは、不審物を確かめに来たアリに「用済みのゴミ」と誤認させ、警戒を解除するための擬装ではないかと僕は考えている。

昆虫死骸はデコるのに、自分の脱皮殻は外そうとする!?

このように、色々な昆虫の死骸をデコるハリサシガメ幼虫だが、ときには、自分の脱皮殻まで背負っていることがある。


セモンジンガサハムシの幼虫なども自分の脱皮殻を背負っているので、カムフラージュとして自分の抜け殻を背負うことはめずらしいことではないのだろう。だが、ハリサシガメ幼虫の場合、自分の抜け殻を積極的にデコったわけではなく、むしろこれを外そうとする。
というのも、ハリサシガメは脱皮のさいに、古い殻を脱ぎながら古い殻についていたデコ素材を背負って出てくる。──その結果、引き継いだデコ素材に脱皮殻がくっついてきてしまうということが起きるのだ(それが上の画像)。ハリサシガメ幼虫はこれを嫌って懸命に脱皮殻を剥ぎ取ろうとする。




自分の抜け殻をつけていたのでは、アリの触角タッチで獲物や攻撃対象として認識されてしまう危険がある──そう考えると、自分の抜け殻をデコ・コレクションから外そうとするのもうなずける。
抜け殻がアリたちのターゲットになるのか……と思ったこともあるが、実際にカマキリの抜け殻にアリがたかることもある↓。


アカスジキンカメムシも脱皮や羽化のさいに抜け殻落としをするが、これも1つにはアリ対策──カメムシの生活圏もしくは脱皮&羽化圏にアリを呼び込まないための予防措置行動ではないかという気がする。
今年5月の観察では、羽化後のアカスジキンカメムシが羽化殻落としをする前にアリが抜け殻を嗅ぎつけて来たということもあった。


アカスジキンカメムシ新成虫はアリを嫌って羽化殻落としをせずに撤退。残された抜け殻はアリたちによって持ち去られた。


抜け殻はアリを呼ぶ(アリの狩りの対象になる)──ということを考えると、アカスジキンカメムシが抜け殻落としをしたり、ハリサシガメ幼虫が、デコ素材から自分の抜け殻だけを外そうとするのも、もっともなことだと納得できる。

捕食したアリの死骸をデコる意味



アリが廃棄した虫の残骸をデコるのは、アリにゴミと誤認させ警戒を解くため──と僕は解釈しているわけだが、それでは、ハリサシガメ幼虫自身が捕食したアリをデコることには、どんな意味があるのだろう?
ハリサシガメ幼虫は、個体によって同じ種類と思われるアリを集中的にコレクションしているものがいる。これは同じ巣の近くで同一家族のアリを狩り続けているということなのかもしれない。




アリの体表面は炭化水素の薄膜で覆われ、巣ごとに微妙にニオイが異なっているそうだ。このニオイによってアリは仲間(同巣)と敵(他巣)を区別するという。ハリサシガメ幼虫は同じ巣のアリをコレクションすることで、同巣の仲間のふりをしてアリに近づき、狩りを効率的に行うことができるようになる──その結果、同巣のアリのコレクションはさらに増え、同巣のアリに近づきやすくなる──デコ・コレクションのアリが揃いがちになるのには、そういった狩りのスタイルがあるからではないかという気もする。

ハリサシガメ幼虫の擬装行動:3つの意味

ハリサシガメ幼虫の擬装行動には3つの意味があるのではないか……すなわち──、
①土粒による全身コーティング……ニオイで相手を認識するアリの触角タッチをブロックする擬装。
②アリの廃棄物のデコレーション……アリに「用済みのゴミ」と誤認させ、警戒を解除させる擬装。
③自力で狩ったアリの死骸のコレクション……同巣のアリの警戒を解くため。またはアリの注意をハリサシガメ幼虫本体からデコったアリにそらす陽動擬装(不意打ちをかけてしとめやすくなる)。

今は、こんなふうに考えているしだい。


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