FC2ブログ

アカスジキンカメムシの羽化

アカスジキンカメムシの羽化

このところ雨が多い。雨の止み間にアカスジキンカメムシが発生していたコブシを見に行ってみた。先日、成虫がぼちぼち発生していたので、うまくすれば羽化が見られるかも知れない。
ちなみに、これ↓が先日撮っていたアカスジキンカメムシ終齢幼虫。


コブシでは葉の裏に終齢幼虫がいくつか見られた。葉の裏にとまっているのは少し前まで降っていた雨をさけてのことなのか、それとも羽化のためなのか──よくわからない。
空は暗く、しかも終齢幼虫は葉の裏に止まっているのでさらに暗い位置にいるわけで……キレイに撮るのが難しそうな状況に不安を感じつつ、とりあえず羽化が始まったら撮るということに……。
位置的に撮影しやすそうなところにいるメイン候補を中心に、あちこち見ながら少し待ってみるが、終齢幼虫に変化は無い……。
一応、「羽化前」のショットとして2枚程撮って、一度その場を離れたのだが、15分程たって戻ってみると、羽化が始まっていた!


まだ羽化が始まっていないと思って、おざなりに撮っていた終齢幼虫↑。少し前まで降っていた雨で濡れている。現場では気づかなかったが、胸の背面に裂け目ができていた──このとき、すでに羽化は始まっていたのだ。
そして羽化に気づいて撮った画像↓。画面隅の数字は時刻。


抜け殻では、幼虫時代に白かった部分は透明になっている。


抜け殻よりも大きな成虫がでてくるのがマジックのようでなんとも不思議だ。










抜け殻に残っている白い糸くずのようなものは気管(の壁面)だろう。セミの抜け殻でもよく見かける。
抜け殻は成虫羽化後もこうしてしっかり残っていたが、このあと、羽化した成虫が抜け殻を落とす行動──《抜け殻おとし》(勝手に命名?)にでるのではないかと予想して見守ったのだが……成虫はなかなか動かない。




体幹部の色はまだほとんど出ていないが、触角や脚の色が濃くなってきたのが判る。
ちなみに、ただでさえ暗くなりがちな葉の裏の撮影は、こんなふうに↓行なった。


左手にレフ板がわりのアルミシートを持ち、右手に持ったカメラで撮影。
撮影中にパラつきだした雨がこのあと強くなってきたので、ここでやむなく撤退。この時点では羽化した成虫による《抜け殻おとし》は確認できなかった。

《抜け殻おとし》というのは便宜的に勝手につけてみた呼び名だが……以前、エサキモンキツノカメムシの羽化に遭遇したことがあり、そのさい羽化後の成虫が抜け殻を攻撃し、ついには落としてしまうという行動を観察したことがあった。
「成虫はなぜ抜け殻を落としたのだろう?」──その行動の意味について色々想像して次のように考えてみた(例によって素人の想像)。

羽化のさいに古い外皮と新しい外皮がすんなり分離できるように、その境い目には離型剤のような物質(脂?)が分泌されているのではないか?
その物質が抜け殻の内側に残っているとすれば、そのニオイで寄生蜂や寄生蠅を呼んでしまう危険があるのかもしれない……それで、羽化したカメムシはわざわざ抜け殻を落とし、災いのもとを排除するのではないか?
そんな可能性に思い至った……この行動が《抜け殻おとし》。

今年5月には、まだ体色が整っていないアカスジキンカメムシ新成虫がとまった葉の下に落とされた抜け殻を確認し、《抜け殻おとし》があったのではないかと考えた。この時は葉の裏に残された抜け殻もあったので、《抜け殻おとし》は必ず行なわれるわけでもないようだ……。
以前飼育していたコノハムシは、脱皮や羽化の後に抜け殻を食べていたが、食べずに残すこともあった。あれと同じようなことだろうか?

孵化後に卵殻を食べる幼虫や脱皮後に抜け殻を食べる昆虫は多い。自分を構成していた物質だから、素材として再利用するという意味合いもありそうだが、天敵を呼んでしまう手がかりの隠滅と言う意味合いもあるのではないか? カメムシだと植物の汁を吸う口の構造から抜け殻を食べるわけにはいかず、自分たちがいる葉や枝から遠ざけるために《抜け殻おとし》をするのではないか……

エサキモンキツノカメムシに続きアカスジキンカメムシでも《抜け殻おとし》を示唆する証拠が見つかったことから、今回のアカスジキンカメムシの羽化でも《抜け殻おとし》を確かめてみたいとひそかに期待していた。
しかしながら、雨で撮影の継続を断念──撤退した時点では《抜け殻おとし》は確認できなかった……のだが。

やっぱりあった新成虫の《抜け殻おとし》

一度ひきあげたものの、あの新成虫が《抜け殻おとし》をするのかしないのか、やはり気になる。そこで雨がふたたび止んだ2時間半後にふたたび現場に確認にでかけとてみると──。


撤退前の画像から2時間43分後、葉の裏から抜け殻は消えていた。「やっぱり、《抜け殻おとし》はあったのだ!」と葉の下を探すとすぐに抜け殻が見つかった。




回収した抜け殻↑。この画像ではわかりにくいが、幼虫時代に白かった部分が透明になっている。
そして、だいぶ色がついてきた新成虫↓。


カメラを向けていると、葉の裏から表へ移動した。


空は相変わらず暗く、ブレ&ボケがち……。
最終的にどんな色になるか──比較のために、同じコブシの葉の上にいた別個体の成虫画像↓を。


羽化マジック?

昆虫が脱皮をくり返して成長・羽化することは、知識としては誰でも知っている──「あたりまえ」のことだ。しかし実際に脱皮や羽化のシーンを見ると「スゴイことするなぁ……」と感心せずにはいられない。《知識》として「あたりまえ」だったことが、「不思議ですごい」ことであったと《実感》できる。本などの二次情報で得た《知識》は言ってみれば《地図》のようなもので、これに対し、一次体験(観察)は《風景》に例えることができるかもしれない。

今回も感じたが……小さな抜け殻から大きな成虫が出てくるようすは「見なければ信じられない」くらい不思議で面白い。
むかし「薄いアタッシュケースの中から、でかい据え置き用の公衆電話機を取り出す」というマジックがあったが──昆虫の脱皮や羽化を見ると、それを思い出してしまう。

余談だが……脱皮の不思議については、小学3年生の時だったと思うが……こんな思い出がある。授業中、先生の「昆虫は脱皮をくり返して大きくなる」という説明が納得できなかった。「脱いだ殻の中からでてくるのなら、殻より小さくなくてはおかしい」「脱皮をくり返せば、(マトリョーシカのように)どんどん小さくなるはずではないか?」と質問した覚えがある。今思い出すと笑ってしまうが、当時は真剣にそう考えていた。
そのとき先生がどう答えたのかは記憶にないが、あまり納得できず、その後、「脱皮したての時は、きっと抜け殻より小さくて、その後エサを食べて大きくなるのだろう」「幼虫のそれぞれのステージ(という言葉は知らなかったが)に《のびしろ》のようなものがあって、その限界まで大きくなると脱皮をするのだろう」と勝手に解釈した覚えがある。

実際には──(種類にもよるのかもしれないが)脱皮では「抜け殻より大きな体が出てくる(出ながら大きくなる)」──マトリョーシカでは考えられないことだ(笑)。
質量的には抜け殻のぶんだけ新成虫は終齢幼虫より小さくなっているはずだが、体積的には大きいくなっている──ということなのだろう。そう考えると不合理は無いが、やっぱり見た目は不思議に感じる。

今回、確認したかった《抜け殻おとし》だが、シーンそのものは見ることができなかった。しかし、それがあったと思われる状況証拠は得る事ができた。
「抜け殻を食べて隠滅することができないカメムシは、《抜け殻おとし》をする」──という素人予想も、にわかに現実味をおびてきた気がしないでもない!?
《抜け殻おとし》のシーンを記録することはできなかったが、とりあえず「マトリョーシカもビックリ!」な羽化マジック・シーンを撮る事ができたので、まあ、よしとしよう。

最後にオマケ↓


追記:《赤筋》があざやかな成虫

【アカスジキンカメムシ】──和名にも記されている成虫の特徴《赤筋》だが、個体によって濃さに差がある(あるいは羽化してからの時間も関係しているのだろうか?)。
後日(2015.9.12)、このコブシで赤い筋があざやかにでている成虫をみつけたのでその画素を追加↓








スポンサーサイト



コメント

No title
素晴らしい観察・撮影とレフ板の登場に@@;;
そういう手が有ったのかと感心しました。...φ(。。;)メモメモ
今年は成虫を撮りたいものです。
No title
> まあささん

ストロボ撮影は苦手なので、こんな方法を使っています。レフ板代わりに使っているのは、100円ショップで買ったアルミ保温シートを適当に切ったもの。セミヤドリガの繭&蛹を撮った簡易撮影セットでも使っていたものです。
影の緩和などにも使えるし、けっこう重宝しています。
成虫、みつかるといいですね。
No title
こんにちわ すごい瞬間だね・・

さすが・・・ナイス・・
No title
> usa ̄(=^ー^=) ̄さん

昆虫はよく見かけるわりに、脱皮や羽化のシーンを目にする機会は少ない気もするので、こういうシーンに出会うとテンションが上がります(笑)。
No title
凄い観察記録と考察ですね。
脱皮の一連の姿、初めて見ました。
見るのも撮るのも考えるのも面白そうですね。☆
No title
確かに人面に見えます🎵
そう見るとそうとしか見えなくなります(笑)
No title
> kenzさん

うまくすれば羽化が見られるかも……と期待して行ったのに、羽化の最初の部分に気づかず途中からの撮影になってしまったのが残念ですが……アカスジキンカメムシの羽化を見ることができたのはラッキーでした。
実際に見て感じ・考えることに意味があるように思っています。
No title
> すぬーぴーさん

カメムシの仲間って、人面に見えやすい模様が多い異様な気がします。
外国産で「ジンメンカメムシ」なんてのがいますが、国産でも「人面」を名乗ってもおかしくないクオリティのカメムシが少なからずいる──と思っています。
No title
恥ずかしながら、いまだに私は脱皮後のほうが脱皮前のものより大きいことに疑問を持っていました。そこから考えをめぐらすことがなかったという点が星谷さんと異なるところですね(泣)
No title
こんばんわ~!
見事な観察記録に、
いつも感心して見させて頂いてます。
(・∀・)ナイス!
No title
> 佛生山孝恩寺さん

脱皮前より脱皮後の方が大きいというのは単純に不思議にうつりますよね。
「いったい、どこにはいっていたんだよ!?」とツッコミたくなってしまいます。
世の中には不思議なことがいっぱいありますが、自分なりに納得できる解釈(当っているかどうかはまた別ですが)を得るまで、気になってしかたがない質のようです。
No title
> kaneo93さん

冗漫な記事におつあいいただき、恐縮です。
とりあえず、観察して感じた事・考えた事はまとめておこうと記しています。
No title
おどろきました!余程の知識と根気が無いとここまで丁寧な撮影は難しいと思います。人面も面白い(^o^)/
No title
こんばんは・・・
孵化!脱皮!蛹化!羽化!・・・
その一瞬の変化に立ち会った時の感動、興奮は・・・
言葉では言い表せない程、素晴らしいものがありますね・・・

(抜け殻おとし)への考察!
その深い考察に、興味津々で読ませて頂きました・・・☆

幼虫が脱皮後の皮を慌てて食べるには、上述されてる様な訳もあるのでは?との一説を耳にしたことがありましたが・・・
(脱け殻おとし)は、今回初めて・・・成程~~~!と、うなり、ため息です・・・
そう言いますと、先日アオスジアゲハの蛹化の様子を観てましたら!・・・
最後の最後に腹端を振り・・・抜け殻をわざと落としたような?
(その事は、今回の記事を拝見するまで、重要視してませんでした!)
今回の記事を読まなければ、気付いても居ませんでしたし!気にも留めてない!事でした・・・

それが真実かどうか?・・・???ではありますが・・・
そうとしか思えない!(いつもそう感じます)考察力・観察力に、驚かされてばかりです!・・・

虫の生態の不思議に迫る考察の重要性を感じます・・・
今回も大変勉強させて頂きました!!!・・・
No title
> skittoさん

雨が降ったりやんだりで、空は始終暗かったので、ボケたりブレたりした画像も量産しました……。
とりあえず、たくさん撮って、その中からマシなのを選ぶという、フィルム・カメラ時代には(フィルム代がかさんで)できなかった方式で、なんとか対応しているしだいです。
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

昆虫の成長は我々とは全く別な世界を見せてくれるので不思議で興味が尽きませんね。

アオスジアゲハが蛹化のさいに抜け殻を落とす行動──僕もこれまで気にとめたことがありませんでしたが、こっそりさんのコメントで「なるほど!」と思いました。
同じような理由が隠さされているのかもしれませんね。

僕の考察は素人推理にすぎず、当っているかどうかはまた別問題ですが……とりあえず、自分なりに筋が通ると思える解釈を考えてしまいます。
No title
マトリョーシカの発想、言われてみればそうですよね。。。
いや、間違ってはいるんですけど(笑
でも、どんどん小さいのが出てくる、って考えるほうが正論というか。。。
むしろ、どうしてそのことを思いつかなかったんだろう?って思います。
星谷さんの記事を読んでいると、当然と思っていろんなことを見逃していることに気づかされます~。

完全変態も不思議ですが、不完全変態もよく考えたら不思議ですよね~。
通常生活を送りながら、同時に中ではこっそり変態しているってことですよね。。。
なんか、「わはははー」とか言いながらマスクをめくって別人になるやつみたいですね。
No title
> noriさん

子どもの頭で、先生が説明する「脱皮」を想像すると……マトリョーシカだったんですよね(笑)。
それで、「入れ物より大きなモノがでてくるのはオカシイ!」と反論(?)せずにはいられなかった(笑)。

今回の羽化でも、画像でわかるとおり、出てくる成虫の方が抜け殻より明らかに大きい……大きく膨れることで外皮をやぶって脱皮や羽化ができるということもあるのかもしれませんが……とにかく見た目は「アタッシュケースからでかい電話機」みたいで、意外性を感じずにはいられません。

「おい、成虫! ほんとにその抜け殻から出て来たのなら、もういっぺん入ってみれ!」とツッコミたくなるのは、僕だけでせうか?(笑)。
No title
その後、赤い色が鮮やかな成虫を見つけたので画像を追加。
アカスジキンカメムシはやはり赤い筋が濃い個体の方が美しい。

管理者のみに表示

トラックバック