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どんでん寓話『川渡り』

虫見をしていると脳味噌が刺激されて色々な疑問や解釈、はては妄想めいた着想が湧いてくることがある。時には見ているものと何の関わりも無く、前後に考えていた事と何の脈絡もないイメージが突然ポッと浮かんでくるなんてことも……。そんな思いつきのひとつを寓話風に記してみる。


川渡り

川べりでひとり老婆がとほうにくれてた。向こう岸に行きたいのだが、橋が無い──老朽化した橋は数日前に落ちて流されてしまっていたのだ。川は深さが大人の腿程度だが、流れが速い。ひとたび足をすくわれたら、体勢を立て直すことは難しい──そのまま流され溺れてしまうだろう。年寄りが歩いて渡れる川ではなかった。
そこへ2人の若者──太郎と次郎の兄弟ががやってきた。
「ややっ! なんとしたことか。橋がないではないか!?」
彼らも川を渡るため、橋が落ちたことを知らずにやってきたのだった。
「私も向こう岸に行ねばならないので困っていたんです」と老婆。
「これは、川の中を歩いて渡るしか無いな」
太郎の言葉を聞いて老婆はため息をついた。「私にゃ、とても無理だわ……」
そんな老婆を気の毒に思い、次郎は優しく声をかけた。
「お婆さんは僕らが運んであげますよ」
それを聞いて太郎が眉をしかめた。
「まて次郎、おまえ何を考えているんだ。川は深くはないが流れが速い。俺たちだけでも渡るのは大変だぞ。お荷物をかかえていく余裕などない」
「お年寄りですよ。お荷物というほど重そうには見えませんよ」
「私ゃ、40kgほどです……」老婆が申し訳なさそうに口をはさむ。次郎は口調を和らげて太郎に頼んだ。「残して行くなんて、可哀想じゃないですか」
「可哀想なのはわかるが、俺たちが助けなきゃならない義理はない。他人の事を心配するより、自分のことを心配しろ」
ちなみに太郎と次郎の体格はほぼ同じ。弟の次郎の方が背はわずかに高かったが兄の太郎の方ががっしりしており、体重は2人ともに70kgだった。兄の方が体力は勝っていたのだが、その太郎は老婆を助ける気などまったくないらしい。
「わかったよ。兄さんには頼まない、お婆さんは僕がおぶって行く」
そうして太郎は1人で、次郎は老婆をおぶって川を渡り始めた。が、川の中程まできたところで、太郎は流され、川を渡りきることができたのは次郎と老婆だけだった。

実は川を流れる水の圧力は思いのほか強く、体重100kgの大人でも押し流す力があったのだ。体重70kgの太郎は足がすくわれ、40kgの老婆をおぶって110kgになった次郎は川の流れに耐えることができた──つまり、次郎はおぶった老婆が重し代わりとなって流されずに済んだのだった。

【教訓】自分の事だけを案じる者は救われず、他者をも案ずる者が救われる。

──なんて寓話はどうだろう?
ということを踏まえて、



川渡り ver.2

川べりでひとり老婆がとほうにくれてた。向こう岸に行きたいのだが、橋が無い──(以下同文略)
そこへ2人の若者──一郎と二郎の兄弟ががやってきた。2人は体格も同じ。体重もともに70kgだった。
「お婆さん、心配いりませんよ。僕らが向こう岸まで運んであげますから」
親切な兄弟、一郎と二郎は両脇から老婆を抱えて川を渡り始めた。
老婆の体重は40kg。70kgの一郎と二郎はそれぞれ20kg(老婆の体重の半分)ずつを負担する形となり計90kg──体重100kgの大人でも押し流す川の流れに耐えきれず、3人とも流されてしまいましたとさ。

【教訓】…………。(ときには親切心がアダになることも……)

というブラックユーモア的着想。
語られるエピソードから道徳的な解釈(教訓)を引き出しまとめるのが寓話のスタイルだが、そのエピソードから導き出された教訓をフィードバックして、もう1度そのエピソードをリプレイしてみたら……という着想。


●【冗区(ジョーク)】~メニュー~

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