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ホルスタインちっくなチャバネフユエダシャク♀



チャバネフユエダシャクも出てきた。白黒のまだら模様がユニークな♀↑。冬限定のフユシャク(冬尺蛾)の1つで、擬木にいると見つけやすい。近くにいた別個体↓。


擬木では、このように支柱上部に頭を上にしてとまっていることが多い。
これでも立派な蛾の成虫なのだが、翅が消失しているので、なんとも異様な雰囲気をかもしている。


ぷちホルスタインなチャバネフユエダシャク♀





《ぷちホルスタイン》と密かに呼んでいるチャバネフユエダシャク♀。本来なら昆虫の活動が鈍る冬に(成虫が)現われ繁殖活動するという変わり種だが、翅をすっかり退化させたメスの姿がふるっている。年1回冬に(成虫が)発生し、メスは翅が退化して飛べないという特徴を持つシャクガの仲間をフユシャクと呼ぶが(日本には35種類ほどいるらしい)、その中でもふくよかな体型とホルスタインを思わせる白黒模様のチャバネフユエダシャク♀は異彩を放っている。
今でこそ《冬の風物詩》となっている(?)おなじみの昆虫だが、チャバネフユエダシャク♀を初めて見た時は、これが何の仲間かわからず《謎の生命体》だった。
このユニークな姿──翅が無いのも、ホルスタインちっくな模様もメス限定。オスは何の変哲もない普通の蛾。




なぜメスだけホルスタインなのか?

フユシャク(冬尺蛾)のユニークなところは──昆虫の活動には不向きと思われる冬にわざわざ現れる蛾であり、何らかの理由でメスは翅が退化して飛ぶことができない──という点。知った当初は驚いたが、考えてみると何となく想像ができないでもない。
トカゲ類や捕食性の昆虫やクモなどの天敵が少ない冬に繁殖活動をするという生存戦略を選んだのだろう。他の外温度性(変温)動物にくらべ、寒さにいくぶん強いということなのだろうが、フユシャクにしたって外温度性(変温)動物──低温下では活動が鈍りがちだろう。卵を抱えた身重のメスのが飛び回るのは大変なので、配偶相手をみつけるための飛翔は身軽なオスに任せてメスは産卵に専念することになったのではないか……天敵が少ない冬だからこそ、飛んで逃げることができなくても、必要な生存率は保てたのだろう……当初はそんなふうに解釈していた。

しかし、チャバネフユエダシャク♀のユニークなところは、それだけにとどまらない。翅が退化したフユシャク♀の中にあって、特別異彩を放っているのが、ホルスタインちっくなルックスだ。
チャバネフユエダシャクにとって「メスの翅の退化(逆行進化)」が進化の過程での必然であったとして……それなら、メスの姿はオスから翅を取り去った姿であってよさそうなものだ。
しかし、オスの体幹にはホルスタイン模様(白地に黒い斑)がない。つまり、「翅がいらなくなった」だけなら、メスの体幹もオスと同じデザインでよかったはず……メスにだけどうして、ユニークなホルスタイン模様があるのか──という点に疑問を感じた。
そして次のように考えてみた。

オスが持つ翅の色合は枯葉などに紛れる隠蔽カラー。オスの翅に隠蔽効果があるなら、その翅を持たないメスは、別の方法で隠蔽効果のあるデザインを獲得する必要があったのではないか?
白と黒の模様で思い浮かぶのは《鳥の糞への擬態》──鳥糞に擬態していると思わせる白黒模様の幼虫はよく見かける。擬木にとまったチャバネフユエダシャク♀と擬木上の鳥糞は、遠目には感じが似ていなくもない。


また明暗のハッキリした模様には、ボディーラインをかく乱する効果もありそうだ。
体型の違うオスとメスで、それぞれに合った隠蔽デザインが分化したのだと考えれば……納得できないでもない。しかし、それは隠蔽擬態を進化(選択)させた天敵が存在することを意味している。
当初は《冬には天敵が少ないことがフユシャクが冬に活動することを選んだ理由》だと考えていたが、冬にも天敵──おそらく鳥などがいて、それなりの捕食圧はかかっているのだろうとイメージを修正した。

考えてみれば……冬に活動する天敵が全くいなければ、フユシャクの中で昼行性の種がもっといていいような気がする。にもかかわらず夜行性の種類が多いことは、やはり日中活動する天敵──鳥の脅威があるためではないか。
昼行性フユシャク・クロスジフユエダシャクの観察で、メスが落ち葉の下などに隠れて交尾をする(*)ことを知ったときには、「オスとの出会いのハードルを高めるだろうに、どうして隠れて交尾するのだろう?」と不思議に感じたが、これも天敵である鳥に対する対策として獲得した習性なのではないか……と今は考えれば、つじつまは合う。
冬には捕食性の昆虫や爬虫類の活動は少なくなるが、活動している虫が少なくなる分、昆虫食の鳥の捕食圧は集中して高まるという側面もあるのかもしれない?

もし冬に天敵がいなかったなら、チャバネフユエダシャク♀はホルスタインになる必要は無かったのかもしれない?
メスのユニークなホルスタイン模様をながめながらそんな想像をし、妙な感慨に浸るのであった。



擬木にとまっていたクロスジフユエダシャク♀↑。これもフユシャクだが、小さいながらも翅があるので、(チャバネフユエダシャク♀に比べれば)昆虫っぽく見えなくもない。



日光浴中(?)のハラビロカマキリ(褐色型)。生きていたが動きは緩慢。
昆虫ハンターのカマキリは12月に入ってからもちょくちょく目にしているが、あまり活動しているようには見えない。


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コメント

No title
・・・そうだ!・・・確かに不思議です!

これまで私は、只単純に、チャバネフユエダシャクの♀は(鳥の糞)に擬態しているのだろうと想い、それ以上の疑問に気付けずにいました。
何故、チャバネフユエダシャクの♀だけが・・・?謎ですね・・・
一般的に、チョウは昼行性で、蛾は夜行性の場合が多く、日中動きがとれない(場合が多い)蛾は、天敵から逃れにくいために、地味な色彩・模様を持ったものが多い・・・との説があります。
(昼行性の蛾には、派手めなものも多い)
・・・チャバネフユエダシャクは夜行性・・・
なので、地味であるべき・・・確かに♂は地味目・・・
ならば、♀も地味な茶系であるべき・・・だのに、何故?
・・・ひょっとして、♀の大きさが関係しているのでしょうか?
チャバネフユエダシャクの♀は、比較的大きめなため、天敵に見付かりやすい・・・ので、長い進化の過程で、(糞模様)とかした・・・な~~~んて・・・???
実際、実に不思議です。是非、その由を知りたい疑問点ですね!☆
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

この時期お馴染みのチャバネフユエダシャクですが……今回は「どうしてメスだけこの模様?」という点に着目してみました。
オスの翅は薄いので、枯葉色であれば枯葉っぽく見えなくもない!?
メスは翅が無く丸っこいので、幹や枝にとまっていると枯葉色ではバレやすいのかも?
で、メスは鳥糞擬態もしくは輪郭線の分断模様で白黒のまだら模様になったのではないか……と想像しています。
翅のあるオスが鳥糞擬態をするのはちょっと無理があるでしょうから、オスとメスでは異なったカラーリングになったのではないか……と。

いずれにしても同じ種類の昆虫なのに、これだけ♂と♀で印象が異なっているというのが面白いですね。
No title
確かにそうですね。ムシクソハムシを思い出しました。ハゴロモの幼虫なども鳥の糞に擬態。でもフユエダシャクにあった事がないです。オスが飛んでいてもすぐ逃げますね。ナイス!
No title
> 四季の風さん

糞擬態と思われる虫はけっこういそうですね。

フユシャクの多くは夜行性で、チャバネフユエダシャクも夜行性──なので、このオスもメスも昼間はほとんど動きません。
昼行性のクロスジフユエダシャクは、昼間オスが飛んでいますが、メスを探しているのでなかなか降りなかったり、降りてもすぐ飛んだりしますね。
No title
ご無沙汰しています。
チャバネフユエダシャクの♀の模様は複雑で面白いですよね、生で見てみたいです。
鳥の糞・・確かに遠めに見るとまんま鳥の糞ですね。
これと落ち葉に隠れているっていうのはやっぱり身を守るためで、鳥などの補食圧がかかるのかもしれませんね。
フユシャク♀は小さい翅があるのとまったく翅がないものの二種類がいて、それぞれ他に共通点はあるのか調べてみると面白そうですね。
ナイス!です
No title
> タイコウッチさん

チャバネフユエダシャク♀はちょっと変わったフンイキ(オーラ?)を放っていますね。♂はどこから見ても蛾ですが、♀はとても蛾には見えない……。

昼行性クロスジフユエダシャクは♀が枯葉の下に隠れていることが多いようですが、夜行性のチャバネフユエダシャクは昼はほとんど動かず木の幹などに止まっていることが多いような(擬木やフェンスなどにいると見つけやすい)。
昼間はじっとしていて見つかりにくいように形の違う♂と♀でそれぞれ別のカラーリングを獲得したのではないか……と想像しています。

一口にフユシャクといっても♀の翅の有無・大きさには差があるのがおもしろいですね。
フユシャクではありませんが、ヒメシロモンドクガなど、秋に羽化する♀だけ翅が退化する(6月・8月に羽化する♀は普通の蛾と変わらない)蛾もいて、興味深いところです。

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