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正月のフユシャク2017

正月のイチモジフユナミシャク@桜など

暮れから年明けにかけて見られるイチモジフユナミシャク。(成虫の姿は)この時期にしか見ることができないので、とりあえず「見られる時に見ておかないと損──」というビンボー根性で、つい発見率の高い桜の古木をチェックしに出かけてしまう(「桜ウォッチ」→略して「桜ッチ」)。


元日、桜の古木の日陰側にとまっていた新鮮なイチモジフユナミシャク♀。淡いブルーの小さな翅が美しい、ぷっくりした個体。


イチモジフユナミシャクを含むフユシャク(冬尺蛾)のメスは翅が退化して飛ぶことができない。若齢幼虫時代にクモのように糸を使って風に乗って移動すること(バルーニング)があるらしいが、他の蛾のように(産卵場所を選んで)自由に飛び回れるわけではないのだから、メスは生まれ育った木(食樹)で産卵することが大半なのではないかと想像する。新しい木へ移動し新天地を開拓するのがままならず、代々同じ木で繁殖しているのだとすると、やはり歴史の長い古木に依存しがちな昆虫なのかも知れない。
別の桜の古木で産卵行動をとっていたイチモジフユナミシャク♀↓。


実際に産卵しているのは確認できなかったが、腹端から産卵管をのばし、樹皮の隙間に産卵場所を模索するような動きをしていた。
年明けのイチモジフユナミシャク♀は産卵後の(腹が縮んだ)個体の割合が多くなる。
この♀も腹がいくらか短く(産卵途上?)、その対比で翅が長く見える↓。


淡いブルーの前翅の前縁の下から白っぽい後翅がのぞいている。イチモジフユナミシャク♀ではよく見られる姿勢だが、前翅より後翅が前にせりだしているのが、ちょっとおもしろい。
高架下の壁にイチモジフユナミシャク♂がとまっていたので、まったく容姿が異なる♀との比較用に撮影↓。


同じ種類なのにメスとオスでは、こんなにも違う──性的二型が顕著なところにも驚きとユニークさを感じる。
元日のプチ桜ッチでは、サクラの古木でイチモジフユナミシャク♀11匹を確認できたが、ぷっくり感のある新鮮な個体は2匹のみたった。

1月2日は、イチモジフユナミシャク♀9匹を確認したが、そのうち、ぷっくり個体は2匹だった。そのうちの1匹↓。


イチモジフユナミシャク♀は苔むした桜の古木の北側(日陰側)にいることが多いが、この♀は日向側にとまっていた。日光を受けて翅や体を覆う鱗粉がテカり、ちょっとキレイ。


背景の樹皮には、イチモジフユナミシャク♀と似たような色合いの地衣類が。
サクラ並木にまぎれた(?)ケヤキにイチモジフユナミシャク♂が2匹とまっていた。


このケヤキ↑の向かいには街灯があったので、夜間この光に引かれてやってきたのかもしれない。

1月3日は、イチモジフユナミシャク♀7匹を確認したが、すべて腹がちぢんだ産卵後の個体だった。


産卵後しばらく同じ場所にとどまっている個体もあり、そうした個体が累積していくことで、産卵後の個体の割合が多くなってきたと感じるところもある。新鮮な個体の発生率自体はどのように変化していくのか……よくわからないが、まだもう少し新鮮な個体に出会うチャンスは残されているだろうと考えている。
フユシャクでは、イチモジフユナミシャク♀7匹の他にチャバネフユエダシャク♀を1匹、ケヤキの幹で見つけた。


イチモジフユナミシャク♀には小さいながら魅力的な翅があるが、チャバネフユエダシャク♀の翅はすっかり退化して消失している。



年季の入った桜の古木が寿命のためか(?)ここ何年かでだいぶ伐採されたり大胆に枝打ちされたりしている。おそらくその影響でフユシャクも減ってきた感じがする。
虫見をしていると、虫たちにとって並木は、(ヒトに例えるなら)群島のようなものではないか──と感じることがある。古木ひとつひとつが島で、鳥のように飛べるものは島と島を行き来できるが、飛べないものは代々同じ島に暮らしている。1つ1つの木に歴史とともにプチ生態系が構築されている。群島がある日とつぜん海に沈んだところで、ヒトが絶滅することはないが、代々そこで暮らしていたヒトたちは姿を消すことになる……。
ある日、なじみの並木の古木が伐採されていたのを見た時、「虫たちの群島が消えた」と感じた。それで虫が絶滅することはないだろうが、観察の舞台が消失してしまったことに色々と感じることも多い……。


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コメント

No title
今日、狭山湖堤体で何本も桜の木を見ましたが、越冬中のヨコズナサシガメしか見つかりませんでした。
イチモジフユナミシャクには気が付きませんでしたがきっといたのかもしれませんね・・・。
この次は注意深く探してみたいと思いますが、いつ頃まで見られるでしょうか?
No title
> shinoさん

shinoさんが撮られていた堤防の下の桜でも、何年か前にイチモジフユナミシャクを見ています。堤防北側の陽があたる南斜面の桜より、堤防南側の日陰側に苔むしたいい桜がまとまっていて、ここで2桁程♀を確認したこともあったのですが、昨冬年が明けて数日経って行ってみたら、桜の枝がかなり大胆に刈り込まれていて1匹も見つかりませんでした。
イチモジフユナミシャクを見るなら年末から年明け1週間くらい……という感じを個人的には持っています。
桜の古木でも、しょっちゅう手入れがされて根元がきれいなものより、植込みなどに隣接したような環境の木が狙い目かもしれません。
No title
私もそうです・・・
いつも、並ぶ桜の古木を隅から隅まで観てる(つもり)ですが、なかなかフユシャクの仲間が見付かりません。(同じく目にできるのはヨコヅナサシガメやチャタテムシだけです。)
もしかすると・・・例年見付ける事のできない、私が観察するいつもの古木(島)には、フユシャクの仲間は住んでないのかも?・・・と、記事を拝読しながら、ふとそう思ってしまいました・・・
退化してしまった(己を守るため自ら退化させた?)翅とフユシャク(♀)の持つ立派な脚を見詰めながら・・・
虫の持つ壮大な生態のロマンを想いました・・・☆
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

フユシャク♀は(飛んで移動できないので)1度見られた場所で世代交代している可能性が高く、1度見られた木では遭遇率が高いといえるかも。逆に言うと遭遇率が低い木では丹念に探しても見つかりにくいかもしれません。
桜の木がたくさんある場所ではどの木にいてもよさそうな気がしますが……繁殖率を高めるためには、フェロモン密度の高い場所に♂が集まり→そこでは繁殖率がより高まって、♀密度も高くなる→食樹にまんべんなくいるのではなく、密度の高い場所ができるようになるのではないかという気がします。

また♂は飛べるので、街灯や夜間でも灯りがある場所周辺に集まりやすいでしょうから、そういうところにいる♀も繁殖率が高まり、密度が高まる可能性もあると思います。
そうした「密度が高い」スポットを見つけられると発見率も高まると思うのですが……。

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