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【薄める】の反対語は?


ふと思ったことだが……【薄める】の反対語(対義語)は何だろう?

「色や味が薄い」というときの【薄い】の反対語は【濃い】だろう。
【薄くする】に対して反対の意味で【濃くする】という使い方はある。
この流れでいうと──、
【薄くする】ことを意味する言葉が【薄める】なのだから、反対語の【濃くする】を意味する言葉は【濃める】ということになりはしないだろうか?
しかし……「濃める」は聞いたことがないし、違和感がある。これはどうしてなのだろう?

味については、【薄い】⇔【濃い】に対応する表現で【薄め】⇔【濃いめ】が使われるのが一般的のようだ。
【薄め】に関しては【薄い】から「い」を外して「め」をけているのに、【濃いめ】では【濃い】の「い」を残して「め」をつけている。規則性からするとおかしな気がするが、感覚的には【濃め】より【濃いめ】の方が落ち着きが良いような気がしないでもない。
それでは──【濃いめ】という言い方があるのなら、【薄める】に対する反対語は【濃いめる】になるのだろうか?
【濃める】も違和感があるが、【濃いめる】も力いっぱい違和感がある。

この違和感がどうして生まれるのか──きっと国語学(?)的には、それなりの解釈があるのだろうが……正直なところ、そうした学術的な解釈にはあまり関心が無い。
この問題で僕が興味を覚えたのは、一見、規則性に則しているように思われる【濃める】なのに、明確な理由もなく違和感を覚えるという点だ。
一方、規則性から外れた【濃いめ】には落ち着きが良いと感じ、【濃いめる】には違和感を覚えるというのも不思議な気がする。

つまり、言葉は必ずしも文法的な規則性に支配されるものではない──もっと感覚的なものということだ。
言葉は自然発生的に誕生し、脳味噌が運用しやすい形で進化してきた。それを整理するために規則性を分析し確立されたのが文法だろう。つまり、文法はあくまで「後付けの理屈」ということになる。整合性を保つために、文法の基準にのっとり、現行の言葉やその使い方を「正しい」「間違っている」と指摘することはよくあるが、その「正しさ」は数学の「正しさ」のような絶対的なものではないはずだ。「後付けの理屈」なのだから、「脳味噌が運用しやすい現行スタイル」にあわせて変更することが必要なこともあるだろう。

自然発生した言葉を整理する「文法」は、自然発生した生物を整理する「分類」に似ている気がする。
これは、以前「ら抜き言葉」について記した時(*)にも感じたことだが、「文法」も「分類」も、どちらも「後付けの基準」だ。後付けの基準ではうまく説明できない事案もでてくることは不思議ではない。
そうした事案に対応するため、妥当性が見直され──「分類」が変遷してきたように、「文法」もきっと専門家の間では(?)リニューアルし続けてきたのだと思う。

僕を含めた日本人の多くは、ふだん日本語を、文法など意識せずに使っているはずだ。「薄める」に対する反対語が必要な状況では、「濃くする」という表現を自然に選択して、おそらく「濃める」問題(?)は意識に上がってこないのではないかと思う。「【薄める】の反対語は何?」という疑問は、むしろ日本語を文法から学んでいる外国人が抱きそうな気がする。

僕には「文法」も「分類」も難しくてよくわからないが、「文法」を詳しく知らなくても喋ったり書いたり聞いたり読んだりすることはできる。「分類」を詳しく知らなくても、生き物を見て楽しむこと──感じたり考えたりすることはできる。
「後付けの理屈」を知らなくても、あまり引け目(?)に感じることはないのではないか……。
【薄める】の反対語(対義語)は何だろう?──ふと抱いた疑問から、漠然とそんな思いに至った次第。


*「ら抜き言葉」について

https://hoshtani.blog.fc2.com/blog-entry-209.html

■エッセイ・雑記 ~メニュー~
https://hoshtani.blog.fc2.com/blog-entry-130.html

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コメント

No title
日本語は難しいけど、多様な表現が出来るので面白いですね
No title
星谷仁 讃江

和尚の生まれ育った
猫のヒタイのような
美濃の田舎での
地方語に
ヌクトイ(あったかい)
が、あります。
若い世代は使わないでしょうが
まだ(まんだ)通じるでしょうね(^_-)-☆
薄い、濃い

田舎言葉は、無いですね。

らく画きにがお絵和尚より
No title
> snowさん

日本人は経験的に自然な日本語を使っていますが、これを文法(理屈)で勉強しようとすると、けっこう大変だろうなぁ……と思うことがあります。
「きれい」と「美しい」は同じような意味で使っていますが、「きれいな花」とは言うけど「美しいな花」とは言わない……ほとんど無意識に使い分けていますが、そうした使い分けが自覚せずに話せるのが母国語なんでしょうね。
No title
> らく画きにがお絵和尚の日記さん

「ヌクトイ」は聞いたことがありませんが、「温い(ぬくい)」あたりからきているのでしょうね。
埋もれてしまう古い言葉もあれば、新しく生まれてくる言葉も多いのかも。
僕が学生の頃には「恥ずかしい」を「恥ずい」「お恥」などという言い方が流行って(?)いました。

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