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キマダラカメムシの臭腺開口部

もはや普通種:キマダラカメムシ



僕が初めてキマダラカメムシを見たのは2011年(*)。九州方面で見られる外来種だという認識でいたので、東京ででくわしたことにビックリした(Wikipediaによると東京で確認されたのは2010年)。
狭山丘陵ではまだ一度も見たことがないものの、丘陵のすぐ周辺の市街地ではすっかり定着し、最も多くみられるカメムシの1つとなっている。


灰色の体に《黒いブタの鼻》のような模様がユニークな幼虫↑。
これが若齢幼虫時代は全く異なるデザインをしており、まるで別種のよう↓。


孵化した卵(ぬけがら)の周りにかたまっている初齢(1齢)幼虫↑。キマダラカメムシは卵を12個セットで産むようだ。産卵直後の卵は無地だが、孵化が近くなるとフタの近くに黒縁の三角模様が現れる。
その黒縁の三角模様がまだ出ていないキマダラカメムシの卵(と思われる)に寄生蜂らしきハチがきていた↓。


侵出してきたキマダラカメムシは新しい環境でいっきに密度を高めた感があるが、あらたな加入種の密度が高まれば、こうした天敵昆虫なども急増し、追いつく(?)ことになるのだろう──そうして抑制されて、やがて適度な数に落ち着くのではないかという気もする。

幼虫の臭腺開口部を見る:臭腺分泌液のもうひとつの役割り!?

見ようと思えばすぐに見られるカメムシなので、あまりカメラも向けなくなっていたのだが……思い立ってキマダラカメムシのニオイを発する孔──臭腺開口部(臭腺開孔部)を確かめてみることにした。
カメムシは、幼虫では背面に、成虫では腹面に臭腺開口部がある──ということで、まずは観察しやすそうな背面側にある幼虫から。


全体的には灰色の体で、腹の背面に一部だけ黒い《ブタ鼻もよう》があるキマダラカメムシ幼虫。臭腺開口部を撮るべくカメラを近づけると逃げ出してしまった。そこでやむなく捕まえて接写することに。ところがつまんで保定しようとしたところ、カメムシ臭がたちこめ、臭腺から分泌したと思われる液で幼虫の背中がたちまち濡れた。この液が油のように滑るため、もがく幼虫は指をすり抜け、落ちてしまった↓。


分泌液で濡れたことで《ブタ鼻もよう》意外の部分も黒っぽく見える↑。すべる幼虫を捕まえて、なんとか腹の背面にあるはずの臭腺開口部を探してみる。




ツルツルすべる幼虫に苦戦しながら感じたのだが……もしかすると、臭腺分泌液には天敵に対する化学的(ニオイや味による)忌避効果の他に物理的(摩擦係数を減らす)スリップ効果もあるのではないだろうか?
油のような分泌液で滑りをよくすることで鳥のクチバシからすり抜けやすくなれば、そのぶん生存率は高まりそうな気がする。
ちなみに、この幼虫1匹を撮影しただけで指先にはカメムシ臭をともなう茶色いシミが残された。近くの水道で洗ってみたが、ニオイもシミも消えなかった。


臭腺分泌液でスリッピーになり、ちょっとあわてた撮影になったので……気をとりなおして、臭腺分泌液放出前の──普通の状態の別幼虫をあらためて見てみる。




《黒いブタ鼻もよう》以外の灰色っぽく見えるところは、白い微毛(?)がはえていた。ふだんはこの微毛(?)が乾いているため光が乱反射して白く見えるのだろう。
次に捕まえてみると、やはりたちまち液を分泌した。




白かった微毛(?)は濡れると光を吸収し黒っぽくなるようだ。体をおおっている微毛(?)は、臭腺分泌液を拡散させ気化効率を高める役割りをしているのかもしれない。

成虫の《臭腺開口部》と《蒸発域》!?

幼虫の臭腺開口部を確認できたので、次に成虫の臭腺開口部を見ることに↓。


成虫もカメムシ臭をともなう分泌液を放出し、これがやはり滑りやすくて、つまんで保定がままならない。


ということで、ピンセットを使用。


カメムシ成虫の《臭腺開口部》の周辺には、分泌された液をすみやかに気化させる《蒸発域》というのがあるらしいので、そのあたりも注意して見る。




とりあえず該当部分をアップで撮って、撮影した画像を拡大してチェック。白矢印の孔がキマダラカメムシ成虫の《臭腺開口部》のようだ。そしてその周辺のしわ状の表面部分が《蒸発域》なのだろう。まだ湿った部分がより黒く写っている。
この角度からでは《臭腺開口部》がわかりづらいので、別の成虫をつかまえて再確認↓。




角度は悪くないのだが、まだ鮮明ではない……ということで、そのまま日向で撮りなおしてみる↓。






《臭腺開口部》のまわりには細かい溝やひだが密集している──これが《蒸発域》のようだ。臭腺開口から分泌された液は、この溝やひだを伝って拡散し、空気と接する面積をふやすことで気化効率を高める構造なのだろう。
左手でカメムシを持ち、右手でカメラを構えるというお手軽撮影では、これが限界……キマダラカメムシをつまんだ指先は茶色いシミだらけになっていた。


撮影後も何度か水で洗ってみたが、やはりニオイもシミも消えず……。

余談だが……余りの暑さに帰りがけにアイスを購入。帰宅後、右手でマウスを操作しながら左手に持ったアイスを食べたのだが……カメムシ風味を感じながら味わうこととなったのであった……。
ミダース王が触れたものは全て黄金になる──なんてハナシがあったが、僕が左手でつまんだものは、全てカメムシ風味に感じられるのであった……。
その後、風呂に入って頭を洗った後は、指先のカメムシ臭は消えたが、シミは薄まることなく残っている。

※【追記】ちなみに、キマダラカメムシの分泌液でついた指先の茶色いシミは4日後には消失した。


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コメント

No title
こんばんは・・・
画像を拝見してるだけで、カメムシ臭がこちらにまで漂ってきそうです・・・
・・・やはり、姿形が似てるクサギカメムシ系の・・・あの独特の臭いなのでしょうか?(私は、不覚にもまだ臭った経験がありません!今一つ、勇気を持てずにいます・・・)

詳細なお写真に驚かされっぱなしです!
片手(しかもピンセット)で掴んだものを、もう片方の手で撮る!・・・その凄技にも驚かされ、見入ってしまいました・・・

あのような形、システムに成ってるんですね~・・・
こうして紹介して下さいますと、次回キマダラに出会えた時、より親しみを持って接する事ができます!
臭腺から分泌した液体で体が濡れてるカメムシを初めて観ました!・・・
その効果は、・・・
そうか~~~確かにヌルヌルと!臭い上に滑りやすく成っては、天敵もたまったものではありませんね!
面白い!・・・成程・・・
面白い考察に、納得です・・・
天敵への効果は絶大な事!星谷さんの指の沁みを観れば一目瞭然ですね!!!☆・・・
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

僕も濡れるカメムシにビックリでした。カメムシは刺激するとニオイを発するから指にとまらせることはあっても、素手でつまむことはほとんどしてこなかったので……こんなにスリッピーになるものだとは知りませんでした。

カメムシ臭は忌避効果がありそうですが、味もきっと鳥などが2度と口にしたくなくなるほどすこぶるマズいのだろうなと想像しています。
「虫屋さんなら、試しに味見してみるんだろうなぁ」と思いましたが、僕は一般民間人なので、そこまで踏み切れませんでした(笑)。
皮膚にシミが残るくらいなのだから、口の中では……強烈そうですね。
No title
キマダラカメムシとの最初の出会いは2000年代初頭の佐賀。喜んで採ってカメムシ屋にあげたのを思い出します。
我が家の近くの農場で初めて見たのは2012年。今では近所で普通に…

こいつもですが、ヨコヅナサシガメは何とかならないですかね。
No title
> ともっくさん

キマダラカメムシは大きいしキレイだから、最初に見た時はビックリしますね。
こちらではマツヘリカメムシが比較的最近入ってきて普通種になりました。キマダラカメムシはまだ丘陵地帯では見たことがないのですが、マツヘリカメムは丘陵地帯でも市街地でも見かけます。

ヨコヅナサシガメも僕が子どもだった頃には見た記憶がないですが、今はどこにでもいますね。
カミキリは害虫として嫌われがちですが、害虫のイモムシ・毛虫を退治するヨコヅナサシガメもやっぱり嫌われがちですね。
No title
おはようございます。
カメムシも色々な種類がいますね!
キマダラカメムシは未だ出会った事が無いです。
洗濯物などにカメムシが付くとカメムシ臭がついて嫌になります。
ニオイもシミもなかなか消えないですよね。
その手でアイスを食べたんですか~!
カメムシ風味のアイス如何でしたか~ニコッ( ^o^ )✩

('∇^d) ナイス☆!!
No title
> kaneo93さん

カメムシも種類が多くてバリエーションが豊富ですね。
今どこまで生息域を拡大しているのかわかりませんが……やがて遭遇する日がくるかも?
カメムシの洗濯物被害はブログ記事でもよく目にします。
ナメムシ臭を感じながら食べるアイスもビミョ~でしたが、カメムシ臭のする服を着るのも嫌でしょうね。
No title
私は触る勇気がないから臭いも分かりませんね。^^;
余り見掛けない気がします。
夏ですのでご自愛ください。(^O^)
No title
> まあささん

カメムシ(の成虫)が胸からニオイを出すというのは、子どもの頃から知っていたのですが、実際にどこから出すのかは最近まで確かめてみたことがありませんでした。
少し前にアカスジカメムシ等で確かめ、種類によって臭腺開口部ふきんの形が違うので、キバラヘリカメムシではどうなっているのか気になって確認してみたしだいです。
熱射病やデング熱(今年はどうなるのか!?)に気をつけて待つを乗りきりませう。
No title
カメムシってこわくて触れなくて
有名なカメムシ臭も嗅いだことがないのですが
こんなに触って、嗅ぐどころか手にいっぱい付いてしまっている写真が
ちょっと衝撃的でした。笑
まさに今の時期、大人の自由研究ですね。

キマダラカメムシって、最近東京でも見られるということで
一度見てみたいと思っていましたが、外来種だったんですね。
知りませんでした!
No title
> noriさん

カメムシ=悪臭というのは誰もが認識していることですが、そのニオイがどこから出てくるのか、確かめておかねば……と思いたってこんなコトを(笑)。
ビニール袋ごしにカメムシをつかんだりしたこともあったのですが、やはり繊細な指先でじかにつまんだ方が扱いやすいので(ピンセットにはさむときも、まず指先でつまんではさむところを調整しています/幼虫はやわらかいのでピンセットを使うと傷つけそうだったので素手でつまんで撮りました)。

キマダラカメムシは丘陵の緑地コースではまだ見たことがないのですが、市街地の公園や街路樹では、けっこうあちこちで見かけるようになりました。いろんな木にいますが、サクラの幹についていることが多いようです。
大きいしキレイなので、見映えのするカメムシではありますね。
No title
キマダラカメムシ卵から成虫まで精度の高い描写、ドキュメンタリーのように見入ってしまいました。手に付いた臭いのおまけ、此所までは進めません(笑)カメムシも何種類か写していますが、星谷さん撮影のカメムシは殆ど見当たりません(笑)
No title
> skittoさん

左手に分泌液で滑るカメムシ、右手にカメラを持って、プルプルしながらNGを量産しながら撮りました。フィルムカメラではできない撮り方ですね(笑)。
ニオイはブログに残すことができませんが、その代わりに(?)指に残ったシミを記録しておくことにしました。
No title
キマダラカメムシは出会ったことがありません!
息子が名古屋のど真ん中にいたと写メしてきたことがあります!
街中の街路樹と一緒にやって来たと聞いています。

姿はなんだか無機質な感じが好きです。
でも、触って臭いを・・・・とは思いません!
一度クサギカメムシの幼虫を潰してしまい、いつまでも臭いが消えず、鼻の繊毛にずっと臭い成分がついているような気がしてましたよ!

星谷さんの探求心に脱帽です!
No title
> ピンちゃんのママさん

こちらでも市街地の街路樹にはたくさん発生しているのに、わずか1km離れた丘陵の緑地では見たことないんですよねぇ。
僕が初めて見たのは大きな街道沿いの桜並木で、苗木にはおらず、古めの桜にいました。その後あちこちに拡がり、今は桜の若い木の方が多く集まっている感じです。
交通量の多い(長距離トラックがたくさん走っていそうな?)街道ぞいの木にたまたま運ばれて来たヤツが卵を産んで増えて行くパターンなのではないかと想像しています。

カメムシ臭は鼻につく感じはしますね。クサギカメムシもクサい印象があります。
クサギカメムシにも(臭腺開口部を見ようとして)ニオイ付きのシミをつけられたことがありました。

ちなみに今回のキマダラカメムシのシミは4日後には消えました。

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