FC2ブログ

脱皮マジック

脱皮はマジック!? それでは最強マジシャンは?




最近、アカスジキンカメムシの羽化や脱皮を見る機会があったが(*)……抜け殻の中から抜け殻よりも大きな体が出てくるシーンは圧巻で、何度見ても驚くばかり。
「その大きな体がいったい、どこに収まっていたんだよ!?」「そこから出てきたというなら、もういっぺん、抜け殻に入ってみれ!」とツッコミたくなってしまう。
昔、薄いアタッシュケースから、大きなごつい電話機をとりだすというマジックがあったが──脱皮・羽化の驚き&不思議さはマジックといってもいいだろう。

じっさいに脱皮のシーンを見ていなければ、ステージアップした昆虫が、それより明らかに小さな抜け殻から出てきたとは、とうてい信じることができないだろう。見ていてもにわかには信じられないような光景だ。
以前も記したが、昆虫の脱皮に関しては小学3年生の頃に授業で教わったとき「昆虫は脱皮をくり返して大きくなる」という先生の説明が納得できなかった。「そんなコト(脱皮)をくりかえせば、マトリョーシカのように出て来るのはどんどん小さくならなきゃおかしい」──頭の中には入れ子細工の幼虫が思い描かれ「入れ物より大きな中身が出てくることなどあり得ない」と力強くいぶかしんだものだ。
しかし、実際にはそんな「あり得ない」と思われた光景が現実に存在する。
物理的に解釈すれば、脱皮後の体は、抜け殻のぶんだけ質量的には減少しているはずだが、体積は増加している──ということなのだろう。脱皮の際に膨れることで内圧を高め、抜け殻をやぶったり抜け殻から体を押し出す力に利用しているのかもしれない。
いずれにしても、カメムシの羽化や脱皮では、それまでの体(抜け殻)よりあきらかに大きな体が出現するのは間違いない。物理的な解釈はできても、見ればやっぱり不思議に感じる。

「脱皮」や「羽化」という言葉は誰でも知っている──知識としては「あたりまえ」のことだろう。しかし、実際にそのシーンを目の当たりにすれば、「あたりまえ」ではとても片付けられない神秘的な現象であることを再認識せざるを得ない。
自然が見せるマジック・ショー──昆虫の脱皮マジック、おそるべしっ!

さすが進化を極めた昆虫のやることは我々の想像を超えていると感心してしまいがちだが……しかし、我らが脊椎動物の中に昆虫をしのぐ、すごい脱皮マジックを披露できるものがいる。
爬虫類のヘビである。
ヘビはその存在自体、不思議に満ちている。脚がないのにスムーズに移動できるし木にだって登ることができる。口を開かずに舌を出し入れできるなんてのは、ジョークのようにさえ思えるし、《自分の頭や胴よりも大きな獲物を丸呑みにできる》──というのは、昆虫の脱皮で《抜け殻より大きな体が出てくる》というのとちょっと似た意外性がある。
ヘビの抜け殻は珍しいものではないから、ヘビが完璧な形を残して脱皮することは多くの人が知っているだろう。
《抜け殻を壊すことなく、中身だけがエスケープ》ということ自体、脱出マジックや密室トリックみたいで謎めいているが、このヘビの脱皮プロセスがまたなんともミステリアスなのだ。




ヘビの脱皮は鼻先から行なわれる。古い外皮がめくれ、抜け殻の口が上下に開くと中から本体の顔がのぞく。本体は抜け殻の口からそのまま這いだして脱皮が進行するわけだが、そのようすは「ストッキングを脱ぐように」と例えられる。抜け殻の口の中から本体がひきだされることで、抜け殻の頭部は裏返り、頸部以下は表裏が反転して脱がされていくことになる。
おもしろいのは、脱皮点を境界に、リニューアルしたヘビ(本体)と古いヘビ(抜け殻が)反対向きに伸びて行くように見えることだ。まるで見えない鏡面に写し出される鏡像のようでもある。脱皮後のツヤのある新しい姿がどんどんあらわになる反対側では、反転した古い(抜け殻の)頭部が脱皮前の自分の体を呑み込んでいくというシュールな光景が展開されていく……。
「自分を刷新することは、古い自分が自らを呑み込んでいくこと」というなんとも哲学的な(?)セレモニーのように見えなくもない。

また、カメムシではリニューアルした体より抜け殻が小さいことに驚かされたが、ヘビの場合は逆で、抜け殻の方が本体よりも長くなる。
ヘビは自分の頭や胴の太さよりも大きな獲物を丸呑みにできるが、ふだんウロコの間にたたまれている皮膚が伸びることで(獲物をのみこんで膨れた)胴の拡張に対応できる仕組みになっている。だから抜け殻が自分の体を呑み込むこともなんなくできるわけだが……脱皮のさいにはこのウロコの間の皮膚がのびて剥離するため、抜け殻は本体より長くなるのだ(抜け殻を見ると、ウロコの間の部分が拡がっているのがわかる※画像を追記)。


時々残されたヘビの抜け殻の長さを測って本体の全長だと考える人がいるが、実際の本体(全長)は抜け殻よりも短い──これもトリッキーというかマジック的な現象といえるかも知れない。

ヘビの脱皮は、わかりやすい姿勢・見やすい場所で行なわれるわけではないので、図のような《絵に描いたような光景》を目にする機会はなかなか無いかも知れないが……そうしたことも含めて神秘的なインパクトを感じる。

ということで、昆虫の脱皮マジックもスゴイが、ヘビの脱皮マジックだって勝るとも劣らない……などと、あれやこれやと脱皮マジックの優劣について想像をめぐらせていたときに、ふと思った。
それでは、これらをしのぐ最強の脱皮マジックがあるとしたら、いったい、どんなものだろう?

ヘビは消化器の入口──口から本体が吐き出されるかのように脱皮を行なうが……それなら、消化器の出口──肛門がひらいて本体が出て行くという脱皮をおこなう奇抜な生き物はいないだろうか?
たとえば、糞に擬態したアゲハの若齢幼虫が、尻から糞のような幼虫をひりだしたら、これはかなり衝撃的だろう。
排泄しようとキバッたら、本体が出てしまった……みたいな?
この場合、脱皮の主体はキバッて本体をひりだした抜け殻なのか、排出された本体なのか……まぎらわしいトリッキーな光景はマジック的といえよう。
ヘビとは逆に肛門からすっぽり脱皮する生き物がいたとしたら……これこそ最強なのではあるまいか!?
さすがに、そんな期待にこたえる奇特なヤツはいないだろうが……。


スポンサーサイト



コメント

No title
だからヘビの抜け殻は裏返っているように見える、見えるではなく、実際に裏返しになっているのですね。納得です。
No title
> nika4さん

そうなんです。セミの抜け殻などはそのままの形で残りますが、ヘビの脱皮は裏返った抜け殻の頭が自分を呑み込むようにして進むので、全身きれいに裏返って完了するんです。
脱いだストッキングが裏返しになるのと同じですね。
No title
以前美容院で、青大将の抜け殻を撮らせて貰いましたが裏返しだったんですね!目から鱗が取れました(笑)
No title
> skittoさん

ヘビが脱皮してるところを見れば、抜け殻がストッキングのように裏返しにはがれていくのがわかりますが、残された抜け殻だけ見ると裏返しになっている事に気づきにくいかもしれませんね。
裏返った抜け殻が自分の体をのみこんでいくことで脱皮を完結するというのも、なかなかユニークだと思います。
No title
カメムシの脱皮には・・・
メタボの主人を連想させられます!
お腹が大きく成って、これまでの服のボタンがちぎれそうでパンパンです。
そのうち、バキッと主人もいい男に脱皮してくれるといいのですが・・・(無駄な妄想は止めておきます)

しかし、虫の変態のマジックもユニークなら・・・
ヘビの脱皮もミステリアスなのですね!
私、生物の中でヘビを苦手としてましたので!
詳しく観察もせず、調べるなんてこと・・・とてもとてもでした!
最近、少しずつ慣れてきたかな?と想ってるところに、今回のお話で・・・
又、よりヘビとお近づきに成れた気分です!!!☆・・・
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

カメムシの脱皮や羽化もクロースアップマジックみたいで意外性抜群ですが、ヘビの脱皮もなかなか幻想的です。

ヘビに関しては、動物の中でもかなりユニークな部分が「未知」→「不気味」と感じられるのか、苦手な人も多いようですが、そのユニークさが見方によっては「興味深い」部分でもあったりするような気がします。
好奇心を持てるか否かが、苦手意識の克服にもかかわってくるのかも?
No title
ヘビの抜け殻の画像を追記。

管理者のみに表示

トラックバック