FC2ブログ

ハリサシガメ幼虫の装飾行動

そこまで盛るか!? ハリサシガメ幼虫はどうしてデコるのか?





5月の終わりから石垣の上で見かけるようになったハリサシガメ幼虫。土粒で体をおおい隠しアリの死骸をデコレーションするというユニークな特徴をもつカメムシだが……そのデコりぐあいがハンパではない。いくらなんでも盛り過ぎではなかろうかという過積載気味(?)の個体も……。


盛りに盛った姿は、ちょっとヤドカリっぽい感じがしないでもない(!?)↑。「そんなに盛っちゃってどうするんだよ! だいたい脚が届かないところまでデコるなんて、ありえないだろ!」とツッコミを入れたくなるほど。
デコられたコレクションはアリに限らず、虫の残骸やゴミなど様々。


白いアーチ型のもの↑はオカダンゴムシの殻のようだ。その横には中味がカラになった昆虫の胸~腹をつけている。カタツムリの殻を飾ったオシャレな個体も↓。


念入りなデコレーションで本来の体はほとんど覆い隠されているハリサシガメ幼虫。どっちを向いているかもわかりづらいが、触角が出ている方が頭。


デコ・コレクションのアリ密度が高い個体↑。
こちら↓は、大きめのアリの死骸をデコったハリサシガメ幼虫。


デコ素材やそのレイアウトは個体によって様々なので見飽きるということがない。


ハリサシガメはもっぱらアリを捕食し、幼虫はその死骸を背負うと言われているが、デコレーション素材をみるとアリが廃棄した残骸も多いように感じる。


ここで見つかるハリサシガメ幼虫はもれなく土粒もつけているが、その部分は土の上ではみごとに背景にとけこんでしまう。ハリサシガメ幼虫が暮らす石垣のすきまには、こうした土がたまっている。




画面↑左側のハリサシガメ幼虫は下を向き、右側のハリサシガメ幼虫は左を向いている(よく見ると触角がある──その付け根が頭部)。土粒をまとった部分は隠蔽され、それ意外のデコ素材が浮き上がってゴミの塊のように見える。視覚的な隠蔽効果だけを考えたら、土粒だけをまとっていた方が効率的(目立たないし手間もかからない)な気がするが……わざわざ死骸・残骸をデコレーションするのには意味があるのだろう。
ハリサシガメ幼虫が暮らす石垣にはアリの巣も多く、ハリサシガメ幼虫のすぐ近くにアリの行列ができていたりもする。


こうした石垣の隙間にはアリが廃棄したと思われるアリの死骸やエサの残骸が散乱しているスポットがあり、ハリサシガメ幼虫はそこでデコ素材を調達しているふしがある。アリが廃棄した残骸にまぎれ、アリの警戒心や攻撃をスルーしているようにも見える。
《アリをまとう》──アリ偽装というと、《虎の威を借る──》ではないが、アリの威を借るアリ擬態の虫が思い浮かぶ。アリグモ(昆虫ではないが)やホソヘリカメムシの幼虫などはアリそっくりで驚くばかりだ。


アリグモやホソヘリカメムシ幼虫のアッパレな似せっぷりは視力の弱い(とされる)アリ相手ではなく、眼の良い捕食者にアリと誤認させるための警告的なものだろう。しかしハリサシガメ幼虫がアリをデコレーションするのは警告アイテムとしてではなく隠蔽アイテムとしてという気がする。
アリの多くは視力は良くないという。接触しニオイで相手を確認するアリに対しては、触れられては困る体の表面を土粒でおおい隠し、アリが捨てたゴミや死骸で偽装すればアリを欺くことができる──そう考えるとハリサシガメ幼虫のデコレーションは理にかなっているように思われる。
アリを捕食するためにアリの生活圏に潜入せざるをえないハリサシガメ幼虫にとって、アリの警戒・攻撃を回避すること──存在を悟られないようにすることが重要なことは想像にがたくない。土粒で体をおおいアリが廃棄したゴミやアリの死骸をまとうのは、視覚より嗅覚に優れたアリにゴミや仲間だと誤認させスルーさせる偽装工作という意味合いが強いのではあるまいか。

捕食したアリをデコるハリサシガメ幼虫

5月の終わりに小さな個体が出ているのを確認できたハリサシガメ幼虫(その時点で既にデコっていた)だが、その後少し大きくなった個体を見るようになった。個体の大きさはデコ具合によっても感じ方が変わるが……現在、大ざっぱに見て2種類の大きさが混在しているように感じる。これは脱皮前後の差で幼齢の違いによるものではないかという気がする。


石垣の上にでていたサイズの違うハリサシガメ幼虫を比較するめに撮ってみたもの↑だが……この小さい方(左)が、このとき食事中だったことに、この画像を撮った後に気がついた。


小さな被写体に寄って撮影したので被写界深度(ピントの合う範囲)が浅く(狭く)見づらい画像になってしまったが……ハリサシガメ幼虫が前脚と中脚で極小アリをつかみ、口吻を刺している。画面右側の腹のようにも見える黒っぽいふくらみは、ハリサシガメ幼虫がデコったアリの頭部。
ハリサシガメ幼虫は何度も獲物を持ち替えて口吻を刺し直しては体液を吸っていたが、やがて獲物を股の下を通して(アメフトのスナップのように?)後脚に受け渡すと、デコレーションする動きを始めた。


後脚でつかんだ極小アリを、すでにデコっていた大きな黒いアリの頭の下に押し込もうとしている。


向きを変えたので、ハリサシガメ幼虫の右前からのショット↓。後脚を腹の背面に持上げているのがわかる。


また向きを変え──ハリサシガメ幼虫の左後方から↓。


黒いアリの頭部の下に新たなコレクションが追加された。


後方からのショット↑。ピンぼけだが……両後脚で極小アリを押さえているのがわかる。
デコレーショニング(装飾行動)の前後の画像を比較すると──↓。


ちょっとわかづらいが、前からデコられていた黒アリの巨大頭部の下──腹との間に新たなコレクションを追加したようだ。
アリのゴミ捨て場(と思しき所)で拾ったアリの死骸をデコった【ハリサシガメ幼虫のデココレ素材】のときも、似たような位置に新素材を追加していたが、ハリサシガメ幼虫は既にデコった素材と腹の間に新しい素材を押し込むという形でコレクションを増やして行くのかもしれない。てんこ盛りのデコレーションをみて、「脚の届かない高さにどうやって盛りつけたのだろう?」と不思議に思っていたが、新たな素材は上に積み上げて行くのではなく下から追加し押し上げていくのがハリサシガメ幼虫方式のデコレーションなのかもしれない。

ハリサシガメの捕食シーンや拾ったアリの死骸をデコることは確認できていたが、捕食した獲物の死骸をデコるシーンは初めて見ることができた。もっとも貼りつけるための処理──接着剤のようなものの塗布等があったのかどうかなど《素材が貼り付くしくみ》は今回もよくわからなかった。


スポンサーサイト



コメント

No title
みんなやるんですね。それとアリグモは知りませんでした。カメムシは去年観察したので分かります。でも間違えますよ。ナイス!
No title
こんばんは・・・
決定的瞬間をしっかり拝見させて頂きました!
素晴らしいです!実に、素晴らしいです!
何がって・・・
その観察のセンスがです!
観察のポイントと言いますか、フィーリングと言いますか・・・
いつもいつも勉強させて頂いてます。
アリの亡骸を体に装着する場面の観察など、ドキドキワクワクしながら見入ってしまいました。

・・・同感です、威嚇と言うより、隠ぺいの意味が大きいのでは!と想います。
にしても、素晴らしい観察に感動した!と言う思いでいっぱいです!!!☆・・・
No title
> 四季の風さん

アリグモやホソヘリカメムシ幼虫の擬態は完成度が高いですね。見るたびに感心します。
以前、ナショナルジオグラフィック・ニュースでパナマのホソヘリカメムシ幼虫のアリ擬態が紹介されたことがありましたが、「日本にだっているのに」と思ったものです。
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

捕食した獲物をデコるシーンが目の前で展開された時はテンションが上がりました(笑)。本当ならもっとマシな画像で記録したかったのですが……。
昆虫のユニークな行動については、「いったい、どうして、こういうことになったのだろう?」とつい想像をめぐらせてしまいます。
観察しているうちに、だんだんイメージが見えいてくるという感じでしょうか。
まだまだ謎はつきませんが、見続けていれば、そのうち何かヒントがつかめるかもしれない……と思っています。

管理者のみに表示

トラックバック