そんな昆虫のトリックやギミックに「えっ!?」とか「へぇ!」と驚いたり感心することもしばしば。これまで見てきたものの中からいくつかを改めてまとめてみた。
ウラギンシジミ幼虫の線香花火

先日投稿したウラギンシジミ幼虫のビックリ・ギミック。刺激をくわえると突然、ツノの近くでパチパチと線香花火の火花が散るように何かがチラつく……初めて見た時は何が起こったのか判らなかった。筒状のツノの先端から試験管ブラシのような器官を瞬間的に出しで広げ、またたく間に収納していたのだ。刺激に反応してのことだから、おそらく寄生蜂や寄生蠅などを追い払うような役目でもあるのだろう。緩慢な動きしかできないと思っていた幼虫の、目にも止まらぬ早業にビックリした。
ウラギンシジミ幼虫はクズの花穂にまぎれて花やつぼみを食す──このこととフラッシュ・ブラシの誕生には何か関係があるのではないか……などと想像が広がった。
花は虫が集まる器官だ。つまり葉を食べる幼虫より、花を食べる幼虫の方が、他の虫と遭遇する機会が多いはずだ。寄生蜂や寄生蠅が体にとまろうとすれば幼虫は寄生を阻止するため抵抗しなければならないが、接触してくる虫が宿主か全然関係ない虫かは幼虫にはわからない(単に花に集まってきた虫が接触する機会も多いはず)。だからといって「抵抗」を怠れば寄生されやすくなる。「抵抗」をサボる幼虫は生存率が落ち、マメに「抵抗」することが生存率を保つことにつながっていたのだとすると、いちいち体を大きくくねらせて抵抗するより、省エネですばやく対応できるフラッシュ・ブラシのような器官があった方が便利だろう。ウラギンシジミ幼虫は花への擬態も完成度が高い。せっかくこれだけ隠蔽効果がある姿をしているのに「抵抗」で頻繁に激しく動けば、天敵に見つかりやすくなってしまうというデメリットだって大きいに違いない。そんな観点からも、動きが見てとれないほどの素早さでフラッシュ・ブラシをふるうことは、隠蔽擬態したまま使える防衛術として理にかなっているように思われる。
そんなふうに考えると筋は通る気もするが……シジミチョウの仲間ではウラギンシジミの他にも幼虫が花やつぼみを食うものがいる。彼らはフラッシュ・ブラシなしでもちゃんと生き残ってこられたのだから、ウラギンシジミだけがなぜこんな器官を発達させたのか……という疑問は残る。
フラッシュ・ブラシはやっぱり謎めいていて不思議な器官である。
ノコメエダシャクの対称性かく乱トリック

1年前にネタにしたが、今年もそろそろ出現する時期ということで。パッと見「枯葉に擬態した蛾」という感じで、このレベルのカムフラージュはめずらしくもないような気がするが……たいていの昆虫の特徴である《左右対称性》を崩して天敵の眼を逃れる(と思われる)──という着眼(?)に感心した。斜めにかしいでとまり腹を曲げて《左右対称性》を壊し、さらに左右対称である翅の形まで違ってみせる──というのがスゴイ。ちなみにこの画像は昨年撮影したもので、腹が向いている方が「下」である。
まぶたがないのに眼を閉じるシロコブゾウムシの閉眼ギミック

死んだフリ(擬死)をしたシロコブゾウムシが「眼を閉じている」ように見えて、瞼のない昆虫にあり得ない瞑目トリックにとても驚いた。触角がちょうど眼をおおう形でたたまれていたわけだが……擬死で触角をたたむにしても、本来なら視界をふさぐのは外敵のようすを監視しずらくなるという意味でデメリットとなりそうな気がする。しかし、触角が眼をおおう構造になっているのは、そのデメリットより多くのメリットがあったからだろう。シロコブゾウムシはつぶらな眼が目立つ──これを隠すことで天敵に見つかりにくくなり、生存率が高まるという利点があったのだろう(と解釈している)。
シャチホコガ幼虫の開眼ギミック

シロコブゾウムシが《(本物の)眼を隠す》ことで目立たないようふるまっていた(と思われる)のに対し、シャチホコガ幼虫は《(偽物の)眼を見せつける》ことで威嚇効果となっているのではないかと想像する。目玉模様(眼状紋)を持つ幼虫は少なくないが、開閉する目玉模様のギミックはおもしろい。
アシナガオニゾウムシの収納ギミック

オスの前脚が長いことにおもしろみを感じて撮影しているうちに胸の腹側にフシギな凹みがあるのに気がついた。ゾウムシの仲間は長い口吻が特徴だが、それを含め顔をすっぽり収納できる仕組みになっていた。触角をこのくぼみに隠し顔でぴっちりフタをする──たしかに長い口吻や触角を完璧に隠せば天敵から見つかりにくくなるのだろうが、小さな虫がここまでやる必要があるのだろうか?──と思うほど、よくできている。このつくりがメカニカルでおもしろい。擬死モードでは長い前脚もきちんと折りたたんでる。
コノハムシの内蔵消失ギミック



このコノハムシは以前飼育していたタイ産の成虫♀。通常は必ず腹を上に向けて葉にとまる。つまり下からは背面が(逆光で)見え、上からは(順光で)腹面はが見えるとまり方だ。葉に擬態したうすく平たい体をしており、本来なら逆光では透過光で内蔵の影が透けてしまいそうなものだが、通常の姿勢では内蔵の影は見えない。ところが、ひっくり返して(逆光で)腹側から見ると内蔵の影や翅の影までもがクッキリ透けて見えてしまう。そんな姿を見ると通常の姿勢で「光を通すほどの平たい体で内蔵の影を隠している」のがスゴイことなのだと気づかされる。
単に内蔵が透けないようにするだけなら光を通さない構造にすれば良いのだろうが、それでは体全体がシルエット(影)になってしまい、光を通す葉の中では黒くかえって目立ってしまう。木の葉と同様にある程度光を通しながら内蔵の影を消してみせるというのは実にふしぎなことだ。
コノハムシ成虫♀は飛ぶことが出来ず、翅は葉に擬態する役割りに徹しているが、この翅が内蔵の影を隠す役割りも果たしているようだ。
コノハムシの擬態はよく知られている。色や形が木の葉によく似ていることが注目されがちだが、透過光で内蔵の影が透けて見えない工夫というのがまた驚くべきところだと感心するしだい。
・・・ウラギンシジミの幼虫は、クズの花の色に似た(紫系)のものと!葉の色に似てる(緑色系)のものがいて、しかもとてもきれいな芋虫なので、大好きです・・・
ですが、この線香花火は、一度しか観た事がありません・・・
しかも、ほんの一瞬だけの事です!(この様なお写真が、どうして・・・☆)
しかし、素晴らしい忍者ばかりですね!・・・
珍しくて、この虫達を探す事は、私には到底出来そうにありません・・・
擬態が得意な虫には、興味があります!私にとっては、遠い憧れの存在ばかりが観れて・・・幸せです!!!☆
「線香花火」は2年前に初めて見てビックリしたのですが、あまりきれにい撮れなかったのでいずれ撮り直したいと思っていました。
定番の虫見コースを歩きながら、クズの花をみつけるとチェックしていたのですが、ようやく見つけることができました。
普通、虫を撮る時は「止まった瞬間」がシャッターチャンスになりますが、「線香花火」はフラッシュ・ブラシが飛び出した瞬間がシャッターチャンスなので、タイミングが合わず苦労しました。
とりあえず、それとわかる画像が撮れたのでホッとしています。
一瞬にして、のシャッターチャンスも難しそうですね。
見事に撮られている凄技の星谷さんも凄いです。
感心してしまいます。
他に紹介されている昆虫たちも凄い~
昆虫の世界は未知なる世界、まさに「未知との遭遇」ですね
楽しい解説、興味深く拝見させていただきました
ナイス☆
フラッシュブラシの撮影は失敗もかなりありました。何度もシャッターをきり、写っているものを使いました。
本当に昆虫は不思議に満ちています。
こちらではアカスジキンカメムシはよく見かけるのですが、ニシキキンカメムシを見ることはできません……。
よくできていますね~。感心します。
ノコメエダシャクは、左右非対称だと
たしかに枯葉感がぐんと増しますね!
生きているものは左右対称なのだという感覚が
当然のようにしみついているということに気づかされました。
これからもおもしろ昆虫特集楽しみにしています~。
ノコメエダシャクは左右非対称に見せるという作戦(?)もなかなかユニークだと感心します。僕が昆虫を探す時の目安の一つが「左右対称」の形だったりしたので、この作戦は意外に効果があるのではないかと。
実際に「これは(左右非対称だから蛾ではなく)枯葉」と判断してスルーしていた対称がいくつかあって、たまたま目立つところにとまっていたノコメエダシャクの脚が見えたことで初めて蛾だと気づきました。それから昆虫検索モードから「左右対称」の条件を外すと、この蛾がけっこう見つかるようになりました。うまく化けていても左右対称な昆虫はみつけやすい──というのを改めて意識しました。
虫の写真と説明がいっぱいですね!見ていてワクワクしちゃいます。
目を隠したり顔を収納するのってスゴい面白いですね(≧▽≦)
他のページもゆっくり拝見させて頂きます♪
身近にいながら、意外に知らない昆虫って、けっこういるものですね。僕も虫見を始めて初めて知った虫がずいぶんいました。
注意して見ると、なかなか奥が深い世界が広がっていると感心します。


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