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《オスによる触角切り》予想・ふたたび

触角が切れていたヨツボシヒラタシデムシ



ヒラタシデムシ類は交尾のさいにオスがメスの触角を噛んで強く引く「ひげ噛み行動」をするという。メスの触角が噛み切られてしまうこともかなりの割合で起こる──と記したサイト(シデムシの世界)もある。
また、ヒラタシデムシ亜科のいくつかの種で「触角を切除した♀」で配偶実験をしたところ《触角を噛めないと交尾を始められない種がいることが分った》とするサイト(種間で異なる触角噛みの役割)もあった。

僕も先日もヨツボシヒラタシデムシの「ひげ噛み行動」を観察する事ができ(*)、《♀の触角は♂にとって交尾をより確実にするための器官として利用されている》という実感を持った。そして──、
《ある種の昆虫にとって、♀の触角が交尾の成功率を高めるための補助器官であったとするなら、♂は交尾後♀の触角を噛み切ることで(♀が自分以外の♂と交尾するのを妨げ)、自分の遺伝子を残そうとする》──そんな《オスによる触角切り》行動があっても良いのではないか(有効なのではないか)──という可能性を想像してみた。その着想の経緯を記したのが【切られた触角の謎(妄想的予想仮説?)】。
その後、4匹ほどヨツボシヒラタシデムシを見かけているが、その中に触角が切れている個体がいた。


触角が欠けた個体を見てまず頭に浮かんだのは、「(同じヨツボシヒラタシデムシの)《オスによって交尾後、触角を噛み切られたメス》なのだろうか?」──とい可能性だ。
ただ、この個体が♂なのか♀なのか、僕にはよくわからない。
翅からのぞく腹端が目立つので♂っぽい気もするが(前に交尾を観察した♂がそうだったので)……。
で、触角が切られたのが♂であったなら……と考えてみた。♂同士の争いで切られたのだろうか?
《♂同士の(♀をめぐる?)争いで相手の触角を噛み切る》行動は、理窟で考えるとあり得そうな気がする。《♂が♀を探す時に触角を利用している》のであるとすれば、ライバルの触角をカットしてしまうことは♂同士の♀獲得競争に有利に働くはずだからだ。

先日「ひげ噛み行動」を確認するためにヨツボシヒラタシデムシに交尾をけしかけたときのことが思い出された。♀のすぐそばに降ろした♂は最初、カメの子状態で「触角を隠し」その間「♀に全く反応を示さなかった」。その後、時間が経ってカメの子状態を解くや否や、♂はすぐ♀に反応して「ひげ噛み行動」を発動した。触角を「OFF」状態から「ON」状態に切り替えたことと、「♀を確認」したことは関係があるように見えた。


やはり♂の触角には♀を感知する器官の役割りがありそうだ……だしたら、《♂同士の闘争で触角を切り合う行動》も、あっても不思議ではないだろう。

カミキリなどは採集した♂同士を同じ容器に入れておくと触角や脚を噛み切ることが起こりがちだと言う。♂同士で触角を切り合うような行動はそう珍しくないのかもしれない。

(ある種において)《オスによる触角切り》行動は《交尾後の♀に対して》だけではなく《ライバルの♂に対して》もあるのかも知れない……触角が切れたヨツボシヒラタシデムシを見て、そんなことを漠然と考えた。
もちろん、これも脳内シミュレーション。システムとして有効かどうかについての頭の体操であって、実際の昆虫にあてはまるかどうかは定かではない。

また、前に述べた通り、画像の触角が欠けたヨツボシヒラタシデムシが♂であるかどうか、僕には判らない……この昆虫のオス・メスの正しい見分け方を知らなかった。
……ということで、オスとメスの違いについて、あらためて調べてみた。昆虫の種類が判っていれば雌雄の見分け方など(外見上見分けがつくものについては)すぐ判るだろうと思ってあれこれ検索してみたのだが……これがなかなか判らなかった。
結局、図書館へ出向き、学研の図鑑(原色ワイド図鑑 Picture Encyclpedia 昆虫Ⅱ・クモ)にようやく「ヒラタシデムシ類のおすとめす/おすにくらべめすのはね先はつきだす」との図解表記を見つけることができたのだが……自分で撮ったヨツボシヒラタシデムシの♂と♀の画像を比べてみても……ちょっと違いがハッキリしない……。見慣れた虫屋さんには一目瞭然なのかもしれないが……。



ところで、今回ヒラタシデムシ類の雌雄の見分け方を検索しいて【シデムシのオスは何故メスの触角を食いちぎるのか?】という研究課題について記したサイトをみつけた。オオヒラタシデムシについて調べた結果は意外にも《のべ数百の交尾対を通じて、『オスがメスの触角を噛み切る』現象は全く観察されなかった》そうである。

それでは屋外でしばしば見られる?触角が欠けた個体の大半は、他の理由で触角を失ったということなのだろうか……? そんな疑問も浮かばないではないが、この実験をみるかぎり、少なくともオオヒラタシデムシについては「ひげ噛み行動」が「オスによる触角切り行動」という明確な習性にまでには至っていない──ということらしい。
僕が観察したヨツボシヒラタシデムシでも「オスによる触角切り行動」が本当にあるのかどうかは不明だ。

ただ、オスの生存戦略的に考えると《ある種の昆虫にとって、♀の触角が交尾の成功率を高めるための補助器官であったとするなら、♂は交尾後♀の触角を噛み切ることで(♀が自分以外の♂と交尾するのを阻害し)、自分の遺伝子を残そうとする》──という習性を獲得している昆虫がいてもおかしくない──世界のどこかにいても良さそうな気は、やはりするのである。

追記:片触角ヨツボシヒラタシデムシの飛翔

その後見たヨツボシヒラタシデムシが、やはり触角が欠けていたので追記。
ヨツボシヒラタシデムシを見かけるようになった当初(発生当初)は触角が欠けた個体はみなかったのに、ここへきて触角が切れた個体を立て続けに見て、触角欠損率が高くなったような気がする(データとしては数が少なすぎるのであくまでも個人的印象)。コメントで市川さんも最近触角が欠けた♀に出会っているというし、交尾や♂同士の喧嘩を経験した個体の割合が増えた事で「触角切り」も増えたのではないか……という気がしないでもない。もちろん単なる想像だが……いつか「触角切り」のシーンに出くわすことがあれば、「触角切り」の予想もにわかに実感がわいてくるのだろうか……。








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コメント

No title
こんばんは。
・・・実際のヨツボシヒラタシデムシを目にしたこともない私ですが
、先日からの触角に関する記事を興味深く拝見させて頂いてます。
・・・腹先が突き出てるところといい、先日からのお写真からといい
(♂の触角が切れてる様に感じます)・・・所謂、♀の奪い合い行動によるものでしょうか?・・・
・・・トンボの仲間やチョウの仲間にも、♂が交尾後、他の♂を近づけない行為があるとの事!?・・・
おっしゃる通り!♂が自分の遺伝子を残そうとし、♀の触角を噛み切る行為はあるのやも!?・・・と言う思いがしてきました・・・☆
No title
野外で昆虫を見ていると、触角が欠けている個体を見かけることも少なくなく、「いったい何があったのか?」とあれこれ想像してしまいます。
虫をみる楽しみは「想像力を刺激してくれること」に(も)あるのではないかと思っていますが、「ひげ噛み行動」には大いに刺激を受け、脳内シミュレーションが活性化しました。
頭の体操のようなものですが、ひろがった「想像」を記してみたしだいです。
No title
ヨツボシヒラタシデムシの触角切れの記事興味深く読ませて頂いています。
10日狭山丘陵へ出掛ける機会が有り左触覚の無い2匹のメスと出会いました。
カミキリも沢山いて嬉しい悲鳴を上げて来ました。
No title
市川さんも触角の欠けた個体に出会いましたか。ヨツボシヒラタシデムシが出始めた頃には触角が欠けた個体は見なかったのに、交尾後の個体が増えただろう時期に触角が欠けた個体にであう機会が増えたとすると……やはり何かありそうな気もしてきました。

狭山丘陵へ来られたそうですね。ブログも拝見しました。初めてでヨコヤマトラカミキリを撮ることができたのはラッキーでしたね!
No title
さらに触角が欠けたヨツボシヒラタシデムシを見つけたので追記。

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