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ハリサシガメ幼虫の狩り

ハリサシガメ幼虫のハンティング



土粒をまとい、背中にアリの死骸等をデコレーションしたハリサシガメの幼虫が石垣の隙間で食事をしていた。エサとなっていたのはアリ──ハリサシガメは成虫も幼虫もアリを捕らえて体液を吸う。


デコレーションしたハリサシガメ幼虫は石垣の上でじっとゴミと化し(?)、アリが近づくと飛びついてしとめてしまう。このところ幾度かハリサシガメ幼虫の狩りのようすを観察しているが、「不意打ち」という印象が強い。
ハリサシガメ幼虫が移動するときは体を前後に揺らすように歩く──これは枝に擬態したナナフシや隠蔽擬態の名人カメレオンなどの動きとよく似ている。ちょっとモタついた感じもするが、アリを捕らえる時は意外に素早い。もっとも、ダッシュできる距離は短いようで、目の前を通りかかったアリに反応して追いかけるが追いつかずに取り逃がすといったシーンも何度か目にしている。ハリサシガメ幼虫がアリと競走したら、きっとアリの方が速い。逃げるアリには追いつけないだろうし、アリたちに追いかけられたらとても逃げ切れはしないだろう。近づくアリに気づかれることなく「不意打ち」を仕掛けてはじめて獲物をゲットできる……「真っ向勝負」ではなく「不意打ち」がハリサシガメ幼虫の狩りのスタイルなのではないかと考えている。
観察していると、近くを通るアリはハリサシガメ幼虫に気をとめない(気づかない?)ことが多い。ハリサシガメ幼虫のデコレーション素材をみるとアリが巣から廃棄したと思われる素材も含まれている。アリがどのように獲物と廃棄物を識別しているのかはわからないが、用済みで巣から運び出された廃棄物を再び拾い集めてくるようなムダはしないだろう。1度廃棄されたゴミや仲間の死骸はスルーする仕組みがあって、ハリサシガメ幼虫はそれを利用してアリの廃棄物にまぎれ、アリに警戒されることなく近づくことができるのではないか。体の表面を土粒で覆っているのも、接触して相手をニオイで確かめようとするアリを欺く隠蔽偽装工作と考えると合点がいく。
つまりハリサシガメ幼虫のユニークな特徴であるデコレーションには《アリの警戒を回避》する《蟻スルー》の意味(効果)があるのではないかと考えていた。
ところが、今回の食事中のハリサシガメ幼虫を撮っているとき、デコレーションに関心を示して近づいてきたアリがいた。




このアリはデコられたアリの死骸が気になるらしい。上にのぼって調べ始めた。


すでに食事中だったハリサシガメ幼虫は、これを嫌うように体を震わせ、アリを振り落とすが、アリは執拗に調査を続けようとする──と、そのアリをハリサシガメ幼虫は素早く襲ってしとめて、体液を吸い始めた。


アリを捕えた口元を確認したいところだが……なかなかキレイには撮れない状況……。昨年、ヤニサシガメをプチ飼育した時は、捕らえたハバチの幼虫を5時間以上かけて吸っていたので、ハリサシガメ幼虫も食事が終わるまで(デコ行動に移るまで)にはそれなりに時間がかかるだろうと考え、他の撮影しやすい個体を探す。およそ30分後に戻ってみると……。


すでに食事は終わっており、地面にアリの死骸もない……どうやらデコった後のようだった。
これ↑とは別のハリサシガメ幼虫↓。アリを捕食中だったので、口元をハッキリ撮るためにカメラを近づけると、警戒して食事を中断してしまった。


警戒して食事を中断してしまったハリサシガメ幼虫に、アリが近づいてきた。


このアリもデコられたアリの死骸に興味を示していた。本来だったら狩りが行なわれてもよさそうなものだが……カメラを警戒してかこのハリサシガメ幼虫はじっと動かずにいた。デコ素材に触れていたアリは、この後立ち去っていった。
また、別のハリサシガメ幼虫を撮影しているときにデコ素材を確かめにきたアリがいたが、これもすぐに立ち去っている↓。


デコレーションの役目は《アリ誘引》か《アリ回避》か?

今回紹介した1匹目の例では、ハリサシガメ幼虫のデコレーションに関心を示してやってきたアリが餌食になっている。これはデコレーションが《アリ誘引》の役割りを果たした形だ。2例目・3例目ではアリはデコレーションをチェックしたもののすぐに関心を失って立ち去っている。ハリサシガメ幼虫のデコレーションが《アリの警戒回避(蟻スルー)》の役目を果たしたともいえる。《アリ誘引》と《アリ回避》──言葉にすると(意識化すると)相反する矛盾したことのようにも感じられるが……自然の創り出したシステムは、ヒトの言語で単純に色分けできるものではないらしい。
《アリ誘引》効果で餌食になったアリも、《アリ回避》でハリサシガメ幼虫をスルーしたアリも、ハリサシガメ幼虫の存在には気づかずデコレーションに関心が向けられていた。デコレーションにはハリサシガメ幼虫の存在からアリの注意をそらす《陽動効果》があるということはいえそうだ。
さて、画像からは確認しづらいが……やはり食事中のハリサシガメ幼虫↓。


食事中のハリサシガメ幼虫をみつけても、こんなふうに土粒を盛った脚の陰になって口元がよく見えないことが多い……。このハリサシガメ幼虫も、食事中にデコレーションに関心をもってまとわつくアリを捕食している。


さらに別個体のハリサシガメ幼虫の食事シーン。口吻を刺してアリの体液を吸っている↓。


積極的(大胆?)な狩りをするハリサシガメ幼虫

ゴミのデコレーションに身を隠してアリの行動圏内に潜入し、通りかかったアリを捕食する──ハリサシガメ幼虫のハンティングを観察し始めた頃は、そんなイメージでとらえていた。しかし見ているうちに、デコレーションに誘引されてくるアリを捕食することもあるということがわかった。
さらには、果敢にアリの往来が絶えない通り道に入り込んで狩りをするハリサシガメ幼虫も──↓。


ピコピコ歩いてきたハリサシガメ幼虫──その先にはアリの行き交う通路がある。いくらアリの天敵だとはいっても、1匹で多数のアリの集中攻撃の的となってしまえばひとたまりもないだろう。「不意打ち」でアリをしとめることはできても、動きはアリの方が敏捷だ。一度に多数のアリを相手にしたらハリサシガメ幼虫に勝ち目は無いだろう──そう思って成り行きを見守ると。


アリの進路に入ってすぐにハリサシガメ幼虫は獲物をゲット。驚いたことに──反撃に出るだろうと予想したアリたちはまったくの無反応。すぐそばに天敵がいるというのに警戒するそぶりもなくスルー……。獲物を得たハリサシガメ幼虫はアリの進路わきに移動。




すぐそばをアリたちが行き交っているのだが、彼らは仲間が襲われたことに全く気づいていないようだ。難なく獲物を得たハリサシガメ幼虫は捕食後ふたたびアリの進路に入り込むが、アリたちは「見えていない」かのように無反応。ハリサシガメ幼虫のデコレーションは、アリにとって《天狗の隠れ蓑(みの)》みたいなものなのかもしれない。


トカゲにも見えていない!?ハリサシガメ幼虫





何度も記しているが、ハリサシガメ幼虫が暮らす雑木林の縁に位置する石垣にはヒガシニホントカゲが多い(ニホンカナヘビもいる)。ヒガシニホントカゲが石垣で餌探しをし捕食する姿もよく見られる。
餌を探して徘徊するヒガシニホントカゲがハリサシガメ幼虫に気づかずに接触したりはじき飛ばしたりするシーンも最近2度見ている。獲物をもとめて歩き回るヒガシニホントカゲも、すぐ近くにいるハリサシガメ幼虫を昆虫と認識することはできずにいるようだ。


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コメント

No title
こんにちは・・・
この観察へつ癒された熱意とお時間を想います!
又、それに見合う素晴らしい観察記録だと、私は終始感嘆のため息です・・・
本当に素晴らしいですね!!!
(何故)(どうして)の生態への探求心に、とにかく頭が下がりますし、そのおかげでこのような非常に興味深いお写真を拝見できたことに幸運を想います。
・・・匂いで会話する、との説もあるアリの世界なので、アリをまとう事で、アリに警戒心を持たれず餌にありつける・・・
と言った具合なのでしょうかね?
私は、星谷さんの渾身の観察記録を、そのように感じつつ見入ったのですが・・・☆
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

カメムシでこういう偽装をする種類がいるというのに意外性と面白さを感じて注目している昆虫です。おもしろい虫なのにそのわりに情報が少なく、わからないことが多いのですが……とりあえず観察を続けて自分なりにあれこれ解釈を想像してみようかと。
興味のある人は少ないかもしれませんが……個人的好奇心でハリサシガメ・ネタが続きます(笑)。
No title
アリを捕食することもあるんですね!
死体置き場から持ってくるだけでなく、自分で捕食したアリも
デコレーションに使ってしまうとは…
なんかすごい恐ろしい虫に見えてきました。
でも仲間のアリも気づかないとか、不思議ですね~。
幼虫に気づいて興味を示してしまったアリは、不運でしたね。
こうして記事で拝見してもおもしろいので
実際観察していたらとってもワクワクするでしょうね。
No title
> noriさん

ハリサシガメが捕食するのはもっぱらアリのようですね。これまで見た狩りや食事のシーンではエサとなっていたのは全てアリでした。
狩り→食事→デコレーションの一連の行動を観察・記録したいところですが……なかなか鮮明に撮るのが難しい……近くに寄りすぎてしまうと行動を中断してしまうし、NGを量産しています……。
じっとしゃがんだ状態で観察・撮影を続けていて、立ち上がったら脚がしびれてしばし歩くことができなかったなんてコトもありました(笑)。

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