FC2ブログ

ハリサシガメぷちまとめ

逆《ハ》模様がトレードマークのハリサシガメ成虫





この夏、雑木林のふちにあたる石垣で初めて目にしたハリサシガメ。成虫は体長14.5~16mmほどの捕食性カメムシで、墨を流したような黒い翅に「ハリサシガメ」の頭文字──《ハ》を逆さにしたような模様が目をひく。そこでTokyoToraカミキリ同様、背中のトレードマークをロゴに使ってみたしだい。
前胸の左右の角(前胸背側角)もお気に入りだが、背中に突き出した棘状の突起がユニークでカッコ良い。


ハリサシガメは長翅型と短翅型が混在する翅多型で、翅の長さは個体によってかなりバラツキがある。僕が見た数ペアでは全てが長翅型♂と短翅型♀という組み合わせだった。






ゴミをまとってカムフラージュする幼虫



捕食した獲物の死骸を背負ってカムフラージュする幼虫──といえば、クサカゲロウの仲間が思い浮かぶが、カメムシの仲間でこんなことをするものがいるとは驚きだった。クサカゲロウ幼虫が「背中に乗せる」だけなのに対し、ハリサシガメ幼虫は腹や脚にまでもゴミをくっつけていて、かなり念入りだ。主にアリを捕らえて体液を吸うようだが、そうした獲物の残骸や土粒、ゴミなどを体にまとう。


石垣の上にいたハリサシガメ幼虫↑この画像ではハリサシガメ幼虫は画面右を向いている。乾燥した土の粒をまとっていて体はほとんど見えない。これが土の上ではボディラインが隠蔽され、ゴミにしか見えない↓(別個体)。


ちなみに、このハリサシガメ幼虫↑は画面左下を向いている(よく見ると触角と前脚ふ節が写っている)。

イリュージョンな抜け殻にビックリ



アリやワラジムシの死骸をまとったハリサシガメ幼虫↑(画面左を向いている)──と思いきや、これはハリサシガメが羽化した後に残された抜け殻。頭のうしろに、わずかに白い糸くずのような気管の抜け殻部分がのぞいているが、成虫が脱出した裂け目はわからず、一見これが抜け殻だとはとても気がつかない。
《抜け殻の見事さではチャンピオン》ではないかと感心する。ヘビもほぼ全身無傷のみごとな抜け殻を残すが、抜け殻であることは一目瞭然。セミの抜け殻もかなりキレイに残るが、背中に脱出するさいの裂け目は残ってしまう。脱皮(羽化)前の姿を完璧に残すという点でいえば、ハリサシガメの抜け殻は見事というしかない。
「抜け殻」とは気づかず「死骸」だとばかり思って回収した別の抜け殻↓。


抜け殻の触角や脚はもろく、すぐに折れてしまった。体の背面だけではなく腹面も土粒でおおわれ、腿節や脛節までゴミを付着させているのがわかる。


この抜け殻から付着物を取り除いていくと、抜け殻の頭部および前胸背面に成虫が脱出した(羽化した)裂け目が見えてきた↓。


付着物の中にはアリの死骸がいくつかあったが、ずいぶん大きさが違うものが混在しており、意外に感じた。この時は「ハリサシガメ終齢幼虫が、こんなに小さなアリを捕食するものだろうか?」と疑問に思え、「小さなアリは《若齢・中齢幼虫時代に狩ってデコレーションしていた素材》で、これを脱皮後も流用しているのだろうか?」とか、「ひろったアリの死骸をデコレーションしたのだろうか?」などと想像したが、後に目の前で成虫が極小アリを捕食する場面に遭遇し、小さなアリでも獲物の対象になるのだということを確認できた。
ちなみに、濡らした筆でさらに付着物を落とした抜け殻↓。


アリを捕食するハリサシガメ成虫



ハリサシガメ成虫がとまっていた石垣を極小アリが横切りかけた瞬間──それまでじっとしていたハリサシガメが素早く飛びつき、餌食にしてしまった。それぞれのステージで自分の大きさに見合ったサイズのアリ(ばかり)を狩るのだろうと思い込んでいたが、そうでもないらしい。羽化後の抜け殻に小さなアリの死骸が混じっていたのも、ちゃんとハンディングしたあとの戦利品(?)だったのだと納得した。
体に見合ったサイズのアリをハンティングする瞬間も一度目にしたことがあった↓。


この画像↑では判りにくいがハンティング直後、アリの頸あたりにハリサシガメの口吻が刺さっている。
別の食事シーン↓。


このときはアリを捕らえる瞬間は見逃したが、食事中、何度か口吻を刺し直しており、画像では腹の付け根に口吻が差し込まれている。

日本原色カメムシ図鑑でハリサシガメ

この夏はじめて知って、にわかに注目しているハリサシガメ。個人的には大いに面白いと感じているカメムシなのだが……その割りに、この昆虫に関する情報は少ない……気がする。

僕には高価な図鑑なので購入はあきらめていたのだが……陸生カメムシ類に特化した『日本原色カメムシ図鑑』全3巻あたりにはどう記されているのか調べてみたくなった。図鑑の内容を紹介したサイトを見ると、サシガメ科のカメムシは『日本原色 カメムシ図鑑』と『日本原色カメムシ図鑑 第3巻』に掲載されていることになっている。
図書館で読むことができないかインターネットで蔵書検索をしてみたところ、『日本原色 カメムシ図鑑』については、市内では中央図書館に1冊あるだけ。『日本原色カメムシ図鑑 第3巻』に関しては多摩六都(小平市・東村山市・清瀬市・東久留米市・西東京市)の全5市(以前は6市で構成されていたが田無市と保谷市が合併して西東京市となり現在5市)の全図書館の中で蔵書は西東京市中央図書館のただ1冊のみという寂しい状況が判った。
図書館には小遣いで買える人気作家の新刊本より、個人で買うのが難しい図鑑等の(調べもので活用できる)資料を充実させてほしい……などと思いつつ、それぞれの図書館へ出かけてみた……のだが……。

日本原色 カメムシ図鑑』に関しては、なんとハリサシガメは掲載すらされていなかった。9,030円(+税)もする陸生カメムシ専門の図鑑で、こんなおもしろいカメムシがスルーされていたとは……。
日本原色カメムシ図鑑 第3巻』の方は(ネットの書籍紹介では)サシガメ科110種が掲載されているとのこと。【特色】には《859点の鮮明な生態写真》《普通種はもちろん、稀種も生態写真で掲載されています》《可能な限り各発育ステージの写真を掲載》《成虫以外の、各齢期幼虫や卵などのステージの生態写真もできる限り掲載し、幼虫での同定もある程度可能になりました》などと記されてある。お値段も12,000円(+税)とゴーヂャスなので内容もきっと充実しているハズと期待して3駅離れた図書館へおもむいたのだが……ハリサシガメについての記述は思いのほかあっさりしており、「たったこれだけ?」とガッカリした。
記されていたのは形態の説明部分をのぞくと、【ハリサシガメ属】の項目で《幼虫はアリの残骸やゴミを背負うという特徴的な行動を示し、隠蔽のひとつと推察される。日本には1種のみが知られる》と記され、【ハリサシガメ】の項目で《珍しい種だが、荒原で地表を徘徊しているのが確認されているほか、墓地といった人為的環境からも見つかっている。アリ類を捕食する》と記されているくらい。
形態の説明部分でも翅多型については触れられておらず、特徴的な背中の棘状の突起についても(もしかするとこれが和名の「ハリ」の由来ではないかと想像していたりもするのだが)記されていない。和名の由来も、産卵時期&産卵場所・孵化の時期などの知りたかった情報も得られなかった。掲載されていた写真は短翅型の成虫♀と4齢幼虫の2枚だけだった。
「図鑑」は種類を特定できる情報があれば、それで充分なのかもしれないし、(限られたページ数の中では)種ごとの詳細情報よりも多くの種類をカバーすることの方が大事なのかもしれないが……個人的には、物足りなさを感じたというのが、正直なところ。
とりあえず、ハリサシガメの項目が載っている1ページをコピーしただけで、さびしく帰宅したのだが……『日本原色 カメムシ図鑑(第1巻)』では取り上げられず、『日本原色カメムシ図鑑 第3巻』でもあっさりめの紹介にとどまっていたハリサシシガメについて、「こんなにおもしろいカメムシなのになぁ」という気持ちから、あらためて興味深いところをプチまとめしてみたしだい。


スポンサーサイト



コメント

No title
昔からマグマ大使のゴアファンだった影響でしょうか?棘状に突き出した前胸背側角や小楯板からつき出した棘状の突起に心ときめきました。
ハリサシガメの翅の長さには、何やら秘密の匂いがプンプンしますね!(流石、カメムシ目だけのことはあります。)
不思議、疑問に出会った時、虫にインタビューできればいいな!という想いと、謎を解き明かしたいとあれやこれやと悩む考察を楽しみたいとの想いが交差します。
それにしても、アリの死骸をまとい身を隠すハリサシガメの幼虫の姿は衝撃的でした!
記事内の図鑑について・・・カラー写真で種は詳しく載ってるのですが、段階によって模様が変わる幼虫の写真も不十分ですし、おっしゃる通り!カメムシの説明が非常に淋しいものだと感じてます!(ハリサシガメに関してだけでも、星谷さんの記事の方がよほど詳しく、多様なお写真も素晴らしい!と感じました。何よりアリの死骸をまとう幼虫のお写真は、実に素晴らしいです!)

多くの種を載せる必要のある図鑑ですから仕方がないのでしょうかね?・・・
星谷さんのハリサシガメ図鑑で、私は十分楽しませて頂きました!!!☆・・・
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

マグマ大使のゴア!──懐かしいですね(笑)。そう言われてみれば、たしかにゴアっぽいような!?

成虫のルックスもさることながら、全身にゴミをまとう幼虫を始めて見た時は僕も驚きました。こんなカメムシがいるとは!──まだまだ謎も多いし、個人的には興味津々の昆虫だったのですが……カメムシ図鑑で、ちょっとテンションの差を感じてしまいました。
昆虫は種類が多いから、誌面スペースの関係から紹介内容にも限界があるので仕方ないのでしょうが……。
ちょっと寂しい思いをしたので……その気持ちを挽回すべく(?)、ハリサシガメの魅力をアピールしてみたしだいです。
そのアピールが届いたようで、ホッとしています(笑)。
No title
幼虫の見事な隠蔽ですね。
脱皮して抜け出した部分さえも…。

こんなに奥深いのに、専門書には僅かだなんて(・_・;)
No title
> ☆彡Maria☆彡さん

日本原色カメムシ図鑑 全3巻 は以前から気にはなっていて、ハリサシガメをきっかけに購入を再検討してみたりもしたのですが……今回はとりあえず図書館で見てみることにしました。
購入しなくてよかった……と密かにホッとしていたりします(笑)。

管理者のみに表示

トラックバック