FC2ブログ

クロオオアリを狩ったハリサシガメ幼虫

ハリサシガメ幼虫:狩ったアリは必ずデコるわけではない



石垣上でハリサシガメの幼虫が、捕えたクロオオアリの体液を吸っていた──といっても、この画像↑では何がどうなっているのか、わかりづらい!?
ハリサシガメの幼虫は土粒をまとい狩った獲物の死骸などを背負って擬装するユニークな捕食性カメムシで、獲物はアリ専門という食性も変わっている。食事シーンはそうした特徴・生態の一端を物語る絶好の場面なのだが……ただそのまま撮っても(擬装のためどちらを向いているのかも判りづらく)状況が伝わりにくくなりがちだ。
撮影アングルを模索し、同じシーンをハリサシガメ幼虫の右前方向からアップで撮ったもの↓。


これがおそらく一番「絵になる角度」!? 突き出した触角の根元ふきんにはハリサシガメ幼虫の黒い眼がのぞいている。その下に横たわっているのはクロオオアリだろう──岩田久二雄氏が著書『昆虫を見つめて五十年(II)』の中でハリサシガメ幼虫が避けたとする大型のアリだ。そのクロオオアリは倒され、首筋あたりに鋭い口吻が差し込まれている。


ハリサシガメの捕食シーンは度々目撃しているが、キレイな(わかりやすい)画像で記録するのは意外に難しい。土粒をまとっているので、土の上ではボディーラインがわかりにくくなってしまうし、石垣の上では石の隙間の方に頭を向けられてしまうと口元が見えなくなってしまう。狩りのときは前脚と中脚の4本の脚を使って獲物を押さえ込むのだが、狩ったアリが小さいと脚の陰に隠れてよく見えない。獲物が大型のアリでも、脚や体に付着した土粒がジャマしてよく見えないことが多い。今回は「比較的良く撮れた画像」となったのではないかと思う。
このあと、食事を終えたアリの死骸を背中にデコるシーンまでを記録できれば申し分ない……そう思って、その時を待った。体液を吸いはじめると脚は獲物から離すが、口吻を引き抜いたり位置を変えて刺し直したりする時には前脚と中脚で獲物をコントロールする。


食事が終われば、アリの死骸は後脚を使って背中に盛りつけられる──と(これまでの観察齢から)予想していたのだが……このハリサシガメ幼虫は擬装行動をとらずにアリの死骸から離れてしまった↓。


これまで、ハリサシガメの幼虫は捕食したアリの死骸は基本的にはデコるものだと思っていたが……必ずしもそうではないらしい。大型のアリを貼り付けるのは大変そうだし積載量の関係で(?)荷崩れを起こしそうな盛りつけは見合わされることもあるのかもしれない。
しばらく待ってみたが、このアリをデコる様子はみせず。そのうちヒガシニホントカゲが現れ大接近するが、例によってハリサシガメ幼虫には全くの無反応。


この石垣に多いヒガシニホントカゲが多く、ハリサシガメとニアミスすることは珍しくない。他の場所でも──↓。




こんなシーンはよく見かけるが、昆虫ハンターのヒガシニホントカゲもハリサシガメ幼虫には関心を示さない。
この石垣では、ヒガシニホントカゲの他にニホンカナヘビやニホンヤモリ、アオダイショウを見かけることもある↓。


ハリサシガメ幼虫のわかりにくいシーン・他



石垣では土がたまった部分もあって、そんなところにいるハリサシガメ幼虫は見つけにくい。体をおおう土粒が隠蔽効果を発揮している。


いちおう体の部位を記すとこんな感じ↓。


擬装素材でボディーラインを隠したハリサシガメ幼虫は、一見どっちを向いているかわからないことがある。つきだした触角や脚の位置から体の向きの見当をつけることになるが、デコったアリや虫の死骸からも触角や脚が突き出ていることもあって、錯誤しやすい。
昆虫学者の岩田久二雄氏が著書(『昆虫を見つめて五十年(II)』(朝日新聞社・刊/1978年)の中で、ハリサシガメ幼虫について《吸血をおわるとサシガメは不器用なかっこうをしながら、前肢でその吸殻を自分の背中に押しあげた》と記しているが、《前肢》は間違いで、本当は「後脚」だったのだろうと僕は考えている。ハリサシガメ幼虫の擬装行動を何度も観察しているが、デコ素材を背中に盛るのには決まって後脚が使われていた。岩田久二雄氏は、観察中にハリサシガメ幼虫の向きを見誤って「後脚」を《前肢》だと錯誤してしまったのだろう。
やはりハリサシガメ幼虫は、土の無い石垣の上にいるとわかりやすい↓。


ちなみにこれ↑は冒頭のクロオオアリを吸っていたのと同じ個体(別日)。おそらく終齢(5齢)幼虫ではないかという気がする。
一方、同じ石垣では、まだ小さなハリサシガメ幼虫が混在している。


体の小さなハリサシガメ幼虫は、狩るアリも小さい。小型のアリの通り道でたたずむ小さな個体↑。この個体は後脚を腹端のあたりでしきりと動かしていたが、もしかするとペースト状のフン(接着剤)を塗り付けてデコ素材を安定させようとしていたのかもしれない。
石垣上で見られた大きさの違うハリサシガメ幼虫↓。


ヒゲナガサシガメ



ハリサシガメが見られる雑木林ふちのエノキの葉の上にいたヒゲナガサシガメ(成虫)↑。遠目にはカラフルなガガンボっぽく見えた。同じサシガメ科でもハリサシガメとはずいぶん雰囲気が違う。ヒゲナガサシガメは樹上性のサシガメらしい。幼虫は冬に擬木で見かけることが多い。3月に撮影していたヒゲナガサシガメ幼虫↓。


HOかBOか?マスダクロホシタマムシ





やはりハリサシガメ・ポイントの近くのツツジの葉の上にいたマスダクロホシタマムシ。小ぶりながら美しく、時々見かけるのだが……すぐ飛び去るので、撮り逃してばかりいる虫という印象がある。
翅鞘(上翅)に黒っぽい紋が点在しているので、和名の「クロホシ」は「黒星」なのだろうが……これが「クロホシ」だったか「クロボシ」だったか、いつも記憶が怪しくなって確かめることになる。同じ「黒星」の入った昆虫でも「クロボシツツハムシ」など「クロボシ」が採用されているものもあってややこしい。「黒星」に限らず標準和名では連濁(2つの清音の語が組み合わされた語で後続の清音が濁音化する)になっているものといないものが混在しているが、命名するときに統一性のある規則を設けられなかったものか……と標準和名を確かめるたびに、いつも思ってしまう。


スポンサーサイト



コメント


管理者のみに表示

トラックバック