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翅多型のハリサシガメ

ハリサシガメ成虫:長翅型~短翅型



土粒にまみれアリの死骸などをまとっていた幼虫時代とはうってかわって精悍さすら感じさせるハリサシガメの成虫。背中──小楯板からつきだした鋭い突起が特徴的。前胸両側には側角とよばれる突起もあって厳めしい。


口吻は他のサシガメに比べてやや短め。毛足の長い毛虫などを狩るには長い口吻の方が便利なのかもしれないが、小さなアリの急所を正確に貫くには短めの口吻の方が(ズレたりブレたりしにくいだろうから)適しているのかもしれない。
このところ幼虫よりも成虫をみかける機会の方が多くなってきた。




成虫には逆「ハ」の字模様が入った翅があるが、この翅の長さは個体によって、かなりバラツキがある。この個体は今シーズン見た中で一番長い。


これ↑に比べると明らかに翅が短い成虫↓。




さらにミニサイズの短翅型↓。




背面からも腹の節がしっかり見える。


ペアのハリサシガメでは──僕が見た限りは、決まって翅の長さはオスの方がメスより大きかった。


このペアも翅の長さは♂>♀。


なんとも不可解なハリサシガメの翅多型

同種の個体に形態的な差を生じることを多型現象というそうで、翅の長さに多型を生じるものは翅多型(もしくは翅型多型)と呼ぶらしい。ハリサシガメは長翅型と短翅型、そしてその中間型ともいえる長さの翅を持つものがいて、なんとも不思議な気がする。今シーズン見た成虫の中から翅の長さの違うものを並べてみると↓。




















ハリサシガメの翅の長さは、かなりいい加減なのがわかる。

一般的には、同種内に生じる翅の長さの違い──「長翅型と短翅型」もしくは「有翅型と無翅型」は、飛翔能力の有無を意味することが多いらしい。
昆虫にとって飛翔能力は新天地の開拓や悪化した環境からの脱却という生存率を高める上で有益なツールだろう。一方、翅や飛翔筋などの飛翔器官を形成するにはそれなりの資源や手間がかかるはずで、もし移動の必要がなければ(生息環境が良い状態で永続すれば)、飛翔器官の形成コストを生殖器官に振り替えた方が(養分仕分け?で飛翔器官をカットした方が)生存率が高まる──というケースもあり得るだろう。昆虫の中には生息環境が良い状態で安定しているときは(繁殖能力に優れた)短翅型あるいは無翅型が出現し、餌が枯渇したり個体密度が高くなると(繁殖能力は目減りするが)飛翔能力を持った(移動・拡散ができる)長翅型あるいは有翅型が出現するものがいるという。

ならば、ハリサシガメの場合はどうかというと──、
短翅型は見た目にとても飛べそうにないが、ならば長翅型は飛べるのか──といえば、(無知な僕の浅い観察経験からすると)懐疑的だ。これまでハリサシガメが素早く石垣の隙間に隠れる姿は何度も目にしているが、飛翔したり飛ぼうとする(翅を開く)シーンは一度も見たことがない。
もし飛翔能力の有無で翅多型が生じたのであれば、長翅型と短翅型の二極にきっぱり分かれて良いような気がする。
生殖能力を落として移動拡散のメリットにかける長翅型と移動拡散を捨て生殖能力に注力する短翅型──どちらかに分かれるのは理解できるが、どっちつかずの中間型は中途半端なムダな存在ということになりはしないか?
翅の長さがこれだけいい加減なのは、そもそも飛翔に関するこだわりを捨てているからではないか──翅の長さに関わらず、ハリサシガメは飛翔筋が無い(その形成資源は生殖器官に回されている)のではないか……そんな気がする。一方で、飛べないのであれば、みな短翅型で安定しそうなものだ──という気もする。どうして同じ時期に同じ環境で育った個体群のなかからバラツキがある翅が形成されるのか理解に苦しむ。
ということで、やっぱりハリサシガメは、謎が多い……。


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コメント

No title
こんにちは・・・
同じ環境下でのバラツキが・・・?確かに奇妙で不思議です。
個体変異のレベルではありませんね・・・
親の持つ遺伝子の関係でしょうか?
そのうち、年月の経過とともに、全てが(有翅型から短翅型へ)或いは、その逆の状態になる?
(長翅を持つものが♂で、短翅を持つものが♀)と、ハッキリしてくれると、モヤモヤも吹き飛ぶのですが・・・
人の都合通りに運ばないからこそ余計でも「虫って面白い!」となるのでしょうかね!☆
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

ハリサシガメに出会うまでは、カメムシに(同じ種なのに)翅の長さにこれほどバラツキがあるものがいるとは想像もしていなかったので、フシギだなぁ……と。
おそらく環境的な要因や遺伝的な要因が絡み合っているのでしょうが……簡単に理解できないところに、自然の奥深さを感じますね。
No title
ウンカなんかでは生息密度が高ければ翅が短くなるようなのでサシガメにもそれが当てはまるのかもしれませんね。
ただ、同じ生息地なのに長翅型と短翅型がいるということは同じ場所でも密度にばらつきがあるということなのかなと思いました。
ナイス!です。
No title
> タイコウッチさん

翅多型のスイッチは種類によって色々あるみたいですね。多くの場合は飛翔能力の有無に関係がありそうですが……ハリサシガメの場合は長翅型も短翅型も飛べないのではないかと思っています。
発生場所の石垣ですが、同じような環境の中で、幼虫がいるところでは複数みられ、いないところではほとんど見かけません。幼虫時代から密度が高いところに集まるしくみがあるのだろうと考えていますが、これも飛翔能力が無いために繁殖率を上げるために、あらかじめ密度を高めておく必要があるからでは?──なんて想像もしています。

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