FC2ブログ

ニホントビナナフシの雌雄モザイク

体の半分がオスで半分がメス!?雌雄モザイク

落ち葉が目立つこの時期──。擬木の手すりなどでニホントビナナフシをよく見かけるようになる。目につく個体が増えてくる頃だが、この時期がニホントビナナフシのメインの活動時期というわけではないだろう。本来は木の枝にとまり、葉を食べているはずだ。それが紅葉や落葉で食べる葉を失い枝を離れるのか、あるいは落葉とともに落ちてくるのか……食樹を離れた個体が擬木に登ってくることで、この時期に目につきやすくなるのではないかと想像している。

狭山丘陵で見られるニホントビナナフシはメスばかり。岡田正哉・著『ナナフシのすべて』(トンボ出版/1999年)によると、ニホントビナナフシは《九州以北ではおもに単為生殖、屋久島以南では両性生殖をすると思われます》とのこと。だから、狭山丘陵で見られるニホントビナナフシは、単為生殖で世代更新をしてきたメスばかりで当然──「(この界隈に)オスは存在しない」と僕は長い間そう思っていた。
が……去年12月「(この界隈に)いるはずのない(と思っていた)ニホントビナナフシのオス」と遭遇して驚いた(*1)。調べてみると、関東でもニホントビナナフシのオスがみつかることはあるらしい。
僕が去年みつけたオスは残念なことに羽化不全で翅が縮れていたのだが……今年は完品のオスに出会いたいものだ──そう密かに期待していたところ、こんな個体が目に入ったに。




老眼の目にも♀とは違うことは一目でわかったので、「あっ! オスがでていた!」と、まず思った。デジカメを引っ張り出しながら、「オスにしては大きいな……」という漠然とした違和感を覚え、撮影を始めて「なんだか、ヘンだ……」と違和感を大きくした。
そこで、右半身に♂の特徴が、左半身に♀の特徴が現れていることに、ようやく気がついた。
1つの個体の中にオスとメスの特徴が混在する《雌雄モザイク》──昆虫の世界ではしばしば出現するという事は知識としては知っていたが、実際に見たことは無かったし、そう簡単に見られるものでもないだろうと思っていた。なので昨年「東京でニホントビナナフシのオスにであった驚き」に勝るとも劣らぬ大きな驚きがあった。

オスとメス、雌雄モザイクとの比較

ということで、ニホントビナナフシのオスとメスの画像と比較してみたい。
まずは、去年であった♂(*1)から。──羽化不全なのか翅が縮れてしまっているが……全体的に茶褐色で、♀にくらべてかなり小さくきゃしゃな印象↓。


雌雄モザイクの近くにいた♀の画像↓。全体的に緑色。


そして問題の雌雄モザイク↓


♂の頭部は茶褐色だが、この個体では♀同様緑色。前胸と中胸は右半分が♂の特徴である茶褐色で、左半分が♀の特徴である緑色。ニホントビナナフシの前脚は♂が茶色/♀が緑色だが、この個体では右前脚が茶色で♂の特徴。左前脚も若干茶色が入っているように見えるが、右前脚ほどではない。


翅は長さも色も違う。♂は茶褐色で♀は緑色。体の左右で特徴が別れている。


腹も体の左右で特徴(♂は茶褐色/♀は緑色)が分かれている。






前脚をそろえて伸ばすと(↑)♂の特徴が現れている右前脚の方がわずかに長いことがわかる。
そして、ちょっと強引に、近くにいた♀とのツーショット。雌雄モザイクは ♀に比べると小さいが ♂より大きい。



《九州以北ではおもに単為生殖》と考えられているニホントビナナフシで雌雄モザイクが出現するという事は、《単為生殖でも雌雄モザイクが出現する》ということなのだろうか。だとすれば、単為生殖で繁殖をしてきた九州以北でも突然♂が出現する事だって、あってもよさそうな気がする。
どういう仕組みで、こういったことが起こるのかは知らないが……なんとも不思議な気がする。

見つめ返す!?【偽瞳孔】あるいは【擬瞳孔】

ところで、これまでの画像からもわかるように、トビナナフシを撮ると「いつもカメラ目線(?)」で写っている。複眼の中の黒い点が「こっち(見る側)を見つめ返し、追尾してくる」かのようにみえる。




複眼の中の黒い点は【偽瞳孔】あるいは【擬瞳孔】と呼ばれるもので、「見る側を追尾している」ように感じるが、実際に追尾している器官があるわけではない。同時に2人の観察者が別々の方向から眺めても、【偽瞳孔】はそれぞれに向いているようにうつる。
【偽瞳孔】のしくみは、以前おおざっぱに記した(*2)が、カマキリなど他の昆虫でも見られる。



スポンサーサイト



コメント

No title
このような個体に出会う確率はすごく低いのでしょうね。
きれいなモザイクです。他の種でごくまれにそれらしいのに出会うことがありますが、どのようなメカニズムになっているのでしょうね。
No title
昆虫ではたまに出現する現象だということは知っていましたが、はじめてモザイクを見て驚きました。
僕はまだ他の種類でも見たことがないのですが、注意してたくさん見ていれば、そのうちまた見る事ができるかもしれませんね。
知識で知っているのと実際に目の当たりにしたのでは、やはり「不思議の実感」インパクトが違うと、今回あらためて感じました。

管理者のみに表示

トラックバック