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シロコブゾウムシの《いないいないバア》

《いないいないばあ》シロコブゾウムシは眼を隠す



クズの葉の上にシロコブゾウムシがでていた。13~15mmほどの大きめのゾウムシ。クズやハギ、フジ、ニセアカシア(ハリエンジュ)などマメ科植物の葉を食べる。


黒いつぶらな眼が目を引く。このクリッとした眼を見ると昆虫なのに動物(ほ乳類)っぽい感じがする(──のは僕だけ?)。僕はシロコブゾウムシを見たびにアグーチという綱齧歯目パカ科の動物を連想してしまう。


「ゾウムシ」の名がついているが口吻は短く、ちっともゾウっぽくない。それよりやっぱり「アグーチ虫」だ──と僕は密かに思っている。動物っぽい眼は今にもパチクリとまばたきしそうに見えるが、もちろん瞼(まぶた)のない昆虫がまばたきなどするはずがない──ところがある日、葉から落ちて死んだフリ(擬死)をしたシロコブゾウムシを見て仰天した。
「眼を閉じている!?!」──そう見えたのだ(*)。眼をつむる昆虫などあり得ない。
じつは触角で眼を隠していたのだが、このギミックには感心した。説明するより見た方が早い。久しぶりに披露していただくことにした。




よくみるとシロコブゾウムシの顔には触角を収納する溝がついていて、これにそって触角をたたむと、ちょうど複眼がかくれるようになっている。危険を感じて擬死状態になったときなど触角をたたんで眼を隠す仕様だ。本来なら、そんな非常時には外敵の動きが見えるように視界は確保しておいた方が良さそうな気もするが……あえて眼をかくすのには「外敵の確認」よりも大きなメリットがあるからに違いない。《目立つ眼を隠す》ことで「外敵に見つかりにくくなる」のではないか──僕はそう考えた。
昆虫の捕食者である鳥などは《眼》には敏感に反応する。昆虫には眼状紋とよばれる目玉模様を持つものが多いが、これも捕食者の鳥の反応が反映してのことらしい(鳥で行った実験では大きな目玉模様には威嚇効果があり、小さな目玉模様には攻撃を誘導させる効果があったそうな)。
昆虫の目玉模様に反応してしまうくらい鳥は《眼》には過敏に(?)反応する。そうした鳥達の強力な《眼サーチ》をのがれるために、シロコブゾウムシは眼を隠すのではないか?
危険を感じて落下したとき、擬死状態でじっと動かず、さらに《目立つ眼を隠す》ことで、より見つかりにくくし生存率を高めている──そんな解釈も成立しそうな気がする。



こちらは、欄干(らんかん)のフチを歩いていたシロコブゾウムシ。そばに生えた食樹ニセアカシア(ハリエンジュ)から落下し、木に戻ろうとして欄干を登ってきてしまったのだろう。枝のある、より高いところを目指して欄干最上部まできたものの、シロコブゾウムには飛翔能力がないので(※後述)これより先へは進めない。
さまよえるシロコブゾウムを正面から撮ってみた。


複眼はつぶらで可愛らしいのだが、縦に割れた口は怪しく恐ろしげ!?
ついでに、例のスペシャル芸《いないいないばあ》を披露したらニセアカシアにもどしてやることにした。


──ということで、


これだけパッチリした眼だと、天敵とも「目が合ってしまう」危険は高いのではあるまいか。やはり眼を隠した姿でいる方が敵には見つかりにくそうだ。
希望通りのショットを撮らせてもらったので、シロコブゾウムシをニセアカシアに戻す。すると飢餓状態だったのか、すぐに葉を食べ始めた。


葉の縁から弧を描いてしゃくるように頭が動くと、口が通過したあとの部分が消えていく。縦に割れた口は、こんな食べ方をするのに適している。




頭の描く弧が大きくなり、通過スペースの空間がどんどん広がっていくのがおもしろい。
ニセアカシアに戻す前に撮った大きさ比較ショット↓。


シロコブゾウムシの退化した後翅

僕はシロコブゾウムシが飛ぶところも飛ぼうとしているところも見たことがない。だから、危険が迫ると落下専門で、眼を隠して死んだフリ……飛べないものだと思っていた。しかし、ネット上では、(苦手ながら?)飛ぶこともできると明記しているサイトもある。飛ぶことができないと記されたサイトが多いものの、まれには飛ぶことがあって、それを見た人がいるのだろうか?
飛んでいるシーンの画像でもあれば、飛翔能力があることが確かめられるが、該当画像は見つけられなかった。飛べないことを示す画像でもあれば……と検索してみたが、これも見当たらず、しばらく疑問に思っていた。
しかし3年前に、偶然、翅鞘(前翅)の片方が脱落したソロコブゾウムシを見つけ、退化した後翅と思われる部分を見ることができた。


どうしてこのような姿になったのかは不明だが、この姿勢で擬木のふちにとまっていた。後翅があるはずの位置には細い膜状の器官が……。


矢印の部分が後翅だろう──退化して小さくなっている。これでは飛ぶことはできまい。
センチコガネのように飛べるものと飛べないものが混在している種類もあるのだから、飛べない(だろう)シロコブゾウムシがいたからといって全てのシロコブゾウムシが飛べないとは言えないのかもしれないが……たぶんシロコブゾウムシは「飛べない」のだろうと思っている。


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コメント

No title
こんばんは・・・
私は、ゾウムシの仲間としては比較的有名?なシロコブゾウムシにも出会った事が無く(何ともはや・・・やれやれ)
ですから、余計に楽しく記事を拝見させて頂きました。

・・・クヌギシギゾウムシも長い口吻の途中に触角を収納する箇所がありますが、あれは、食事や穴あけの時に触角が邪魔にならないため!も一因だと想われますが・・・
故に、「いないいないば~」的発想に、(ほぉ~~~!凄い!面白い!!)です。
「眼を隠す事で天敵から逃れる!」
この発想が面白いです!
確かに、あの円らな瞳は(目立ちます!)
又、「目の下の収納箇所の意味」を想いますと・・・
それが、種の保存方法だったのかも?と思えて来ます!
真実は解りませんが、素晴らしい発想に触れ、楽しい時が頂けたことに!!!☆・・・
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

長い口吻の途中から触角が生えているシギゾウムシ──あの細い口吻に触角が(じゃまにならないように)収納できる溝があると知った時は「へぇ!」と思いました。
本当に昆虫はよくできていますね。
シロコブゾウムシが触角で眼を隠すのを初めて見た時は、ホントに眼をつむっているように見え、仰天しました。
チャームポイント(?)でもあるクリッとした眼は目立つので、やっぱり隠す効果はあるのではないかと考えてみたしだいです。
これも例によって頭の体操ですが……昆虫は想像力を活性化してくれますね。

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