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クロスジフユエダシャクの♂♀比

退化した小さな翅・クロスジフユエダシャク♀

11月後半に出現し始めたフユシャク(冬尺蛾)・クロスジフユエダシャクだが、その後目につくようになってきた。ふつうに見られる種類だが、《昆虫なのに成虫が冬にだけ出現する》ところとか《蛾なのにメスは翅が退化して飛ぶことができない》というフユシャク特有のユニークな部分に魅かれて、つい撮ってしまう。


オスとメスではこれほど違う↑(もちろん♂♀とも成虫)というのもおもしろい。オスは一見ふつうの蛾なので、やはり翅が退化したユニークなメスにカメラを向けがちになる。フユシャクは種類によってメスの翅の退化の度合い(翅の大きさ)にはずいぶん違いがあって、クロスジフユエダシャク♀では4枚の小さな翅が確認できる。翅が消失レベルまで退化した種類もアッパレだが、♀の特徴である《退化した翅》が確認できる、クロスジフユエダシャク♀くらいが個人的にはイイ感じだと思う。
そんなクロスジフユエダシャク♀だが、♂の婚礼ダンスを追って♀探しをすると、たいてい落ち葉の下に隠れている。それで通常の虫見では、♀を目にするのは、たまたま?擬木や手すりなどの目立つところにいる個体ということになりがちなのだろう。今回は12月に入ってみられた、そんなクロスジフユエダシャク♀たちを紹介。
擬木や手すりに登ってしまった個体は上部とまっていることも多いが、上部に近い段差部分に頭を突っ込むようにしてとまっていることもある。




この♀↑は黒っぽい模様が濃く、ひと味違う美しさを感じた。同じ種類の♀でも個体によって、けっこう印象に差がある。
段差ではないが、角に頭をくっつけている♀も──↓。


段差や角あるいは凹みにいる個体は隠れているつもりなのだろうか……。↑個体を90度回転して↓。


木製の手すりの上部にいたクロスジフユエダシャク♀↓。






擬木支柱の側面にいたクロスジフユエダシャク♀↓。




こうした目立つところにいる個体は、比較的みつけやすい。

クロスジフユエダシャクの♂♀比率

虫見を始め、フユシャクの存在を知った頃からしばらくは、クロスジフユエダシャク♀は、上記画像のように、たまたま手すりや擬木、幹などの目立つところにいる個体しか目にすることがなかった。しかし♀を探し出す♂の婚礼ダンス(はばたき歩行)に注目するようになってからは、落ち葉の下に隠れている♀を見つけることができるようになった。これまで婚姻ダンスの♂を追って見つけた♀は全て葉の下などに「隠れている」状態だった。それで自然の状態では「隠れている♀」の方が断然多いのではないかと考えるようになった。多くの「隠れている♀」は見つけにくいから目にする機会がなく、たまたま目立つ擬木や幹にいる♀しか見ることができなかった……ということなのだろう。
あるいは隠れて交尾をした後(擬木や幹などの目立つ所で交尾をしているペアもいるが)、産卵のために擬木や幹を登ってくる♀が目につきやすくなる──ということもあるのかもしれない。

昼行性のクロスジフユエダシャクは、発生時期になると雑木林の地表付近を低く飛ぶ♂(落ち葉の下に隠れた♀を探している)がずいぶん目につくようになる。目につく♂の数に比べると見つかる♀の数は極端に少ない。もちろん「見つかる♀が少ない」というだけで、実際には「見つけられない♀」はもっとたくさんいるのだろうが。

それでクロスジフユエダシャク♂とクロスジフユエダシャク♀の比率について漠然と想像してみた。例によって素人の脳内シミュレーション──。

オスとメスが一組になることで子孫を残せる──とすれば、単純に考えて♂♀の比は1:1が効率が良いことになる。♂が複数の♀と交尾できるとすれば、卵を産むことができる♀が多い方が効率的だ。
しかしクロスジフユエダシャクを見ていると目につくのは♂ばかり(目につきやすいという理由ももちろん大きい)で、♀は少ない(見つかりにくいという理由も大きい)。婚姻ダンスでも、複数のオスが1匹のメスに集中するというシーンがみられる。印象でいうと、クロスジフユエダシャクでは♂が♀よりだいぶ多いように感じる。

♀のおそらく多くが落ち葉の下に隠れているのは鳥などの捕食圧があるからだと僕は考えている。本来なら♀が目立つ所に出ていた方が♂だって見つけやすいだろうし、そこだけ考えれば、その方が繁殖率は高まるはずだ。にもかかわらず、目立たぬところに隠れて♂を呼ぶ(フェロモンを放つ)というのは、目立つとこにいて鳥などに食われやすくなると繁殖率は落ちることになるので、隠れて鳥に見つかりにくくする方がまだ繁殖率を保てる──ということなのではないかと想像する。

もし♂と♀が同じ比率で発生していたと仮定して、その全てがペアになれれば繁殖には効率的だか……隠れている♀が必ず見つけてもらえるとは限らない。♂に見つけてもらえなかった♀は(繁殖の観点からすれば)ムダになってしまう。ムダな♀を減らすためには、♀に対してより多くの♂が必要だろう。あぶれる♂がでたとしても、たくさんの卵を産むことができる♀が、より確実に交尾できる体制であることの方がが繁殖効率的には重要なはずだ。

そうした理由で、クロスジフユエダシャクは♀より♂が多いのではないだろうか?
実際の♂♀比がどの程度のものかは、卵から育てて羽化した成虫で♂♀の比率を調べてみなければ判らないのだろうが……♂にくらべると目につくことの少ない♀を見ながら、そんなことを考えた。

金属光沢がキレイなアカスジキンカメムシ幼虫など

(ユニークではあるけれど)ちょっと地味な画像が続いたので……12月に入って(も)みられた昆虫の中から、キレイなアカスジキンカメムシ幼虫の画像を。黒っぽい部分が多いアカスジキンカメムシ幼虫は地味な印象があるのだが、中には綺麗な輝きを放っている個体もいる──。










このアカスジキンカメムシ幼虫↑は擬木の上を歩いていたが、このところカエデの幹を歩いている終齢(5齢)幼虫をみかける。越冬場所をさがして移動中なのかもしれない。


さらに、ついでに──、平野部では大発生といっていいくらい増えていたキマダラカメムシを狭山丘陵の擬木で初めて見つけたので、その画像↓。


僕が東京で初めてキマダラカメムシを見たのは2011年(Wikipediaによると東京で確認されたのは2010年)。市街地の公園ではすっかり普通種になっていたが、これまで丘陵地帯では(僕は)眼にしたことが無かった。来年は丘陵地帯でも見かける機会が増えるかもしれない……。


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コメント

No title
クロスジフユエダシャクは林の中ではオスがひらひら舞いますが疲れて静止ばかりで婚礼ダンスが見られません。
メスが極端に少ないのではと思ったりしていました。
今年はアカスジキンカメムシが多い様に感じました。
キマダラカメムシついに狭山丘陵に現れましたね。
いずれは千葉県でも見られる様になるかと思います。
No title
> 市川さん

クロスジフユエダシャクは婚礼ダンス待ちが長い時がありますね。比較的短い間に続けて複数観察できることもあったので、あるいは♀がフェロモンを発しやすい時間帯・条件のようなものがあるのではないかという気もしているのですが、よくわかりません。
今年はアカスジキンカメムシやモンキツノカメムシが多いかもしれませんね。
ニホントビナナフシが少ないのが残念です(多ければ♂が見られる可能性も高まるでしょうから)。
キマダラカメムシは時間の問題だと言う気もしていましたが、12月に入ってからの確認でした。
No title
何時も昼頃の観察なので今日は早めに出かけて見ました。
沢山の個体が低く飛び1頭に絞って追跡するとメスにたどり着きました。
別の個体でも観察出来て先日の苦労が嘘の様で時間帯があるのかもしれません。
有難うございました。
No title
> 市川さん

♂を追って♀にたどり着けると、達成感のようなものがありますね。
♂に「よくやった!」と言ってやりたくなります(笑)。
やはり見つけやすい(♀がフェロモンを放つ?)時間帯・条件のようなものがあるのかもしれませんね。
No title
こんばんは・・・
いつものことながら、面白い着眼点と発想に、敬服致します!!!

まるで、前記事の続きを読んでる様な錯覚を覚えました!
一瞬、(数学?)と感じてしまったからです・・・

天敵に見つかりづらくするために、メスを隠す!
隠れたメスは、極力同種のオスに見付けてもらう必要がある!
そのためには!
・・・より「多くのオスが必要に成って来る!」
あ~~~素晴らしいです!
その考察が面白くて面白くて!!!☆・・・

数学と言うのは間違いかな?・・・
強いて言うなら(推理小説)・・・
いやいや、やはり(昆虫学:生物学)ですね!!!・・・
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

ぼう~っと虫見をしていますと(笑)、目は虫を探したり追ったりしつつ(自動運行状態になって?)、頭の中では漠然とした疑問・ふとしたテーマが想像を展開して行くことがよくあります。虫を見ながら想像を展開するままにまかせる──これも虫見の楽しいところでしょうか。
今回の、クロスジフユエダシャクの♂♀比についての想像も、虫見散歩中に考えたことでした。

指摘されて気がつきましたが、僕の場合、想像に数学に近いような感覚はあるのかも。専門的な知識は無いので、生態を概念化してモデル・イメージで合理性を考える……というのは点や線を概念でとらえて考えるのと似ているかもしれません。
No title
フチグロトゲを実験に使っている人がいて話を聞きましたが、極端な性比はないと聞いたよーな…
交尾産卵した♀はフェロモンを出さないでしょうから、それから考えれば、♂ばかりが多く見られてもよいのではないでしょうか。

今シーズンはスタートダッシュがよく3種の♀をゲットしました、来週は2種狙います(^^)
No title
> ともっくさん

貴重な情報、ありがとうございました。
フチグロトゲエダシャクも昼行性のフユシャクですね。フチグロトゲエダシャクで極端な性比がないのなら、クロスジフユエダシャクもそうなのでしょうかね?
フチグロトゲエダシャクは、これまでワンペア(♂1匹・♀1匹)しか見たことがないのですが、クロスジフユエダシャクは♂ばかり目立つので♀が見つかりにくいことを差し引いても♂が多いのではないかと感じていました。

こちらでは今シーズン確認したフユシャクは、これまでクロスジフユエダシャクとチャバネフユエダシャクの2種です。これからナミシャク亜科、年末年始頃にフユシャク亜科のフユシャクが見られるだろうと予想していますが、特にフユシャク亜科が出てくると種類の見分けができなくなって何種類見ているのかわからなくなります。

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