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カメムシ臭の忌避効果

カメムシといえど食われてしまう!?



数日前、擬木の上でみつけた昆虫の腹面の一部(※訂正↑画像の撮影日は2016.1.5の間違い)。食い残しのように見える。中脚の付け根と後足の付け根の間に臭腺開口部(ニオイを出す孔)があることからカメムシの成虫だとわかる(カメムシは幼虫では背面に・成虫では腹面に臭腺開口部がある)。


腹面が緑色で、この時期も見られるカメムシを思い描き、ツヤアオカメムシが有力候補にあがった(※後にツヤアオカメムシであろうと確認)。1月にもしばしばは見られるツヤアオカメムシの生体↓。


擬木上に残されたカメムシ死骸を見て思ったのは──「カメムシでも、やっぱり食われちゃうんだな」ということ。
カメムシといえばクサいニオイを放つことで知られている。そしてこの悪臭は敵から身を守るための武器だというのが一般的な認識なのではないかと思う(仲間とのあいだで警報フェロモンや集合フェロモンとしても使われることがあるそうだが)。
つまり「食われないためのカメムシ臭」──という概念が出来上がっている気がする。
しかし、それでもやっぱり食われているのだとすると……「《カメムシ臭の忌避効果》って、どうなのよ?」と首を傾げたくなってしまう。
カメムシがサシガメやカマキリに捕食されているのは見たことがあるので、「カメムシといえど、他の虫に捕食される」ということは知っていた。




※【テングスケバ@桑】より再掲載↑(2015年8月撮影)

カメムシ臭の鳥に対する忌避効果は?

カメムシ臭は昆虫食の鳥に対して効果があるのではないか……と漠然と思っていたのだが……擬木の上に残されていた残骸は、状況からみると、鳥に食われたあとのように思われる。
例えばサシガメに捕食されたのであれば、こんな形で破壊されたりはしないはずだし、カマキリはほとんどが年を越せずに死んでいるだろう。クサカゲロウ類の幼虫やヒラタアブ類の幼虫、サシガメ類の幼虫が冬にも捕食しているのを目にしたことはあるが、この時期にツヤアオカメムシほど大きな昆虫を捕食できる昆虫は活動していないのではないかと思う。あるいは小型ほ乳類がかじった可能性も否定できないが、擬木の上で食餌し、食い残したのだとすると……やはり捕食者は鳥のような気がする。

昆虫にも鳥にも食われちゃうのだとすると……それでは、カメムシの装備しているカメムシ臭の効力とは、いかほどのものなのだろうか?
「カメムシ臭の忌避効果」は一般的イメージ(?)ほど強力ではないのかもしれない。
考えてみれば……カメムシの仲間には、前胸の両サイドにトゲのような突起=前胸背側角を持つものがけっこういる。あれは天敵に食われにくくするために発達した装備なのだろう。もし「カメムシ臭の忌避効果」が完璧なら、前胸背側角を発達させる必要も無かったはずだ。





「カメムシ臭の忌避効果」は「食われないため」というより「食われにくくするため」という程度のものなのだろうか。カメムシ臭を装備していることで他の虫に比べて狙われにくくなっているのだとすれば、それなりに生存率を高める役割りは果たしているのかもしれない。

そしてやはり擬木の上で見つけたツヤアオカメムシの死骸。これは全身残されていた。


見つけた時の状態↑。仰向けにして臭腺開口部が見える角度から撮影↓。


この全身残っていたツヤアオカメムシの死骸と比較することで冒頭のカメムシの一部がツヤアオカメムシらしいと確認できた。
全身残っていたツヤアオカメムシの死骸だが……破損状況から自然死ではなく、天敵から攻撃を受けたように見える。擬木の上に死骸があったことから、この時期に活動している捕食者を想像すると……やはり鳥に襲われた可能性が高そうな気がする。
同じツヤアオカメムシでありながら、この個体は丸ごと残されている。
捕食しようと襲った鳥(?)が……カメムシ臭をくらい、食べずに立ち去った──ということなのだろうか?
だとすれば「カメムシ臭の忌避効果」はあったことになる。この個体は死んでしまったが、カメムシ臭を体験した鳥が、次からカメムシを避けるようになれば、種としての生存率には有利に働くことになる。

そこで冒頭の一部だけ残されていたツヤアオカメムシを改めて考えてみる。
臭腺開口部が残っていたことでカメムシ成虫だと判断できたわけだが……この部分が残されていたということは、「臭腺をよけて食べた」──ということになりはしないか?
「カメムシ臭を嫌って」こんな食べ方(食べ残し方)をしたのであれば、「カメムシ臭の忌避効果」はあるといえるだろう。しかし、それを回避して食う技を身につけた鳥(種類なのか個体なのか?)がいる──ということになる。

ヒヨドリの糞からツヤアオカメムシの前翅が出てきたという記録があるそうだが、もしかしたら「(忌避効果のある)臭腺部分をのぞいて」食べていたのかもしれない?

ちなみに、食べ残された臭腺開口部付近の残骸だが、翌日も同じ所にあったので試しにニオイを嗅いでみると──カメムシ臭がしっかり残っていた。こんな状態で少なくとも1日たっているのに、なお力いっぱいにおうカメムシ臭あなどりがたし! どうしてこの部分だけ食べ残されていたのか、合点がいった。

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コメント

No title
カメムシでも捕らえられることがあるのですね。天敵はいないものと勝手に思っていました。
No title
> 佛生山孝恩寺さん

カメムシが悪臭を放つことは広く知られていて、「だから捕食されない」というイメージが浸透しているような気がします。
でも、意外に(?)食われてしまうこともあるみたいですね。
カメムシ臭の忌避効果を人は過大評価しているのかもしれません。
No title
蜘蛛の種名は忘れてしまいましたが・・・
蜘蛛の網から逃げたカメムシの名前は、その強烈な臭いで、種名を覚えてます。
そのカメムシは、クサギカメムシでした。
カメムの仲間の臭いも強いものから、弱いものまで様々ある様に、カメムシの臭いに強い天敵(鳥)が居るのかもしれませんね?(う~~~ん?)
それ以上に、もし人がお魚の骨だけ避けて食べるように、臭腺部分だけ避けて食べる鳥が居るとしたら・・・
これまた進化の過程での生き残り作戦なのでしょうか?

今回も、非常に興味深い考察を拝読させて頂きました!!!☆・・・
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

クサギカメムシもけっこうクサいですね。昨年、臭腺を確認しようとして指にシミをつけられた記憶が……。
このクサギカメムシより濃いシミをつけたキマダラカメムシ(ニオイも強めだった)──なのにハラビロカマキリ幼虫に食われるのを見て「それでも食われちゃうのか……」と意外に感じました。

カメムシ臭の忌避効果はアリで顕著だというような記事もありましたが(アリの警報フェロモンと似ていて、アリに危険が迫っていると誤認させるらしい)。
カメムシの種類・捕食者の種類によって、効果の程はだいぶ違うのかもしれませんね。

カメムシ臭がニガテながら、これを回避して食べる──というのは、考えてみれば、あってもよさそうな気がしますが、これまで考えたことがありませんでした。
自然は色々な可能性を模索するものだと、あらためて感心しました。
No title
カメムシも食べられるんですね!
もしかしたら、臭いところをよけて食べたのかもって・・・・

もしそうだとしたら、本当にすごい!
生きるか死ぬか、生き残れるか?
皆一生懸命考えて生きていて。
考えているとワクワクしますね♪
No title
ふと思ったのですが、昆虫に臭いを感じる器官はあるのでしょうか?
カメムシが主に防御しようとしているのは対鳥類であって、ハラビロのような対昆虫の防御は策がこうじられていないとか。
No title
> メレンゲさん

「カメムシはクサいから食われない」──そんな印象がありますよね。
忌避効果があるのは確かなのでしょうが、相手によって(?)という部分もけっこうあるのかも知れません。

また、カメムシの状態によっても(臭腺のニオイ物質を放出しきってしまってガス欠状態?だと)カメムシ臭で対抗できないこともあるのかも──なんて気もします。

クサい臭腺部分を食い残した死骸を見て、「こんなテもあるのか……」と鳥(?)の知恵に感心しました。
No title
> 佛生山孝恩寺さん

僕もなんとなくカメムシ臭(味?)は鳥対策というイメージを持っていました。

昆虫ではよくフェロモンというニオイ物質が仲間コミュニケーションに使われているようですから、ニオイを感じる気管はあるのでしょうね(蛾などでは♀を探すため♂の触角が発達しています)。
カメムシ臭はアリの警報フェロモンと似ているそうで、アリに対しては忌避効果(アリに危険が迫ったと誤認させることで狙われない)があるという記事がありました。

カメムシを狭い密室に入れて刺激すると自ら発したカメムシ臭で死んでしまうこともあるそうで……武器としての威力もあるにはあるみたいですね。

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