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あわいブルーの冬尺蛾



冬にだけ(成虫が)出現する「フユシャク(冬尺蛾)」(総称)と呼ばれる蛾がいる。♀は翅が退化して飛ぶことができないという特徴を持っていて、その「蛾とは思えない」姿はユニークでとても面白いのだが……僕は当初、色合い的には地味な印象を持っていた。だから初めて「青いフユシャク♀」を見た時は「こんなキレイなフユシャクのメスもいるのか」と、とても驚いた。それがイチモジフユナミシャクだった。
イチモジフユナミシャク♀は退化した(飛ぶことができない)とわかる小さな翅を持っていて、ちょっと「陸のクリオネ」を思わせるフォルムだと個人的には思っていたりもするのだが……この前翅があわいブルー~グリーンで、シャレたファーの肩当てマントを羽織った貴婦人っぽくも見える。この青みが強い個体が特に美しい。
色合い的には格別美しいと感じるイチモジフユナミシャク♀だが……ただ、その美しさは長くは続かない。イチモジフユナミシャク♀の翅や体はウロコのような鱗粉(鱗片)で覆われているのだが、時間が経つにつれ、この鱗粉がめくれたり剥がれたりして、みすぼらしく変貌してしまう。産卵後にはボディラインも崩れ……新鮮な個体が美しいだけにその落差には切なさを感じてしまう。
そんなわけで、「美しいイチモジフユナミシャク♀を見るなら発生当初が狙い目」──と思っているのだが、狭山丘陵では12月半ばあたりから出現し始める。
「魅惑のブルー~グリーン」の濃さや翅・体の模様には個体差もあるので、なかなか希望通りの♀に出会えないこともあるが、今シーズンは「希望水準」に達するメスを撮ることができた。

青みがかった小翅が美しいイチモジフユナミシャク♀



イチモジフユナミシャク♀については、これまで苔むした桜ウォッチ(サクラッチ)で見つけることが多かったのだが、今シーズンは擬木ウォッチ(ギボッチ)で目にすることが多いような。
この個体は青みがかった前翅の黒い帯もようが途切れている(冒頭の個体では黒帯が明瞭)。今回紹介する♀は全て頭を上にしてとまっていたが、画像を90度回転したもの↓。




同じ個体を反対側から撮ったもの↓。




この瓦のような並んだ鱗粉が、時間の経過や風を受けてめくれたり剥がれたりしていく。


実際はこのように↑頭を上にしてとまっていた。
ちなみにオスはどんな姿をしているかというと……↓。


桜の幹にとまっていたイチモジフユナミシャク♂↑。オスには飛翔能力があってメスとはまったく違った──ごくふつうの蛾に見える。


飛翔能力の差から♂♀の「形」に違いがあるのはわかるが、「色」にこれほどの違いがあるというのは興味深い。
ちなみにイチモジフユナミシャク♀も、よく苔むした桜の幹で見つかる。


他にもいくつか桜の幹で♀を見つけたが、高い位置で撮りにくくスルー。サクラッチ(桜ウォッチ)でイチモジフユナミシャク探しをしていると、しばしばこんなコトも……↓。


桜の幹には淡い青~緑色をした地衣類も多く、これがイチモジフユナミシャク♀の色合いとよく似ている。ということは、イチモジフユナミシャク♀が淡い青~緑色をしているのは、こうした地衣類にまぎれこむための隠蔽型擬態の効果があってのことなのかもしれない。♂のボディラインでは地衣類に紛れ込むのは難しいが♀には有効だった……ということで、♂と♀で色合いに格差があるのだろうか……などと想像してみた。
こちら↓は本物のイチモジフユナミシャク♀(上とは別個体)。


このイチモジフユナミシャク♀は緑がかって見えた。
画像を90度回転させて──。


イチモジフユナミシャク♀では、「前翅より後翅の方が前にせり出すとまり方」をしていることも多い。


イチモジフユナミシャク♀が美しいのは翅や体が鱗粉できれいに覆われているからだが、それゆえ、鱗粉が剥がれていくとみすぼらしくなってしまう……(ちなみに、フユシャクでもチャバネフユエダシャク♀の体はウロコ状の鱗粉ではなく毛が覆っている)。
この♀↑は前翅の黒帯模様がとぎれているが、黒帯模様が消失した個体もいる↓。


前翅の色合いや模様には個体差がある。
比較的青みが強くて黒帯模様も明瞭な個体↓。






前翅の青みが強い♀では、白い後翅がせりだしているとわかりやすい。


青い部分も黒い部分も白い部分も、その色の鱗粉であることがわかる。


美しいイチモジフユナミシャク♀にであうと、ちょっと(大いに?)嬉しい。


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コメント

No title
イチモジフユナミシャク♀の淡いブルー・・・
実に美しいですね~・・・
まだ見ぬ淡いブルーの翅のフユシャクガをますます目にしてみたくなりました・・・
鱗粉が克明に写し出されてる事にも驚かされます!
(確かに、一見、地衣類に観えますね!)
狙いがそこだとすると・・・
ゾクゾク高揚して来ます!!!

フユシャク蛾の魅力は、探れば探るだけ見付け出す事ができそうですね!!!☆・・・
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

元々、ブルー~グリーン系の蛾には美しいものが多いと感じていたのですが、フユシャクのメスにも、こんな青みをおびたものがいるとは驚きでした。
見られる期間は短いので、この時期になると、つい探してしまいます。

最近は緑地管理が過剰で、サクラッチ・ポイントでは、だいぶ枝が切られたり伐採されて、その影響を心配していますが……とりあえず、今シーズンも、淡いブルーなイチモジフユナミシャク♀を見ることができて、ちょっとホッとしています。
No title
イチモジフユナミシャク♀って翅の色が綺麗ですね。
飛べないのは可哀想ですが、この姿は小さくてとても可愛いです(*^_^*)
No title
> みゆきさん

小さいながら、ちょっとエレガントでしょう?(笑)
虫見を始めて、こんな虫がいることに気がつきました。当然、僕が気づく以前から、この虫は身近な所に生き続けていたのでしょうが……ず~っと、こんな虫がいる事を知らずに過ごして来たのかと思うと、ちょっと惜しい(?)気にもなります。
No title
皆さんと同じ「可愛い」感想です。まだ実際に見たことがありません、出会えたら嬉しいですね。最初の画像では20ミリはありそうと見ていましたが、小さいので驚きました。微少さを感じさせない画像の鮮明さが素晴らしいです(^_^)
No title
> skittoさん

小さい虫は気をつけていないと見過ごしてしまいがちですが……よく見ると、なかなか魅力的なものがいたりしますね。
子どもの頃は昆虫と言えばカブトムシやシロスジカミキリ、アブラゼミ……鱗翅目でいうとナミアゲハやモンシロチョウといったあたりをイメージして、それらが標準サイズだと思い込んでいました。しかし実際は大半の昆虫はそれよりずっと小さくバラエティーに富んでいることを虫見を始めて知りました。

昔、一眼レフを使って小動物や爬虫類を撮っていた事がありますが……当時は虫よりずっと大きな被写体でも、これほど鮮明に撮ることはできませんでした。
カメラの腕は上がっていないと思いますが、デジカメの性能進化には驚くばかりです。
No title
道の雰囲気でどの辺りか分かりました(笑)
イチモジほど翅の色が雌雄で異なるフユシャクはないですよね。
♂も♀みたいな色だったらもっと良かったのに(^^;)
No title
> ともっくさん

あのあたりは、けっこう道沿いに桜が植えられているんですが、最近は伐採されている箇所も多く、フユシャクの発生木もずいぶん切られてしまいました。それでもまだ温存されているコースではフユシャクも健在です。

イチモジフユナミシャク♀は、知らずに始めてみた個体は青みが強い個体で、美しいのに驚きました。フユシャクは体型的には♂と♀で全く違いますが、色まで違うのはおもしろいですね。

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