枯葉より枯葉っぽい蛾:アカエグリバ

落ち葉が目立つこの季節。擬木の支柱にひっかかっていた枯葉……のごとき蛾【アカエグリバ】をみつけた。枯葉への擬態の完成度の高さには驚かされる。

一見、支柱にひっかかった「枯葉」だが……その先端をよく見ると、ちゃんと「眼」がある。

複眼の上から触角が生えているが、とまっているときは、これをうまいこと隠して枯葉になりきっている。
枯葉の中にとまると周囲にとけこんで見える蛾や蝶は少なくないが、人工物にとまっていても単体で枯葉に見える隠蔽的擬態(ミメシス)は秀逸。あまりに見事なできばえなので、90度回転して側面ショットをあらためて。

枯葉のよれた感じといい、葉脈を思わせる模様といい、本当に良くできている。

擬態というと熱帯の昆虫をイメージしがちだが、日本にもこれほどの完成度を誇る擬態昆虫がいるというのは喜ばしい。
「遠目からでも一瞬でわかるなら、擬態として失格じゃん」などと言うなかれ。こんな蛾がいることを知らなければ枯葉だと思ってスルーしてしまうに違いない。擬態のみごとさが極まった《枯葉らしさ》は実際の枯葉がかなわないくらい完成度が高い。一度認識してその姿に感銘を受ければ、脳裏にその姿が焼きつく。そんじょそこらの枯葉にはマネできない完璧な《枯葉らしさ》だからこそ、次に目にした時にはすぐにピンと来る。
《特定の1枚の枯葉》ではなく《不特定多数の枯葉》に似ているのだ。
「枯葉」のイメージは、多様な形をした(1枚1枚違う)枯葉の集積から共通項を割り出して作られた平均値のようなもので、それを我々(や昆虫食の天敵)は「枯葉」と認識しているのだと思う。
特定の1枚の枯葉ではなく不特定多数の枯葉に共通するイメージとして捉えているからこそ、地面に積もった多くの枯葉が実は1つ1つ違う形をしているのに、どれもみな「枯葉」として認識できるのだろう。
もし大量の落ち葉の中から「最も枯葉らしい枯葉」を1枚だけ選べといわれたら、意外に選択に苦労するのではあるまいか? 葉というのは大抵、枝についていた頃には対称性があるものだが、枯れ落ちたものは、水分が抜けてよじれたり、縁が欠けてしまったりして対称性が損なわれている。そうした枯葉のいびつ感を的確に表現している「1枚」を探しだすのは簡単ではないはずだ。
実在する個別の枯葉よりもアカエグリバの方が「最も枯葉らしい枯葉」のイメージに近いのではないかと思うのだ。
そうした意味で、アカエグリバは「枯葉よりも枯葉っぽい《枯葉らしさ》」をかもしだしていると僕は感じている。
アカエグリバはこの完成された擬態によって天敵の眼をあざむき、生存率を高めてきたのだろう。正確には天敵の眼をあざむくことができたものがより多く子孫を残し、その特徴がより濃く濃縮されたことで擬態の完成度を極めたということになるのだろうが……自然の造型はスゴイ!
フユシャク亜科のフユシャクもでてきた

この時期の蛾といえば、やはりフユシャク──ということで。今シーズン初のフユシャク亜科のフユシャク♀。

フユシャク(冬尺蛾)は冬に1度だけ(成虫が)発生し、♀は翅が退化して飛べないという特徴を持つシャクガ科の蛾の総称。エダシャク亜科・ナミシャク亜科・フユシャク亜科の3つにまたがっていて、今シーズンこれまでに見られたクロスジフユエダシャクやチャバネフユエダシャクはエダシャク亜科、クロオビフユナミシャクはナミシャク亜科になる。
フユシャク亜科の♀は似ていて同定が難しい。翌日、同じ個体と思われるフユシャク♀が木製の手すりの上に移動していた。


腹端の化粧筆のような毛の束が目を引く。産卵時にはこの毛を産みつけた卵の上にコーティングしていく(*)。


フユシャク亜科のフユシャク♀は翅がすっかり退化している。
これとは対照的に、フユシャク♀としては大きめの翅を持っているクロオビフユナミシャク↓。


「大きめの翅」といっても、フユシャクなので♀の翅は退化していて飛ぶことはできない。飛べる♂↓と比べると違いは明らかだ。

フユシャクの♂は♀ほどユニークな姿をしていないので、あまり熱心にカメラを向けない。チャバネフユエダシャクも♂は飛べるし「普通」な感じがする蛾↓。

ところが、♀は何ともユニークだ↓。

雑木林沿いの擬木でもしばしば目にする。

フェンスの上にも──↓。


木製の手すりにもとまっていた↓。


*アカエグリバ&ヒメエグリバの枯葉擬態
*擬態と空目・聞き做しと空耳 ※アカエグリバなど
*ヒメエグリバのトリックアート
*枯葉擬態ヒメエグリバ~昆虫空目 ※ヒメエグリバ&アカエグリバなど
*フユシャクの産卵とその後
*フユシャクの産卵 before & after
その、アカエグリバの造型の素晴らしさが表現された言葉に、頷いてしまいました・・・☆
アカエグリバは、一度だけ飼育観察したことがありますけど!
上のお写真を拝見させて頂きますと、幼虫から育てた成虫を眺めるより・・・
いきなり出会った成虫に、より感動できるのでは?と想像致します(それほど、素晴らしいお写真だと見入ってしまいました)
私も、天然の成虫に出会ってみたく成りました・・・
アカエグリバのあまりにみごとな擬態は、プロモーションしたくなりますね(笑)。
もっと知名度が高くてもいい昆虫なのではと思っています。
「いつかまた出会えるといいな」と思っていた昆虫に再会(?)した瞬間は「!」と思いますね(笑)。
飼育して羽化させたものはまた違った感慨があるのだろうと想像します。
僕は昆虫の飼育経験はほとんどないのですが、「うまく与えた餌を食うか」「うまく脱皮ができるか」「ちゃんと羽化できるか」など、けっこう色んなことを気にかけながら育てた幼虫が無事に成虫になったら、やっぱりその姿を見て感慨をおぼえるでしょう。
やはり枯葉そっくりのアケビコノハに比べるとずいぶん小さい感じがしますが、造形的にはかなりイイ線いってると思います。
この形を知っていれば、壁などの人工物についていれば「!」とわかると思います。
擬態のみごとな昆虫は、おもしろいですね。
後押ししている(?)アカエグリバですが、気づくきっかけになったのであれば嬉しく思います。
アカエグリバはその擬態のスゴさゆえに気づかない人が多いと思いますが、もっと賞賛する声があっても良いのではないかという思いもあって記事にしてみたしだいです。
あれだけいたクロスジが消え、今はナミスジ、イチモジ、ウスバなどが増えてきてます。
クロオビは個体変異が大きくてもっと撮りたいんですが、あまり出会えません(>_<)
これから出てくるフユシャク達は昨年撮りこぼしたのを中心に回る予定です。
フユシャクネタはたまりに溜まってますが、写真整理する時間がないので…
本当にクロスジフユエダシャクは少なくなりましたね。特に昼行性だから……オスがパタッと姿を消すと目立ちますね。フユシャクの時期も次の段階(?)に進んだ気がします。
これからは種類が判別できないフユシャクが増えていきそうです(笑)。
ともっくさんの撮られたフユシャク、楽しみにしています。


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