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カメムシの抜け殻落とし行動



少し前に【アカスジキンカメムシの抜け殻おとし】でも取り上げたが、先日また脱皮直後のアカスジキンカメムシが抜け殻を落とす行動が観察できたので、その記録。
今回の舞台は擬木。擬木には色々なステージのアカスジキンカメムシがみられる↓。


こうした擬木のひとつで、脱皮直後と思われるまだ本来の体色が出ていない個体をみつけたが、ちょうど《抜け殻落とし》をしている最中だった↓。


脱皮直後の幼虫が抜け殻を落とそうとして、その下に潜り込む姿は【アカスジキンカメムシの抜け殻おとし】で観察したときと同じ。

アカスジキンカメムシ幼虫の《抜け殻おとし行動》



見つけたときは、すでにこの状態だった。抜け殻の下からすくいあげるように投げ落とそうとする体勢だが、抜け殻はなかなか落ちず苦戦しているもよう……。カメラを警戒してか疲れたのか、触角をたたんで一時動きをとめていたが、やがて《抜け殻落とし行動》を再開した。


下にもぐって投げ落とすことができなかったので、ブルドーザーのように頭で抜け殻を押し始めた。


なかなか落ちない抜け殻を押し上げる。ちなみに、抜け殻↑の開いた胸背面から腹側の「脚のつけねの抜け跡」がのぞいている。抜け殻からのぞいている白い糸のようなものは脱皮した気管。


とうとう擬木支柱の上まで押し上げてしまった。本来、葉の裏などで脱皮していれば抜け殻はとうに落ちていただろう。擬木にはクモのしおり糸やイモムシの糸などが残されているので、そうしたものに引っかかっているのか……意外にしぶとい抜け殻に、幼虫もてこずっているようす。


そしてようやく、抜け殻を落とすことに成功した……かに見えたが……なんと抜け殻は落ちる途中でひっかかっていた。


落ちずに引っかかっている抜け殻に気づいた幼虫は、わざわざ落としに戻る。




しきりに抜け殻をこずいて落とそうとするが、なかなか落ちない。


疲れたのか、カメラ&レフ板代わりのアルミシートを警戒してか……触角をたたんで停止モードに。この状態で待機している間に風が吹いて、抜け殻はさらに少し滑落……。


幼虫からビミョ~な距離をおいて止まった抜け殻は、風でペラペラと動く。


《抜け殻落とし行動》の延長戦となるのか……とも思われたが、このあと突風で抜け殻は飛ばされ、あっけない幕切れとなった。しかしながら今回は執拗な《抜け殻落とし行動》を確認することができた。奮闘していたアカスジキンカメムシ幼虫は、これで安心して(?)本来の体色がでるまで休めるだろう↓。


《抜け殻おとし行動》の意味

《抜け殻落とし行動》を僕はアカスジキンカメムシとエサキモンキツノカメムシで確認している。ただしアカスジキンカメムシの抜け殻が葉の裏に残っているのも見たことがあるので必ず落とすというわけでもないらしい。
以前飼育していたコノハムシは脱皮・羽化の後に抜け殻を食べていたが、食べないケースもみられた。カメムシの《抜け殻落とし行動》(する・しない)も同じようなものなのかもしれない。
コノハムシは抜け殻を食べて消し去ることができるが、カメムシでは口の構造上(針のような口吻をさして汁を吸うようにできている)それができない──それで食べる代わりに落とすのではないか?
コノハムシが脱皮(羽化)後に抜け殻を食うのを見ていたときは、自分の体を構築していた物質なのだから、再利用するために取り込んでいるのだろうと思っていた。しかし、カメムシの《抜け殻おとし行動》を見て、これには「隠蔽」の意味もあったのではないかと考えるようになった。脱皮(あるいは羽化)したばかりのカメムシが時間や労力を投資して《抜け殻落とし》をするのには、きっとそれなりの意味があるはずだ。わざわざ「落とす」のは、「その場から消したい」ということ──すなわち「隠滅」に意味があるのかもしれない。
あくまでも想像だが……たとえば抜け殻に脱皮をスムーズに行うための離型剤のような物質(脂?)が残っていて、それを嗅ぎ付けて寄生蜂・寄生蠅のたぐいがやって来ることがあるとすれば、その危険を避けるために、脱皮後すみやかに抜け殻を処分──自分たちの生活圏(カメムシは幼虫も成虫も同じ生活圏で暮らしがち)の外に廃棄する必要がある。《抜け殻落とし》には「被寄生リスクを抑えるため」の行動という意味があるのではないだろうか。
セミやチョウなどは羽化後、成虫はその場から離れてしまうから、抜け殻(蛹)を廃棄する必要がない(だから抜け殻が落ちずにその場に残る)。
ただし……チョウの場合、成虫は蛹(ぬけがら)から離れてしまえば問題ないが、蛹が幼虫の近くにあったのでは、仲間への被寄生リスクを高める危険があるかもしれない──それでチョウや蛾では、蛹化前の幼虫は食植物を離れて徘徊するのではないか?……などと想像が展開した。

チョウやガの終齢幼虫はなぜ蛹化前に徘徊するのか

蛹化する直前と思われる丸まると太ったイモムシ(チョウやガの終齢幼虫)が道路を横断する姿や擬木を這っている姿を目にすることはよくある。路面で轢死したものを見ることも少なくない。「せっかくここまで育ったのに、どうして危険を冒して徘徊するのだろう?」と、よく首を傾げる。
イモムシが育った食植物で蛹になれば、徘徊することで発生する危険──すなわち、踏みつぶさされたり、目立つ場所に出てしまうことで天敵に狙われやすくなったりといった危険は避けられる気がする。また羽化した成虫は、どうせ産卵するために食植物に戻ってくるのだから、さいしょから食植物を離れずに蛹化すれば良さそうな気もしないではない。しかし、もしかすると……「自分たちの生活環境からわざわざ蛹を遠ざける」という行動には、カメムシの「抜け殻落とし」のような(?)「被寄生リスクを減らす効果」があるのかも知れない。
チョウや蛾の場合は、不完全変態(蛹を経ない)のカメムシとは違って、蛹から寄生蜂・寄生蠅がでてきたりすることが少なからずある──不幸にも寄生されてしまった蛹が仲間の近くにあって、そこから寄生蜂や寄生蠅が発生すれば仲間達が次のターゲットにされる危険は大いに高まるだろう。そこで寄生蜂や寄生蠅の発生源となりうる蛹を仲間達から遠ざけるために、わざわざ危険を冒して徘徊するのではないか?
アカスジキンカメムシの《抜け殻おとし行動》から、そんなところまで想像が拡がったが……例によって、素人の脳内シミュレーション。僕の解釈が当っているかどうかはサダカではない。


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コメント

No title
セスジスズメ終齢幼虫の迫力ある徘徊姿を何度か写しました。星谷さんの説を読むととても説得力があり納得してしまいます(笑)
No title
> skittoさん

セスジスズメ終齢幼虫が徘徊しているのはよく目にしますね。道路を歩いているのを見ると踏まれやしないかとヒヤヒヤします。なんでわざわざ危険を冒して徘徊するのだろう……と疑問に思っていたのですが、こんな解釈もできるのではないかと想像してみたしだいです。
あくまでも解釈の可能性ですが……「いったい、どうして?」と考え出すと、想像が展開してしまいます。
No title
こんばんは・・・

アカスジキンカメムシの執拗なまでの抜け殻落とし行動に、驚かされました!
この様な行動に、考察されてるところ・・・
いつもながら頭が下がる想いです!!!☆・・・
(私は、その疑問点にさえ気付けないと想います)

他の虫のパターンとの比較を交えてのお考えに、本当か?どうかは!?は別にしても・・・
そうであると想えて来ます!!!

終齢幼虫の不思議な行動については、私も以前から不思議に思っておりました・・・
(お気に入りの場所探し!と説明されてる図鑑が多いのですが、・・・にしても合点がいきません!)
私は、勝手に!
蛹化する前の脱糞を促す・・・早い話(浣腸的な運動!)と意味づけてました!(笑)(笑)・・・
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

なかなか落ちない抜け殻に対して執拗な攻撃(?)を加えるカメムシを見て、これだけ執着するのには、やはり意味があるはずだと、今回あらためて感じました。

終齢幼虫のデンヂャラスな徘徊は、目にすると気になってしまいます。
運動自体に蛹化のための準備に関連する意味があるのかも知れないという着想も面白いですね。

昆虫を見ていると「いったい何のために?」と気になることがしばしばあって、その行動にどんな解釈ができるのか、つい考えてしまいます。
No title
概してチョウに関しては被寄生リスクよりも被捕食リスクの方が大きいのでは?と思ってます。
多くは終齢以前にパラサイトが寄りますし 拡散した方が集団としての生存率が上がるのでは?と思います。
ガの土中なんてなかなかの戦略ではないかと思います。
それと蛹化準備に触れられていますが 徘徊より脱糞が先です。
No title
> 辺蟲憐さん

チョウやガの幼虫は捕食者の良い栄養源になっていると思うので、被捕食リスクは大きいのだろうなと感じています。だからそれを考えるとわざわざ蛹化前に天敵から丸見えの場所を徘徊するのは危険に思われるのですが……それでも徘徊している連中がいるということは、辺蟲憐さんの「拡散した方が集団としての生存率が上がるのでは?」というご指摘とも符合するのかなと(寄生蜂や寄生蠅の発生源となりうる蛹を仲間達から遠ざけるために徘徊するのではないか)。

チョウや蛾の生活史についてはよく知らないのであまり具体的なイメージが描けないでいるのですが、「徘徊より脱糞が先」でしたか。知りませんでした。ご指摘ありがとうございます。
No title
丸見えの場所…その多くは人が作ってて 本来は少ないんだろうと思います。
脱糞前に大きく色変する種も多く これは拡散 移動を前提にしているとすれば 目立ちにくい方向への色変だろうと思います。
完全変態の各ステージ中 蛹が一番無防備な感覚を持っていて 数的にも隠れる必要があるのではと思います。
また自分の孵化した卵殻や脱皮した皮を食してしまう種も多く 栄養源にもなっているとは思いますが カメムシ同様 その存在を無くしたいんでしょうから 脱殻で捕食者を誘引したくないんでしょうね。
No title
> 辺蟲憐さん

丸見えの場所の多くは人が作ってる──というのは、そうかもしれませんね。
道路で轢死しているものや擬木で徘徊中の終齢幼虫を見ると、ヒトが作った環境で徘徊リスクはだいぶ高まったのではないかと感じます。

目立たぬ事で生存率を保ってきたような虫は食草についているときが一番目立ちにくいのだろうという漠然とした認識があって、個体としてみた場合は徘徊には(食草にいるより)リスクがかかる→しかし、集団としての生存率が上がる──ということでその行動が選択されてきたのだろうとイメージしていました。

改めて考えてみると、一カ所にたくさんいれば天敵に見つかりやすく1匹見つかれば同じ場所にいた仲間にも被害が及ぶ危険が高まるわけですから……葉を食わねばならない時代はともかく、蛹になる個体だけでも食草を離れ分散した方が捕食リスクを減らせる──という意味もあるのかもしれませんね。

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