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フユシャク婚礼ダンスで♀探し

今シーズン初のクロスジフユエダシャク♀



今シーズン初のフユシャク(冬尺蛾)は先日(11/16)見たクロスジフユエダシャク♂だったが、今シーズン初のクロスジフユエダシャク♀。フユシャクの仲間は冬にだけ出現する蛾。


これでも立派な蛾の成虫↑。フユシャクのメスは翅が退化して飛ぶことができない。そのためフェロモン(ニオイ)でオスを呼び寄せる。オスには翅があり、飛ぶことができる。
クロスジフユエダシャクは昼行性で、この時期、雑木林で落ち葉のつもった地上付近を低く飛ぶオスの姿が見られるようになる。そのオス↓。


オスはユニークなメスとは違い、見た目は普通の蛾。落ち葉の積もった林床では目立たない。


オスが林床を低く飛ぶのは、メス探しのため。オスの触角は試験管ブラシのような形をしている(メスの触角はヒモ状)。メスの放つフェロモン(ニオイ物質)を察知しやすいように表面積を増やす構造なのだろう。我々ヒトは鼻でニオイを嗅ぐが、蛾は触角でニオイを嗅ぐ。
我々ヒトはニオイを嗅ぐとき、息を吸い込んで鼻にニオイ物質を引き込むが、カイコガ(蛾)♂は羽ばたいて(空気の流れを作って)触角にフェロモン(ニオイ物質)を引き込む。家畜化されたカイコガの♂は飛ぶことができないが、♀の放つフェロモンを察知すると羽ばたきながら歩き回って♀を見つけだす──それが「はばたき歩行」「婚姻ダンス」と呼ばれる行動で、クロスジフユエダシャク♂も同じことをやっているようだ(【フユシャクの婚礼ダンス】)。
クロスジフユエダシャク♀は落ち葉の下などに隠れていることが多いようだが、フェロモンを察知した♂は♀が隠れた近くに舞い降り、婚礼ダンス(はげしく羽ばたきながら歩き回る行動)で正確に♀の居場所をつきとめ交尾をする。♂も落ち葉の下にもぐってしまうので、自然な状態で交尾しているクロスジフユエダシャクを見つけ出すのは難しいが、♂の婚礼ダンスに注目すれば(♂が婚礼ダンスを始めれば)、♂を追ってたやすく♀を見つけ出すことができる。
──ということで、今年も「♂の婚礼ダンスで♀探し」をしてみた。

オスの婚礼ダンス(はばたき歩行)でメス探し

この日、雑木林では落ち葉の上を低く飛ぶクロスジフユエダシャク♂があちこちで見られた。♂が婚礼ダンス(はばたき歩行)を始めれば♀を見つけるのはたやすいのだが……ただ、それが始まらないことにはどうにもならない。すんなり立て続けに観察できることもあったが、待たされることもあった。この日は風が吹き♂が降りて翅を休めてしまう時間帯が多く、「♂の婚礼ダンス待ち」が続いた。
ちなみに、降りた♂が翅を休めればハズレ(♀をみつけられなかったとき)。降りてなお、せわしなく翅を羽ばたかせていれば(通常よりもあわただしい動きになる)アタリ──♀は近いと考えられる。
風がおさまるのをみはからって舞う♂達をながめながら長期戦を覚悟し始めたころ、とつぜん婚礼ダンスは始まった。
目で追っていた♂が落ち葉の上におりて激しく羽ばたき出した。それまで見ていた動きとは明らかに違うので「婚礼ダンス」とすぐに判る。しかも、ほとんど同時に3匹の♂が同じ落ち葉に降りて「婚礼ダンス」を始めた。
そこに♀が隠れていることは確実だと確信しながら「トリオの婚礼ダンス・ショット」を撮るべくカメラを向けるが……モニター画面内で落ち葉でおおわれた背景の中からクロスジフユエダシャク♂を瞬時にとらえるのは難しい。フレーミングでもたついている間に3匹の♂は、あっという間に問題の落ち葉の下に潜り込んでいってしまった。






フレーミング&フォーカシングが追いついたときには、3匹の♂はすでに落ち葉の下。わずかに翅がのぞいているといった状況だった。そこで、手前の葉をどけて、問題の落ち葉の下をのぞきこんでみると……、


落ち葉の下で、取り込み中のようす……やがて動きは収まったかに見えたが、3匹の♂と、そこに隠れているはずの♀の状況がわからない。


やがて葉の下に潜り込んだ♂のうち1匹が、葉の上にでてきた。


この♂↑はすぐに飛び去った。しかし、落ち葉の下にはまだ2匹の♂がいるはず。いったい、どうなっているのか確かめるべく、そっと葉を持上げてみると──、


なんと、1匹の♀の2匹の♂がとりついていた。


しかし結合が甘い右側の♂が離脱。




離脱した♂も飛び去り、ペアが成立。




♂が立てていた翅を倒すと、擬木などで通常よく見かける形になった。
交尾が成立するとフェロモン放出がシャットダウンするのか「売約済み」フェロモン?のようなものが立ち上がるのか判らないが、交尾前の♀には3匹の♂が集中したのに、交尾が成立した後は他の♂は近づいてこなかった。

今回の「♂の婚礼ダンスで♀探し」では、同時に3匹の♂が集中することになったが、昨年も2匹の♂が同時に同じ場所で婚礼ダンスを始めるのを目にしている(【クロスジフユエダシャクはなぜ隠れて交尾するのか】)。♀がフェロモンを放出するタイミングがあって、そのとき近くにいた♂が反応するのだろうか。
これまで「♂の婚礼ダンスで♀探し」では、「♂の求婚ダンス待ち」すにわち、♂が♀を見つけ出せるかどうか──という捉え方をしていたが、それよりは「♀のフェロモン放出待ち」というのが近いような気もしてきた。♂が乱舞する林床では、♀がフェロモンを放出すれば♂の婚礼ダンスはすぐに始まる体制ができているのかもしれない。


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コメント

No title
いけない・・・
「あぶれた♂」に吹いてしまいました・・・「すみません」
(「契約済み」フェロモン?)・・・(笑)「すみません」

それにしても
1固体の♀に、3固体の♂には、驚かされました!
その観察眼に敬服致します・・・☆

フユシャクの世界も、♂の遺伝残しは大変な激戦なのでしょうね?
「♂が♀を見つけ出す!」より「♀のフェロモン放出待ち!」の考え方、捉え方に深く頷く次第です・・・
「1対3・・・確かに!」・・・
記事内の考察、考え方に傾きつつある私です・・・
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

3匹の♂が落ち葉の下にもぐりこんでいったのは、ほぼ同時だったんですが、タッチの差で、ギリギリあぶれちゃったみたいです(笑)。
椅子取りゲームで、同じ椅子に2人腰掛けちゃって、1人が脱落──みたいな?

椅子取りゲームではないですが、交尾前の♀にはすごい勢いで1度に♂が3匹も押しかけてきたのに、ペアが成立したとたん、周囲を飛んでいる♂は見向きもしなくなったのが驚きで、《「売約済み」フェロモン?》なんて表現を使ってみました。ホントにそんなものがあるのかどうかはアヤシイですが。

今回は3匹の♂が同時に婚姻ダンスを始めたので、「♀のフェロモン放出待ち」なのかなぁ……と考えるに至りました。観察を重ねると、いろいろ考えるネタが増えてきますね。
No title
私も今日、よーやく初日を迎えました。

明後日はまた別種を探しに行く予定です(^^)/
No title
> ともっくさん

今シーズンも出始めましたね。
そろそろわかっていても、やはり実際に再会(?)すると、テンションがあがります(笑)。

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