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セミヤドリガの羽化/幼虫~繭~成虫

セミヤドリガ:幼虫~繭へ



先日、空中にぶら下がっていたセミヤドリガの幼虫↑(*)。セミに外部寄生するかわった蛾の幼虫だ。
《成虫期間が短いといわれるセミだが、セミヤドリガ幼虫に寄生されたセミは養分を奪われることで成熟速度が落ち、そのぶん活動満期(?)が後にずれ込むようなことがあれば……セミヤドリガ幼虫の寄生が結果的にセミを延命させることになり、それはセミヤドリガ幼虫にとっても成長期間を稼げるという意味で都合が良い──そんな仕組みでもあるのではないか?》
などという冗談めいた妄想的想像が展開したのも先日(*)記した通りだが、そんなこともあってにわかにこの虫への関心が高まった。
蛹化のためにセミから離脱したと思われるセミヤドリガ終齢幼虫にでくわしたことで、この機会に繭や成虫の姿も確かめてみたくなった。昆虫の飼育経験はあまり無いので長期間の管理となると不安だが、セミヤドリガは繭を作ると1週間程で羽化するらしい(Wikipedia等情報)という認識でいたので──そのくらいならなんとかなるだろう……そう考えて、先日発見した終齢(5齢)幼虫を持ち帰っていた↓。


小物容器に入れて持ち帰った幼虫は、容器内部を糸or綿毛だらけにし始めていた。セミを離脱した終齢(5齢)幼虫が、ほどなく繭作りを始めたのだろう。


この幼虫が繭づくりを始めた容器のフタ↑ごと、別の容器に収納。
3時間半後にみると、抜けた綿毛に包まれてモゴモゴ繭作りを進めているようだった。うごめく白いかたまりの隙間から幼虫の赤茶色の地肌がのぞく↓。


翌日には《白いかたまり》になり動きは無かった。どうやら綿毛にまみれて繭は完成したらしい↓。


「蛾の繭」というと、カイコやイラガ、ウスタビガ(ヤマカマス)、クスサン(スカシダワラ)など、芸術性を感じさせる造型を思い浮かべてしまうが……、


これらの繭に比べると、セミヤドリガの繭は周囲に抜けた綿毛の束が散乱し、散髪後の床屋の床のようだ。繭の表面にコーティングされた綿毛も方向性が不規則で、とっ散らかった感じがいなめない……なんともザツな作りに見えてしまう。もっとも、セミヤドリガ繭のいびつな形は「繭には見えない」(天敵に虫だと気づかれにくい)という点で生存には有利な気がしないでもないが……。
このセミヤドリガの繭は乾燥防止のために濡らしたティッシュとともに小型のタッパーに入れて保管。蒸れないようにタッパーのフタには孔が開けてある。


セミヤドリガ幼虫:ロウの綿毛の役割り!?



キープしたセミヤドリガの羽化を待つ間に、新たにみつけたセミヤドリガ幼虫@ミンミンゼミ。上のミンミンゼミは1匹、下のミンミンゼミは2匹の幼虫をつけていた。


セミヤドリガの幼虫は5齢(終齢)になると白い蝋状物質の綿毛で背面がおおわれるようになるのだとか。4齢までに比べるとかなり目立つ。終齢(5齢)幼虫は、なぜ白い綿毛を身にまとうようになるのだろう?。ちょっと考えると白い綿毛は目立つため、この幼虫をつけたセミは天敵に見つかりやすくなるだろうから(天敵から狙われやすくなればセミヤドリガも一蓮托生で)リスクが増えそうな気がするが……そんなリスクを凌駕する《必要性》があるのだろうか?
成長した5齢のセミヤドリガ幼虫を見ると、セミの翅と腹の間にはさまれて窮屈そうだ。蝉の翅脈のある翅をおしつけられ、あるいは蝉が飛翔するさい、この翅でたたかれたりこすられたしそうだが、小さかった4齢までと比べればセミの翅による圧力・摩擦・衝撃は(成長して窮屈になったぶん)増加しているはずだ。その摩擦や衝撃を緩和し、やわらかい体を守る役割りをしているのが《白い(蝋状物質による)綿毛のコーティング》なのではないか?──などと想像してみたが、ホントのところはわからない。
5齢(終齢)幼虫の白い綿毛は繭づくりのさいにコーティングに再利用されていたが、繭の輪郭を隠しカムフラージュする役割りもありそうな気がする。
持ちかえったセミヤドリガ幼虫が作った繭を見てそう感じたわけだが……自然の状態ではどう見えるかも確かめておきたい──という気になり、「蝉しぐれ」というより「セミ豪雨」というべきセミが大合唱する林を注意して歩いてみると、それらしきものが見つかった。


持ちかえったセミヤドリガ幼虫が作った繭を見ているから「それっぽい」と気づいくことができたが、ふつうなら目にしても繭には見えない。セミヤドリガの繭を探してみると……葉や木に付着した鳥の白いフンが目にとまり、これがいささかまぎらわしい……ということは、「不規則な形の白いモノ」は鳥糞擬態の効果があるのではないか?
そんなことを考えていると、ちょうど鳥糞にまぎれているかのような繭を発見↓。


白矢印が鳥のフン、黄矢印がセミヤドリガの繭。これ↑を見て、やはり鳥糞擬態の効果はありそうだと感じた。5齢幼虫の綿毛の白さは、目立つぶんリスクを増やしそうだが、繭では逆に隠蔽効果を高める役割りを果たしているといえそうだ。

セミヤドリガの羽化

さて、糸で降下してきたセミヤドリガ幼虫は持ちかえったその日に繭を作った。この繭が何日で羽化するのかについて、当初「1週間程度」(Wikipedia等情報)という認識でいたのだが、その後「約2週間」とする情報もあることを知り、はたして何日で羽化するのか気になっていた。
実際に羽化したのは、繭づくりを始めた日(糸で降下してきたセミヤドリガ幼虫を持ちかえった日)からちょうど14日後だった↓。


羽化は「未明~午前中が多い」とか「早朝」という情報を読んでいたので、昼過ぎに繭に変化がないことを確かめ「きょうも羽化はないか……」とあきらめかけていたのだが……。それでも油断せずに注意していると、白い繭の端に小さな黒っぽい点が出現!? 黒点はしみ出したタールのようにみるみる大きくなってくる──繭の中から(羽化のために)蛹がせり出して来たのだ。あわてて撮影の準備をした。


画面すみの数字は撮影時刻。画面右では蛹がだいぶ露出しているが↑、黒点が見えはじめてから1~2分ほどでここまでせり出してきた。








初めて見るセミヤドリガの成虫。1週間で見られると思っていたのが2週間待たされ──待ちわびていただけに、ちょっとした感慨があった。


触角が♂にありがちな「両櫛歯状」にも見えるが……セミヤドリガは♀が多く、単為生殖できるという。オスなのかメスなのかは、僕にはわからない。
この後セミヤドリガは容器の縁を歩こうとして落ち、ひっくり返ったので、まだ伸びきっていない翅が痛むことを心配し、とっさに指にとまらせた。


翅がのびてくると、(蛾なのに)チョウのように翅を立てた。これは羽化直後と思われる蛾がよく見せる行動のような気がする。


翅をとじた姿勢を10分あまり続けた後、翅を開いた通常の姿勢に戻った↓。


しばらくするとクリーム色の液を排泄した↓。


今回のセミヤドリガの羽化のようすを簡単にまとめると──。
・繭から蛹がせり出しはじめる…………おそらく12:48頃
・蛹の殻がやぶれて頭・胸背面がのぞく……………12:55
・触角が抜け、脚が抜ける……………………………12:56
・体全体が蛹殻から抜ける……………………………12:57
・翅がほぼ伸びきる……………………………………13:02
・開いていた翅を閉じる(立てる)……………………13:03
・閉じていた翅を開く…………………………………13:14
・クリーム色の糞をする………………………………13:24

セミヤドリガ成虫の頭部を腹側から撮影↓。


口吻が退化しているのがわかる。セミヤドリガは成虫になると餌をとらないらしい。
あらためて背面ショット↓。翅が光って見えない角度からみると地味な蛾だが、青っぽく光って見える角度から見ると美しい。




大きさは、直径2cmの1円玉と比べて、こんな感じ↓。




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コメント

No title
おはようございます。いつも興味深くて、引き込まれてしまいます。昆虫の知識のほとんどないのですが、とても楽しいです。
No title
セミも養分を摂られてご難ですね~。可哀相だけど。

お陰で立派に成長しましたね。素晴らしい記録にナイス!
No title
> 白樺平(シラカバビラ)さん

2週間前に蝉から離脱したセミヤドリガ幼虫を見つけたことで、繭や成虫を確かめてみたくなり、プチ飼育してみました。
No title
> まあささん

繭とその期間、成虫の姿は確認したい……そして、できれば羽化のようすを観察してみたいと思っていたので、羽化を見逃さずにすんでホッとしています。
こうして注目してみると意外に(?)おもしろい蛾だなと、改めて感じています。
No title
ふわふわして気持ちよさそうな繭ですね~。
実際やっぱりふわふわなんですか?
こう見えて意外とゴワゴワ、とかいうことはないですよね。。。

前の記事も拝見しましたが、セミへの寄生はいつ行われるのでしょうね。。。
蛾というと、卵をたーくさん産むイメージで、1個2個とか産むかんじはしないですよね。
樹皮にたくさん産んで、小さな幼虫がじわじわとセミの体に乗り移るのでしょうか。
というか、幼虫はセミの体に乗り移るまで、成長することなく小さなままでいるとか。。。

蛾の成虫、最初黒いのが出てきてぎょっとしましたが、美しいんですね!
No title
> noriさん

繭はふわふわな感じですね。風が吹くとなびくし、綿毛が飛んだりしました。
もっとも、それは外側の綿毛コーティングの部分で、内層(?)の繭自体はけっこうしっかりしているらしいです。
(抜け殻@繭は保存してあるので、そのうち調べてみたいと思います)

孵化した幼虫がどのようにセミにとりつくのか……不思議ですね。
ジャンプして飛びつくのではないかというような説もあるようですが……飛びつくのに失敗して地面に落ちたら……リスクが高すぎる気もします。

セミヤドリガの羽化のプロセスは画像検索しても見つからなかったので、僕も初めて見ました。黒っぽかったので撮影中、最初はどこがどうなっているのかわかりませんでした。
地味な蛾なのだろうというつもりでいたのですが、羽化した成虫は光の加減でけっこうキレイだったので、ちょっと得した気分でした(笑)。
No title
2週間待ったかいがありましたね。成虫は翅を閉じると、太ったセセリチョウのようです。時々フィールドで見かける綿毛の塊は、このセミヤドリガの繭だったのかもしれません。ありがとうございました。
No title
> nika4さん

せっかく持ちかえったのだから、羽化のシーンも観察したい──という思いで、1週間を過ぎたあたりから、気もそぞろでした(笑)。
見慣れた蛾でも、翅を立てていると印象がずいぶん違いますね。翅を立てている蛾はときどき見つけ、羽化直後なのだろうと思っていたのですが、セミヤドリガでも確認できたので、やっぱり──とあらためて納得できました。
セミヤドリガの繭は、知らずにみたら蛾の繭だとは思わないでしょうね。
No title
「素晴らしい!」☆・・・
思わず叫んでしまいました!
こんなに詳細に鮮明で貴重な飼育観察のシーンが拝見できて・・・
高揚と感動で心は埋め尽くされてます・・・
羽化の瞬間何て!・・・そうは観れるものではありません・・・
素敵!素敵!!素敵!!!・・・
不思議の紐解きを垣間見る幸せ!
羽化の瞬間だけではありません!繭化!繭自体!・・・
初めて目にしたもの(場面)ばかりで・・・
目にできた事に感謝!感激!!・・・幸せです・・・

そうとしか想えない繭に関する考察も、非常に楽しく拝読させて頂きました・・・「素晴らしいですね・・・涙」
その考察に、頷きました・・・

・・・「観察し考察し結果への道につなげるべき足がかりを探ることの大切さを改めて感じました」・・・
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

目の前にぶらさがっている終齢幼虫を見るまで、飼育プランはまったく頭になかったのですが……セミを離れた幼虫のその後の経緯を確かめるにはちょうどいいチャンスかも知れないと思いたち、急きょ飼育?観察をすることに。

いざ、持ち帰ると「連れて来ちゃったんだから、ちゃんと観察せねば」という気持ちが強まり、羽化を見逃しやしないかと気が気じゃなくなりました(笑)。
特に一週間を過ぎたあたりから、「目をはなしているスキに羽化してしまうのではないか……」と気もそぞろ状態で……、

待てども 待てども セミヤドリガ羽化ならざり ぢっと繭を見る

というのはジョークですが、「今日もないか……」と半ばあきらめつつ繭をのぞいていて、白い綿毛の端から黒い蛹が出てくるのを目にしたときは「キターッ!」と一気にテンションが上がりました。

とりあえず羽化の瞬間は観察する事ができ、ホッと胸をなでおろしています。
家に虫がいると(飼育していると)、気になってしかたありませんね(笑)。

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