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エゴヒゲナガゾウムシ:オスの眼はなぜ離れてる!?

エゴヒゲナガゾウムシ(ウシヅラヒゲナガゾウムシ)



エゴノキの実に孔が目立つようになった。これはエゴヒゲナガゾウムシの産卵痕。よく見るとあちこちにエゴヒゲナガゾウムシの姿があった。


メスはエゴノキの実をかじって孔をあけ、腹端をさしこんで産卵する。孵化した幼虫は果皮内側の堅い種子の中で成長するらしい。エゴヒゲナガゾウムシの幼虫は「ちしゃ虫」と呼ばれ釣りのエサとして売買されているとか(「エゴノキ」は「チシャノキ」とも呼ばれる)。エゴヒゲナガゾウムシが発生している場所ではエゴノキの実のかなり多くで産卵痕がみられる。寄生率の高さから、集めやすいということで商品(釣り餌)として取り扱われるようになったのだろう。
エゴノキの実の果皮にはサポニンという有毒物質が含まれているそうだ。毒があることで鳥などに食われにくい実だとしたら、エゴヒゲナガゾウムシにとっても良いホストなのかもしれない(種子はヤマガラが好むらしい)。








ところで、この【エゴヒゲナガゾウムシ】──名前に「ゾウムシ」とついてはいるが全然「ゾウ」に似ていない(※「ゾウムシ」と「ヒゲナガゾウムシ」は科が違う)。僕の手元にある甲虫の図鑑では【ウシヅラヒゲナガゾウムシ】という和名で載っている(ネット情報によれば、この昆虫は触角が長いのでカミキリと誤認されて【ウシヅラカミキリ】なんて呼ばれることもあったとか)。
「ゾウ」にはとても見えないが、「ウシづら」というのも、どうなのだろう……ちょっと首をかしげたくなる。もっと他の名前がついてもよさそうなユニークな特徴がある昆虫なのだが……。

のっぺらぼう虫!?/眼が顔の外にとびだしたオス



エゴヒゲナガゾウムシのおもしろいところは、オスとメスで顔がずいぶん違うことだ。メスも「おしろいをぬった平べったい顔」みたいで愛嬌があるが、オスの顔がなんともユニークなのだ。




オスは左右の眼がおもいきり離れ、顔の外に飛び出している。正面からながめると飛び出した眼はツノのようで(眼がどこにあるのかわかりにくいので)白い顔の「のっぺらぼう」のように見える。「牛づら」よりは「のっぺらぼう虫」「ノツペラボウビートル」と呼ぶ方がふさわしい気がしないでもない。


また、オスは背後からながめると、飛び出した眼は動物の耳介っぽく、《たそがれるハイエナの後ろ姿》に見えてしかたがない。


葉の上に飛来したエゴヒゲナガゾウムシ♂↑。まだ後翅がのぞいている。




顔が平たくオスの眼が離れている理由!?



メスではふつうなのに、オスだけ眼がこんなに離れているのはナゼなのだろう?──これだけユニークな姿を目にすると、そう考えずにはいられない。
オスはメスが産卵作業をしている実の近くに陣取っていることが多い。交尾のため・あるいは交尾したメスに他のオスを近づけないための監視なのだろう。




丸いエゴノキの実の上では、実の反対側にライバル♂がとまると死角になって見えない。眼が顔より外に飛び出していれば、そのぶんいくらか死角を減らせる──実の反対側からスキをうかがうライバル♂からすれば、体を実のかげに隠しながら眼だけをのぞかせる《潜望鏡》のような使い方もできる。そうした利点があるのかもしれない。


ただ、《オスの眼が離れている理由》には他の意味があるのではないかと僕は考えている(例によってあくまでも個人的素人解釈)。
《(メスをめぐる)オス同士の闘争において「離眼距離」が勢力の優劣決定に影響し、より眼が離れたオスが子孫を残す傾向が強まり、その特徴を進化させてきた》のではないか?──そんな気がする。
動物界ではオス同士の闘争行動において「体を大きく見せる」ということはよくある。ライオンのオスは顔がでかいし、たてがみだって顔を大きく見せて相手を萎縮させようというアイテムなのだろう。キッシンググラミーという魚はオス同士がキスするように口をつきだして広げ、その大きさを競い合って優劣を決める。
エゴヒゲナガゾウムシも、《オス同士の闘争行動で「離眼距離」が競われ、「眼の離れ具合が大きい」→「大きい(強い)」との判断基準で勢力の優劣が決められているのではないか》──「闘争行動」によって、ライオンのオスの顔がでかくなりタテガミが発達したように、エゴヒゲナガゾウムシではオスの眼が離れていったのではないか?
そう考えるのは、以前エゴヒゲナガゾウムシを撮っていたとき、オス同士が顔を突き合わせて一方が飛び去るのを目にしたことがあったからだ。初めてこの虫のオスを見たとき、「なんで、こんなに平べったい顔なんだ?」「どうして眼がこんなに離れているのか?」とフシギに感じていたが、《オス同士が顔を突き合わせて「眼のはなれぐあい」を競い合う》ためだと考えると合点がいく。
そして今回も《オス同士が顔を突き合わせて「眼のはなれぐあい」を競い合う》闘争行動を何度か確認することができた。残念ながら鮮明な画像は撮ることができなかったのだが……いちおう、問題の闘争行動を──。




この直後、1匹(♂)が飛び去って決着。闘争行動に勝った♂は左触角が曲がっていたが、眼の離れ具合は勝っていたようだ。




こうした《闘争行動》がエゴヒゲナガゾウムシの顔を平たくし、オスの離眼距離(僕の造語)を発達させてきたたのではないか──僕はそう考えている。

ところで、エゴヒゲナガゾウムシが産卵するエゴノキの実だが……熟すと果皮が裂けてタネが落ちる。早くも果皮が裂けタネがのぞいている実があったので、その画像も↓。





【撮影後記】本当は別の昆虫を探していたのだが……エゴノキの実にたくさんエゴヒゲナガゾウムシが来ていたので、ちょっと迷ったのち、目的を変更してこの虫を撮ることにした。
「ちょっと迷った」──というのは、何度か記してきたが、僕は写真(画像)撮影には苦手意識がある。エゴヒゲナガゾウムシそのものは面白いのだが、小さく(体長:3.5~5.5mm)て、しかも「よく揺れる」枝先の実や葉の上にいるのを撮るのは大変そうだなぁ……という思いがあったから。生態は面白いのに、ちゃんと撮れないとフラストレーションがたまる。
実際、撮りはじめるとやっぱりNGが多い。珍しい虫なら飛び去ってしまえばどうしようもないので「あきらめ」がつくが、エゴヒゲナガゾウムシはたくさんいるので、幸か不幸か?撮影に失敗して飛び去られても、まだまだかわりの被写体はつきない……。
撮りづらい位置だったり、光線の具合がよくなかったり……エゴヒゲナガゾウムシはたくさんいるものの、撮影に向いた条件のところにいるのを探すとやはり絞られてくる。
ようやくOKショットが期待で来そうな被写体をみつけても、いざシャッターをきろうとする瞬間に風が吹いて画面が揺れ「いま撮ろうと思ったのに揺らすんだものなぁ~もぅ!(往年の西田敏行のCM風)」という悔しい思いをくり返した。
撮り始めて途中で止めるのもくやしいので、とりあえず粘って撮り続けるが……気がつけば熱中症になりかけ(?)ヘロヘロになっていて、ちょっとヤバかった……。
というわけで、イマイチな画像も多いが……いちおうまとめてみたしだい。


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コメント

No title
こんばんは・・・
どれも、これも・・・素晴らしいお写真に!
タメ息の連続でした!!!・・・

実は、私、エゴヒゲナガゾウムシを一度も目にした事がありません・・・
(エゴノキ自体、理解してません!・・・涙)
これですから、目的の虫にもなかなか出会えないはずです!

今回の記事を拝見させて頂いて!
更に「エゴヒゲナガゾウムシへの憧れが強く成りました!」

先ず衝撃を受けたのが!♂の顔ではなく・・・
♀の顔でした!(図鑑等には、♂の顔ばかりが載ってるので、♀の顔があのような姿だと気付けませんでした!可愛い顔してますね!流石♀です!)

次に、♂の眼が!・・・
あそこにあるなんて!(私、初めて知りました!)
・・・「あの眼の離れ具合とその意味!(笑)」
・・・確かに不思議ですね!その問題に気付け、しっかり考察されてるところ!・・・頭が下がる想いです!!!・・・

おっしゃること・・・
非常によく分ります!!!☆・・・
私も、そう観えてきました!そうに間違いない!とさえ想えます!!!・・・
素晴しい考察に、大興奮させて頂きました・・・
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

冗漫な記事におつきあいいただき、ありがとうございます。
希望通りの画像がなかなか撮れずNGの山を築いた中から使えそうな画像を選んでみました。

こちらではエゴノキはけっこう多く、市街地でもエゴヒゲナガゾウムシの産卵痕を見かけることがあります。
エゴノキはエゴシギゾウムシやエゴツルクビオトシブミなどのホストでもあるので、意外にユニークな虫たちに人気がある木なのかも?

エゴヒゲナガゾウムシは♂に特徴があるので確かに♂にカメラを向けがちかも知れませんね。今回撮った画像も、帰宅後チェックしたら♀の顔の正面ショットが少なく、もっとちゃんと撮っておけばよかった……と反省しました。

エゴヒゲナガゾウムシはありふれた虫なのでしょうが、脳みそを刺激するユニークな存在だと思います(笑)。
No title
このエゴヒゲナガゾウムシに会いたくて散歩コースのエゴノキ、庭のエゴノキを毎日見ている私なのですが、一度も出会えたことがありません。

メスの産卵は感激です。
あんなに実に体を差し込んで産卵するんですね!
この時はとても危険でしょうにね!

なんといっても魅力的なのがオスの顔!
是非是非お会いしたいものです。

私などは帰って来て見るとほとんどはボケボケ!
「もっとたくさん撮っておけば良かった!」と根性のなさを嘆く日々でございます。

昨日もブチミャクヨコバイの幼虫にせっかく出会えたのに、ぼけぼけ画像ばっかりでしょげております。
歳のせいにしてはいけないのですが、年々手ぶれがひどく、またピントが合っているか否かが見えなくて・・・・・

デジカメじゃなかったら大変な事になっていると思うのです。
No title
> ピンちゃんのママさん

エゴヒゲナガゾウムシ、今回撮った場所では、どのエゴノキを見てもいる──という状態だったのですが、地域によって発生にムラがあるのかもしれませんね。
いれば、実の産卵痕でわかると思うのですが……。

僕も「なんとか撮れただろう」と思って帰宅後パソコンで確かめてガッカリというパターンが多いです。
先日投稿したブチミャクヨコバイ幼虫も、それ以前に何度か撮っているのですが……「おもしろい虫が撮れた」と思って帰宅後確認してオールNGを経験しています。
ブチミャクヨコバイ幼虫は思った以上に撮りにくい虫なのかもしれませんね。

デジカメは失敗しても経済的負担が無いと言うのが一番の救いですね。
フィルムカメラを使っていた時は、現像で待たされた上に、ただでさえガッカリなNG写真に現像代・プリント代を払わねばならない「泣きっ面に蜂」状態でした。
No title
おはようございます。
私は難しい話は良く分かりませんが、
エゴの果実にエゴノネコアシと言うのを時々みます!
何かの幼虫~かなとは思ってましたが、
初めて見聞きするエゴヒゲナガゾウムシだったんですね☆彡
何時も詳しく説明してあるので分かりやすく、勉強になります!
ありがとうございます!
('∇^d) ナイス☆!!
No title
> kaneo93さん

エゴノネコアシは今回撮影している時にもみかけました。花のつぼみか実のような感じの「虫こぶ」ですね。これはエゴヒゲナガゾウムシとはまた別の虫(アブラムシ)が作った(植物に作らせた?)ものです。
あの「虫コブ」は果実ではなくて、芽が変化してできるのだとか。
エゴノキも、けっこう色々な虫が利用しているようですね。
No title
こんにちは!
思い掛け無いところに目が有るんですね~。お初です。
次回はよ~く観察してみます。(多分小さくて揺れると撮れない)
とても綺麗に撮られていますね。
No title
> まあささん

オスの眼の位置は意表をついていますね。デメキンならぬオスデメヒゲナガゾウムシでもよかったかも(笑)。
枝先にぶらさがっているエゴノキの実は微風でも揺れるので苦戦しました。それにエゴヒゲナガゾウムシはよく飛ぶんですよね。
下手な鉄砲を数撃つ方式です。
No title
注意してじっくり見たことないですが、UPでじっくり見ると、面白く興味がそそられますね。
じっと見ていると、いろんなものに見えてきます(笑)
今回も有り難うございました❤
No title
> すぬーぴーさん

小さな虫ですが、よくみるとおもしろい姿をしていますね。見る角度によってもイメージが変わるので、とりあえずたくさん撮った中から使えそうなものを選んでみました。
身近な虫におもしろみを発見するのも虫見の醍醐味ですね。
No title
先日エゴノキで探したのですが、コチラではいませんでした。
また、別の場所に行ってきます。
No title
> カメレオンーアームスさん

その後、あちこち見ているのですが、こちらでは丘陵地帯には少なく、市街地の公園・緑地のエゴノキに多いみたいです。発生時期のズレなのかもしれませんが、低地の方が多いのかもしれません?
エゴノキの実をざっと見ていけば──いれば、産卵痕(孔)が目につくのでわかると思います。
No title
私もエゴヒゲナガゾウムシを探していますが、川の傍に5本もエゴノキがあり、木が大きすぎるのと実が多すぎて探し切れていません。
多分人気の木とそうでない木があるのでしょうね。エゴヒゲナガゾウムシ綺麗に撮られています。ナイスです。
No title
> nika4さん

その後注意して見ると、こちらでも場所によって発生にバラツキがあるようです。丘陵地帯では少なく、市街地の公園や緑地で多いような。以前、丘陵地帯で撮ったこともあるので発生時期の差なのかもしれませんが。ちなみに、今回観察した場所ではすでにエゴヒゲナガゾウムシはほとんど姿を消し、実もタネが露出したり多くが落ちています。
発生していれば実に産卵痕(孔)が見つかるので判ると思います。
揺れやすい実にとまったエゴヒゲナガゾウムシは撮るのが大変で、NGを量産しました。撮りやすい場所に発生しているのを風の無い日に撮るのが良いのかも?

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