FC2ブログ

うつろう記憶媒体~失われし記憶ハ痛イ~

ビデオテープの時代





僕が初めて購入したビデオデッキ(ビデオテープレコーダー)はβ方式だった。これ↑は当時ビデオテープに録画したテレビ番組の内容を記したノート。後で確認したいシーンを探し出しやすいように、登場する動物種を順番に書き出していた。
家庭用ビデオデッキが登場する以前は、せめて音声だけでもとテープレコーダーで気に入ったテレビ番組を録音していたなんてこともあった。昔はテレビ番組は見逃してしまうとそれっきり。だから見たい番組はキアイを入れて視聴していた。
それが「録画」できて、好きな時に何度でもくり返し見られるというのだからスゴイ!──ビデオデッキは夢のような機械だった。ターゲットの番組があると、撮り逃すことが無いように放送時間の前からテレビの前に待機。カウントダウンするような気持ちで放送が始まるのを待ち受けていたものだ。当時はまだビデオデッキのリモコンもワイヤレスではなかった(ケーブル・コードで本体とつながっていた)。ビデオテープも高価だったため、録画時間を節約しようと(&再生時の利便性も兼ねて)、手動でCMカット(一時停止/解除)しながら録画していた。今から考えれば煩わしいが、当時は「テレビ番組を録画保存できるとは、なんと便利な機械だろう」とその機能にすっかり満足していた。

高価なビデオテープを準備したり、録画内容を書き出して整理したり……当時はそれだけキアイを入れてテレビ番組を視聴していたわけだ。人によって愛好番組は様々だろうが、そうした「放送を心待ちにしている人たち」が「質の良い視聴者」なのではないだろうか。テレビ局はこうした人たち(質の良い視聴者)に愛される番組作りを目指すというのが本来あるべき制作姿勢ではないかと思うのだが……実際は目先の視聴率競争にやっきになり、てっとり早く視聴率を稼ぐために、本来大事にすべきファン──《放送を心待ちにしている「質の良い視聴者」》をないがしろにし、《家事をしながら、あるいは惰性でテレビをつけている、いわば「質の悪い視聴者」》の関心を引くことばかりに熱心だった印象が強い。そのジャンルにふさわしいとは思えない人気タレントを起用したり(番組の内容よりもタレントの人気で視聴率を稼ごうという安直さ)や、過剰な演出や思わせぶりな演出、肝心なシーンを先延ばしにしてひっぱり続け、「おいしいシーンはCMの後いよいよ」的な展開で視聴者に散々気を持たせ、実際はしょぼい内容で番組を終えるという詐欺のような手法が増え、テレビファンを失望させていった気がしてならない。こうしたあざとい演出で目先の視聴率を稼ごうとする制作姿勢が、本当に放送を心待ちにし、キアイを入れてテレビに見入っていた「質の良い視聴者」を失望させ、テレビ離れに拍車をかけたのは確かだろう。僕も地デジ化を機にテレビから離脱している(*)。

ビデオの話から脱線してしまったが……話を戻して──、
録画内容の整理ノートからも判るようにテレビ番組を録画したビデオテープはたまっていった。録画機も、β方式→VHS→S-VHS→8mmビデオ→VideoHi8へと変遷していったわけだが……その過程の中で、番組録画のみならず、自分で撮影できる家庭用ビデオカメラが登場する。

映像を記録するカメラとしてはビデオ以前にも8mmフィルムを使ったものがあるにはあった。友人にこの8mm(ビデオではなくフィルム)カメラを持っている者がいて、高校時代にはアクション映画を撮って文化祭で上映したこともある。ただ、8mmフィルムは1本で3分あまりしか撮れず、ビデオのように撮り直しがきかない。撮影した映像を確かめるためには現像に出して何日か待たなければならなかった。また、フィルム代のほかに現像代もかかるし、音声の記録はオプション扱い──ビデオテープよりはるかに高価で不便なメディアだった。
そんな8mmフィルム時代を経験してきているから、1本のテープで(標準モードで)2時間も撮影ができ、撮影した映像をその場で確認することができ、そのうえ撮り直しもできる、しかも現像代もかからないビデオカメラは、これまたスゴイ製品だった。

ということで、僕もビデオカメラを購入し、最初は里山のヘビやカメなどの小動物や昆虫等を撮ったりしていた。そのうちビデオカメラを使って何か面白いことができないかと考え、インディーズ・スーパーヒーローミラクル☆スターを試作。8mmフィルムよりも不便だと感じたのは……8mmフィルムではカットイン・カットアウトの位置をコマ単位で決められるのに対し、ダビング編集の8mmビデオでは(当時の家庭用編集機器では)コマ単位での指定できなかったこと。カットのタイミングを合わせるのに苦労した思い出がある。そうして仕上げたミラクル☆スターは、なんとテレビ番組(「三宅裕司のえびぞり巨匠天国」通称「えび天」)の中で上映され、その放送をビデオデッキで録画する──ということもあった。





こうしてビデオテープはテレビ番組を録画したものだけでなく、ビデオカメラで撮影したもの、編集したものを含め、どんどん増えていった。
ビデオテープの形式がβ→VHS→S-VHS→8mmビデオ→VideoHi8へと推移したことは前記の通りだが、さらにDVDやBD、HDDへと記憶媒体も変化していった。

カセットテープの時代

話は前後するが、「映像」を記録する装置の前に「音声」を記録する装置──テープレコーダーがあった。僕が子どもの頃に初めて我が家にやって来たのはオープンリールのテープレコーダーだった。装置自体もかさばるし、録音・再生する時のテープのセッティングが煩わしい。その後登場したコンパクトなカセットテープを使うラジカセはラジオ放送を録音できたりレコードプレーヤーと直結できて画期的だった。
音声の再生専用装置としてはそれ以前からレコードプレーヤーがあったわけだが、好きな曲だけをまとめて聞くにはカセットテープにまとめる必要があった。またレコードは傷つきやすく取り扱いに神経を使う。友人の中には同じレコードを2枚ずつ買っていた者もいたくらいで、なるべくラジカセで録音したテープを聴くようにしていた。

ラジカセといえば──東海ラジオの深夜放送をラジカセで録音していた時期がある。東海ラジオ放送は名古屋の放送局だったが東京でも深夜にはなんとか電波が受信できた。兵藤ゆき氏がDJをつとめる「ミッドナイト東海」という番組に童話コーナーというのがあって、そこに投稿して採用された掌編童話がラジオドラマ仕立てで放送になったなんてこともあった。その音声作品はラジカセでカセットテープに録音してある。
掌編童話『雨の日の通信』のイメージ画(後に僕が描いたもの)と、「ミッドナイト東海」で放送されたラジオドラマを録音したカセットテープ&ケース↓。




当時主流であったカセットテープも、使い続けていると時々巻き込みトラブルがあってダメになることがあった。録音できる容量(時間)も今の記憶媒体に比べればずいぶん少なく、安泰の記憶媒体ではなかった。
再生専用メディア(記憶媒体)であったレコードはその後登場したCDにとって変わられることになるが、そのCDも、今では(楽曲もインターネットでダウンロードできるようになったため?)需要が減っているらしい。何年か前にCD店がずいぶん少なくなっていることに気がついて驚いた。かつては町のあちこちにレコード店はあったものだが……時代の流れを実感する。音声の記憶媒体も移り変わっていった。

ワープロの時代

ところで、冒頭のビデオノートの記述もカセットテープの内容の記載も僕の肉筆。当時はまだ日本語ワードプロセッサもなかった時代。今でこそ文書の作成はパソコンやスマホ等でのタイプが当たり前だが、当時は肉筆で一字一字記すしかなかった。
僕には同人誌活動をしていた時期があるが、自分が書いた作品を活字化することにはあこがれがあった。しかし実際に同人誌を作るとなると、活字を組むにはお金がかかる。そのため、オール手書きで同人誌を発行していたこともある。
《窓》は僕が主宰した同人誌で本文は墨一色、手書きの文字とイラストだった。その《窓》第2号と、読者からの便り&返事を紹介したページ↓。




このページ↑をは全て僕が描いた。字は書体を変えて記している(返事の内容は同人メンバーS氏の文章だが、文字は僕が記したもの)。
僕は元々字は汚かったのだが……同人誌を手書き文字で作る必要から、よそ行きの清書は「字を書く」のではなく「記号を描く」つもりで一時一時丁寧に記すようにしていた。しかしこれは時間&労力を要すものだった。
なので、日本語ワードプロセッサなるものの存在知ったときには激しく羨望した。その頃は1台数百万円もする高嶺の花だったのだが……わずか数年のうちに低価格化と普及が進み、僕もついに憧れのワープロを手にする日が実現する。手軽に文章を作成したり編集でき、しかも活字でプリントできるのが嬉しくて、個人紙・個人誌を作ったりした。そこでイタズラ書きから誕生したのが小説版ミラクル☆スターで、その後ビデオでの映像化へとつながったわけである。




ミラクル☆シリーズさくっと制作経緯より

ワープロの導入により、書いたり直したりする作業はずいぶんと楽になった。そして原稿の記憶媒体は原稿用紙からフロッピーディスクへと移行していく。
ところが……羨望の最新機器であったワープロ専用機自体も、廃れるのは早かった。パソコンの普及によって既に絶滅……ワープロ時代に使っていたフロッピーディスクも化石化してしまった……。

「より便利なもの」より「長く使えるもの」を

ビデオテープやカセットテープ、フロッピーディスク等に記録したものは多い。冒頭のノートを見ると、収集や整理に時間やお金(記憶媒体代)・労力をつぎ込んでいたのがわかる。しかしそうしてコツコツ蓄積してきたデータが、記憶媒体の変化によって(現役の再生機が残っていないため)利用できない状態にある。

ビデオテープ時代に撮影・編集したミラクル☆シリーズはかろうじてDVDにダビングしてあって今でも観ることができるが、カセットテープに録音した掌編童話の方は再生できない。ただ、こちらの作品は原稿用紙に肉筆で書いていた時代のものなのでオリジナル原稿は残っている。

テクノロジーの進歩は目覚ましく、次から次へと「より便利なもの」が登場してくるが、新たなものが出てくれば、それまでのものは古くなり廃れていく……。記憶媒体の変化で取り残され、使えなくなってしまうデータも多い。これでは便利なのか不便なのかわからない。現在使っているDVDやCDだって、いつまで使えるのかと考えると不安になってくる。

小学生時代のガリ版(謄写版)刷りの文集は今でも読めるが、その後登場した最新機器で記録した記憶媒体の多くが今では再生できない……。
けっきょく一番長く安定して利用できているのは最古参の紙媒体だ。便利なはずの最新記憶媒体がどんどん衰退・絶滅して行くのをみてくると、再生装置が無くても(ヒトが標準装備した器官のみで)再生(見たり読んだり)できる紙媒体の優位性が改めて実感される。
これからも便利な道具はたくさんでてくるだろうが、僕が切望するのは「より便利なもの」よりも「長く使えるもの」だ。記憶媒体は長く保存&再生(利用)できることが、何よりも大切なはずだ──僕はそう考えているのだが、最古参の紙媒体に勝るメディア(記憶媒体)はでてくるのだろうか。



スポンサーサイト



コメント

No title
私も最初リールのテープで録音、その後カセットが出来てすごいと思っていたらMDだCDだとなって。ビデオは一度も使ったことはありません。私がユーチューブに載せているのはカメラの動画です。
それにしても監督として大活躍だった歴史を覗かせていただきました。尊敬申し上げます。去年の秋にリフォームしたときにビデオとカセットは処分、CD,DVDは残っています。今はハードディスクですが壊れるという心配もありますが、その時はその時、死んだらあの代に持ってはいけませんしね。
大変興味深いお話でした。ナイス!
No title
何とも・・・
只々、ため息です・・・「凄い!」
ただ、その一言につきます!!!

発想力と言い、絵画、文才、創作力、運動機能・・・
「全てが、ずば抜けてます!」

ですから・・・
私、一ファンとして!ねっ!以前の様な疑問が湧いて来るわけですよ!
特に、星谷さんのお書きになる、ファンタジー・・・
あれを雨の日に、しっとり読み聞かせる!
「お母様方!是非、お勧めいたします!!!☆」
No title
一言一句読ませて頂きました!丁寧な文字、レタリング&イラストのすばらしさ、動画のアイディアなどなど・・・。私も8ミリカメラを持っていますが子供の成長記録止まり、今頃は黴が生えていると思います(笑)最近のTV内容、星谷さんと同じように感じており、ニュースやネイチャー物(ゲストによる)以外は視ません。普遍性の無い記録媒体の進歩・・・、商業主義のなせる技と知りつつ利用せざるを得ない現実・・・、現世での時間が残り少ない私としてはこの道を行くしか無さそうです(笑)
No title
> 四季の風さん

テクノロジーの進歩には驚くばかりですね。ただ、おいしい商品も意外に賞味期間が短いことに不満を感じています。
あれこれ感じること・思うことを記しておこうと思って、雑感を記事にしてみました。
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

いやいや、全て我流なもので……画力や運動能力は優れた人にはとてもおよびませんです。
ファンタジーは、日常を舞台とするものが好みで、現実と幻想の融合ということで──密かにフュージョン(融合)ファンタジーと呼んでいます(笑)。
No title
> skittoさん

8mm(フィルム)カメラも当時は画期的でしたね。当時は多くの人が使っていましたが、そのフィルムが今はどうなっているのか……メディアの移ろいに憂いを感じます。
テレビ番組には多くの人が同じように感じていると思います。制作側もわからないはずかないと思うのですが……それでも目先の視聴率にとらわれざるを得ない(?)テレビ界の硬直化はいかんともしがたいと感じて見切りをつけました。
No title
こんにちわ

最近の生き物番組(特に民放)はひどいですね。こどもたちが好きで見てますが、あの引っ張りかたは何とも…
なので録画して見るよーにしてます。
そーいえば録画機器の自動CMカットもいつの間にか消えましたね。聞いた話だとやはりCMカット機能には圧力的なものがあったとか…
メディアとは少し異なりますが、一眼もデジタルになり家電化しましたね。世代交代も早いし、値下がりも…
私のボディも買って一年で半値くらいまで下がりました(^^;)
No title
> ともっくさん

僕も昔は生き物番組をよく見ながら録画していたのですが、バラエティー化した頃から観るのにストレスを感じるようになりました。生き物の生態をそのまま紹介してくれればいいのに……もったいつけたクイズ形式にしたりタレントを出演させたり──いらない演出ばかりが増えていった気がします。
一時は生き物のシーンだけ録画したり抜き出して編集していたのですが、好きなジャンルをストレスを感じながら観るのが嫌になって足を洗いました。
デジカメの家電化は普及率をだいぶアップしたでしょうね。
僕も昔は(フィルム時代)一眼レフを持っていてたのですが失敗ばかりで苦手意識を植え付けられました(笑)。本体もお手頃価格でフィルム代・現像代がかからないデジカメがなければ、僕は虫撮りしていなかったかもしれません。

管理者のみに表示

トラックバック