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ミミズクのダンス

ミミズクのヨコバイダンス



先日、擬木の上でみつけたミミズク──カナで記すと鳥のミミズク(木菟)とまぎらわしいが、昆虫の方。耳介状の突起をもつ小さな蝉のような昆虫で、漢字表記だと「耳蝉」(と判りやすい)。
カメラを向けると体を左右に動かす奇妙なダンスを始めた。








体の平衡は保ちつつ、片側の脚を曲げ反対側を伸ばす──この動作を交互に繰り返し、体を右へ左へとスライドさせる。このダンスのような動きは、ヨコバイの仲間でときおり見られるものだ。そういえばブチミャクヨコバイの幼虫もやっていた。


ブチミャク(斑脈)ヨコバイの和名は成虫の翅脈が白黒のぶち模様であることに由来するらしいが──(「ブチミャク」は発音しにくいので)、愛称「ブチャミク」の「ブレイクダンス」ならぬ「ブチャミクダンス」といったところ。


ヨコバイダンスの意味

ヨコバイの仲間が見せる体を左右にスライドさせるヨコバイダンス──おもしろい行動だが、いったいどうしてこんなことをするのだろう?
おそらく警戒した時の行動とみられるヨコバイダンスの意味について、思いつく解釈を列挙してみると──。

①威嚇……体を左右に振ることで自分を大きく見せ威圧しようとしている。
②隠蔽……風に揺れる物体に化け、虫でないフリをしている。
③相手の見極め……動いて相手が反応を示すか(自分を狙っているか否か)試している。
④横這いが抑制された動き……横歩きで隠れたいが隠れる場所が無い。
⑤視差の拡張……左右に動き視差を大きくとることで相手の位置を測っている。
⑥陽動……横方向のゆっくりした動きを見せておき、ふいをつく急な縦移動(ジャンプ)で逃げるようというもの。
⑦意味は無い。

①威嚇……体を大きく左右に振ることで自分を大きく勇猛にみせ、相手を威圧しようとしているという解釈。動物でも伸び上がったり毛を逆立てたりする威嚇行動があるが、そこからの連想。ただ、もし威嚇であるなら、相手に向いて行われるはずだが……ふり返ってみると、必ずしも正面切ってヨコバイダンスが行われるわけではなかったような気がする。よって威嚇行動という解釈は当てはまらないように思う。
②隠蔽……「揺れている」ように見せることで「虫でないフリをしている」という解釈だが、動けば逆に目立ってしまうし、かえって気づかれやすくなるという意味で、あまり説得力はない。
③相手の見極め……何かが近くに迫ってきたとき、それが敵か否か──自分を狙っているのか無関心なのかを確かめるために、あえてちょっと動いてみせ相手の反応をうかがっているという解釈。ヨコバイダンスに相手が反応を示せば(狙われていると判断して)ジャンプして逃げる必要があるし(ヨコバイの仲間はバッタのように跳ねる)、無反応であれば逃げる必要は無い──その見極めをしているのではないか。
④横這いが抑制された動き……ヨコバイの仲間はその名の通り、よくカニの横這い歩きで葉の裏に隠れる。その定番の行動(横這い)を発動しかけるも、右にも左にも身を隠す場所が無くて動き出せず、体を右往左往させているという解釈。いちおう横這い運動とからめた解釈として考えてみたものだが、ヨコバイダンスにそんなジタバタ感はないので、これはハズレのような気がする。
⑤視差の拡張……単純に考えると、体を左右に動かすことで相手の位置や姿をより正確に捉えることができるはずだ──右側から見た像と左側から見た像の視差を拡大することで対峙した相手を立体的に確認する行動という発想。ただ、この場合も、相手を真正面(あるいは真上など体幹面上)にとらえて最大の効果が発揮できるはずで……ヨコバイダンスが必ずしも相手に向いて行われるものではないとすれば、当てはまらない。
⑥陽動……ミミズクもそうだが、ヨコバイの仲間はよくピョンと跳ねて逃げる。これは急な縦方向の動作だ。このフェイントとして、ゆっくりした横方向の動作をみせておき、これに相手の眼を(脳を?)ならしておくことで、危険回避ジャンプの成功率を高めているのではないかという解釈。
⑦意味は無い……適応的な意味は無いが、生存率に悪影響を及ぼすほどではないので受け継がれてしまっているエラー行動のようなもの──といった解釈。ただ、敵の注意を引く動きともいえるので、あえてこうした行動をとるには何らかの適応的な意味がなければ採算が合わない気もする。

いちおう、思いつくまま解釈を並べてみたが……それでは、どれが本命かといえば──僕は「③相手の見極め」ではないかと考えている。
相手の見極めをしている間に攻撃を受ける可能性だってあるわけだし、そんなことをしているヒマがあったら、さっさとジャンプして逃げれば良いではないか──と思わないでもなかったが、もし、近づく物影があるたびに(危険がない相手に対しても)ジャンプしていたら、どうなるか……。その場の危険は回避できるだろうが、食草から離れてしまえば、戻るのにリスクが発生する。特に翅(飛翔能力)を持たない幼虫はひとたび食草から離れてしまえば戻るのが大変だろう。擬木遭難している幼虫をよく見かけるように「食草に戻れない」可能性だってある。戻る過程でクモやアリ、その他の捕食性昆虫の餌食になる可能性も低くはないだろう。そうした「危険回避ジャンプによって生じる新たな危険」を考えると、やたらとジャンプをしたがる個体はかえって生存率を落とし、あるていど「危険回避ジャンプ」に慎重な個体の方が、かえって子孫を残しやすくなる──その結果、「ちょっと動いてみて相手が反応を見極めてから危険回避ジャンプする」行動が有効だということで定着したのではないか……というのが僕の現段階での推理だ。

例によって素人の想像。この解釈が当っているかどうかはわからない。他の解釈があるかもしれないし、複数の意味が隠されているのかもしれない。
とりあえず、昆虫の行動を見て「どんな意味があるのか?」とあれこれ考えてみた──というハナシ。

最近見た擬木の昆虫から



こちらはミミズクではなくコミミズクの幼虫。最近よく見かける。ミミズクは成虫が見られるが、この時期みかけるコミミズクは幼虫ばかり。
ミミズクやヨコバイはカメムシ目(半翅目)の昆虫だが、カメムシの仲間もまだ色々みられる。最近見かけるものではウシカメムシがカッコ良い。








前回も紹介したアカスジキンカメムシは終齢(5齢)幼虫が多いが、若齢幼虫の姿もある。


こんな若齢幼虫でも、ちゃんと越冬できるのか心配になる。
擬木ではこの時期にも色々な昆虫の幼虫が見られるのだが、その中で気になったものがこれ──緑色のヒラタアブ(の仲間とおぼしき)幼虫↓。




きれいな緑色の幼虫がいたのでのぞき込むと──ヒラタアブの仲間の幼虫で見られる後呼吸器突起が目にとまった。
緑色のヒラタアブ幼虫というのが、ちょっと珍しいと感じたのでとりあえずこれもアップしておくしだい。


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コメント

No title
ミミズクは耳蝉と書くのですね。
子ブタの顔に見えてしまいます。
まだ遇ったことの無い昆虫です。
ダンスも見てみたいですね!
No title
こんばんは・・・
考察が詳細に列挙、まとめてあり、大変読みやすく分かり易かったので・・・
不謹慎にも・・・
買い物気分で!「どれを戴こうかしら?」・・・

この不思議な行動を!「私は、勝手な思い込みで(不思議)に想えてなかった事に反省してます。」
私は、②だと・・・ズ~~~っと想ってました!
(今更のように、ゆらゆら揺れてもバレバレよ~)なんて、真剣に想ってました!・・・このゆらゆらの行動の後、必ずと言っていいほどジャンプして逃げるんですよ・・・
だので「⑥も戴いておこうかしら!」と想って読んでましたら・・・
星谷さんが、③をお買い求めになったものですから・・・さあ大変!
ちょちょっと!私にも③を、もう一度良く読ませて戴けないかしら?と心で叫びつつ・・・拝読!
成る程!・・・と言う事は、ゆらゆらの後、必ず逃げる!は、私が、その被写体に関心を示してる事がバレバレだからと言う事に成りますね!
私、やっぱり③を戴くわ~!!!☆・・・
No title
> nika4さん

昆虫の「ミミズク」や「コミミズク」のことを検索しようとすると、けっこう鳥のサイトがヒットするので、「まぎらわしいなぁ」と思っていました。あるとき漢字に変換してみたら、昆虫をさす漢字があると知って「へぇ!?」と感心。「耳蝉」という字面はわかりやすいと思いました(この漢字を「ミミズク」と読むのは難しいかもしれませんが)。

造型が面白いので(角度によって色々見えますね)カメラを向けたくなる昆虫ですが、立体的なデザインなのでピント合わせが難しいです……。
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

僕も以前から面白い行動だとは思っていたのですが、今回あらためてどんな意味があるのか──想像をめぐらせてみました。
あれこれ考え、現段階では③かなぁ……と思っているのですが、これ意外の可能性を含む複数の理由がからんでいる可能性もありますね。

ホントのところはわかりませんが……どんな可能性が考えられるか想像をめぐらせるのは楽しいですね。
No title
ヨコバイのダンス。撮影時に逃げられなかった?
ミミズクは来年の宿題のようです。最近はあまり小さい昆虫みません。今度ヨコバイにあったら観察してみます。ナイス!!
No title
> 四季の風さん

気温の低い時期だったためもあってか、このときは跳ねませんでした。
ヨコバイの仲間など冬は葉の裏で越冬している虫もいるようで、そんな虫を撮っている人を葉メクリストと呼んでいます(笑)。
No title
先日拝見しましたが、ミミズクのダンスは傑作です。
本当に見てみたくなります。
未だ見ぬミミズクさまに会いたいです。(o^^o)♪
面白い動作のダンスが目に浮かんで一人笑ってしまいます。
私も葉メクリストになりつつ・・・。。。
No title
> まあささん

ミミズクやヨコバイの仲間は、あのポーカーフェイス(?)でのダンスですから、なんともいえない味わいがあります。
映像の合成の技術があれば、ヨコバイダンスを素材にEXILE風ダンス映像を作ってみたいものだと思ってもみたり。

葉メクリストは僕も1年前、マエムキダマシ(クロスジホソサジヨコバイ)探しで挑戦してみましたが、散々でした……。
何かコツ(?)のようなものをつかむと「当たり」を引き当てる確率を上げられるのでしょうね。

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