FC2ブログ

マツトビゾウムシの牙・早春のゾウムシ~ど根性蛹

昨日は気温が上がり、東京では20℃を越えたらしい。このところ閑散としていた擬木で久しぶりに色々な虫がみられた。この冬は擬木まわりの落ち葉が(そこで越冬している虫ごと)徹底的に撤去され、その影響かと思われるが擬木の虫が少ない。昨日もクモをのぞくと飛べない昆虫・幼虫などは例年より少ない気がしたが、ゾウムシ・テントウムシ・ハネカクシなどの甲虫類の成虫が目についた。気温が上がったことで、飛べる成虫が(周辺で発生したものが)擬木にもやってきたのだろう。
ただし、飛んで来ることができたということは、飛び去ることもできるということで──カメラを向けると飛び去られることも多かった……。
春のゾウムシが出てくる時期にはチェックしたいと思っていたマツトビゾウムシ新成虫にも(とりあえず)出会うことができたので、この日みつけたゾウムシを中心に……。

マツトビゾウムシの牙・短吻類新成虫の脱落性大顎突起

「するどい鉤のような牙のはえたゾウムシ」というと意外な感じがするが、口吻の短いクチブトゾウムシの仲間は、羽化直後そんな器官を持っているらしい(その後脱落する)。以前撮影したマツトビゾウムシの画像(撮影時には気がつかなかった)で、それに気づき「カッコイイのに、なんで脱落してしまうだろう? それなら何のための器官なのだろう?」と興味を持った。それでこの《ゾウムシの牙》を今春はちゃんと撮ってみたい──と思っていたところだった。そして昨日、狙いどおりマツトビゾウムシを見ることはできたのだが……動き回り飛び去ってしまったので希望通りのカットは撮らせてもらえなかった。《ゾウムシの牙》は、とりあえず写っていたが、残ってたのは右側だけで、左側はすでに脱落していた……。




日本大百科全書(ニッポニカ)の解説によると《(ゾウムシ>短吻類について)羽化直後の成虫は大あごに長い牙(きば)状の付属突起があって、蛹室から地上へ出る土掘りに役だつ。地上へ出た成虫は、植物を強くかんでこの牙状突起を落としてしまう》とある。噛んだ圧力で牙状突起を落とすのであれば、片側が残る(必ずしも両方が同時に落ちるわけではない)という状況は納得できる。
そこで、両牙残っている去年【3月のカミキリ・ウバタマムシ~牙ゾウムシ!?】でアップした画像を再掲載↓。




この《付属突起》だが……「羽脱用ツールとして誕生(進化)した器官」だと考えと、ちょっと不可解な気がする。羽化した新成虫が地上へ脱出したあとに脱落するのだから、《蛹室から地上へ出る土掘りに役だつ》と考えたくなるのはわかる。しかしそれでは、この器官がまだ無かったときは、どうしていたのだろうか? 《付属突起》が「羽脱に必要なツール」なら、それが誕生(進化)する以前は新成虫が地上に出てこられなかった(羽脱が困難だった)ことになり──だとすればその時点で生き残ってこられなかったはずだ。

「脱出専用のツールで用が済むと脱落する器官」ということで思い浮かぶのは、ヘビやトカゲなどが孵化のさいに使う卵歯(鳥類等では卵角)だ。これも孵化の際に卵の殻を裂くためにだけ使われ、孵化後脱落する器官だ。以前飼育していたヒバカリの孵化↓。


ヘビやトカゲの卵歯がどのように進化(誕生)したのかを想像すると……(あくまでも個人的な想像)、爬虫類の卵の殻は最初から強靭なものではなかったろう。両生類の卵のようなやわな造りのものから陸上に適応して乾燥防止や保護バリヤーのような役割りを獲得していったのだとすると、卵の殻の強度が徐々に増していく過程の中で、孵化する方も対応できるように進化した──それで「脱出専用のツールで用が済むと脱落する器官」である《卵歯》が誕生したのではあるまいか?
卵の安全を図るために卵の殻がより強靭に進化し、それに対応すべく孵化能力も進化した──そう考えば不思議は無い。

一方、ゾウムシの場合は……《付属突起》が進化の中で誕生した器官だとすると、最初(誕生以前)は、《付属突起》がなくても新成虫は地上に出てこられなければならなかったはずで、そこから徐々に脱出の難易度が高まり、それに対応して《付属突起》が誕生した……ということになる。
新成虫の羽脱の難易度の高まりとは何だろう? 生存率を高めるため、幼虫がより地中深く潜るようになり、そのため新成虫が脱出するための能力も鍛えられた──ということなのだろうか?

もう1つ考えられるシナリオは、《付属突起》が、進化の中で誕生した「新たな器官」ではなく、「もともとあった」という可能性だ。つまり、「必要性があって新たに誕生した器官」ではなく、「もともとあった器官が、(地上に出たあと)不要になって脱落するようになった」という解釈だ。

素人の直感的感想だが……マツトビゾウムシの牙が、《土掘りに役立つ》ことはあったとしても《土掘り用に誕生(進化)した》器官だとは、ちょっと想像しにくい気がする。「必要性から誕生した器官」というより「必要性がなくなって羽脱後は脱落するようになった器官」の方がまだ納得しやすい気がしないでもない。

ナカスジカレキゾウムシ





去年、牙状突起のあるマツトビゾウムシと同じ記事で取り上げていたナカスジカレキゾウムシ。今年はマツトビゾウムシを見た同じ日にであったので今回も一緒に投稿。
体の表面に細かい突起があったり地味ながら模様があって、ちょっと面白味を感じるゾウムシ。ただ、小さいので撮りにくい……。




実は、このテイクオフ・ポーズはフェイク(?)で、このときは飛翔しなかった。故障があって飛べない個体なら、粘れば希望のショットが撮れるかも?──と思ったら、この後本当に飛び去っていった。

早春のミヤマシギゾウムシ&チビシギゾウムシ



毎年、早春に見かけるミヤマシギゾウムシ。個人的には好きなゾウムシなのだが、体長4~4.5mmと小さい上によく動くので鮮明に撮れないことが多い。
前胸背面の小楯板と接する部分や上翅会合部にペールオレンジ(あわいだいだい色)~白っぽい紋があるのだが、この個体ではその紋がやけに赤っぽい。羽化して間もない新鮮な個体では赤っぽいのだろうか?──などと思ったが、当っているかどうかはわからない。


ガードパイプにとまっていたミヤマシギゾウムシも、このあと飛び去った。
ミヤマシギゾウムシも僕が撮るには小さいのだが……さらに小さくて動き回るチビシギゾウムシの仲間も出ていた。


ジュウジチビシギゾウムシは体長2~2.8mm、レロフチビシギゾウムシは体長1.8~2.7mmほど。この日は他にも極小ゾウムシがいくつか見られた。

丸っこいゾウムシと平たいヒラタムシ



欄干に小さな丸っこいゾウムシがいた。小さな虫はスルーしがちなのだが、模様がキレイだったのでカメラを向けてみることに。すると……こんな姿勢をとった↓。


警戒した時の姿勢なのだろう。前・中・後脚すべて揃えてしまうというのはユニークだ。この姿勢はちょっとクモっぽくも見えるが……この小さなゾウムシが小さなクモに似せたところで、何かいいこと(生存率に有利な擬態効果)があるのか、よくわからない。


少しすると顔を上げて警戒姿勢を解き始めたが、カメラを近づけるとまた警戒姿勢に度ってしまった。
丸っこいオオミスジマルゾウムシに対して、やけに平べったい昆虫・クロムネキカワヒラタムシも出ていた↓




プラスチックの擬木で発生!? 謎のど根性さなぎ今年も





甲虫類ではなく蛾のようだが……以前から何度か投稿している謎のど根性蛹(【プラスチック食の蛾!?/タヌキ顔の蛾!?他】)。どうしたことか、プラスチック擬木からせり出してくる昆虫の蛹……。昨年・一昨年とやはり3月に確認している。
他の場所で成長した蛾の幼虫が、蛹になる前に移動し、擬木の隙間(劣化してひび割れたり剥離した生じたスペース)に入り込んで蛹になるのか……あるいは、擬木の隙間に産みつけられた卵から孵った幼虫が、そうした隙間に発生した苔や黴その他の有機物などを食って育ち蛹になったのか……それとも、擬木の素材そのものを食べて育ち、蛹となって羽化直前に出現するのか……真相はわからない。

過去にみてきたのは抜け殻ばかりだったが、今回は羽化前の蛹がひとつあった。本来であれば蛹の時期は安全な樹皮の下で過ごし、羽化する直前にせり出してくる──というのが自然(合理的)な気がする。以前観察したセミヤドリガでは、繭から蛹がせりだし始めてから7~8分で羽化が始まった。擬木からせり出したこの蛹もすぐに羽化するのではないか──成虫を確認すれば正体も判明するだろうと期待したが、蛹に動きは無い……40分後にまた見に行ってみたのだが、変化は無かった。あるいは羽化ができずにこの状態で死んでいたのかもしれない。
ただ……この羽化前の蛹についてはちょっと不自然な感じもした。他の抜け殻では蛹の周囲の擬木表面が内側から押し上げられ「孔があけられた」あるいは「広げられた」かのような形跡がみられたが、羽化前の蛹の出た(?)孔は、以前からあった感がある……この蛹だけ擬木の中から出てきた感じがしない。もとからあった擬木の孔に別のところから持ってきた蛹を差し込んだように見えなくもない。そんなコトを人為的に行うということも、ちょっと考えにくい気もするが……羽化していないこの蛹だけ、ちょっと不自然な気はしている。

近頃閑散としていた擬木で、この日は色々見られたので、その一部をまとめてみた。

牙があるマツトビゾウムシほか ※両牙そなえたマツトビゾウムシ

スポンサーサイト



コメント

No title
全く感心します。こんな小さな虫を見つけられることに
kinnrinn 3
No title
こんにちは・・・
↑の記事で紹介されてます牙状の付属突起のあるゾウムシを目にしたことも無く、又存在することさえ知りませんでした!
付属突起が片側無いマツトビゾウムシに、驚き、見入ってしまいました。
(牙が片側にしかない個体をお見付けに成った事、カメラに収められた事に対しても驚愕です!)

「何故、羽脱後に付属突起が抜けるのか?」
この不思議に気付かれた事!又、それに対する2つの考察も、読んでてとても楽しめました!
楽しむとは・・・
私だったら、どう考えるかな~?と想いつつ、拝読してたからです。

・・・他のゾウムシ(スグリゾウムシなど)の口器に似てる様にも観えるマツトビゾウムシの牙状付属突起は!
・・・「不必要かな!?」
おっしゃる様に、進化の過程で、必要ないものとして処理される方向にあるのかもしれない!?と・・・

いつもながらの鋭い考察にため息をつくと共に、感動致しました!!!☆
No title
> kinnrinn 3さん

木にとまっていたら、なかなか気づかないと思いますが……擬木や欄干等の人工物にとまっていると、ずいぶん見つけやすくなります──そこらへんがギボッチ(擬木ウォッチ)の利点ですね。
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

クチブトゾウムシ類の牙は、知らなければ撮っていても気がつかないかも。
実際僕も以前も撮影中気がつかず、後にパソコンで画像を見て「なんと!」と驚き、「もっと、ちゃんと撮っておけばよかった」と悔しい思いました。
今回は「意識して」撮ろうとしたのですが……動き回り、途中で飛び去ってしまったので不完全燃焼感が残りますが、次にいつ出会えるかわからないので記事にしてみました。

スグリゾウムシなどもそうですが、口吻の短いゾウムシは(ルックス的に)なんとなく温和そうなイメージがあったのですが、鉤のような牙がある(時期がある)と知ったときは意外でした。この立派な牙が脱落してしまうというのも興味深いですよね。
こうした「!」や「?」についてあれこれ想像をめぐらす(めぐらさずにいられない)のが虫見の楽しみ・醍醐味ですね。
No title
「ゾウムシ」という名前のイメージから「大きい昆虫」と思っていましたが(見たことがあるのはオオゾウムイシだけ)こんな微少のゾウムシがいるんですね驚きです!それにしても飛び立つ瞬間の画像!おとなしくしているのを写すだけでも大変な虫を鮮明に捕らえたナカスジカレキ、素晴らしいです!
No title
> skittoさん

たしかに「ゾウ」というと「大きい」というイメージがありますね。ゾウカブトなんていうのもいますし。
ゾウムシの場合は長い口吻を像の鼻にみたてての命名なんでしょうが……口吻が短いものもいて、名は体を表していないものもけっこういますね。

小さなゾウムシもけっこう目にするのですが……小さい上に動き回るのでなかなかキレイに撮れず、スルーしがちです。でも、形や模様がユニークなものに出会うと、とりあえずトライしています。

昆虫のテイクオフ・シーンはキレイに撮れると嬉しいのですが……たいていNGになってしまいます……今回は飛びそうなので狙ってはいましたが、まぐれ的にうまくいきました。

管理者のみに表示

トラックバック