欄干(らんかん)を巡回するミドリセイボウ

今年もミドリセイボウが、昨年みられた(*)同じ欄干(らんかん)に出ていた。
セイボウ(青蜂)はメタリックな輝きが美しいハチの仲間。むし社・刊『月刊むし』472号(2010年6月号)の《日本産セイボウ図鑑》によれば、日本には38種のセイボウ類が生息しているとのこと。



ミドリセイボウが欄干でみられるのは宿主であるヤマトルリジガバチ(ルリジガバチ)が手すりと支柱の隙間に営巣しているため。
ヤマトルリジガバチは竹筒や材の虫食い孔など、すでにある穴を利用して営巣する。クモを狩っては巣に運び込むが、これがやがて孵化するルリジガバチ幼虫のエサとなる。この資源に目をつけ寄生するのがミドリセイボウというわけだ。ミドリセイボウはスキをみてルリジガバチの巣に潜入し卵を産みつける。孵化したミドリセイボウ幼虫はルリジガバチの卵あるいは幼虫と備蓄されたクモを食べて成長する──ということのようだ。

この欄干では獲物や巣材搬入のため隙間から出入りするルリジガバチと、托卵すべくチャンスをうかがい巡回するミドリセイボウの姿がみられる。



セイボウの仲間はいくつか見ているが、触角で歩行面をさわるしぐさをよくしている。ちょっと犬が地面に鼻を這わせるようにしてニオイを嗅いでいるしぐさに似ていなくもない。セイボウも触角でニオイを探っているのだろう……これまで漠然とそう思っていた。オスならメスがたどったニオイを、メスなら宿主ヤマトルリジガバチのニオイを──。手すりや材、葉の表面に触角を触れるのは、それらの表面に残されたニオイ物質を拾っているのだろう……そう解釈していた。
今回、撮影しながらミドリセイボウやルリジガバチをみていて、ふと「ひょっとしたら、触角を触れているのは振動をキャッチするためではないか?」と思った。というのもルリジガバチが巣に潜っていったあと、「ジジジジジ……」というジガバチ特有の(?)バイブレーション音が聞こえてくることがあったからだ。
ジガバチの仲間が翅を高速で振るわせ、こんな音をだすことはよく知られている。この音は「ジガジガ」と聞こえなくもない──これが【ジガバチ】の名前の由来だとか。昔の人は、この蜂が狩ってきた虫を埋め「ジガジガ(似我似我=「我に似よ」)」と呪文(?)を唱えることでジガバチに変身させると考えた……「似我蜂」→「ジガバチ」という伝承に由来するらしい。
以前、ムツバセイボウを撮ったところでも、積まれた材の奥に潜り込んだ狩り蜂が「ジジジジジ……」と音を発していたことがあった。
営巣で穴を掘るとき・狩った獲物を搬入するとき・穴に詰め物でフタをするときなど、バイブレーションを使うと作業がはかどることがあるのかもしれない。つまり振動を加えることで粒子のつながりが壊れ掘削しやすくなったり、狭い穴にひっかかりがちな獲物を引き込む(押し込む)ときに振動させて少しずつずらすことで通しやすくしたり、詰め物をするさいには振動が素材の粗い粒子の隙間に細かな粒子を入り込ませ「なじませる」効果があったりするのではないか。
ジガバチではないが、以前ライポン(コマルハナバチ♂)をつかんだとき、指の隙間から逃げようとして翅を羽ばたき「ジジジジジ……」と高速振動することで少しずつ体をずらし、みごとにすり抜けたことがあった。

※【刺さない蜂!?ライポン】より
セイボウが触角を歩行面にふれているのは「振動探知」のため(でもあるの)ではないただろうか!?
はたして触角に音(振動)を感じとるような機能があるのかどうか──確かめたわけではないのでサダカではないが、今回ちょっとそんなことを考えた。
ヤマトルリジガバチ(ルリジガバチ)
ミドリセイボウに寄生される側のヤマトルリジガバチ(ルリジガバチ)。欄干の隙間に狩ってきたクモや巣材を運び込むようすが何度も見られた。また、その合間にはミドリセイボウが潜入する姿も──。





ルリジガバチの搬入物だが……クモはすぐに判ったが、白っぽいものをくわえて巣に入る姿も何度か目撃。クモにはみえないので、巣材に使う泥だろうかとも考えてみたが、それにしては白すぎる。いったい何を運び込んでいるのだろうと周囲を見回してみると……こんなものが目に入った↓。


アオバハゴコロモ幼虫は分泌したロウ物質を体にまとう──これで白く見える。クサカゲロウの幼虫は(種類によっては)補食した虫の死骸などを背負ってカムフラージュするといわれている。アオバハゴロモの幼虫やクワキジラミの幼虫などロウ物質にまみれた虫を補食した後背中に乗せていると白い塊と化す……こうなるとカムフラージュ効果というより逆に目立ってしまう気がしないでもないが……ルリジガバチかくわえてきたのは大きさ・形・色合いから、これに似ているように感じた。
ヤマトルリジガバチはこれをクモと誤認(?)し、獲物として巣に運び込んでいるのだろうか?──そんな想像もしたが、帰宅後調べてみると、ルリジガバチは完成した巣の入口をふさぐさいに鳥糞の白い部分や石灰を使うらしい(育室の隔壁にはふつうに泥が使われるそうな)。僕が見た白い物体は、白くデコレーションしたクサカゲロウ幼虫ではなくて、《鳥の糞》だったようだ。
まさか天敵が「エンガチョ」と嫌って敬遠する「えんがちょガード効果」を狙って鳥糞を抜擢したわけではないだろうが……ムツバセイボウの宿主ヤマトフタスジスズバチが巣穴の入口を塞ぐのに噛み砕いた葉片を使っていたのを思い出した。種類によっては素材への「こだわり」があるのがおもしろい。
そんな中、手すりの上にベタッと腹這いになってはりついているルリジガバチがいた。

弱っているわけではなく、カメラを向けると起き上がり飛び去って行った。飛び去ったあとの場所に触れてみると金属製の手すりは太陽光にさらされかなり熱くなっている。こんなところに腹這いになっていたのでは高熱による機能不全を起こしそうな気もするが……焼かれたプールサイドで甲羅干しをするようなあのポーズは何だったのだろう?
もしかすると、他の個体と空中戦で競い合うさいに、相手よりも敏捷に動けるよう筋肉を暖めていたのだろうか? 筋肉が充分に暖まっていない昆虫は飛翔がままならないことがあるが、逆に高熱にすることで超暖機状態をつくりターボをかけていたりして!?……そんなことも考えてしまった。
「いま撮ろうと思ったのに飛ぶんだものなぁ~、もう!」
と、西田敏行(のかつての洗剤CM)風にぼやいてみたり、ようやくベストのフレーミングまで迫ったのにシャッターを切る直前に飛ばれて、
「ちょっとくらい撮らせてくれたって、いいやろ! 減るもんぢゃあるまいし! けち!」
などと心の中で地団駄をふんで、「これが号泣県議だったら、どれほど泣き叫んでいたことか!」と思ってみたりしつつ、ビミョ~にねばって撮ったもののなかからマシな画像をチョイスしたしだい。
・・・今回も、素晴らしいハチの仲間達の観察に・・・
感動!感銘を受けました・・・
以前から感じてるんですけど、虫の詳細な部分を捉えて撮影されてる事に、驚かされてばかりいます・・・
・・・狩り蜂を撮影したい!と願っても、先ず見付ける事自体が難しく、ましてこの様に綺麗に撮影するなんてことは、とても!とても!(クサカゲロウの幼虫の姿しかり!)
・・・図鑑!・・・いや、図鑑以上のお写真を堪能させて頂きました!!!☆
グルーミングを始めると比較的撮りやすくなる感じがしますが、せわしなく巡回を続けている時はダメですね……。
今年カメラを買い換えて(OLYMPUS STYLUS TG-2 Toughへ)、以前より小さな虫も撮れるようになりました(クサカゲロウの幼虫は以前のカメラでは難しいサイズだったのでスルー)。
それでも、やっぱり昆虫撮影は難しいですね。とりあえずビシバシ撮って、その中からマシなのを残す、下手な鉄砲も数撃ちゃ方式でやっています。
とりあえず虫をみて感じたり考えたりしたことを画像を使ってわかりやすく記録したいと思っているのですが……あまり手際よくない記事も少なくないかも……。
ジガバチの、獲物を殺さないように麻酔をかけて卵を産みつけるという行動って
器用なことをするなーという感心と、半殺しって…という恐怖を感じますよね。
えんがちょ、なつかしいです!
西田敏行、笑いました!
その動けなくした獲物に寄生するジカバチにさらに寄生するセイボウもスゴイですね。美しい外見とのギャップ(?)がまたなんともフシギというか。
「えんがちょ」は昔よく聞く言葉だったけど、最近はあまり聞かなくなったような気がします。最近も子どもはあまり使わないのかな?
西田敏行の「今やろうと思ったのに言うんだものなぁ~もう!」のCMは彼の魅力を凝縮したベスト作品だと思っています(笑)。
ミツバチの触角では振動を感知することはすでに知られています。どの部分がどの感覚を感知するのかももう調べられているそうです。(味覚も感知するそうです)巣板は通信機器でもあるらしいです。
ほかの昆虫でも十分考えられますよね。巣の上でのブルブルは昆虫独自の通信方法なのかもしれません。
ということは他のハチ(セイボウ)であっても、おかしくはなさそうですね。
ミツバチの情報伝達力などの能力はスゴイなと感じると同時に、それを解明した研究者たちの観察力・洞察力・努力もスゴイなと感心しています。



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