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珍虫ハリサシガメ

「ハ」紋で疑問?ハリサシガメ



【ハリサシガメ】という、なんともユニークな昆虫をみつけた。きっかけは、前回記事のヒガシニホントカゲ。トカゲ密度の高い石垣でモデルを探していたときに、石垣の上にオシャレなカメムシがいることに気がついた。背中に「ハ」の字を逆さにしたようなトレードマークがあるサシガメ──それで「[ハ]Reverse(リバース)サシガメ」、略して「[ハ]Re(リ)サシガメ」……というのは、もちろん冗談。
見つけた時は種名はおろか、この虫についての知識は全く持ち合わせていなかった。何も知らず(逆さ)「ハ」紋のデザインが気に入っただけでカメラを向けたのだが……色々と疑問が噴出することに。「ハ」紋が疑問の波紋を広げるのであった……。


ハリサシガメが生息していたこの石垣は雑木林のふちにあたる。すぐ近くではキスジセアカカギバラバチも確認(残念ながら撮り逃した)。6月にこの寄生蜂を見かけた場所とは全く別だが、雑木林のふちという点では共通している。
さて、この昆虫の名が【ハリサシガメ】だと知ったのは後に調べてのことだが……(逆さの)《「ハ」紋》が気に入ったので、これを【ハリサシガメ】の頭文字としてロゴに使ってみた。


《「ハ」紋》もステキだが、前胸の左右に突き出した突起──前胸背側角もイイ感じ。さらに背中にはトゲ状の突起が↓。


一般民間人的には、ツノやトゲがある昆虫はカッコ良く感じてしまう。あるいは、ひょっとして、この鋭い棘状突起が、和名の「ハリ(針)」の由来なのだろうか?
初めてこの虫を見た時はその和名も知らなかったわけだが、頭の形や口吻の感じからサシガメ(捕食性カメムシ)っぽいという印象はあった。
そして、はからずしもそれを確認するシーンが目の前で展開した。ハリサシガメが目の前を横切ろうとしたアリを電光石火の早業で捕らえたのだ。


ちょっとわかりづらい画像だが……アリの首のあたりに針のような口吻を刺している。帰宅後調べて、アリを主食とするサシガメだと知ってガテンがいった。
石垣の上では、ハリサシガメのこんなシーンも↓。


翅の短いハリサシガメの側面から翅の長いハリサシガメが抱きついている──このシーンに、ちょっと驚いた。
一見、交尾のようにも見えるが、カメムシでよく見られる腹端をくっつけ、♂♀が逆を向く格好ではない(甲虫類のようなマウントでもない)。そして目をひいたのが、抱きつかれている個体の翅が短いことだ。これは成虫ではなく終齢幼虫なのではないか?──そんな疑問が浮かぶ。だとすると、交尾ではなくて、成虫が終齢幼虫を捕食(共食い)しているのか!? 両者とも背中にトレードマークの《逆さ「ハ」紋》があるのだから、同じ種類に違いないようだが……???
しかし、よく見ると、どうやら捕食ではなく、やはり交尾のようだ……。
これが交尾で2匹とも成虫だとすると──《オスは翅が長いがメスは翅が短い(退化している?)》ということになりはしないか?
昆虫の中には♂は飛べるが♀は飛べないものがいる──というのはフユシャク(蛾)などを見て知っていたが、カメムシにもそんな種類がいるとは想像したことがなかった。
それとも、抱きつかれている♀は羽化したてで、まだ翅がのびきっていないのだろうか?──いやしかし、体色はちゃんと定着しているようだし、翅だって固まっているだろう。あるいは、羽化不全で翅がのびきらずに固まったしまった個体なのか?……頭の中には「?」の連鎖が波紋のように広がっていく。
この♀の「短い翅」は、「たまたまの羽化不全」ではなさそうだ──やはり石垣の上に別のペア↓をみつけ、同じ状況であることを確認してそう判断した。






これがスタンダードであるとするなら……《オスは翅が長い・メスは翅が短い》ということになる。




↑とは別の個体↓。


↑と同じ個体↓。


ところが、この翅の長さは──個体によってまちまちのようなのだ……。


ペアの翅の長さの違いを見て、《オスは飛べる・メスは飛べない》のだろうと思ったが、あるいは両方飛べなかったり、♂♀に関係なく飛べる個体と飛べない個体がいたりするのだろうか……と、また「?」がわき上がる。ネット情報ではハリサシガメの分布は局所的だというような話もあったが、飛翔能力が無い・あるいは貧弱だったとすれば、そのことと関係があるのかもしれない?(飛べなければ分断した新天地へ進出しにくくなる)。
ハリサシガメの成虫には色々と驚かされるが……このあと、幼虫のユニークさにさらに仰天させられることに……。

デコレーションで偽装するハリサシガメ幼虫



ハリサシガメの成虫を撮影すべく、石垣チェックしていて見つけた奇妙な昆虫↑。虫の残骸やゴミをまとっている。鳥糞にはよく未消化なタネや昆虫のパーツなどが混じっていることがあるが、ちょっとそんな感じ。この虫を見たときはこれがオシャレな《「ハ」紋》カメムシ(その時点では和名を知らなかった)の幼虫であるなどとは知らず……帰宅後調べて、またまたビックリしたのであった。


昆虫の頭や脚、ワラジムシの残骸と砂粒のようなゴミを全身にあしらったユニークな姿。触角があるのでかろうじて虫だとわかる(触角がある画面右が頭)。うずくまっていたが、そのままだと判りづらいので、つついて体を浮かせたところを撮ったもの。こうして脚が判別できるポーズになると虫であることがわかる。


正体を知らずこの虫を見た時も驚いた。なんとなくサシガメっぽい感じはしたのだが、ゴミをまとうカメムシなんているのだろうか?──と頭の中には、やはり「?」が浮かぶ。クサカゲロウの幼虫が獲物の死骸を背負ったり、ジンガサハムシの幼虫が脱皮した抜け殻を背負ってカムフラージュするのは知っていたが……そうしたゴミで偽装する幼虫は、完全変態の昆虫というイメージがあった。不完全変態(幼虫も成体と似た姿をしている)のカメムシで、しかもこれほど徹底的にゴミ・コーティングする虫がいるとは……???
帰宅後、調べてこれが「ハ」紋カメムシの幼虫であることを知ったときには、僕の中で【ハリサシガメ】の珍虫度はさらにアップした。ハリサシガメは幼虫のときもアリを捕食するそうで、どうりでアリの死骸をまとっている個体がいくつかあった。


石垣の上だと「いる」のがわかるが、これが土の上に移動すると、動かないかぎり、まず気づくことはできないだろう。↑と同じ個体↓を直径2cmの1円硬貨と比較してみた。


不完全変態の昆虫は成虫と幼虫の姿は似ているものだが……これほど見た目の印象が違うカメムシも珍しいのではあるまいか?
《ゴミをまとう》というユニークな特徴をもつ幼虫が、それではなぜ成虫になると、その特徴をすてるのだろうか?──と考えたくなる。
まず思いつくのが、昆虫の成虫には翅がある──飛翔のさまたげになるのでデコレーションができなくなるという解釈。しかし、成虫になっても(翅が短く退化して?)飛べないのであれば、デコってもいいのではないか?──などと思わなくもない。しかし、成虫になれば繁殖活動をしなくてならなくなる。相手に見つけてもらうためにはカムフラージュが巧み過ぎては不都合なのかもしれない。幼虫時代は敵に見つかりにくくすることに専念(?)すればよいが、成虫になると婚姻相手には見つけてもらわなくては困る……ハリサシガメの背中の《(逆さ)「ハ」紋》は、もしかすると、そんな指標になっているのかも知れない──などと、やはり脳みその中では想像(妄想?)が広がり続けるのであった……。
それにしても、なんとも風変わりなカメムシがいたものだと感心するばかり。


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コメント

No title
こんばんは・・・
ハリサシガメの事を初めて観聴きし、驚愕、感嘆のため息です!

素晴らしいです!!!
お写真も素晴らしければ、生態、営み、幼虫全ての観察がパーフェクトにこなされており、(素晴らしい!凄い凄い!素晴らしい・・・)の心の叫びの連続でした。

成虫の棘状突起にも惹かれ、♂の脇側からの交尾スタイルにも興味を持ち、何より食べものの亡骸などを身にまとう幼虫の姿に・・・もうドキュ~~~ンと心打ち砕かれ、虜に成ってしまいました。
観察記録が、実に面白かったです・・・
実に、素晴らしい記録を拝見させて頂きました!!!☆
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

僕もこの虫の事は全く知らずに撮り始め、どんどんテンションが上がってしまいました(笑)。
(個人的には?)謎が多いままで宿題の多い虫という感じもしていますが……。

マイナーな虫(?)の中にも、おもしろい虫は隠れているものだ──と改めて感じたしだいです。
No title
すごいですねハリサシガメ!

私もぜひぜひ見てみたくなりました。

幼虫さんを見つけるのは私にはちょっと無理かもしれません(*_*;

トゲサシガメは見たことがありますが、ハリサシガメはユニークなデザインにとても面白い生態ですね!
No title
読み進むうちに、もう見てみたい見てみたいと興奮しました。ハの字もユニークですが、背中の突起はタケウチトゲアワフキを見た時の興奮を思い起こしました。サシガメの幼虫がクサカゲロウみたいな擬態をするなんて。成虫、交尾、♂♀の違い、幼虫の生態と、見ごたえがありました。
No title
へ~~!ふ~~!と読みいってしまいました。
ハリサシガメは見たことも聞いたこともありません。
星谷さんが強調してらっしゃるハの字いいですね~~!
この渋いピンクがかった色もいいです。
翅の短いものは幼虫だと思い込んでいたのでビックリです。
幼虫も魅力てきですね!
このデコレーションは何でくっついているのでしょうか?
どうやってくっつけるのでしょうか?
いや~~いいものを見せていただきました。
No title
> 夏風さん

こんな風変わりなカメムシがいるとは、思ってもみませんでした。
幼虫は石垣の上など背景が判りやすいところにいれば、一度見ると大きさや感じがつかめると思います。そうすれば「それっぽい塊」を探すとみつけやすいと思いますが……土の上だと(背景が分かりにくい場所だと)ちょっと見つからないかも。

トゲサシガメは知らず、検索してみました。全身トゲドケのサシガメもいるんですね。カメムシもなかなか奥が深いです。
No title
> S-Birdさん

憧れのタケウチトゲアワフキ!──僕はまだ実際に見たことはないのですが、あのツノゼミちっくな背中のトゲもイイですね。
やっぱり、背中にトゲがある虫はポイントが高いです(笑)。
No title
> ピンちゃんのママさん

ピンちゃんのママさんも、このカメムシは知りませんでしたか……僕も全く知らなかったので、ビックリでした。最初は「ハ」紋がキレイだったのでひかれたのですが、和名が「ハリサシガメ」と知って、これは頭文字にするしかないと(笑)。

成虫のカメムシで。これほど翅の長さに違いがあることにも驚きました。
幼虫のデコレーションも奇妙で不思議ですね。いったいどうやってくっつけているのか……謎のままです。
No title
これはまだ未見です、なかなか良さげな虫ですね。
これは撮りたいです(^^)

上の方のコメントを読んだんですが、タケウチは未見でしたか、ちょっと意外でした(^^;)
昔、私が出張中に嫁さんが近所の公園で採ってます。多分植栽で広がってるものと思いますが、その後私がビーディングしまくったんですが、追加採れず。
山に行けば、わりとよく見る虫です。
No title
> ともっくさん

こんなカメムシもいるのか──とびっくりした想定外サシガメでした。
タケウチトゲアワフキはブログなどでしばしば目にして、魅力的な昆虫だと憧れているのですが、まだ見たことがありません。
公園のようなところでも見られますか。まず食樹を見分けられるようにしなければ……。

僕の虫見コースは限られているので、普通種でもまだみたことがない虫はけっこういたりします。
No title
すごいですね~。ハリサシガメですか。
翅の短いメスの形態とか、おもしろいですね。
それにしてもいつもながらよく観察されていて…
夏休みの自由研究で出したら間違いなく賞がもらえますね!

幼虫の脚がゴワゴワしてますが
これもゴミをまとっているんでしょうね。
すごいです… 粘液みたいのでゴミをくっつけるのでしょうか。
No title
> noriさん

ヒトで言ったら、膝から下は見えるけど、太ももまで砂粒みたいなもので被われている感じですね。かなり手が込んでいて感心します。
ヤニサシガメは粘着物質で被われているというので、その粘着力が高くなると、こうこうコトができるようになるのだろうか……なんて想像してみたり!?
虫見をしていると、時々「こんなヤツがいるんだ!?」と驚くことがありますが、ハリサシガメにも驚かされました。インド人もビックリ!──って、僕はインド人ではありませんが(笑)。
No title
おもしろいですね、ハリサシガメ。

北海道でサシガメって見たことがなかったのですが、今年、見かけました。最近はカブトムシやゴキブリもいるようですし、だんだん生態系が変わってきたのでしょうか?
No title
> 佛生山孝恩寺さん

こちら(東京)で最も多く見られるサシガメというと、ヨコヅナサシガメではないかと思いますが、これが関東地方で見られるようになったのは1990年代だそうで……。やはり市街地で増えて来たキマダラカメムシが東京で確認されたのは2010年だとか……。他にも昔はいなかった昆虫が増えています。
自然が減って見かけなくなる虫も多いのでしょうけど、新たに進出しているものもいて……生態系は移ろっていくものなのかもしれませんね。

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