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擬装する蛾の幼虫など

天気が荒れたあとの緑地には落ちた枝や葉が散乱している。一緒に落ちた虫も多かろう。落ちた樹上性昆虫は生活の場に戻ろうと上を目指して移動する。このとき、たまたま擬木を登ってしまうと、支柱のてっぺんまでのぼりつめたところで行き場を失う。飛ぶことができない幼虫などは立ち往生──上へ続く道を探して支柱の上面をぐるぐる回ったり、少し戻って擬木の横木をつたって脱出を試みるが、隣の支柱にたどり着くと、またそのてっぺんに登って行き詰る……こんなことを繰り返すことになる。「高いところを目指す」虫が擬木から抜け出せなくなることを僕は《擬木遭難》と呼んでいる。
嵐のあとには《擬木遭難》する虫が増える──ということで、台風の後のギボッチ(擬木ウォッチ)コースを見に行ってみた。

擬装するアオシャク(蛾)の幼虫など



予想通り擬木では色々な虫が見られたが、この日一番注目したのは、この幼虫。極細の棒(?)やゴミ(?)を体にまとって擬装している。異物をまとって擬装する虫は色々見てきたが、蛾の幼虫では初めて。アオシャク(シャクガ科の蛾)の仲間にはゴミをまとう幼虫がいるそうなので、その中の一つなのだろう。どういう仕組みで異物を付着させているのか知らないが……このこの擬装工作には、それなりの手間(エネルギー)が費やされているはずだ。わざわざ無駄なことにエネルギーを浪費するとは考えにくいから、手間をかける行動にはきっとそれなりの──生存率を高めるような効果が隠されているに違いない。その効果とはカムフラージュ(隠蔽擬態)だろう。擬木の上で動いていたから見つけることができたが、じっとしていたら、きっと気づくことはできなかった。




蛾の幼虫には奇抜なデザインのものが少なからずいて、体自体がカムフラージュ(隠蔽擬態)仕様のデザインになっているものも多い。それはそれで興味深いが、擬装素材を外部調達して身にまとう──というスタイルもおもしろい。自らの体がカムフラージュ(隠蔽擬態)仕様であれば、ポージング程度で(さして労力を要さずに)擬態が完成するわけだが、これを「ハードの擬態」とするなら、外界の物資を調達して擬装工作するタイプは「ソフトの擬態」といえるかも知れない。こんな小さな虫に「擬装行動」のプログラムがちゃんとインストールされているのだから感心する。
外部素材を身にまとうアオシャク幼虫の行動──この延長にミノムシ(ミノガの幼虫)があるのだろうか?──ふと、そんなことを想像した。考えてみればミノムシの蓑(みの)もアッパレだが、これは子どもの頃から見慣れているせいか、これまであまり注目したことはなかった。
アオシャク幼虫からの連想で、あらためてミノムシの蓑について考えてみると……ミノムシの蓑の原型は「繭」なのではないか──という気がする(素人想像)。蛾は蛹化が近づくと繭を作るものが多い。繭に周辺の葉などを取り込む形になるものもいる──これがミノムシの繭の原型なのではないか? 普通は繭を作ったあと、その中で幼虫は蛹になり、安全に羽化を待つ。ミノムシの場合は、この「安全な繭」作りを前倒しして、成長期にある幼虫時代もこの中で過ごすという生存戦略を獲得したのではあるまいか?……そんなイメージが展開した。
ミノムシと、このアオシャク幼虫では「外部素材を調達しての擬装」という点では似ているが、見た目の印象はちょっと違う!? ミノムシをヤドカリに例えるなら、このアオシャク幼虫は(海藻を身にまとう)イソクズガニ──といったところだろうか? 似ているようで、もしかすると習性の獲得プロセスは全く違っているのかもしれない……。
蛾の幼虫つながりで……やはり擬木の上を這っていたユニーク系↓。


背中の突起がユニークなギンシャチホコ(蛾)の幼虫。擬木の上ではバレバレだが、葉にとまっていれば緑色の部分は葉の緑に溶け込み、茶色の模様は葉の枯れた部分見え、ボディーラインが分断・隠蔽される。


この個体はよく肥えているので、台風で落ちて《擬木遭難》しているのではなく、蛹化の場所を探して徘徊していたのかもしれない。ときどきコナラの幹で繭を見かけるが、擬木で繭を作っていることもある。

擬木上の昆虫



台風通過後の擬木では色々な昆虫が見られたが、シギゾウムシの仲間も多かった。


前の記事でちょっと触れた「ドングの実から出てくるイモムシ」の1つが、このシギゾウムシ。おもしろい虫なのだが、擬木の上ではせわしなく歩き回っていることが多く、なかなか思うように撮れない……。
同じ支柱のとまっていたミミズクの幼虫↓。こちらはじっとはりついていた。






ミミズクは幼虫・成虫ともにユニークなので何度もネタにしている(*)。ちなみに、コミミズクという和名の昆虫もいて、その幼虫はこんな姿↓。


コミミズクも平たくて、枝に密着できるようなデザイン。ミミズクもコミミズクもギボッチで見かける昆虫だが、出会う頻度はコミミズクの方が多い。
そんなわけで擬木では色々な虫が見られるわけだが……《擬木遭難》した虫が集まる擬木上部は捕食性の虫にとっては良い狩り場にもなっているようだ。


この日は捕食中のヨコヅナサシガメ幼虫をあちこちで目にした。


クロシタアオイラガの幼虫の体液を吸うヨコヅナサシガメ幼虫。今年はよく観察したハリサシガメに比べると口吻がやけに長い。ハリサシガメの獲物はもっぱらアリだったが、毛足が長いケムシなども捕食するサシガメでは口吻も長い方がつごうが良いのかもしれない。
考えてみれば、イモムシの中で、わざわざ毛をはやした──ケムシが多いのは、捕食者(クモや昆虫)のアゴや口吻を届きにくくしたり、寄生蜂・寄生蠅などから体表面を遠ざけるような防衛的な意味があってのことなのかもしれない。


2時間後戻ってみると、クロシタアオイラガの幼虫の体液を吸うヨコヅナサシガメ幼虫は2匹になっていた。1匹の獲物に複数の捕食性カメムシ幼虫が群がっているシーンはたまに見かける。消化液を注入しながら体液を吸っているだろうことを考えると、複数の幼虫が共同して消化液を注入した方が獲物の内蔵溶解(?)や消化効率は向上するはずだ。幼虫にとって大きな獲物はシェアした方が効率的なのかもしれない。
擬木の上にはアオマツムシの姿も多かったが、アオマツムシを捕えたヨコヅナサシガメ幼虫もいた。




アオマツムシは絶命していたが、例によって「偽瞳孔はカメラ目線」で写る(偽瞳孔自体が動いているわけでははない)。
擬木支柱の鉛直面では、(幼虫時代のアリ擬態がアッパレな)ホソヘリカメムシ(*)が羽化していた↓。


カメムシつながりで──見ようによっては両前脚を広げた黒猫やソンブレロ仮面に空目できるウシカメムシ幼虫↓。


擬木にはカメムシの仲間も多い。






「今年も、これを見る時期になったか……」と感じたのがケンモンミドリキリガ↓。


個人的には「プレ・フユシャク(冬尺蛾)」のイメージがあるケンモンミドリキリガ。狭山丘陵では、このキレイな蛾が見られるようになると、まもなくフユシャク(冬にだけ成虫が出現するシャクガ科の蛾の総称)の季節となる。



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コメント

No title
ミミズクやらコミミズク、名前だけ聞いたら
まるで野鳥の世界ですね。 「ナイス」
No title
> 東北の温泉バカさん

ミミズクやコミミズクを検索しようとすると鳥の記事がヒットしがちです。
No title
こんばんは・・・
擬態を想わせる虫に興味津々です。
姿・形だけでなく、姿勢までも(似せ、偽、隠れ)生き延びるための策として受け継がれてきたか(?)のような虫の生き様に、私は魅了されっぱなしです。
ギンシャチホコの幼虫もですが、まだ目にしたことのないミミズクの幼虫に・・・「これだ~~~!是非出会ってみたい!」とテンシャンが上がりました。
ユニークな色彩・模様・姿・形を持った虫は、私の心を惹きつけてやみません。☆
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

擬態は本当に不思議で好奇心を引きつけるものがありますね。
アオシャク幼虫の「手間をかけて」の擬態に興味津々です。
こうした虫たちを見ていると脳味噌が活性化します。

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