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ヒバカリ幼蛇の捕食

ヒバカリ幼蛇(ようだ)がオタマジャクシを捕食

先日、ヒバカリ(ヘビ)の幼体がオタマシジャクシを捕食するシーンにでくわし、捕らえたえものを呑み込むまでを観察することができた。まずは、(ヘビ嫌いの人への配慮を兼ねてクッション用に)事後に撮影した現場の画像から(画像にヒバカリは写っていない)。狭山丘陵周辺には小規模ながら田んぼが点在していて、そのわきの小さな水路↓。


こういうところにはオタマジャクシやドジョウがいるが、見て判るように水は浅いし逃げるスペースは少ない。ヒバカリやヤマカガシが狩りを行うには適した環境だろう。
虫見をするようになってから(注意の焦点距離が虫見用に変わったことで)ヘビの発見率がだいぶ落ちていたが……久しぶりのヒバカリとの再会。この日も虫見に歩いていたのだが、田んぼの近くを通りかかったとき、水路の岸辺の水面の一部に波紋が起こった。ドジョウかオタマジャクシが動いたのだろうと思い目を向けると──「おっ!? ヒバカリ幼蛇の捕食だ!」
3mほど離れていたが、目に映った瞬間にハッキリとそれとわかった。僕は四半世紀も前だがヒバカリを飼育したことがある(*)。目に飛び込んできた「動き」は当時観察した「ヒバカリ幼蛇の捕食」そのものだった。
脅かさないようにそっと現場に近づいて確認したときにはヒバカリの幼蛇(幼体のヘビ)はオタマジャクシをくわえていた。


最初に目に映った波紋は、まさにヒバカリがこの獲物を捕まえる瞬間だったのだろう。その場面をハッキリ視認したわけではないが、(過去の飼育観察経験から)しっかり脳裏に思い描くことはできる。
岸辺のヒバカリは頭を水にくぐらせ、上半身を左右にくねらせて獲物を追いかける。水は浅いので獲物は上下方向に逃げることができずその動きは平面方向に限られるので、ヒバカリの攻撃をかわしにくい状況だ。水面下で獲物とヒバカリの頭の追いかけっこが展開され、獲物に追いつき、あるいは交錯する瞬間、ヒバカリはすばやく獲物に噛みついて水の中から引きだす──僕がしっかり視認できたのはそこからだった。
獲物をのみこむ様子を画像に収めたかったが、不用意に近づきすぎると獲物を破棄して逃げてしまうかもしれない。なるべく脅かさないように気を配りながらカメラを向けるが、ヒバカリは隠れるように物陰に移動するので、ベストショットで記録するのは難しい……。以下、控えめに撮った画像を時間の経過順に並べてみる。


うしろに写っている水面が狩りの現場。ヒバカリの幼蛇は成体より黒っぽい。
捕らえたオタマジャクシはヒバカリの頭よりもはるかに大きい。ヘビの口は大きく開くことができ、大きな獲物も丸呑みできる構造になっている。


「自分の頭より大きな獲物を呑み込む」というのは、知らない人には信じがたいイリュージョンではなかろうか。獲物を小さく噛みちぎって食べるのではなく、そのまま丸呑み。しかも……手(前脚)でもあれば口の中に「押し込む」こともできるだろうが、ヘビは手放し(?)状態のまま、大きな獲物を食道に引き込む事ができる。
ヘビの下顎の骨は先端がつながっておらず、クワガタの大顎のように左右に広げることができ、また別々に動かすこともできる。
まず右側の下顎で獲物をがっしりおさえ、左側の下顎を前進させて獲物を深くくわえ直して引きよせる。次にその左側でえものを固定したまま、今度は右側の下顎を前進させて深くくわえ直して引きよせる──この動作を左右交互にくり返して、少しずつ獲物をのどの奥に引き込んでいく。
今回は獲物が大きかったためか、カメラを警戒していたこともあってか、呑み込むのに時間がかかっていた。ちなみにヒバカリは獲物に巻きつくようなこと(呑む前にしめつけて窒息死させる行動)はせず、そのまま呑み込む。


見える位置から撮ろうとすると隠れるので、しばし撮影を自粛。↑の画像から22分余り経過して、ようやく食事も終盤に近づいたヒバカリ↓。


ヘビにも肋骨はあるが胸骨で左右がつながっていない。これが広がることで大きな獲物でもつかえずに呑み込むことができる。獲物を呑んで胴回りが拡張する時は、ふだんウロコの下にたたまれている皮膚がのびて露出する。
ちなみにヘビが脱皮するときにはこのウロコの間の部分がのびた形になるので実際の体よりも抜け殻の方が長くなる(*)。カメムシの脱皮や羽化では抜け殻より大きな本体が出てくるので驚くが、あれとは逆。




今回は捕らえたオタマジャクシを呑み終えるまでに30分を要した。


獲物を呑み込んだ後には、よく口を開閉する。ストレッチで顎や首回りの筋肉や関節をほぐし整えているのだろうか? 甲虫類が下翅を伸ばして畳み直すしぐさに、なんとなく似ている気がする。
野生のヘビが逃げようとする獲物を捕らえるのも大変だろうが、捕らえた獲物をを呑み込むのがまた一苦労だ……今回、見ている方も力が入って、ちょっと疲れた(笑)。
ヘビでは、せっかくとらえた獲物が大きすぎて呑めなかったりうまく吐き出せずに死んでしまうなんて事故もあるらしい。まるで食事のたびにお産でもしているかのようだ。
我々ヒトは食事を道楽にしてしまったが、野生動物にとって餌を摂るということは命がけの活動なのだとあらためて実感する。

大仕事を終えたヒバカリ幼蛇は水路の土の間にもぐりこもうとしたので、全体を撮るためにちょっと出てきてもらった。


(右手にカメラを構えているので)左手だけでは思うように扱えず……とりあえず撮る。ヒバカリ自体、小型の種類だが、幼蛇はとても小さく感じる。これで、ちゃんと狩りができるのだから大したものだ。
ヒバカリの特徴が判る画像を↓。


ヤマカガシにも黄色い首輪模様があったりするが、ヒバカリの首輪模様は背の側でつながっていない。腹板(腹側の幅が広いウロコ)ふちの黒点模様が「点線」のように並ぶ。


口を閉じているとスマートでかわいらしく見える。成長しても全長40~65cmほどの温厚なヘビ。


いた場所に戻すと、水路を泳いで渡った。その途中で止まったシーン↑。
あれだけ大きな獲物を丸呑みにした直後とは思えないスマートなフォルム。捕食シーンを見たことがない人には、こんな小さな頭であれほどの大物を呑み込むとは信じがたいのではないだろうか?
ヘビには不思議が詰まっている──四半世紀ぶりにじっくり鑑賞したヒバカリ幼蛇はこの後対岸に姿を消した。

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コメント

No title
ヒバカリは成長しても小さいへびだとおもいますが、幼体はこんなにちいさいのですね。それをオタマジャクシを丸のみ。すごいシーンです。
ところでヒバカリは毒じゃなかったですか。その日ばかりはから来ていると聞きましたが。ナイス!
No title
> 四季の風さん

ビバカリは無毒でおとなしいヘビです。
名前の由来は「噛まれるとその《日ばかり》しか命が持たない」──から来ているのだと僕も読んだことがあります。
無毒のおとなしい蛇がどうして毒蛇だと思われたのだろう……と僕も不思議に思い、僕なりの推理を記事最後にリンクした「【ヒバカリ】名前の由来考」で記しています。
No title
1枚目のご配慮写真ありがたい!。。。と、2枚目以降、薄目でスクロール^^
あ、意外に小っちゃい、頭の大きさがオタマジャクシとかわらないですね。

蛇かミミズに生まれ変わりたいというほどの蛇好きのブロ友さんが、去年滝のそばにいた蛇を持ち帰ろうと手で掴んだのが、確かヒバカリと言う名の蛇で、どんな蛇なのか怖いもの見たさで。。。。やっぱり直視できませんでした。

「名前の由来」、きっと星谷さん説の通りだと思います。
おとなしい生き物を守ろうとする昔の人の知恵だったんでしょうね。(^.^;R
No title
> 名もない小島さん

昆虫は好きな人と嫌いな人との落差が大きいですが、ヘビもまた好き嫌いがハッキリ分かれる生き物ですね。
苦手な人は、たぶんヒトとはかけ離れた姿──「未知な感じ」が「不気味」に映るのではないかと想像しているのですが、この「未知な感じ」を「不思議」と感じると、なかなか興味深い生き物で、「へえ!」と感心するところが多いです。

名前の由来に付いても「不思議」に感じて色々想像してみたしだいです。
No title
こんばんは・・・
私も、肩に力が入りました!(できた!最後まで幼蛇の捕食シーンを観る事ができた!)

おたまじゃくしが大きな獲物と記されてる時点で、相当小さい体だとは思いましたが・・・
ヘビの捕食シーンと解った時点で、泣いて逃げてた幼い頃!(今では、ヘビ自体を観る機会がありません)
こうして捕食シーンを最後まで観れた事に対して、イイ機会を与えて頂けたと想ってます・・・☆
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

僕らが目にする機会は少ないですが、自然の中ではこうした営みかあって生き物達が生存している──そんなシーンを確認できる機会に恵まれたので、しっかり目に焼き付けてきました。
ずいぶん昔ですが飼育していたことがあったので、懐かしい感慨もありました。
No title
またおじゃましています。
今日も、こっそり自然観察!さん、最後までご覧になれたんですね~スゴイです。
昨夜、薄目でスクロールだったので。。オタマジャクシの頭と同じくらいと思ったのですが、今日あらためてじっくり見させていただきました。(汗)
ほんと、オタマジャクシの方が断然大きかったですね。
こわいもの見たさをで何度も見ているうちに。。。案外大丈夫かも。。って
案外。。可愛いものですね、幼いのに、独りで獲物を求めて食す姿。
生きとし生けるもののささやかな営み。。
これでだいぶ免疫できました、落ち着いて山道が歩けそうです。<(_ _)>R
No title
> 名もない小島さん

苦手なモノはよく知ろうとせずに避けがちですから、苦手なままでありがちですが……その生き物について色々と知れば苦手感が薄れてくる……ということは、あるかと思います。

ヒバカリもよく見るとかわいいですよ(笑)。空目がいちどそう見えると、次からもそう見うてしまうように、ヘビもいちど可愛いと思い始めると、次からもそう思えるかも?(笑)。
No title
ヒバカリには出会った事が無いのですが…スンゴイ昔に実家で大きなアオダイショウがネズミを呑み込むところを見たことがあります、、、、、子供心に興奮して見ていたのを覚えていますが…
以前に神代植物公園でシマヘビの交尾を見たことがあります。http://blogs.yahoo.co.jp/chameleon_arms/53576283.html
No title
なるほど、拝見しましたが、面白い推測ですね。私は近くの葛西臨海公園で見たときにレンジャーの方にそういわれました。
ありがとうございました。
No title
> カメレオンーアームスさん

ヘビの食事シーンは、けっこうインパクトがありますね。時々デカすぎる獲物を呑んだヘビのニュースも目にしますし。

シマヘビの交尾は僕も以前、田んぼのあぜ道で見た事があります。
ブログを拝見しましたが、アオダイショウみたいですね。
No title
> 四季の風さん

「ヒバカリ」の名前は由来(その日ばかり)を聞くと覚えやすいですね。

「田んぼ等の干(ひ)上がりかけた場(ば)所で密度のオタマジャクシやドジョウを狩り(かり)するヘビ」なんて由来も強引に考えてみたり(笑)。これでは説得力がありませんね。
No title
ヒバカリってかわいいですよね!
オタマジャクシはちょっとかわいそうですが
ただでさえあまり見られないヘビの貴重なシーンに遭遇しましたね。
手に持ってるの、うらやましいです。
小さいんですね~。
私も以前幼蛇を見ましたが、持ってみたいです。
臭くはなかったですか?
No title
> noriさん

ヒバカリはとても可愛いヘビだと僕も思っています(なので昔、飼育したこともありました)。
ヘビは種類によって体鱗列の数(ウロコの胴回りの数)が決まっているので、小さな幼蛇では1つ1つの鱗が小さくきめ細やかで、よりキレイに感じます。
感触は昆虫よりはるかにイイです(笑)。蛇革の装飾品があるのもうなづけます。

ヘビはつかんだあと、ニオイが手につくことはありますね。カメムシのようなしつこいニオイではありませんが。
このときは、逃がしたのが水路だったので直後にその水で手を洗ったのでニオイは確かめませんでした。

ヒバカリはおとなしくてめったに噛みつくことはないので、持つにはオススメかも(笑)。
No title
ヤマカガシの幼蛇じゃん。
No title
> KRDさん

ヤマカガシの幼蛇ではなく、ヒバカリです。特徴は記事内に記した通りです。
No title
あんな大きなオタマジャクシが入っているとは思えないですよね❗ でも入っているのでしょう。
No title
> KS さんよりさん

ちょっと見たところ獲物を丸呑みにしたようには見えないスリムなプロポーションですが、筋肉でおしつぶされたような形で入っているのでしょうね。

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