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フユシャク3種:退化した翅

退化した♀翅も色々:フユシャク3種

フユシャク(冬尺蛾)は、メスは翅が退化して飛べないという特徴を持った、冬にだけ(成虫が)発生するシャクガ科の蛾の総称。12月前半で見られたフユシャク3種をあらためて紹介。フユシャクの特徴である「メスの退化した翅」だが、これは種類によって大きさ(退化の程度?)に違いがあり、そんなところを見比べるのもおもしろい。

翅が退化しているのがよくわかるクロスジフユエダシャク♀



まずは11月から発生していたクロスジフユエダシャク。フユシャクの多くは夜行性だが、クロスジフユエダシャクは昼行性。フユシャクの中では早い時期に現れる。


クロスジフユエダシャク♀では4枚の翅が確認できるが、これが蛾とは思えないほど小さい。これでは飛ぶことがとてもできないことは一目瞭然で、フユシャクの特徴である「退化した翅」がよくわかる。
静止している時のクロスジフユエダシャク♀(↑)は、うつむき加減で触角を体にそわせるようにしているが、動いているときは印象が変わる↓。


歩いている時は頭を起こし触角を前方に伸ばしている。触角はヒモ状。立ち止まったと思ってカメラを向けると首をひねりカメラを見上げていた。「見返り美人」ならぬ「見返り美蛾」といったところか。オスでもこうしてカメラをふり返っていることがある↓。


というわけで、これがクロスジフユエダシャク♂↑。♂は飛ぶための翅を持っているので(ニオイを嗅ぐためにも使われる)、♀の退化した(飛ぶことができない)翅と比べると違いは明らか。触角も♀とは違って試験管ブラシのように毛羽立っている。♀のフェロモンを察知しやすいよう表面積をかせぐ構造なのだろう。クロスジフユエダシャクは昼行性なので昼間はメスを探して飛ぶオスがよく見られる。

退化のきわみ翅が消失したチャバネフユエダシャク♀



チャバネフユエダシャクも11月に確認しているフユシャクだが、そのオス↑は飛ぶことができる普通の蛾。夜行性なので昼間はとまってじっとしている。そして同じ種類とは思えない♀↓。


こうして擬木の上にいると、白黒の体は鳥のフンのようにも見える。ホルスタインやダルメシアンを思わせる模様が印象的なフユシャク♀。


クロスジフユエダシャク♀では確認できた翅が、チャバネフユエダシャク♀には見当たらない……。「翅」と言えるものはきれいさっぱり消失していて、とても蛾の成虫には見えない。




僕が初めて見たフユシャクはこのチャバネフユエダシャク♀だった。当時はフユシャクの存在を知らなかったので、この正体不明の虫が、とても謎めいて異様に感じられた。翅がないから幼虫なのかと考え、立派な6本の脚を見て昆虫の成虫なのだろうかと思いなおし……翅の無い昆虫を脳内検索してカマドウマを思い出したりして、どうもその仲間でもなさそうだ……と頭の中が「?」でいっぱいになった記憶がある。
昆虫フォーラムというところに画像をアップして質問し、初めてフユシャクの存在を知ることとなったわけだが、「昆虫なのに冬にだけ(成虫が)発生し、蛾なのにメスは翅が退化して飛ぶことができない」というユニークさに驚き、好奇心を刺激された。
そんなこともあって、チャバネフユエダシャク♀には特段の思い入れのようなものがあるのだが……その前胸背の模様が太いヒゲを生やしたコミカルな殿様顔に見えてしまうのは僕だけであろうか……。


フユシャク♀にしては翅が大きめなクロオビフユナミシャク♀



翅が消失したチャバネフユエダシャク♀とは対照的に、大きめの翅をもつクロオビフユナミシャク♀。とりあえず「蛾」といわれれば、そう見える。




フユシャク♀としては大きめな翅を持つ種類だが、もちろん退化しているため飛ぶことはできない。飛ぶことができる♂と比べるとその違いは顕著。



ちなみに冬に発生するシャクガ科の蛾が全てフユシャクというわけではない。中には♀も飛べる(翅が退化していない)種類もあって、これはフユシャクとは呼ばない。
また、フユシャクと発生時期が重なっていて、やはり♀の翅が退化したメスコバネマルハキバガなんていう蛾もいるが、これはシャクガ科ではないのでフユシャクとは呼ばない。
他にもメスの翅が退化し、ちょっとフユシャクっぽい蛾にヒメシロモンドクガというのもいる。フユシャクが年に1回冬に発生するのに対し、ヒメシロモンドクガは年に複数回発生するらしい。春~夏に羽化する♀は普通の蛾なのだが、秋に羽化する♀だけ翅が退化するらしい。同じ種類なのにフユシャクと近い時期に羽化する♀の翅が退化するというのも興味深い。
フユシャクをはじめ、こうした蛾の「♀の翅の退化」という現象は不思議でおもしろい。

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コメント

No title
こんにちは・・・
フユシャクの中でも、チャバネフユエダシャク♀は、少々異色ですよね・・・
大きさが大きさだけに、鳥の糞が連想されて・・・

他の多くのフユシャクの♀が周りの景色との同化を選んだ中?何故、チャバネフユエダシャクの♀だけが、鳥の糞的模様の道を選んだのか?・・・
なんて、様々な想いが脳内をめぐりました・・・☆
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

本当に、チャバネフユエダシャク♀は独特のフンイキを持っていますね。
オスの色合いともずいぶん違いますし……。
最初に見ときは、これが蛾の成虫だなんて、とても想像できませんでした。

小さい種類だと目立たない色合いの方が(鳥などに)見つかりにくいけど、大きくなると(目につきやすくなるから)鳥糞に擬態した方がスルーされがち……なんて事情(?)でもあったんでしょうかね?

蛾なのに、こんなスタイルを選んだフユシャク♀たち……興味がつきませんね。

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