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美麗クモ:ヨダンハエトリのダンス

きれいなクモ:ヨダンハエトリのダンス

先日、雑木林の下草の上でやけに鮮やかなハエトリグモを目にした。初めて見るクモで「こんなキレイなハエトリグモが日本にいたのか」と驚いた。僕はクモには(も)疎い。人面系のビジョオニグモなど、空目ネタに撮ることはあるが、ふだんクモはスルーしがち。なのだが、この時は珍しくカメラを向けた。残念なことにこのとき撮ったものはどれもトホホ画像になってしまったが……とりあえず(帰宅後調べて)このクモが【ヨダンハエトリ】という名前であることはわかった。腹部にある四本のオレンジ色の模様が「四段(ヨダン)」の由来らしい。鮮やかに見えたのはオスの成体だった。




見苦しい画像↑だが……配色が派手なのはお判りいただけるだろう(脳内補正で鮮やかさをイメージしておくんなまし)。黒ベースの体に赤と白・橙が映える。緑の葉の上にいたことも、より鮮やかさを際立たせていた感じがする。
これが熱帯の生き物であれば、(ハデな配色のものも多いので)こんなハエトリもいるのか……と納得してしまいそうだが、日本のクモとしてはちょっと異彩を放っている──知識が乏しい僕にはそう感じられ、「美しさ」に加えて「意外性」という部分でも感じるものがあった。
ハエトリグモといったら……なんとなく配色的には地味なイメージがある。徘徊性の小型ハンターなのだから、派手なカラーリングでは獲物に察知され逃げられてしまいやすくなるのではないか……という気もするし、目立つことで天敵にも狙われやすくなってしまうだろう。ちょっと考えると鮮やかな配色は生存効率(?)が悪そうな気がしてしまう。
目立つことで有利になるとすれば《警告色》としての効果だろう。もしヨダンハエトリが毒や忌避物質を持っているのであれば警告色としての役割りを果たすのかもしれない。しかし警告色の効果があるのであれば、卵を産むメスだって(むしろオスよりも優先的に?)採用していて良いはずだ。ところが検索した画像を見ると、メスはオスに比べて地味だ──ということは、《警告色》というわけでもなさそうだ。
オスがメスより派手な生き物というと、求愛ダンスがユニークなフウチョウ(極楽鳥)が思い浮かぶが……ヨダンハエトリもフウチョウのように派手な配色をメスに見せつけてアピールでもするのだろうか──などと冗談まじりに想像が展開した。
が──2度目にみつけたとは、オスは葉の上でフウチョウばりのダンスを披露していた。






体を左右に揺らす動きは、ちょっとミミズクのダンスに似ていなくもない。さらに模様のついた前脚(第1脚)を広げたり持上げたりもしていた。よく見ると、先端が白い第2脚も使っている。








オスの体を向けた先にはメスがいたので、求愛ダンス(ディスプレー)の類いの行動とみて間違いないだろう。




葉の陰に隠れていたメス↓。オスよりやや大きかった。




オスがダンスで駆使していた前脚(第1脚)にある橙色と黄色&第2脚の先端の白い模様はメスにはない。オスの脚にある模様は求愛ダンス用のアイテムなのだろう。
ヨダンハエトリのダンスを見るとフウチョウ(極楽鳥)の求愛ダンスを連想せずにはいられないが……ヨダンハエトリのオスの派手さは(も)メスにモテるために発達させたものなのだろうか?

ヨダンハエトリ♂のダンスの意味

しかし考えてみると、ダンス(誇示行動)自体は似ているものの、フウチョウ(鳥類)とヨダンハエトリ(クモ類)では脳味噌(?)の大きさ(処理能力)が全然違うのだから、生態システム(プログラム)としては違うのだろうなぁ(クモの方がよりシンプルなはず)……と、そんな気もする。
フウチョウのメスがオスの求愛ダンスをどう見ているかはわからないが、少なくとも踊るオスを獲物としては見ていないだろう。ヨダンハエトリのメスはオスを獲物と同じように認識しているかもしれない?
脳味噌(?)が小さなクモでは生命活動に必要なプログラムは鳥類よりもずっとシンプルなものだろう。捕食システムと繁殖システムを兼ねた共有プログラムであった方が効率的だ──という発想。

小さなハエトリグモは徘徊性の捕食者だが、同時に被捕食者でもある。出会った相手を「獲物」と認識すればアタックするし、「敵」とみなせば逃げたり隠れたりしなければならない。オスはメスと交尾するためにメスのと接触しなければならないが、体はメスの方が大きい。「獲物」として認識されれば食われてしまう危険があるし、「敵」と見なされれば逃げられてしまう。そこでオスはとりあえず「獲物」のふりをしてメスの注意を引きつける──そうしてクギ付けになったメスに接近するが、メスの攻撃を封じなければらない。オスのダンスにはその攻撃を抑制する効果があるのではないか?
ヨダンハエトリ成体オスの前脚(第1脚)には目立つ橙色と黄色の模様があり、第2脚の先端にも白い部分がある。オスはこの橙・黄・白の左右合わせて6つの明るいポイントを複雑に動かすことでメスの注意を引きつけているように見える。目立つポイントが複数あってそれぞれが動き続けていれば、オスを「獲物」として捉えたメスも同時多発注目点に攻撃ポイントが絞りにくくなるのではないか。つまりオスのダンスはメスの照準システムをかく乱する陽動行動なのではないか──という気もする。
また、ハエトリグモには獲物の動きに反応して襲いかかるタイミングのようなものがあって──オスのダンスはそのタイミングを与えない動きなのかもしれない?……などと想像してみたり。
メスの照準システムをかく乱する陽動行動なのか、攻撃のタイミングを封じる動きなのか……いずれにしてもオスのダンスで、メスは攻撃が抑制されたコンフリクト状態(?)に陥り、これがオスにとっての交尾のチャンスとなる──そんな解釈が展開した。

そして、ヨダンハエトリだけに余談だが……♂の先端が白い第2脚を広げる姿を見ていて、ふと触角の先端や途中に明るいポイントがある昆虫が浮かんだ。ハエトリグモの捕食対象となるサイズの昆虫で、長い触角の先端や途中に目立つポイントを持つものは、ひょっとして(ヨダンハエトリの第2脚と同じように?)ハエトリグモの照準システムをかく乱しているのではないか……というのは単なる思いつき。虫(クモは昆虫ではないが……)を見ていると、色々と想像が展開(暴走?)するということで。


最後のヨダン(余談)を含めて、全て素人の想像──頭の体操なので、こうした解釈が当っているかどうかはわからない。単に解釈のシミュレーションであって、真実──実際にどうなのかとは別のハナシである。
さて、今回ヨダンハエトリを見つけたのはこんな場所↓。手前の下草の上にいた。


最近見た昆虫から…

5月に入って色々な昆虫を見るようになったが……その中から好きなものを少し。




タキシード姿のキョンシーことラミーカミキリ。5年ほど前から自宅近くでも見られるようになったカミキリ。今年もムクゲで発生していた。


このところ注目していたアカスジキンカメムシ↑。本来の体色が整ってきた新成虫は、やはりキレイ。


カメムシつながりで人気が高い(?)ハート紋のエサキモンキツノカメムシ↑。僕が初めて《抜け殻落とし》を見たのは、このカメムシだった。


ウラナミアカシジミ↑も出てきたということで。緑の葉の上に止まっていると、やはりキレイだ。

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コメント

No title
こんにちは・・・
ここは(ブログでの生物学は)試験の答え合わせではないのでしょうから・・・
(何故だろうか?ああだろうか?こうだろうか?)と・・・
観て、想い、考える事にも意義があるのだと想います!
(或いは、確証を得る事に意義がある)

以前、ハエトリグモの仲間のネコハエトリのつがいの観察を行ったことがあります。
ネコハエトリは、ジョロウグモの様に♀が隙あらば♂を食べてしまおう的な行動に出ず、同じ巣内で仲良く二個体で過ごしていました。(種とケースにもよるのでしょうけれど)
ネコハエトリ♂も、ヨダンハエトリの求愛ダンスに似たダンスを♀に向けて行っていました。
蜘蛛全般に、視力は、さほど良い方では無いとの事ですが、それでもハエトリグモの仲間の視力は比較的いい方だと言われてるそうです。
もしかすると、ハエトリグモ全般(地味な色彩をしたハエトリグモでも)に求愛ダンスの行動がみられるのかも?と、ふと感じてしまいました。
それにしてもヨダンハエトリの鮮やかな色彩の意味は何なのでしょう?それに関する考察も興味深く拝見させて頂きました・・・☆
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

昆虫を扱ったブログは色々あって、考え方は人それぞれですが、僕の場合はその虫(昆虫やクモ)を見て、何を面白いと感じたか・どんなことに興味を覚え・どう考えたか──という部分に、その人の記事としての意義があると考えています。
同じ種類の虫を図鑑の引用とともに紹介するだけなら、みな似たようなものになってしまいますし……そのブロガーさんが、実際にその虫を見てどんなふうに感じたか(誰かの引用ではなくて)がブログの個性になるのだろうと。同じ種類の虫を取り上げていても、それぞれの感じ方は同じではないはずで、そのあたりが面白いところだろうと個人的には考えています。

ヨダンハエトリ♂の派手さは「たまたま」では片付けられられない気がします。フウチョウのような性選択が働いているのかもしれませんが、フウチョウとはまた別のシンプルなシステムがあるのではないか……と想像しています。

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