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アカスジキンカメムシの羽化他

アカスジキンカメムシの羽化(完全版)

羽化後の新成虫による《羽化殻落とし》(後述)を観察すべくアカスジキンカメムシを探していると、ツツジの葉の裏に、うってつけ(理由は後述)のターゲットを発見。遠目には2匹並んだアカスジキンカメムシ終齢(5齢)幼虫に見えるが、1つは羽化後の抜け殻(羽化殻)で、もう1つはミの入った終齢幼虫だった。


アカスジキンカメムシはふだんは頭を上にしてとまっていることが多い。しかし、脱皮や羽化のときは頭を下にする。この終齢幼虫は頭を下向きにとまっていたので羽化が近いと判断。羽化の流れで《羽化殻落とし》までを記録できれば申し分ない──ということで注目していると、腹を上下に動かしたり、ピクリと震えるような動きが見られはじめたので、いよいよ羽化が迫ってきていると感じた。
ちなみに幼虫の黒っぽい部分(鈍い金属光沢がある)は硬い組織で、白い部分は軟らかい組織。成長にともなって広がるのは白い部分で、そのため脱皮後は黒い模様が詰まって見え、羽化(次の脱皮)前は広がって(白い部分の面積が多く)見える。この白い部分は抜け殻では半透明になる。この時点で見えている「白」は半透明の組織越しの新成虫の体だということが、羽化が始まるとわかる。


終齢幼虫の背中が割れて羽化が始まった。古い殻の腹端の中で新成虫の腹が移動して行くのが半透明の組織越しに確認できる。画面隅の数字は撮影時刻(時:分:秒)。


触角や脚がゆっくりと引き出されていく。白い糸のようなものはセミの抜け殻でもみられる気管だろう。


触角、前脚と引き抜かれ……、


中脚・後脚も引き抜かれていく。


腹端で体をささえ、逆さのまましばらくじっとしているが、やがて葉をつかみ、


腹端を抜いて羽化殻からの離脱を完了。


離脱した新成虫は、向きを変え(頭を上に向け)抜け殻と対峙する形になる……と予想していたが、カメラの方を見ると(?)反対向きに方向転換して……。


若干カメラを遠ざけるような形で上を向いて安定した。──と、ここまでで「羽化」は完了(体色か本来のものになるまでには更に時間がかかる)。羽化するモデルを見つければ羽化のようすを撮影することは難しくない。難関はこのあとの「本来なら基本的には行われるだろうと思われる《羽化殻落とし》」──これを無事に記録できるかだ……。

《羽化殻落とし(抜け殻落とし)》とは…

羽化した新成虫は羽化殻の近くでしばらくじっとしているが、(ある程度体が固まってくると?)抜け殻を攻撃して落とす──アカスジキンカメムシでは脱皮後の幼虫を含めてそんな行動を何度も確認していて、僕はこれを(勝手に)《抜け殻落とし》と呼んでいる(最近、羽化に関しては《羽化殻落とし》を使うことにした)。《寄生蜂や寄生蝿・アリなどを呼び寄せかねない手がかり(抜け殻)を生活圏の外へ破棄する意味合いがあるのではないか》と考えているのだが、これは単なる個人的な想像にすぎない。
今回の羽化観察の舞台となった葉の裏には、抜け殻が残っていた。《羽化殻落とし》が行われないこともあるということだ。
まだ体色が完全に整っていない新成虫が見つかると、羽化が行われたはずの近くの葉の裏には抜け殻が見つからず、直下に落ちていることが多いことから(風などで飛ばされたのなら直下には落ちない)《羽化殻落とし》は基本的には行われるのだろうと考えているが、葉の裏に放置された羽化殻もないわけではない。
以前観察した例では、羽化後に飛来したテントウムシに接触した新成虫が抜け殻を残して逃去った(その後戻ってこなかった)ということがあった。また、落とす瞬間を記録しようと近くでスタンバっていると警戒してなかなか《羽化殻落とし》を始めないこともある(その場を離れた間に抜け殻が落とされている)。
さて、《羽化殻落とし》について関心を持つようになって抱いていた疑問がある。「新成虫が羽化した葉の裏に、他の個体の羽化殻が残されていたら……新成虫はどうするのか?」ということだ。「自分の羽化殻だけを落とすのか? 自他とは関係なく近くにあった1つを落とすのか?(1つ落とせば行動欲求は解消するのか) それとも葉の裏にある別の羽化殻もすべて排除するのか?(羽化殻がある限り行動欲求は解消しないのか) あるいは全てを放置するのか?」ということだ。《羽化殻落とし》に生存率を高める意味があったとしても、昆虫がそれを理解して行っているとは思えない。羽化殻を落とすという行動が、どういうシステムで成り立っているのか興味がある。
「新成虫が羽化した葉の裏に、もし他の個体の羽化殻が残されていたら……」というシミュレーションを想像していただけに、今回、羽化殻が残されている葉の裏で羽化を始めようとしている幼虫を見て、これは「うってつけ」だと思ったわけである。

説明が長くなったが……そんなわけで、今回羽化を観察したアカスジキンカメムシの《羽化殻落とし》には期待が高まる。
じっと近くでスタンバっていると警戒して《羽化殻落とし》を始めないかもしれないので、ときおり経過記録の画像を撮るときだけ近づき、あとは少し離れて見守ることにした。
が……この「時々近づく方式」が良くなかったのか……新成虫は半分隠れたような位置で2時間ほどほとんど動かなかった。やがて抜け殻を残し、葉の表側へ移動してしまったので《羽化殻落とし》は、もう行われないだろうと判断してその場を離れた。


羽化殻が2個あったために《羽化殻落とし》が発動しなかったというより、観察されて警戒してのことではないかという気がする。
念のため2時間後に戻ってみるが、やはり羽化殻は葉の裏に2つ残されたままだった。


このとき「!?」と思ったのが、近くにいた別の新成虫と今回観察した新成虫の体色の整い方に違いがあるということだ。今回観察していた新成虫は、本来の体色であるグリーンの部分が前胸から整っているのに対し、別の新成虫では逆に前胸で遅れている。これまでどの個体も同じように変化して行くのだろうと思っていたが……ちょっと意外だった。

触れることなく《羽化殻落とし》!?



これは別の葉の裏で羽化中のアカスジキンカメムシ。


この角度からだと「縮れた翅」のようにも見える小楯板がしだいに伸びていくのがわかる。


葉につかまって腹端を外す。


離脱後、抜け殻と対峙する新成虫。


時折、触角を起こすので、《羽化殻落とし》に備えて接写の体勢をとるが……警戒してそのつど触角を倒して静止モードに戻ってしまう。


抜け殻の近くに留まっているうちは《羽化殻落とし》をする気がある(?)と判断して待ち続けていたのだが……。


新成虫は別の葉へと移動してしまった。どうしてとまっていた葉の表ではなく別の葉へ移動したのか、ちょっと不自然な気はしたが……じつは、この前後の画像にアリが写り込んでいた。不覚にも撮影中はアリに気づかず、新成虫が大きく離れてしまったので《羽化殻落とし》をしないと判断して観察を終了することに。




11時55分台に新成虫と抜け殻を入れた画像を数枚撮ってその場を離れた。羽化殻を引き剥がすアリの拡大画像はそのとき気づかずに撮ったもののトリミング。
観察を終了した15分後にのぞいてみると、新成虫は離れた葉にとまっていたが、羽化殻が消えていたので驚いた。そこで腑に落ちないまま状況の追加撮影。


新成虫が羽化殻を落としに戻って、また離れた葉の裏に移動したとも思えない……。離れた場所から触れずして羽化殻を落とす、アカスジキンカメムシの超能力か!?
アリが羽化殻を葉から外していたことに気がついたのは帰宅後、画像を整理している時だった……。
《抜け殻落とし》の意味について、抜け殻が残されているとアリをアカスジキンカメムシの生活圏に呼び寄せることになる──それを回避するためという可能性も想像していたが、実際にアリが羽化殻に集まることがあるのだということが確認できた。期待した《羽化殻落とし》は見られなかったが、これは予想外の収穫だった。
観察中に新成虫が離れた場所へ移動したのも、アリを嫌ってのことだったのかもしれない。

見てないところで《羽化殻落とし》は行われる!?

接写で撮影しようとすると、なかなか見せてくれない《羽化殻落とし》だが、監視していないととどこおりなく実行される?


葉の裏で羽化殻と対峙している羽化直後の新成虫。この場所は見づらく撮りづらいところだったので、継続的な観察対象から外した。その瞬間を見ることはあきらめて、2時間40分後にのぞいてみると、羽化殻はなく、新成虫が葉の表に出ていた。おそらく《羽化殻落とし》をしたあとに葉の表に移動したのだろう。《羽化殻落とし》の観察は、ちょっともどかしい……。



【追記】まだ体色が薄い羽化まもないアカスジキンカメムシ新成虫。ここで羽化したのだろう。しかしこの葉の裏に羽化殻はない。ということは、すでに《羽化殻落とし》が行われていたに違いない。見ていないと《羽化殻落とし》は速やかに行われる!?
一方、冒頭の羽化観察で《羽化殻落とし》が行われなかった羽化殻は3日後も、また葉の裏に残っていた。




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コメント

No title
こんばんは・・・
羽化殻落としの考察を興味深く拝見させて頂きました!

・・・試行錯誤の上に、カメムシに警戒心を持たせぬよう観察されたところが上手い!・・・と先ずは想いました!
さらに、凄い!と想ったのが、(アリの存在にお気づきになった)ところです!
この「何故、羽化殻を落とさなかったのであろう?に、アリの存在を発見されたのは衝撃的でした!」
アシナガバチ女王も巣を作る際、先ずアリの襲来への対策を考える・・・
「そうか~~~アリか~~~!」
「アリは、ハチにと並んで、昆虫界の強者に名を連ねるもの・・・」
「そうか~~~アリ対策!それありうるかも?」
星谷さんの観察からくる考察に、今日も、強い衝撃を受けた私でした・・・実に面白うございます・・・☆
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

生き物の生態について、あれこれ想像したりしますが……実際に観察すると色々想像していなかったコトが起こりますね。それが「実際に見る」ことの醍醐味ともいえるのでしょうが……。
現場でアリの存在に気づかなかったのは不覚でした。長い観察が続いて集中力が落ちていたのでしょう……。帰宅後、画像を見て「アリだったか!」と気づき、現場で気づいていたら、もっとアリの動きに注目して撮れたのに……と悔しい思いをしましまた。
しかし、とりあえず、想像していた「アリ対策」の可能性が信憑性を増してきた……そんな観察になったことは良かったかな……と。
やはり、実際の虫の活動を見る──ということは大事ですね。
No title
画像2点追記し、加筆しました。

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