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アカスジキンカメムシ新成虫《抜け殻落とし》のケース

アカスジキンカメムシ《抜け殻落とし》の状況証拠



アカスジキンカメムシの羽化シーズン──このところ発生ポイントでは葉の上に出ている新成虫が次々に見つかる。近くの葉の裏で羽化したものと思われるが、周辺の葉の裏を探してみても抜け殻は見つからない(ことが多い)。抜け殻はどこかというと、新成虫がとまった葉の下──地面に落ちていることが多い。


これはアカスジキンカメムシが葉の裏で羽化した直後──葉の表へ出てくる前に《抜け殻落とし》をするからだ──と僕は考えている。先日の【アカスジキンカメムシ新成虫と抜け殻】の中でも記したが、寄生蜂や寄生蠅などの天敵にみつかる手がかりを排除するために抜け殻を落とすのではないか──と解釈している。今シーズンは20匹以上の新成虫を見ているが、近くの葉の裏に抜け殻が残されていたのは2例のみ。その1つは【アカスジキンカメムシの羽化《抜け殻残し》のケース】で記した通り、テントウムシの乱入によってパニクった新成虫が抜け殻を残して遁走するというアクシデントによるもの。ちなみに、このアクシデントで葉の裏に残された抜け殻は(その後雨や風の強い日もあったが)3日後まで同じ場所に残っているのを確認している。
葉の上に出ているアカスジキンカメムシ新成虫を見つけたら、その下を探すと《抜け殻落とし》によって落とされた抜け殻が見つかることが多い。




もし抜け殻が風などで自然に落ちたのだとすれば、飛ばされてしまって見つけることは難しい。新成虫の直下で見つかるのは新成虫によって落とされたのだと考えるのが妥当だろう。
──というように、今シーズンは《抜け殻落とし》の状況証拠は見つかるものの、まだ《抜け殻残し》行動そのものは確認できていない(過去にはエサキモンキツノカメムシの新成虫やアカスジキンカメムシ幼虫で確認している)。羽化シーズンの間に観察できないものかと探していると──好材料が見つかった。

羽化したて・新成虫と抜け殻のツーショット



葉の裏に羽化したてでまだ白っぽい新成虫と抜け殻が見つかった。


本来、抜け殻と同じ葉の裏で(抜け殻おとしまで)待機しているはずの新成虫がナゼか下の葉に移動してしまっているが……この抜け殻はこの新成虫のものだろう。どうして別の葉に移動してしまったのかこの時点では判らなかったが(後に判明)、ビミョ~に距離は置いているものの《抜け殻落とし》の圏内のような気もする。以前、擬木で脱皮後《抜け殻落とし》行動を見せたアカスジキンカメムシ幼虫が、落ちきらずに途中でひっかかった抜け殻を追い落すシーンを見たことがあった(【カメムシの抜け殻落とし行動】)──それを考えると、この新成虫が上の葉に戻って《抜け殻落とし》をすることもあり得そうに思えた。《抜け殻落とし》をするとすれば、おそらく新成虫が葉の表へ出る前だろう。新成虫が葉の表へ出るまでは観察のチャンスがあるだろうと考え、観察しながら僕も待機することに。
上の画像を撮影してから約25分後の新成虫↓。


同じ葉の裏にとどまってほとんど動きはない。前の画像と比べると触角や脚の色が少し濃くなってきたのが判る。
待っているうちに、そばで待機していると警戒して《抜け殻落とし》を始めないのではないかと心配になってきた。とくに今回は《抜け殻落とし》をするには別の葉に移動しなくてはならないのでハードルは高めかもしれない。僕を警戒して《抜け殻落とし》をあきらめるようなことがあっても困る……。動きがないので、少しその場を離れ、近くに羽化中の個体がいないかなどチェックしてみることにした。
アカスジキンカメムシの発生ポイントはルリカミキリの発生ポイントでもあり、アカスジキンカメムシの新成虫にやや遅れて姿を見せ始めている。


ルリカミキリは見つけても、近づくとすぐにポロッと落下して、なかなかうまく撮れない。今回もNGをくり返したり……もはや普通種となった(外来種の)アカボシゴマダラの春型が羽化していたので、これも抜け殻とのツーショットを撮ってみたり……。


ちなみに1週間ほど前に見かけたボシゴマダラの夏型パターンの春型(※訂正:春型・夏型を模様型の呼称だと思って「夏型」と記したが、「第1化→春型」という指摘をいただいたので「夏型パターンの春型」に訂正)↓。


白っぽい春型にまじって、時々黒っぽい夏型パターンが見られるのはどうしてなのだろう……などと考えつつ、そろそろ《抜け殻落とし》が始まらないかと戻ってみると──。

わざわざ上の葉に戻って《抜け殻落とし》



なんと、僕がいないスキに(僕が離れていたのは22分)《抜け殻落とし》が行なわれ、すでに抜け殻は落とされた後だった……。《抜け殻落とし》の現場を観察できなかったのは悔やまれるが……僕が見ている間は警戒してじっとしていたということなのかもしれない……。
新成虫は《抜け殻を落とするために、わざわざ上の葉に戻っていた》──抜け殻があった時との位置関係を比べててみると↓。


抜け殻が残っていたとき(画像左↑)は、抜け殻のある「上の葉」と新成虫がとまっている「下の葉」とは離れていた。しかし新成虫が「上の葉」に戻ったあと(画像右)、「下の葉」は「上の葉」と接している。僕が見つけた時に2つの葉が離れていたのは新成虫の体重で「下の葉」が下がっていたためだった。
「上の葉」で羽化が行なわれたとき、「下の葉」は「上の葉」に接しており、羽化したての新成虫がたまたまつかんだ葉が「下の葉」だったため、体重が移動すると「下の葉」は重みで下がり「上の葉」と離れてしまったのだろう。
さて、それでは、葉の裏から消えた──落とされた抜け殻は、いずこ? この個体がとまっていた木の下は草がしげって探すのが難しそうだったが、落差はさぼどなかったので、落ちた範囲も限られている──そう目星をつけて探すと、ほどなく抜け殻は見つかった。


抜け殻が羽化の行なわれた葉の直下で見つかったこと、新成虫がわざわざ抜け殻があった葉まで戻っていたことなどの状況から、22分の間に《抜け殻落とし》があったことは確実だろう。その行動を今回は確認できなかったのは残念だが、過去の観察例からすると、抜け殻に頭突きをしたり、抜け殻の下に体をもぐり込ませてプロレスのショルダースルーのように投げ落としたのではないかと想像する。


抜け殻があった葉に戻って《抜け殻落とし》をやり遂げた新成虫↑。見つけたとき(白っぽかった)から約1時間10分ほどが経過している。
見つけたときから2時間半ほど経過して↓(フラッシュ発光)。


もう少し体色が整ってきたら葉の表へ移動して行くのだろう。
落とされた抜け殻は↓。




今回、《抜け殻落とし》のシーンを見逃したのは残念だったが……新成虫が《抜け殻を落とするために、わざわざ上の葉に戻った》ことが確認できたことには満足。労力を要する(わざわざ行なう)行動にはきっと意味がある──この《抜け殻落とし》にも、やはり想像したような(天敵リスクを低減させる)意味があるのではないかと改めて感じていたりする。


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コメント

No title
面白い観察、と言いますより、より星谷さんの(羽化後のカメムシ成虫による抜け殻落とし)の説を強めた・・・素晴らしい観察結果、研究結果だと想いつつ拝見させて頂きました!
一つの個体の行動・現象の観察は一朝一夕で終わるものではありませんね!自分の仮設を確かめる行為にこそ、生物学の面白みがあるというもの(だと私は想います!)
このカメムシによる抜け殻落とし現象について「何故、カメムシ図鑑には載っていないのか?」ここが歯がゆい!

蝶は、羽化の際、蛹の中から外の様子を窺っているのだとか?
(だからこそ、「目を離したすきに羽化してしまっていた!」的ケースが多々生じるのだとか?)
それと似通った現象が、このカメムシの抜け殻落としにも起こった!・・・と考えたなら・・・
それを想像しただけでもゾクゾクと高揚致します。
星谷さんの(カメムシによる抜け殻落とし現象説)は、実に面白く意味深いものだと想います!!!☆・・・
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

カメムシの《抜け殻落とし》は興味深い行動なのに、これについて記させたものはまだ見たことがありません(僕が知らないだけかも知れませんが)。もっとメジャーな(?)情報であってよさそうな気がするのですが……と僕も思ってみたり。
虫の行動を見て、その意味を考え……その考えを確かめる・あるいは修正するためにまた観察する……というのは虫見の楽しさであり醍醐味ですね。
予想していないことが起こったり(今回は抜け殻と新成虫が別の葉に分かれて見つかるという状況)、アクシデントもまた考察の手がかりになったりするので興味の味付けになるような気もします。

以前、ツマグロヒョウモンの蛹を接写しようとしたら蛹が威嚇するように動いて驚いたことがありましたが……あれも蛹の中から近づく人影が見えていたのかもしれないと考えると合点がいきます。
昆虫の行動で「人目を忍んで……」みたいなことは、けっこうあるのかもしれませんね。
No title
おもしろいですね~。
目を離した22分の間に…
戻ったときに、抜け殻がなくなっているのを見て
「ええ?!」となった星谷さんの心情が伝わってきます。
少し離れた木陰からこっそり見ていたら抜け殻落とししますかね?
ってかなり怪しいですが… 私も機会があったら観察してみたいと思います。

蝶も蛹の中から外を見てるんですね、驚きです!
No title
> noriさん

待っている時は、いろいろ考えてしまいますね。このまま貼り付いていたのでは《抜け殻落とし》をしないのではないかとか、他にも羽化中の個体がいるんじゃないかとか……。前の記事の羽化の観察も、最初に見つけた「候補」の羽化待ちの間に近くを探して羽化が始まったばかりの個体をみつけられたわけですし(最初に目をつけた候補は結局その日は羽化せず)。

羽化中は近くで観察してても「続けるしかない」ようですが、羽化後の《抜け殻落とし》は警戒させると見せてくれないのかも……次回はもう少し慎重に観察せねばと思っています。

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