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アカスジカメムシ:臭いはどこから?

アカスジカメムシのユニークなデザイン





赤地に黒のみごとなストライプ──サッカーの強豪チーム・ACミランのユニフォームを思わせるアカスジカメムシ。コンサドーレ札幌のユニフォームにも似ているが、個人的にはACミラン亀虫と呼んでいる。
このカメムシはユニークなデザインなので「こういうカメムシがいる」ということは知識として知っていたが、実際に初めて目にしたときはやはり驚いた。初めて見るのにすでに知っている──なんだか有名人にでもあったような妙な感慨(?)があったものだ。そんなアカスジカメムシを今年もヤブジラミで見ることができたので撮ってみた。
何度見てもやはりこのデザインとカラーリングには感心する。よくもまぁ、こんな「まるでヒトが描いたかのようなストライプ」が実現したものだと思う。赤と黒の派手な取り合わせは「くさいニオイを出すカメムシ」であることを示す《警告色》としての意味合いを持つのだろう……しかし昆虫食の天敵に対する《警告》という意味だけなら、なにもこんなにキレイな縦縞ストライプである必要はなかったのではないか。他のカメムシは、もっと自然な(?)デザインで充分に目立っている。
ストライプ模様も横縞ストライプ──帯状の模様ならば、さほど不思議は感じない。昆虫は腹などの節を見れば帯状だから、この節にそって色が配置されれば横縞ストライプになる。
もちろん体幹にそって縦縞模様が入った昆虫だっているが、普通はボディラインに沿って──体のフチにそって縦縞はカーブしているものだろう。


赤と黒の配色のカメムシはいるし(ナガメ↑)、体幹にそってラインが走る縦縞模様(平行にはならない)の昆虫もいる(ヤマトタマムシ↑)。しかし、アカスジカメムシの「体のラインにそわずに平行」な模様はひとあじ変わっていて不思議を感じる。
例にあげたヤマトタマムシの場合、縦縞模様は上翅に入っているが、アカスジカメムシの場合では大きく発達した小楯板(しょうじゅんばん)に入っている。これが平行縦縞ストライプを実現させた要因の1つになっているのだろうか?

アカスジカメムシとアカスジキンカメムシ

初めてアカスジカメムシを見たとき、アカスジキンカメムシと似ていると感じた。


一見してわかるように模様は全く違うのだが……カメムシにしては体が分厚つくボリューム感があって、発達した大きな小楯板(しょうじゅんばん)が背中をおおっている点で似ていると感じたのだろう。
ちなみに小楯板を甲虫類のニイジマチビカミキリと比較すると、その発達具合がよくわかる↓。


ところで、《赤地に黒の縦縞ストライプ》のアカスジカメムシだが……背面から見ただけでは、これが本当に《赤地に黒》なのか、それとも《黒地に赤》なのか判断しにくい。脚が黒いのだから《黒地に赤》なのではないかと考える人もいるかもしれない。そもそも和名からして「クロスジ」ではなく「アカスジ」だし。しかしながら、腹面を見るとまだら模様で《赤地に黒》であることがわかる。


アカスジカメムシと驚きの100円昆虫図鑑

アカスジキンカメムシの話もでたところで……アカスジカメムシといえば、かつて百円均一ショップのダイソーで買った100円の昆虫図鑑を思い出す。


図鑑というと「高い」印象が強い。ところが100円で買える昆虫図鑑があった!?──店内でこれを見つけた時はとても驚いた。紹介されていた昆虫は全104種──「図鑑」と呼ぶにはいささか寂しいラインナップではあったが……オールカラーで百円は素晴らしい!──そう思って購入してみた。
ところが、有名どころの【アカスジカメムシ】の項目を見てビックリ! 掲載されていた写真は、なんとアカスジキンカメムシだった。さらに日本の国蝶と紹介されていた【オオムラサキ】の項目では、チョウの翅先が欠けていて、図鑑に載せるには残念なクオリティ……というか、それ以前に、これも写真は別の種類だった。


【オオムラサキ】と紹介されていたチョウは、ツマムラサキマダラだろうか──元々は国内には分布しない迷蝶だったそうだが近年になって沖縄地方に定着したとか。そんなチョウと国蝶オオムラサキを「昆虫図鑑」が間違えてはイカンだろう……。
他にも色々間違いがあったらしい(虫屋さんが14種ほど間違いを見つけたなんて話もあった)。いったい誰が監修したのか──と奥付を探すが、著者やカメラマン・監修の記載がない。発行年月日も記されていないという怪しげなものだった。
普通の昆虫図鑑は高い。欲しくても買えない子が、この百円昆虫図鑑なら買える──と購入したケースは決して少なくなかっただろう。百円の定価は膨大な数を売りさばくことによって実現する……そうしたことを考えると、大量に消費されたと思われるこの百円昆虫図鑑は罪が深いと思う。
100円の定価を実現するのが大変だということはわかる。だから掲載した種類が少ないのは仕方なかったかもしれない……しかし情報を売る商品の情報そのものに間違いがあっては困る。また【図鑑】であるのに監修などの責任者が明記されていないというのも不可解だ。
この百円昆虫図鑑を愛読し【アカスジカメムシ】とはアカスジキンカメムシのことだと誤認し、日本の国蝶の姿を間違って覚えてしまった子がどれだけいるだろう……アカスジカメムシを見ると、ついそんなことを思ってしまう。

悪臭を発しない!?というウワサ

間違いと言えば、ネット上にはアカスジカメムシやアカスジキンカメムシが悪臭を発しないという説(?)があるようだ。YAHOO!知恵袋にも、こんな質問とベストアンサーが記されていた↓。
Q:『〇〇カメムシ』という名前の付くものは全て悪臭を放つのですか?
匂いを出さないカメムシもいるのかな?と少し疑問に思いました。

A:もちろんにおいを出さないものもいます!!
たとえば、アカスジキンカメムシという、とてもきれいなものは、においをだしません。
悪臭かどうか──感じ方には個人差があるだろうが、アカスジキンカメムシもアカスジカメムシも、いわゆるカメムシ臭を発する。両種のニオイは僕も実際に経験している。
以前飼っていたフェレットがアカスジキンカメムシ幼虫の背中をふみつけて肉球が臭くなったなんてこともあって、このエピソードは(フェレット漫画)にも描いている。
カメムシ(成虫)が胸(腹面)からニオイを発するという事は子どもの頃に読んだ本で知っていたが、幼虫は背面に臭腺開口部があると知ったのはだいぶ後になってからだった。

カメムシはニオイをどこから出すのか?

カメムシの臭腺開口部は、成虫では腹面に1対・幼虫では背面に3対あるらしい──ということは、なんとなく知っていたが、実際にニオイが出てくる部分を見たことはなかった。ということで、今さらながら臭腺開口部なるものを確かめてみようと思って、アカスジカメムシ成虫の腹面をのぞいてみた。


カメムシの悪臭は臭腺から分泌される液だというが、成虫では胸(中脚の付け根ふきん)に臭腺開口部が一対あって、その周辺には分泌された液をすみやかに気化させる《蒸発域》というのがあるらしい。




まず目についたのがヒダ状の溝──このスリットの脚の付け根側(画像の上側)に《臭腺開口部》があるのだろうか?──撮影している時はそう思ったのだが、撮った画像を見ていて、白矢印で記した部分に孔があることに気がついた。その周辺は「脳のしわ」を思わせる細かいヒダが密集しており、他の部分とは表面の構造が違う──ヒダの毛細管現象でニオイ液を拡散させ表面積を広げることで気化を早める構造にみえなくもない!? これが《蒸発域》ならば、白矢印の孔が《臭腺開口部》であると考えると、孔から分泌された液がすみやかに「脳しわ状のヒダ」で拡散し気化するというのは納得できる。
後日あたらためて別の個体をしらべてみたが、やはり白矢印で示した部分に孔がある。これがアカスジカメムシ成虫の《臭腺開口部》っぽい。




──という解釈をしてみたのたが当っているだろうか? とりあえず撮影中に問題の「カメムシ臭」は再確認できた。強烈というほどではないけれど、《アカスジカメムシもやはりニオイを発する》。

カメムシの《臭腺開口部》が気になり、クサギカメムシ成虫でも腹面をチェックしてみた。






こちらは「これだろう」というのがすぐに判った。スリットの根元(脚の付け根に近い側)に穴がある──これが《臭腺開口部》なのだろう。このときも撮影中にカメムシ臭を体感。
そして撮影後のクサギカメムシ(この直後に飛翔)と、つまんでいた指に残されたシミ↓




このあと近くの水道で水洗いをしたが、シミは落ちずカメムシ臭もしばらく残っていた。

次にカメムシ幼虫の背面に3対あるという《臭腺開口部》を確かめてみたくなったが、被写体が小さいとわかりづらいだろう。大きなカメムシ幼虫は……と考えてまず思い浮かんだのがアカスジキンカメムシだった。


過去に撮った画像を振り返って、あわよくば《臭腺開口部》が写っていないか探してみたが、判らず……。が、少し前に羽化後の抜け殻を撮っていたことを思い出した(【ルリカミキリとアカスジキンカメムシ】)。終齢幼虫の抜け殻ということになるが……その画像をチェックすると「それっぽい」のがかすかに写っているような気がするものがみつかった↓。


矢印で示したところが《臭腺開口部》らしき穴の痕跡。じつはこの抜け殻は撮影し直すことがあったときに備えて回収していた。それをひっぱりだして別アングルから右背面を接写。3対(6カ所)あるはずの《臭腺開口部》の右側の3つを撮ってみた。


画像ではちょっと判りにくいが……これが幼虫の《臭腺開口部》だろう。
ついでに……キレイだったので、抜け殻の腹面の画像も改めて撮ってみた↓。


幼虫時代に白かった部分が半透明になっていて、黒っぽかった部分は暗い緑色に鈍く輝いている。触角は青紫で、複眼もそのままの形で残っているのがおもしろい。針のような口──口針とその鞘もちゃんと残っていた。

というわけで、《カメムシ臭は、成虫は腹面から・幼虫は背面から放たれる》ということは納得できた。


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コメント

No title
子供の頃鯉に餌をやろうとした時、近くにいたカメムシを沢山捕まえ、手が臭くなって以来捕まえたことはありません(>_<)
なのでお腹の方からの画像に興味津々でした!

顔の部分だけ見るとセミによく似てるんですね♪

アカスジカメムシ、背中がストライプでお腹は水玉ですか!ユニークですね~
どこかで会えるかな?
No title
知らずに捕まえて手が臭くなると、ちょっと凹むかもしれませんね(笑)。
カメムシのお腹側ってふだんあまり見ることがないですが、顔はたしかにセミっぽい感じもしますね。こうしてみるとカメムシもセミの仲間(半翅目)だというのがうなずける気がします。

アカスジカメムシは、こちらではヤブジラミでみつかるのですが……いるところにはかたまっていて、いないところには全然いない感じです。
やはり「ニオイ」で密度の高い所へ集中するようなしくみになっているんですかね。
セリやニンジンなどにも集まるそうです。
No title
色々なところで間違いが多いですね。
顕微鏡的画像で細部までよくわかり素晴らしいです。
今回も勉強させて頂きました。ナイス
No title
> 市川さん

臭腺開口部について今ひとつよくわからなかったので、撮ってたしかめてみようと思ったしだいです。
本当はもう少し鮮明に撮りたかったのですが……お手軽撮影スタイルではこれが限界でした……。
No title
確かにACミランです❤
今まで疑問に感じていなかったのですが、改めて勉強になりました❤
No title
> すぬーぴーさん

アカスジカメムシを見るとACミランを連想し、ACミランのユニフォームを見るとアカスジカメムシが思い浮かんでしまいます(笑)。
「いっそのこと、アカスジカメムシをACミラン(もしくはコンサドーレ札幌)のマスコット・キャラクターにしたらいいのに」なんてよく思うのですが……カメムシのキャラクターはあまり歓迎されないのかもしれませんね(笑)。
No title
アカスジカメムシ確かにACミランの色に見えてきました。臭腺開口部まで確認されるのですね、星谷さんの探究心に関心させられます。
ひょっとして星谷さんは生物学の先生なのですか??
No title
> nika4さん

カメムシはニオイを発する──ということは、あたりまえのように認識していましたが、実際はどの部分から発するのだろうと今さらながら気になったもので、プチ観察してみました。
僕は「生物」をちゃんと勉強したことがなく(高校時代も選択の関係で「生物」は1時間も受けていません)、基本的な知識も持ち合わせていないのですが……興味を覚えたものは、自分なりに答えが出るまで考えてみないと納得できない性分かもしれません(笑)。
No title
おはようございます。星野さんのブログには本当にいつも感心します。楽しくて飽きませんね。
No title
> iiz*n*2755さん

ありがとうございます。自分がおもしろいと思えるものを記しているのですが、他の方にも楽しんでいただければ幸いです。
No title
アカスジカメムシは実際臭いをかいだことがあり、星谷さんのブログを読み進むにつけ臭ってくるようでした。
幼虫と成虫で臭いを出すところが違うなどとは良い勉強になりました。
アカスジキンカメムシは出会ったことが無く憧れております。
恥ずかしながら、アカスジキンカメムシが臭わないという噂を信じておりました。
No title
> ピンちゃんのママさん

カメムシも種類によってニオイに格差はあるようですが、アカスジカメムシも臭いますよね。
成虫と幼虫で臭腺開口部の位置が違うというのは、僕も知ったときには意外でした。
草木にとまっているとき背後から迫る敵には背中側から発した方が効果的ということで幼虫時代は背面にあって、成虫になると背中は翅でおおわれてしまうから腹面に移動するのだろうか……などと想像しています。
アカスジキンカメムシが臭わないというハナシは時々目にします。ネット上では真逆の情報が混在していることはよくあるので、気をなければと思っています。
No title
おはようございます。ごめんなさい、名前間違えちゃった。指摘もせずに星谷さんはやさしいですね。また楽しませていただきます。
No title
> iiz*n*2755さん

気にしないでください。ときどき間違われますが、文章の内容で判りますから。
No title
図鑑眺めるのも楽しいけど、星谷さんのブログ読んでると図鑑以上に深くて感心しきりです。趣味の領域を飛び出す星谷さんの探求心、行動力に憧れます。
No title
> ムッシニョールさん

冗漫になりがちな記事におつき合いいただき恐縮です。
僕には虫屋さんのようなマメさはなく、興味を感じたコトを思いつきで調べてみたりしているだけなのですが……そうしたことを少しずつブログでまとめていけたらと思っています。
No title
こんにちは、こちらの木場公園では赤筋が毎年発生するのですが、今日は幼虫を見つけました。初めてです。調べていくうちにこちらのブログにぶちあたりました。
とても勉強になりました。この頃小さいカメムシを撮影しますが、星谷さんのようなマクロのカメラを持っていないのでここまで拡大して撮ることはできません。
それにしてもやっぱり匂いするのですか。カメムシ臭いというのですが、鼻が悪いのか全然感じないです。100円図鑑今度見つけたら買ってみますね。ナイス!
No title
> 四季の風さん

アカスジカメムシはユニークなカメムシですね。
カメムシがニオイを放つのは知っていましたが、どこから出すのか実際に確認したことはなかったので、調べてみました。
アカスジカメムシのカメムシ臭は撮影中に体験しましたが、他のカメムシと比べてさほどキツくはありませんでした。

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