托卵の機会をうかがうムツバセイボウ

5月末、緑地の片隅に積まれていた木材でムツバセイボウに出会った。
こうした木材置き場にはカミキリやタマムシの仲間がいることがあるので、その姿をさがしていたところ、突然メタリックな輝きをはなつ緑色の蜂が目に飛び込んできた。
英名で【jewel wasps】(宝石蜂)と呼ばれるセイボウの仲間であることはすぐ判った。
セイボウの仲間は、カッコウ(鳥)がオオヨシキリの巣に托卵するように、カリバチなどの巣に侵入して卵を産みつける(イラガセイボウはイラガの繭に孔をあけて産卵)。他人(他鳥)の巣で孵ったカッコウがオオヨシキリの親が運ぶエサを食って育つように、孵化したセイボウの幼虫は、カリバチが我が子のために貯えたエサを食って育つ──そうした《労働寄生》の生態から英名では【cuckoo-wasps】(カッコウ蜂)とも呼ばれるそうだ(※セイボウには宿主の幼虫のみを食う《捕食寄生》の種もいるとか)。
木材にはカミキリなどがあけた穴があちこちに開いている。その穴を利用してカリバチが営巣しているようで、その巣を狙ってセイボウもやってきたのだろう。
じっさいにこの木材置き場では狩ってきた幼虫を抱えて飛ぶカリバチの姿もあった。
はたして僕の目の前でも、ムツバセイボウが木材の穴にもぐりこんで葉片を引き出す行動が展開された。「ははぁ、これだったのか」と納得。ムツバセイボウの宿主であるヤマトフタスジスズバチは営巣するさいに育室の間を葉片で仕切るという。ムツバセイボウは、その仕切り(葉片)をとりのぞいていたのだろう。木材の下を見ると、ムツバセイボウが捨てたと見られる葉片が散乱していた。



このときは、カメラを警戒してかムツバセイボウは葉の廃棄作業の途中で飛び去ってしまった。ちなみにこの日はロクな画像が撮れなかった……(ムツバセイボウの動きが速すぎ……)。

後日、同じ場所へ行ってみると問題の虫食い孔は塞がれていた。ヤマトフタスジスズバチは営巣の仕上げに入り口を塞ぐらしいが、ムツバセイボウに寄生されても(気づかずに?)に営巣作業は最終行程まで続けられるのだろうか。

いずれにしてもムツバセイボウが産卵を終えていたのだとすると、もうここへは戻ってこないかもしれない……そう思っていたところ、近くの木材を物色するムツバセイボウを発見!

撮り始めて気がついたのだが、ムツバセイボウが止まった枝の先には穴が開いている──サビカミキリの脱出孔だろうか……ここに出入りするヤマトフタスジスズバチの姿も見られた。




ヤマトフタスジスズバチが飛び去った後にムツバセイボウがその孔にもぐる姿も見られた。このときは、あっという間に入ってすぐに出てきてしまったので、その瞬間は撮れなかった。すぐに出てきたのは、ヤマトフタスジスズバチが貯め込んだエサの貯蔵量がまだ不充分だったからかもしれない。エサの搬入待ちなのか、巣穴から少し離れた「定位置」にもどり、まったりと?グルーミングを始めたので、この日はその姿を撮ることができた。

「ムツバ」の由来である腹端の「六歯」も確認したかったのだが……今回撮影できた画像ではちょっと判りづらい。よ~く見ると右側に3つ「歯」があるようにも見えるが……(その下の黒っぽいのは「歯」ではなく腹の末端)。

グルーミング中は、ふだん見えない腹の背面がのぞくこともある。


この後、ムツバセイボウは、搬入待ちの間に他の産卵場所を探すためか、飛び去って見えなくなった。
翌日、問題の木材を確かめてみると、ムツバセイボウが狙いをつけていた巣穴──ヤマトフタスジスズバチが出入りしていた穴は塞がれていた。他にも周囲の虫食い孔に塞がれたものがいくつか見つかった。これらの何割がムツバセイボウの寄生を受けているのだろう。


実はこの日もムツバセイボウが木材を物色する姿が見られたのだが、動きがあわただしく、虫食い穴に反応しても一瞬のぞいただけでスルー(空き家だったのだろう)。一時もじっとしておらず、そのまま飛び去ったので撮影はできなかった。

ムツバセイボウはその名の通り「六歯」──6歯を備えているのだが、左半分に3歯(つまり左右あわせて6歯)あるのが、なんとかわかる。
『月刊むし』472号(2010年6月号)/(有)むし社・刊によれば、日本に生息するセイボウは38種だそうで、腹部末端の突起(歯)の数や形状も種類を見分けるポイントの1つ。
ちなみに、昨年【宝石蜂(jewel wasps)セイボウ】で撮影したミドリセイボウは5歯、クロバネセイボウは4歯、2009年にアップした【メタリックに輝く虹色のハチ】のツマアカセイボウは4歯。イラガセイボウ(イラガイツツバセイボウ)は5歯である。
木材に来ていた他の昆虫


カミキリの脱出孔はよく見かけるが、こうした穴を利用して営巣するカリバチや、さらにそこへやってくるセイボウがいるとは……自然は無駄無く有効活用されているものだなぁ……と実感した。
先日はオオミドリシジミを4年ぶりに撮りました。
いつも行く公園でも4年の間一度も見なかったです。
撮影場所は違いますが少ないのでしょうかね。
それにしても、本当にキレイな蜂ですね。
オオミドリシジミはまだ見たことがありません。僕は地元の虫見コースを歩くだけなので、普通種でも出会った事が無い虫がけっこういたりします。
・・・ムツバセイボウとその詳細な生態の記録写真に・・・
ただただ・・・驚き!感激するばかりです・・・
姿・色彩の美しさだけではなく・・・
ユニークと言いましょうか、面白く興味深い生態をしてるんですね!
・・・虫!面白いです!!今年は、ハチの仲間の様々な生態に出会えるといいな~と思ってます。☆
一部を除いて多くがハチに寄生しているというのも興味深いですね。狩り蜂は寄生をしているわけだから、寄生する蜂に寄生する蜂──というフクザクな関係……。ハチも奥が深そうですね。
ご訪問、コメントありがとうございます。
虫に詳しいんですね(^_^)ニコ
あの赤い虫は害はないのですね?
でも…ダニって名前が付いてるだけで嫌な気分ですが(笑)
教えていただきありがとうございました。
赤い虫──おそらくタカラダニの仲間ではないかと思うのですが、こちらでもよく見かけます。実害はないと思いますが、ベランダについたりするので嫌がられがちですね。
「タカラダニ」で検索すると色々な情報が得られると思います。
今回のムツバセイボウも最初に見つけたときは動き回っていたのでブレたりボケたりした画像しか撮れませんでした。2回目はセイボウがターゲットを決めていたためか、その巣穴の近くでじっと監視(?)している時間があって、ようやくマトモに撮影する事ができました。
上手く撮れるかどうかは出会ったときのセイボウ次第……みたいなところがありますね。
タイミングを逃すと次にいつ見られるチャンスが訪れるかわからないので、こんなときは、つい力が入ってしまいます。
セイボウの仲間は本当に美しいですね。ベーシックな緑~青の金属光沢だけでも充分に美しいのですが、ムツバセイボウのように赤系が混じる種だと、さらに鮮やかさが増すように感じます。
他にも、ミツバセイボウとかフタツバトゲセイボウ(これは小盾板の突起をさしているようです)なんていうセイボウもいるようです。
虫や条件によって画像の出来映えが安定しないので、腕ではなく……たまたまキレイに撮れたのはカメラの性能のおかげと思っています。
それにしても美しいモデルでした。もう少し希望のアングルで撮らせてくれれば言うことなしなんですけどね……。
ムツバセイボウはきれいなので、会うと嬉しいのですが
とにかくいつもすぐに逃げられてしまいます。
なので、きれいに撮影されているだけでもすごいなーと思うのですが
さらにこんなに観察されていて、とても興味深かったです。
ムツバって、六歯から来ているのですね。
名前を付けるときに、そんなにマニアックなところに目をつけなくても
ニジイロセイボウとかでもよさそうなのに。。。
「ニジイロセイボウ」はイメージピッタリのネーミングですね。ツマアカセイボウも「ニジイロ」の候補として有力ですが。
セイボウの仲間は日本に38種類いるそうですが、パッと見、似たのもいるから見分ける目安の「歯」の数が名前に入れられたりしたのでしょうね。
ちなみに「6歯」持つものではタイワンセイボウとリュウキュウセイボウというのがあるようですが、本土ではムツバセイボウだけだったような……。


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