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ハート紋のモンキツノカメムシ&…

ハートマークの(エサキでない)モンキツノカメムシ

「ハート模様のカメムシ」といえばエサキモンキツノカメムシ。エサキモンキツノカメムシといえば、トレードマークの「♥」──というのが一般的な昆虫ウォッチャーの認識だろう。背中(小楯板)のもようがハートの形をしていることでエサキモンキツノカメムシは、とかく嫌われがちなカメムシの中にありながら人気がある。よく似た種類にモンキツノカメムシがいるが、こちらは(ふつう)紋が丸みを帯びた逆三角形でハートには見えない──そのためかイマイチ注目度が低い。
最近読んだ『カメムシ おもしろ生態と上手なつきあい方』(野澤雅美・著/農山漁村文化協会・刊)でも、この2種の《形態上の最大の違い》として紋の形があげられていた。
エサキモンキツノカメムシ→《小楯板と呼ばれる三角形の大部分を覆う大きな黄色の紋は、何とハートの形をしている。これほど明瞭なハートの形の紋はほかの昆虫では見られない大きな特徴である》
モンキツノカメムシ→《黄色紋の前縁に切れ込みがなく、ハート形でなく丸みを帯びている》《このことからモンキツノカメムシは、マルモンツノカメムシとも呼ばれてきた》
だが……実際は、エサキモンキツノカメムシにもモンキツノカメムシにも個体差があって、紋の形だけ見ると紛らわしいものがそれぞれに存在する。
ということで、まずはエサキモンキツノカメムシの特徴=ハート紋を思わせる模様をつけたモンキツノカメムシ↓。


黄色紋の前縁に切れ込みがあるので、この点だけ見て判断すればエサキモンキツノカメムシということになりそうだが、これはモンキツノカメムシだろう(理由は後述)。雨上がりの擬木にとまっており体に水滴をつけている。
次に同日やはり擬木上にいたハート紋の本家(?)エサキモンキツノカメムシ↓。


単独で見るとわかりにくいかも知れないが、2種を比べてみると違いが感じられる。
あたらめて、黄色紋の前縁に切れ込みがない標準的なモンキツノカメムシ↓。


このモンキツノカメムシを横から見ると──(↑と同じ個体↓)。


カメムシの例に漏れず、モンキツノカメムシも捕まえようとすると悪臭を放つ。そのニオイのもとは胸の腹面に開口した一対の孔(臭腺開孔部)から発せられる。
さらに別個体のモンキツノカメムシ↓。


標準的な紋をもつモンキツノカメムシとエサキモンキツノカメムシとを比較してみると──、


①前胸背の色に違いがある。モンキツノカメムシ→緑色/エサキモンキツノカメムシ→茶褐色。
②側角はモンキツノカメムシの方が鋭く大きく突き出しており、エサキモンキツツノカメムシはゆるやかでいくらか丸みをおびたものが多い。
③紋の形は、モンキツノカメムシ→丸みをおびた逆三角形/エサキモンキツノカメムシ→ハート型。紋の大きさにも差があるようで、小楯板(前翅基部に挟まれた逆三角形の部分)の中での紋が占める割合(面積)はモンキツノカメムシの方が小さく、エサキモンキツノカメムシは大きめの傾向があるように思う。
これが正確な見かけ方かどうかはわからないが……パッと見、モンキツノカメムシの方が緑味が強く、紋が小さめに感じられる。
紋の形だけでは判断できない例──「なんちゃってエサキモンキツノカメムシ(実はモンキツノカメムシ)」を、昨年撮った画像から↓。


紋の形だけ見ればエサキモンキツノカメムシと判断してしまいそうだが、その割には紋は小さめで、前胸背は緑色──違和感がある。上述の理由から、これはモンキツノカメムシの方だろう。

本家ハート亀虫エサキモンキツノカメムシ



元祖というか本家というか……純正ハート紋のエサキモンキツノカメムシ。前胸背が茶褐色なのでモンキツノカメムシに比べると緑味が薄い印象。別の個体↓。


前胸の側角(肩の張り出し)には個体差がある。上の↑個体に比べ側角が立派な個体↓。


側角が立派な個体↑に対して、側角がほとんど消失した個体↓。


昨年も側角がほとんど消失したエサキモンキツノカメムシを見て驚いたが……個体差はけっこう大きい。
そして、個体差はトレードマークの紋にもある。冒頭の画像とは逆に、モンキツノカメムシ(マルモンツノカメムシ)っぽいエサキモンキツノカメムシ↓。


紋の形だけでは、モンキツノカメムシかエサキモンキツノカメムシか判断できないこともある──ということで、そのまぎらわしい個体を並べてみた↓。


模様の形だけを見ると間違えそうだが、全体を眺めれば、誤認するには違和感がある。前胸背の色や紋の大きさなどから、それぞれ「なんちゃって個体」だということが判断できる。


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コメント

No title
これは1種だとおもっていました。勉強になりました。ありがとうございます。
No title
> 四季の風さん

昔はこの2種は混同されてモンキツノカメムシとして扱われてきたそうです。
『カメムシ おもしろ生態と上手なつきあい方』によると、《モンキツノカメムシの学名は1874年に記載され、その後、カメムシ研究の大御所長谷川仁氏によって別種としてエサキモンキツノカメムシの学名が決定されたのは1959年のことである》──とのこと(「エサキ」は昆虫学者・江崎梯三博士の名を奉献したもの)。
知らないで見ると同じ種類と思っても不思議はないかもしれませんね。
No title
こんばんは・・・
私は、エサキモンキツノカメムシにしか出会った事がありませんが、その時、判別の方法に頼りにしたのは、やはり💜マークでした!(実に単純な判別法で、↑の記事を拝読しながら冷や汗が流れました。)

いつも想うのが・・・
星谷さんが出会われた虫の個体数の多さです!(さぞ、しっかりとした観察眼をお持ちなのだろうと敬服してます。)

「エサキモンキツノカメムシとモンキツノカメムシの違いが、実に判り易かったです!」
それも、多数の個体を観察されてるからこその賜物だろうと想い感じ、関心致しました!!!☆・・・
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

エサキモンキツノカメムシとモンキツノカメムシはよく似ているのですが、その見分け方として紋の形が♥か否かが判断の基準になっていることが多いように感じていました。ただ、個体によってはまぎらわしい紋が両種にあるので、その例をあげて比較してみました。
先日はカメムシ日和(?)で、特にエサキモンキツノカメムシとモンキツノカメムシが多く見られ、今回使った画像は昨年撮った♥模様のモンキツノカメムシの例をのぞいて全て同じ日に撮ったものです。この2種の多様さには驚かされます。

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