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民話風なぜ話:マツトビゾウムシとヤニサシガメ~ウバタマムシ

マツトビゾウムシと松の新芽

また牙付きマツトビゾウムシでもいないかと思って松の枝先を探していて気がついたのだが……松の新芽って、なんだかマツトビゾウムシに感じが似ている。


これ↑は、その松の新芽と先日撮った牙(脱落性牙状大顎付属突起)付きのマツトビゾウムシの比較。まるっこい体にかすれた茶色の模様の感じがよく似ていると感じた。
ちなみに牙の取れた(通常の)マツトビゾウムシはこんな感じ↓(昨年撮影)。


ということは……マツトビゾウムシは松の新芽に擬態しているのではあるまいか? そん予想を裏付けるようなシーン──うまい具合に新芽にとまったマツトビゾウムシが見られないだろうかと探してみたのだが見つからず……。天敵の目を欺くように松の新芽に溶け込んでしまっているために見つからないのだろうか?
マツトビゾウムシを見つけることはできなかったが、代わりにヤニサシガメが数匹見られた。


ヤニサシガメは幼虫で越冬する。越冬前に撮っていた松葉の上の幼虫↓。


ヤニサシガメもやはり松につくが、これは捕食性カメムシ。マツトビゾウムシ新成虫が現われる頃に活動を始め、マツトビゾウムシを捕食する姿も確認している↓。


マツトビゾウムシを探していた松でヤニサシガメを見つけ、ふと民話風なぜ話が(例によって?)脳内展開した……。

民話風なぜ話:ヤニサシガメはどうして捕食性になったのか

松の木にはよくヤニサシガメというカメムシがついています。カメムシの多くは針のような口で植物の汁を吸います。特定の種類の植物に集まるものも少なくありません。それでは松につくヤニサシガメは松の汁を吸っているのでしょうか? いいえ、ヤニサシガメのエサは他の虫など──他の虫などを捕えて針のような口を刺して体液を吸うのです。エサが虫であるなら、どうして松にいつくのでしょう?
じつはヤニサシガメも少し前まで、松について松の汁を吸っていたのです。松にはマツトビゾウムシという昆虫も生活していました。成虫が松の新葉を食べます。マツトビゾウムシの成虫が現れる3~4月頃には松の新芽ができます。この松の新芽はマツトビゾウムシにそっくり──いえ、マツトビゾウムシが新芽にそっくりなのでしょう。新芽にとまったマツトビゾウムシはちょっと見分けがつきません。マツトビゾウムシも自分の擬態術には自信を持っていて「松の新芽にとまってさえいれば、天敵の鳥やトカゲも気づくまい」と油断して、松の新芽にとまったまま居眠りをはじめました。
そこへ、ヤニサシガメがやってきました。この時まだ松の汁を餌にしていたヤニサシガメはてっきり松の新芽のつもりで、眠っていたマツトビゾウムシに針のような口を刺してしまいます。マツトビゾウムシは刺されて飛び起きましたが、ヤニサシガメに注入された消化酵素でたちまちダウン。ヤニサシガメも松の新芽だとばかり思っていたのが昆虫だと知ってあわてましたが……「なんだ、いつも吸っている松の汁よりも、ずっとおいしいぞ!」と意外な発見にビックリ。それ以来、ヤニサシガメはエサを松の汁から昆虫の体液に切り替えて、捕食性カメムシとなったのです。


もちろんこれはジョークで、ふと浮かんだ作り話。着想のきっかけは「松の新芽がマツトビゾウムシ成虫に似ている」と感じたことだが……果たして本当にこれが《擬態》といえるのか──マツトビゾウムシが実際にこの新芽につくのかは未確認。あくまで思いつきから展開した想像ということで。

ヤニサシガメが捕食性なのに松でよく見つかるというのはホントの話。ちょっと不思議な気もするが、これにはマツヤニとの特別な関係が取りざたされている。ヤニサシガメは体表面がベタベタしているのだが、これはマツヤニを塗りつけたものだという説(?)があって、昨年確かめるためにプチ飼育してみたが、謎は深まるばかりで真相はよくわからなかった(*)。
Ohrwurmさんに教えていただいたのだが、「ヤニサシガメの孵化には松脂が必要で、メスには松脂を溜め込む器官があって腹部末端から松脂を吸い込む」という驚くべき観察があったそうだ↓。

第56回日本応用動物昆虫学会大会2日目(2012年3月28日):自然観察者の日常

過ぎたるは猶(なお)及ばざるが如し? 完璧な擬態の落とし穴!?

マツトビゾウムシが松の新芽に擬態しているのかどうかはさておいて……昆虫の中には擬態に優れたものが少なくない。そういう虫を見ていると、植物への擬態が完璧すぎて、「昆虫食のハンターを欺くことはできるだろうけど……逆に植物食の生き物に植物だと誤認されて食われてしまうなんてことは起きないのだろうか?」などと心配になってしまうことがある。
ジョークのような発想だが、じっさい、木の葉への擬態で有名なコノハムシも葉のような翅を仲間にかじられてしまうことがある。コノハムシは視覚的に葉に擬態しているが、おそらく体臭も食べた葉に似ているのではないかと思う(化学擬態?)。体が葉と同じニオイであればアリなどに気づかれにくいという利点がありそうだが……仲間のコノハムシにはエサの葉としばしば誤認されてしまう(※【コノハムシの誤食】)。


※↑【コノハムシ漫画】より

松の枝先には大物も…ウバタマムシ



松ウォッチをしていていると、枝先に大物(?)ウバタマムシ(体長24~40mm)の姿も見つかった↑。立体木目模様風の隆起模様とシブい色合いが魅力のウバタマムシ成虫はマツ類の葉や樹皮を食べるそうだ。


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コメント

No title
昆虫の昔話というのはユニークですネ~!!
こちらでもカタクリが花芽を膨らませ、
もうすぐヒメギフチョウが飛び交います。
No title
> 東北の温泉バカさん

民話の中には、動物の特徴をネタにした由来話(なぜ・どうして話)がけっこうあるようですが、昆虫の特徴をネタにした「なぜ話」が、もっとあってもいいのではないかと……。
ふっと、こんな話が思い浮かびました。

ギフチョウはまだ実物を見たことがないのですが、時期になると、皆さんのブログで目の保養をさせいてただいてます。今年ももうそんな時期ですね。
No title
こういうところに居るんですか?擬態というのはそれなりに理由があるはずですね。というかそういうのが残ったのでしょうか。想像すると実に面白いと同時に難解にもなりますね。
神のみぞ知る?
No title
> 四季の風さん

マツトビゾウムシはまだ松の木では見たことがないのですが(たいてい松のそばの擬木で見ています)、ヤニサシガメやウバタマムシは松の枝先で見つかります。
擬態していると思われる昆虫は少なくありませんが、どうしてそんなコトになったのか……考えてみると色々想像力が刺激されて興味深いですね。
No title
こんにちは・・・
不思議な擬態に興味津々な私は、吸い込まれるように夢中に成って記事を読んでしまいました。

それが真実か、否かはともかくとして、「実にユニークで面白いお話でした。」
ヤニサシガメが捕食性に成った訳についても、真実味感がたっぷりですし!
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」についても・・・(笑)(笑)(笑)
こういったお話で、笑える感性を大切にしたいな!と想います!
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

昆虫を見ていると脳味噌が刺激されて、「なぜ?」という疑問に対してあれこれ解釈の脳内シミュレーションが展開さされますが……時にはジョークのようなシナリオも浮かんできたり……。
そんな着想も脳味噌を柔らかく保つ頭の体操的な部分で役に立っているのかも?

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