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アカスジカメムシの赤黒ストライプ



ACミランなアカスジカメムシ

アカスジカメムシを見るたびに(サッカーの)ACミランあるいはコンサドーレ札幌のユニフォームを思い浮かべてしまうのは僕だけではあるまい。ふだんファッションには全く興味がない僕だが、赤&黒のストライプ柄のレプリカユニフォーム(?)を着た人を見ると、にわかに反応してしまう。
「おっ! この人はアカスジカメムシファンなのか!? それとも、ただのサッカー・ファン?」


アカスジカメムシの赤と黒のストライプは大変美しい。昆虫にしては、ちょっと変わった美しさがある。
模様や配色が綺麗な昆虫は決して少なくないが……アカスジカメムシの「美」は他の昆虫とは少しばかり質を異にしている気がするのだ。
一般的な昆虫の模様の美しさは、自然の創り出した美──ヒトの脳みそがひねりだしたデザインとは次元を異にした複雑系といったらいいだろうか。一見(ヒトの脳解釈的には)不規則な形や配列に見えるが、デタラメというわけではなく、そこにはある種の調和が感じられる。


これ↑は珍しくもないセマダラコガネ(8~14mm)。葉の上にいたので撮ってみたら、意外にキレイだった(模様には個体差がある)。こうした自然の生みだした模様には人智の及ばぬ規則性のようなものがあって《複雑にして調和がとれている》感じがしないでもない。
ついでに、上翅の模様がキレイなので見かけるとつい撮ってしまうニイジマチビカミキリ(3.5~5mm)↓。


複雑でありながら調和が感じられる──それが、自然の造型物の美しさだ。
これに対し、アカスジカメムシのストライプ模様は「ヒトがつくりだしたデザイン」のようにスッキリ、シンプルである。じっさいにACミランやコンサドーレ札幌のユニフォームなど、よく似たデザインがヒトの世界には存在している。


この、ちょっと特殊な模様の意味するところを想像してみると──「赤と黒の取り合わせ」は「派手でよく目立つ配色」といえるだろう(これは捕食者の鳥の目にも目立つ配色にちがいない)。


そして「整然と並んだストライプ」は「認識しやすく・記憶されやすいパターン」と言えるだろう。


よく見慣れた虫であっても、その模様を思い出して描いてみろと言われたら、難儀する人は多いのではないかと思う。しかし、アカスジカメムシの赤と黒のストライプは他の虫に比べて格段に記憶に残りやすい。
妙な例えかもしれないが……昆虫の模様のパターンを数桁の数字で表現できるとすると、通常の昆虫のパターンは任意の数字の組み合わせ。それに対してアカスジカメムシのパターンはぞろ目の単一数字──「パッと見てすぐわかり記憶にも留まりやすい《整った配列》」といえるだろう。


「目立ち・記憶しやすいパターン」といえばスズメバチの「黄と黒の縞模様」が思い浮かぶ。


スズメバチに痛い目にあった敵は、この覚えやすい「黄と黒の縞模様」パターンを「危険」とセットで学習し、これを避けるようになる……。この配色パターンは、敵に対する警告サインとして機能しているのだと解釈している。敵が避けて無用な闘いが減ることでスズメバチの生存率は高まるというしくみだ。
スズメバチの警告的な縞模様は腹の節に沿ったボーダー(横縞模様)であり、構造的には実現しやすい模様だったように思う。
前記事で紹介したヨツスジハナカミキリ↓も上翅に黄と黒のボーダー(横縞)模様があって、スズメバチに擬態して(警告配色パターンを真似て)いるという見方もあるようだ。


擬態効果のほどはわからないが、ヨツスジハナカミキリのボーダーは、黄色地の上翅に並ぶ4対の黒い斑紋が左右でつながった形に見える。左右の模様がつながるというのは進化上そう難しいことではなかったろう。
スズメバチやヨツスジハナカミキリのボーダーと比べると、アカスジカメムシのストライプの出来映えは画期的な気がする。

昆虫の中にはボーダー(横縞)ではなくストライプ(縦縞)の模様を持つものもいる。先日クワの粗朶でみかけたアトモンマルケシカミキリ↓もその1つ。


アトモンマルケシカミキリ(4~6mm)の模様は途中で途切れているものの、黒地の翅鞘(上翅)に白い縦縞。ただ、この白線は翅の形にそってカーブしており、アカスジカメムシの整然と並ぶストライプとは、やはり少し違う。
ヤマトタマムシも翅鞘(上翅)に縦縞模様を配しているが、これも翅脈にそった配色で、翅の形にそってカーブしている。


アトモンマルケシカミキリやヤマトタマムシのように、ボディラインに沿って縞模様が形成されるのは、構造的に実現しやすそうだが、この場合はボディラインに沿って縦縞は歪みがちになる……ところが、アカスジカメムシの小楯板にあるストライプはボディラインの影響を受けずにほぼ平行に直線的に配置されており、この点が他の昆虫の縦縞模様とは一線を画して「人工物のようなデザイン」と感じる部分である。



コアオハナムグリとアカスジカメムシとの2ショット。ナチュラルなコアオハナムグリの模様に対し、アカスジカメムシの「みごとに《整った》ストライプ」は、まるでヒトが描いたかのよう……。配色・デザインともキャッチの良さは抜群だ。


アカスジカメムシの「みごとに《整った》ストライプ」は目につく背面限定。腹面では「赤地」に「黒のまだら」模様──これなら(?)ちょっとナチュラルな感じがしないでもない。


これ↑は昨年6月の記事【アカスジカメムシ:臭いはどこから?】の再投稿画像。「赤地」に「黒いまだら模様」の腹面。黒い斑の部分が、もう少しキレイに整うと、黒い帯状につながって「縦縞」に昇格(?)できそうだ。バラツキのある斑模様が列上に揃うと帯を形成する──つまり「まだら」は「縦縞」の前段階。「縦縞」を完成させるためには、ここからさらに《整う》プロセス(手間ひま)が必要ということだろう。
しかも腹側の斑模様は「手間をかけて」つながったとしても、そのラインは腹の形に沿うような形でカーブしたものになり、背面のような直線的な平行ストライプにはならないだろう。背面のような平行ストライプを実現させるには、さらに《整う》プロセス(手間ひま)を要すことになる。
この《整い加減》を例えるなら……アカスジカメムシ腹面の斑模様をワンペアとすれば、これが縦縞になるとツーペアもしくはフルハウス、背面の平行ストライプはフォーカードといったところだろうか?
目につきやすい背面側で、こうした難しいテ(フォーカードのような)がわざわざ実現されているのだから、そこには意味が──生存率を高めるような役割り(効果)があるのではないかと考えたくなる。


想像しやすいのは、スズメバチの「黄と黒の縞模様」のような警告パターンとしての機能だ。
カメムシは悪臭を放つことで知られているが、アカスジカメムシを食おうとした捕食者が、この忌避物質でダメージを受け、「こいつは食えない・食おうとするとエライ目に合う」と学習すれば、アカスジカメムシは捕食ターゲットから外され生存率が高まる──そんな構図がこの希有な(?)パターンを実現させたのかもしれない。
アカスジカメムシの赤黒ストライプは、警告パターンとしては非常によくできたデザインだと思う。この見かけからすると相当強烈なカメムシ臭を発するかと思いきや……肝心の「カメムシ臭」は意外に弱い……そんな印象を僕は持っている。
成虫は胸の腹面からいわゆるカメムシ臭は放つが(*)、これが僕の少ない経験でいうと他のカメムシに比べるとニオイは弱い。背面のハッタリ(警告)に対して実際の忌避能力はちゃんと見合っているのだろうか?


しかし「ニオイが弱め→忌避力が貧弱」と感じるのはヒト(僕)の感覚であって、肝心なのは、アカスジカメムシを食おうとした捕食者たちがどう感じるかだ。嗅覚的には低刺激でも味覚的には高刺激ということもあるかもしれないし、ヒトの感覚と違って、対象の捕食者たちにとっては強烈なのなのかもしれない。
あるいは臭腺の忌避物質とは別に、「食おうとするとエライ目に合う」秘密兵器(?)を他にも隠し持っているなんてことも、ないとも言い切れない?

あれこれ思うところはあるが……いずれにしても、このみごとな赤と黒のストライプが「識別しやすく・記憶にも残りやすい《整った配列》」であることだけは間違いのないところだろう。
こんなに見事な赤と黒のストライプをもった昆虫がいる知ったときは驚いたし、実際にであったときも(知っていても)インパクトは大きかった。
まるで、ACミランあるいはコンサドーレ札幌のマスコットになるべくして生まれた来たような昆虫!?──アカスジカメムシがどうしてこうしたチームのマスコット・キャラクターになっていないのか不思議でならないくらいだ。
やっぱり、カメムシということで、一般的にはウケが良くないのであろうか?
ACミランあるいはコンサドーレ札幌はアカスジカメムシにロイヤリティーを払ってでもマスコットになってもらえばいいのに……そう思ってしまうのは僕だけであろうか……。


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コメント

No title
アカスジカメムシってセリ科の花とのセットのイメージですね。
多摩地域の住宅街で見かけたのはちょっと驚きでした。

腹面は気にしたこと無かったけれど、ちょっと苦手な模様かも(^^;)
No title
> ともっくさん

アカスジカメムシは図鑑で見て知っていたのですが、実際にであったのは虫見をするようになってからでした。
「おーっ!? やっぱり、いるんだ、こんなのが!」──と、初めて見つけた時はちょっとした感慨がありました(笑)。

同じ植物が生えていても、いないところには全然いなくて、いるポイントでは何匹かかたまっている感じですね。
No title
こんばんは・・・
いや~~~!KAME64のユニフォームが似合う・・・
こんなにチャーミングな64を、是非!是非!!チームキャラクターにお勧めしたい!(と言うと、語弊があるのでしょうか?私は大好きですけど・・・)
アカスジカメムシの見事なストライプ模様は、捕食者には当然な上、私達虫ファンにも非常に印象深いですね・・・
(腹部の模様は初めて目にしましたが、これまたゾクゾクするほど素敵な模様ですね!)
模様は、一見毒毒しいので、臭いの効果+見た目で勝負なのでしょうか?
しかし、好んで?自分達が目立つ白い花に集まる行動も又憎いですね~~~!!!☆
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

アカスジカメムシの赤黒ストライプは、見るたびに「よくこんなデザインが実現したものだなぁ!」と感心せずにはいられません。これほどゼッケンが似合う昆虫も珍しいのではないでしょうか。

この赤と黒の配色がまた、白い花や緑の背景に映えるんですよね。アカスシジカメムシ・ファンには燦然と輝いて見えます(笑)。

エサキモンキツノカメムシのハート模様とアカスジカメムシの赤黒ストライプは、ヒトから見ても、ちょっと注目度が高いのではないか──なんて思っています。

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