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アメリカザリガニは排除すべきなのか

●アメリカザリガニは排除すべきなのか

アメリカザリガニを【特定外来生物】に指定すべきだという動きがあるという。

■生態系に脅威 ザリガニを特定外来生物に指定を
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131122/k10013254341000.html

ビオトープづくりに熱心なナチュラリストが、「憎っくきアメリカザリガニ」を殺しまくっている記事はたまに目にしていたから、こういう動きがでてくるのも当然なのかも知れない。
しかし、個人的には……感情論込みであることを認めて言うのだが……抵抗がある。

ブラックバスが【特定外来生物】に指定されるのは判る。そうすべきだと思う。
ミシシッピアカミミガメが【特定外来生物】に指定されたとしても、しかたがないと思う(現在は【要注意外来生物】)。どちらも日本の自然にふさわしくない。どちらも、生態系への悪影響が大きそうだ。
しかし、アメリカザリガニについては……個人的には僕が子どもの頃には身近な里山の風景の一部としてすっかりなじんでおり、もはや普通種になってたという印象がある。
今やアメリカザリガニを含む生態系は全国的に安定してしいるのではないか。
それを今さら【特定外来生物】に指定して排除すべしというのは……排除しきれるものでもないだろうし、すでに安定してしまった生態系から特定の外来種を排除しようとするのは生態系の再破壊につながるではないのか……という違和感を禁じ得ない。

ナチュラリストの中には「人間が持ちこんだ種だから、人間が責任をもって駆除しなければならない」という崇高な理念を持っている人もいるようだが……在来生態系に悪影響をおよぼしかねない外来種の《侵出を阻止するための駆除》なら、それもやむなしと思うけれど……移入後新たに構築された生態系がすでに出来上がっていたとするなら……そして、ターゲット種の排除が現実的に不可能ならば、「駆除作業」はナチュラリストの「崇高な理念」を満たすためだけの自己満足にすぎないのではないか……という気もする。

問題の記事を読むと──、トンボやゲンゴロウなどの希少種が少なくなったことを懸念した市民グループ「神奈川トンボ調査・保全ネットワーク」が、「希少昆虫の減少」を「アメリカザリガニの増加」と結びつけ「アメリカザリガニが希少昆虫を減らした原因」と見なして、「希少昆虫を守るためにアメリカザリガニを駆逐すべきだ」と考えたことが「アメリカザリガニを【特定外来生物】指定へ」という発想につながったようにも見える。

市民グループの見立ては本当に正しいのか?──この点は、ちゃんと検証されているのだろうか?
元々希少種はちょっとした環境変化で絶滅に向かう可能性は高い。問題のトンボやゲンゴロウを減らす事になった原因が実は他にあって(温暖化など)、同じ原因でアメリカザリガニが増えた──という可能性はないのか充分検証されているのだろうかと、ちょっと心配になった。

また、「希少トンボを守るためにアメリカザリガニを駆除すべし」という発想は、「トキを守るためにテンを駆除すべし」という発想に近いのではないか……という印象も受けた。
以前、佐渡トキ保護センターで特別天然記念物のトキがテンに襲われて物議をかもしたことがあった。テンは半世紀前に持ち込まれ、生態系の一部となっているが、トキ保護派は「トキを守るため、ワナをかけてテンを駆除すべきだ」と主張していた。
自分たちがひいきしている種を守ることこそが大事で、そのためには障害となる他種を殲滅してもかまわないという身勝手な発想が根っこにあって、それを正当化するために外来種問題を持ち出した印象が否めない。

トキの場合は、(自然の中では)もはや絶滅した種でこれを人工的に復活させようと言う発想がそもそも非自然きわまりない話なので、「神奈川トンボ調査・保全ネットワーク」の取り組みとは同一に語れないが……「思い入れのある希少種を守るために、邪魔者の帰化種を排除すべき」という発想は同類のような気がしないでもない。

僕も個人的な「思い入れ」でいえば……アメリカザリガニは郷愁のひとつとなっている。僕の子ども時代の体験をふりかえれば、アメリカザリガニは「自然」や「科学」への興味の入り口となったアイテムの1つであったといえる。
アメリカザリガニをとったり釣ったりする「遊び」は僕の中では貴重な体験だったし必要なものだったとも思う。アメリカザリガニを飼ったり観察することを通じて、「生命」や「自然」を感じて育った人も多いと思う。
それが【特定外来生物】に指定されてしまえば、飼育観察することもできなくなる。

個人的な感覚でいえば、限定的な地域に残っているトンボやゲンゴロウの一部が絶滅するより、全国で子どもたちに親しまれているアメリカザリガニを【特定外来生物】に指定することで失われるものの方が損失ははるかに大きいと感じる。

生態系の問題に感情論を持ち込むのはあまり良い事ではないと思うが、このテの保全運動のモチベーションも、それぞれの望郷感覚が根ざしていることが多いように感じる。

正直なところ、僕もアメリカザリガニと生態系についての正しい(科学的な)現状認識を持ち合わせているわけではないので、【特定外来生物】に指定すべきか否かは判断ができない。
しかし、心情的には(感情論で言えば)、【特定外来生物】に指定してほしくない──という気持ちが強い。
この問題について、おそらく多くの人がいろんな意見をもつだろうが、一個人として感じた事を記してみたしだい。

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コメント

No title
はじめまして、
時々おじゃましています、凛と申します、
とても考えさせられる記事です、ありがとうございます。^^
No title
外来種問題は色々考えさせられるテーマですね。
思う事はいろいろあるのですが、今回はアメリカザリガニを特定外来生物に指定すべきだというニュース記事を読んで感じた事を記してみました。
No title
小生ごときに結論は出せませんが、小生が小学生の頃(約40年前)には近所の小川・用水路・田んぼ等のどこを見てもアメリカザリガニが住んでいるのが当たり前でした。
今では当時と比べるとすっかり少なくなってしまいました。
深く考えさせられるテーマですね、ナイスです。
No title
僕が子ども頃にも、アメリカザリガニはすっかり定着していて「里山の一部」という感覚でした。
外来種は増え続けていて、僕が子どもだった頃にはいなかったものや、虫見をはじめたここ10年くらいのうちに新たに侵出してきた種類もいくつかあります。
そんな中で、アメリカザリガニを特定外来生物に指定すべきだと言うハナシを聞いて「なんで今更!?」と違和感を覚えました。
今回の件に限らず、環境保全や外来種問題は色々考えさせられるテーマですね。
No title
こんにちは。初めまして。
アメリカザリガニは、北海道の自然とはあまり縁がありませんが、最近札幌でも生存が確認できたり、他の例で言うとウチダザリガニが代わりに支笏湖などに進出してきていたりしているそうです。

今はアメリカザリガニですら生息域を奪われてしまう現代社会です。
アメリカザリガニは繁殖力が強い上、適応力も強いため今では既に手遅れという見方が一般的ですが、

公共事業、森林伐採、農業離れなどを総合して考えると、

アメリカザリガニも、人間の環境破壊も
他の生き物にどんな影響を与えているのかはそんなに大差無いよな?…という気がします。
No title
地球環境への影響を考えれば人間の環境改変力はアメリカザリガニの比ではないでしょう。人間は人間にとって都合の良いように環境を変えてきました。しかし人間も自然の一部であるわけですから、自然環境の破壊が進めばその影響は自分たちに返ってきて、大きなツケを払わされることにもなるでしょう。
そういった意味で環境保全も必要なわけで……環境保全指向の人たちの一部は外来種に対して必要以上にナーバスになっている気がしないでもありません。
外来種を増やさないということは大事だと思いますが、実際に外来種は増え続けています。環境への脅威の度合いや対策の効果・コストの面から優勢順位の高いところから適切・迅速に対応すべきだと思います。外来種問題は複雑で難しい問題ですが、今回のアメリカザリガニの問題は外来種問題をテーマにしているように見えて、ちょっとピントを外した感情論ではないのか……そんな違和感を覚えたしだいです。
No title
アメザリで調べ物をしていて検索していたら星谷さんのブログに行きつきビックリ!
心のこもったご意見、参考にさせていただきます。
No title
外来種問題は色んなテーマが絡み合って単純ではありませんが……個人的に感じたところを記してみました。

一般的に言えば池などの水質悪化はヒト活動に由来する富栄養化が主原因ではないかと僕は理解しています。水質が悪化してかつての生態系が失われ、そんな環境でも生きられるアメリカザリガニが繁栄した──そんな側面もあるのではないかと。

アメリカザリガニが生息しても里山が機能しているところでは水がきれいだったり、下水処理が進んだせいかアメリカザリガニがいるにもかかわらず水質が改善した場所もあります。そうしたことを考えると、水質悪化やかつての生態系が崩れた原因を外来種アメリカザリガニにあるとするのは望郷保全原理主義者のプロパガンダではないか──という気さえしないでもありません。

F昆でも時々外来種に関する話題がありましたが……それから色々なことを考え、身近なところに増え続ける外来種を見て感じることも多いです。

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