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《抜け殻落とし》の瞬間!?



アカスジキンカメムシの奇行(?)《抜け殻落とし》。羽化や脱皮の後に自らの抜け殻を攻撃して落下させる──そんな興味深い行動を僕は何度も見てきた。寄生蠅や寄生蜂、アリなどを呼び寄せかねない手がかり(抜け殻)を生活圏の外へ破棄する意味合いがあるのではないかと想像しているのだが、この《抜け殻落とし》の決定的瞬間をキレイな画像で記録しておきたいと常々思っていた。そしてついに新成虫が抜け殻を落とすシーン──落ち行く抜け殻が、まだ空中にある瞬間をとらえることができた!?!
──かに見える画像だが、(残念ながら)さにあらず。見つけたとき、抜け殻はこんな状態で宙に浮いていた!?

亀虫のイリュージョン!? 空中浮遊する抜け殻!?!



人体が宙に浮く《人体浮遊》はイリュージョンの代表の1つだが、アカスジキンカメムシが抜け殻を使ってイリュージョンを披露している──ようにも見えなくはない!?
イリュージョンでは、特殊なワイヤーを使ってマジシャンを吊り上げていたりするらしいが、アカスジキンカメムシの抜け殻も極細の糸で吊られていた。


糸の正体は、おそらくクモが歩いたあとに残していく「しおり糸」だろう。これは絹糸よりも強靱らしい。これがアカスジキンカメムシ新成虫によって落とされかけた抜け殻の脚に引っかかったと思われる。《抜け殻浮遊》はイリュージョンではなかったが……「終齢幼虫の抜け殻から、それより大きな成虫が出現する」という羽化の方が、よっぽどイリュージョンぽいかもしれない。
さて、抜け殻は羽化の最中、落下しないように、しっかり葉にしがみついているわけだが、その足先には二股に分かれたするどい鉤型のツメがついている。糸はこのツメに引っかかっていたようだ。
やはり《抜け殻落とし》で落とされたと思しき別の抜け殻でツメをチェックしてみると↓。


この鋭いツメが、羽化や脱皮のさいにしっかり足場をつかみ、体を支える役目をしているのだろう。アカスジキンカメムシは羽化や脱皮のさいには頭を下に向けてとまるが、そうすることで体重がかかり後脚と中脚のツメは足場にしっかりくいこみ安定性が増しているように見える。


羽化や脱皮の最中、自らの体重などで下向きの力がかかることで鉤型の爪はグリップ力を増していると思われるが、離脱後のカメムシが下から抜け殻を押しあげれば、上向きの力がかかって後脚と中脚の爪フックは容易に外れて抜け殻を落とすことが可能になるなわけだ。
本来なら、爪フックが外された抜け殻は地面に落ちるが、今回はたまたま近くにあったしおり糸にひっかかって宙に浮いた形になってしまったようだ。
しばらくして戻ってみると、抜け殻は下の葉に背中をつけていたが、後脚のツメにはまだ糸が引っかかっていた。


さらに25分後、のぞいてみると抜け殻は消え、外れた糸が残されていた。


──ということで、今回目にしたのは《抜け殻落とし》の瞬間ではなかったが、《抜け殻浮遊》の画像を見ると、《抜け殻落とし》があったことがうかがえる。
羽化が行われたのは新成虫がとまっていた葉の裏だろう。何らかの理由で抜け殻が葉から離れ、しおり糸に引っかかったとして……落下開始位置よりも高い位置に宙吊りになるとは考えにくいから、抜け殻は落下前には撮影時新成虫がとまっているあたりにあったものと思われる。抜け殻があったはずの位置に体色が整っていない(羽化してさほど時間が経っていない)成虫が陣取っているということは、新成虫がその位置まで抜け殻を押し上げ、爪フックを外した──と考えるのが自然だろう。

過去の《抜け殻落とし》シーン

ということで、今回は(も?)《抜け殻落とし》そのものは見ることができなかったので、《抜け殻落とし》がいかなるものか、過去の画像をあげておく。
2015年9月に撮影したアカスジキンカメムシの脱皮~《抜け殻落とし》。


①頭を下向きにとまって脱皮中のアカスジキンカメムシ。②後脚&中脚の鉤型ツメが葉面にひっかかっていることで、下向きに力(体重)がかかっても抜け殻は安定している。③新幼虫が抜け殻から離脱。よくこのサイズの体が小さな抜け殻に収まっていたものだといつも感心する。④向きを変えて抜け殻と対峙。⑤抜け殻に頭突き攻撃。⑥抜け殻の下にもぐることで抜け殻の前脚を葉から引き剥がす。カメラを近づけたためこの姿勢で触角を倒し、静止してしまった。この2分20秒後の画像が→⑦わずかに目を離したスキに抜け殻は落とされてしまった。
(※詳細→【アカスジキンカメムシの抜け殻おとし】)

次は擬木で脱皮したアカスジキンカメムシ幼虫が《抜け殻落とし》に悪戦苦闘するようす。擬木には周辺の枝先から落ちたイモムシ毛虫やクモが登ってくることが多く、彼らが徘徊したあとには糸が残っていたりする。これが抜け殻のツメにひっかかってしまうと、《抜け殻落とし》は難航する……。


①脱皮後の《抜け殻落とし》の最中のアカスジキンカメムシ新幼虫。通常(葉の裏での脱皮)であれば抜け殻は既に落ちていただろう。擬木にはクモや毛虫イモムシが這いまわるさいに残した糸が残留している。この糸に抜け殻が引っかかってなかなか落ちないのでアカスジキンカメムシ新幼虫は悪戦苦闘していた。②頭を使ってすくい投げしようとするが、抜け殻は姿勢を変えるだけで落ちない。③とうとう頭上高くリフトアップしてしまった。④リフトアップした抜け殻を擬木の下に投げ落とすことに成功した……かと思いきや、糸にひっかかった抜け殻は宙吊り状態に。⑤宙吊りの抜け殻に気づいたアカスジキンカメムシ新幼虫は、ふたたび落としに向かう。⑥頭突き攻撃で抜け殻を落とすが……。⑦抜け殻はさらに下で宙吊りになる。アカスジキンカメムシ新幼虫がどうするか注目していたが、この後風で抜け殻が飛ばされ《抜け殻落とし》は終了した。
(※詳細→【カメムシの抜け殻落とし行動】)

昨シーズン観察した羽化後の成虫による《抜け殻落とし》↓は、肝心のシーンが力いっぱいピンぼけ……。


※【アカスジキンカメムシ:羽化~抜け殻落とし】より再掲載↑。
このピンポケとなったシーンをきれいな画像で撮り直しておきたいものだが……今回の冒頭画像は《抜け殻落とし》ならぬ《抜け殻浮遊》だったしだい。


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コメント

No title
詳細が、こと細やかに写し出された証拠写真と、星谷さんの明瞭な考察とは(カメムシの羽化後抜け殻落とし行動)を、証明づけるに等しいのでは!と想うのですが・・・?・・・
虫(芋虫)には、教えられなくとも、自分の身を守るための行動が産まれた時から備わってる・・・と、耳にしたことがあります。
カメムシの抜け殻落としも、その一つだと想えて来ました!
・・・確かなことはわかりません、が、観察を続ける中で、こういった証拠写真なり考察なりを御掲げになる行為は、実に素晴らしい事だと想います!☆
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

初めてカメムシの《抜け殻落とし》を目にしたのは、エサキモンキツノカメムシの羽化でしたが、新成虫が自分の抜け殻を攻撃して落下させた行動に驚きました。その後、アカスジキンカメムシでも同様の行動が観察でき、きっと何か意味があるのだろうと考えて、こうした解釈に至りました。ホントのところはわかりませんが、「生き物のふしぎ」感満載の行動なので、注目し続けています。
身近なところに埋もれている「ふしぎ」を見つけて謎解きを考えるのは虫見の醍醐味の1つですね。
No title
最初の写真、おおっ!と思ってしまいました。
まんまと、落とした瞬間に見えました。
でもしおり糸があったおかげで、また抜け殻落としの写真が撮影できましたね。
それにしても脱皮って、うまく鉤爪を使うんですね~。
カメムシになって脱皮してみたい… って思わずにはいられません。

以前の記事にも載っていましたが、最後の、肝心なところがピンボケ、のくだりが何度読んでもおもしろいです。
雪男とかイエティとか、写したはずの写真が必ずボケていたり真っ黒だったり
なんていう現象でしたっけ… それを思い出します。
No title
> のりさん

冒頭の画像のようなシーンが希望なのですが……。

抜け殻落としは興味ある行動なのですが……なかなか思うように撮れず。雪辱を果たすには今の時期(羽化シーズン)を逃してはなるまいと考えると、ついアカスジキンカメムシの姿を探してしまいます。

待ちに待った肝心の所でピンぼけというのは、役者で言えばワンカットで撮影する長~いセリフをほぼ完璧にこなしていって、最後の一行で噛んでしまったみたいな……。
ピンぼけ画像(&キャプション)に音入れられるなら「ゴ~ン」というお寺の鐘のBGMを入れたいところです……。

カメムシの鉤爪もアップで見るとなかなか鋭いですね。落ちている抜け殻を拾い上げると、周囲のゴミが爪に引っかかって来ることがよくありますが、この爪をみると納得できます。

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